【論説室の窓】五郎丸 健一/朝日新聞 論説委員
相次ぐ電力大手の不祥事は、競争を促す改革への無理解とルール軽視の体質をあらわにした。
真摯な反省と再発防止が関係各社に求められるが、不備が露呈した制度の改善も急がれる。
電気料金の値上げが広がる中、大手電力会社の度重なる不祥事が社会に不信を広げた。カルテルと、新電力の顧客情報の漏洩・不正閲覧。いずれも、電力自由化の趣旨を踏みにじり、公正な競争を陰で骨抜きにする悪質な行為だ。
公益企業としての自覚やコンプライアンスの意識はあるのか。自由化前の旧態依然とした甘えやおごりが、経営層から現場にいたるまで染みついてはいないか。そんな疑念を抱かざるを得ない。
カルテルでは公正取引委員会が3月、中国、中部、九州電力の3社に課徴金納付・排除措置命令を出した。関西電力が3社とそれぞれ相手の区域内での営業活動を制限することなどで合意し、独占禁止法に違反したと認定した。
関電には、調査前に自主申告すると課徴金が免除される制度が適用された。それでも3社の課徴金額は、一事件として過去最高の約1000億円に達した。社会に与えた損失の大きさを物語る。
中部電と中国電が処分を不服とし、取り消しを求めて提訴する方針を表明するなど、決着にはさらに時間がかかる見込みだ。
ただ、関電自身も認めた事実関係を見れば、大手同士が互いの「縄張り」を荒らさないよう申し合わせ、値下げ競争の回避をはかっていたことになる。公取委によると、各社の話し合いには役員や部長級の幹部が出ていたという。顧客をないがしろにし、自社の利益を不当に追求する組織的な背信行為と言うほかない。
一方、昨年末にまず関電で見つかった不正閲覧の問題は、大手10社のうち7社に広がった。4月に経済産業省は業務改善命令などの処分を出した。
地域独占を認められている大手の送配電部門が、送電網を利用する新電力の顧客情報を外部に漏らすことは、電気事業法で禁じられている。公共インフラの中立性を保つための重要なルールだ。ところが、小売り部門の多数の社員らが情報を日常的に「のぞき見」していた。送配電部門を別会社化する「発送電分離」も2020年に実施される中で、不正が蔓延していたことになる。電力システム改革の根幹を揺るがす事態だ。
悪質さ際立つ関電 電事連も問われる
中でも関電の悪質さは際立つ。カルテルで営業抑制の方針を社長らが出る会議で決めていたのは衝撃的だ。不正閲覧では顧客情報を自社の営業活動にも使っていた。
関電は20年に、金品受領問題で経営陣の刷新に追い込まれた。その時、副社長から社長に昇格したのが、カルテルの実行役とされる森本孝氏だった。その後、「若返り」を理由にわずか2年で社長を退任したが、発表の場で関電首脳陣は、法令順守や企業統治の改革が進んだ、と強調していた。
その後、判明した事実を見れば、いかにも空々しい。反省と再発防止をいくら口にしても、深刻な不正が後を絶たない体質にメスを入れ、膿を出し切る覚悟を経営陣が行動で示さなければ、信頼は失われたままだろう。
大手の横並び・なれ合い意識も問われている。電気事業連合会の会合の前後にカルテルを話し合うケースもあったとして、公取委は電事連に改善を申し入れた。電事連に対し、「競争制限的な行為が誘発されやすい環境」との見方は経産省内にもある。新電力や発電会社など多数のプレーヤーが競争する時代に合った業界団体の姿を考える必要があるのではないか。

カルテルが、ルールより営利を優先するゆがんだ姿勢やチェック機能の不全など、主に幹部層の問題なのに対し、不正閲覧の方は、営業部門などの現場に広がっていた点で根が深い。
システム上の情報遮断や機器の管理など「仕組み」のずさんさと、基本ルールや制度改革に対する「意識」の希薄さが重なった。それぞれ改善が必要だが、社員の意識改革にはとりわけ多くの努力と工夫が求められる。




















