高レベル放射性廃棄物(HLW)の最終処分地選定が曲がり角を迎えている。
事業の前進には、北海道の2町村に加えて新たな自治体での「文献調査」実施が欠かせない。
高レベル放射性廃棄物(HLW)の最終処分地選定に向けた調査事業が風雲急を告げている。
まずはこれまでの歩みをざっと振り返ろう。最終処分地は、①2年程度の文献調査(机上調査)、②4年程度の概要調査(ボーリング調査)、③14年程度の精密調査(地下施設での調査・試験)―という段階的な調査を経て選定する。いずれも、都道府県知事や市町村長の意見に反して次の段階に進むことはない。また調査を実施した自治体には、文献調査段階で最大20億円、概要調査段階で最大70億円の電源立地交付金が交付される(精密調査段階以降も法制化を検討中)。
わが国では2020年11月、北海道寿都町と神恵内村で文献調査を開始して以降、実施自治体は出ていない。先行する諸外国の選定プロセスでは、フィンランドが概要調査相当6件、スウェーデンが文献調査8件、フランスが文献・概要調査相当10件などある程度の候補地が出てから、絞り込みが行われた。日本でも2町村以外の自治体による文献調査が望まれる。

こうした状況を受け、2月に閣議決定した「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」では、政府を挙げて処分地選定などのバックエンド問題に取り組むことを明記。4月には「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」を改定し、閣議決定した。国主導の下、地元電力と原子力発電環境整備機構(NUMO)が協働で100カ所以上の自治体を訪問する全国行脚や、文献調査の受け入れ判断前から調査の検討の申し入れるといった自治体の負担軽減策などが盛り込まれている。
文献調査の応募は報道の過熱などから、首長選で最重要争点となることもある。国策への貢献が、首長にとっては政治生命を賭けるほどの大きな決断となっていただけに、少しでも国が前面に出る姿勢を示したことは評価できる。
現在、寿都町と神恵内村が次のステップである概要調査へ進むかどうか、文献調査の評価の方向性が経済産業省の放射性廃棄物ワーキンググループ(WG)で検討されている。同WGで「GOサイン」が出れば、2町村と北海道知事への意思確認へと進むことに。この際、寿都町では住民投票で意思を確認する段取りになっている。
「仲間が増えてほしい」 対馬市や本州でも動きが
住民投票に向け、寿都町の片岡春雄町長が最重視するのが、新たに文献調査を実施する自治体が現れるかどうかだ。地元で概要調査に反対する人の中には、最終処分場の問題が自分たちに押し付けられているとの思いを抱く人もいる。その不安を払しょくするためにも、全国の〝仲間〟が必要というわけだ。こうした状況もあり、放射性廃棄物WGのGOサインも文献調査の応募状況を見ながら出される可能性が高い。
そんな中、6月に動きがあった。長崎県対馬市の業界団体など12団体が、文献調査への応募を求める請願を対馬市議会に提出したのだ。請願は6月の定例会で採択される見込みとなっている。ただ最終判断は比田勝尚喜・対馬市長に委ねられ、「即応募」となるかは不透明だ。応募に前向きな地元の有力者は「仮に最終処分場ができても、HLWが運ばれるのは30年ほど先の話。それでも、対馬の将来のために応募したい」と語る。今後は勉強会などで応募の機運を高めつつ、来年3月の市長選で争点化するという見方が優勢だ。
また対馬市が応募するよりも早い段階で「〝日本地図の真ん中あたり〟で応募する自治体が出てくるのでは」との声も聞かれ、近いうちに大きな動きが表面化する可能性もある。














