福島事故で控訴を棄却 東電元トップに無罪判決

福島第一原発事故を巡り、強制起訴された東京電力の勝俣恒久元会長らの控訴審判決が1月18日にあった。東京高裁は一審の無罪判決を支持し控訴を棄却。二審でも無罪となった。

争点の一つになった巨大津波の予見性では、高裁は国が公表した地震予測「長期評価」について、①前書きに「誤差を含む」「利用に注意が必要」などの記載がある、②中央防災会議の報告などに入らなかった―などと指摘。長期評価の信頼性を否定している。

裁判後、原告側は「あれだけの事故を起こした企業の経営トップの刑事罰を問えないとは」と怒りをあらわにした。しかし争点が高度に技術的なことでありながら、原子力が専門の武黒一郎・武藤栄副社長はともかく、事務系の勝俣氏を刑事罰に問うことには違和感があった。事故当時社長ではなく、会長だった勝俣氏が刑事告発されたのは、「東電の顔と見られていたため」(関係者)といわれる。

もっとも、株主代表訴訟では勝俣氏をはじめ清水正孝社長(当時)の過失も認めている。13兆円の賠償額が、4人の肩に重くのしかかっている。

原子力政策は本当に転換するのか 具体策なき「惰性による復活」も

【永田町便り】福島伸享/衆議院議員

 岸田内閣は、12月22日のGX実行会議で脱炭素社会の実現に向けた基本方針をまとめ、各メディアは原子力政策が大きく転換したように報じた。本当に原子力政策は変わるのだろうか。

東日本大震災で明らかになったのは、日本の原子力は適切な規制も、危機管理もできていなかったことだ。かつて資源エネルギー庁や科学技術庁で原子力政策に携わっていた私にとってもそれは一生の痛恨である。結果、国民の信頼を損ない、10年にわたる停滞を続けてきた。確かに独立規制機関として原子力規制委員会はできたが、そこで行われている規制は量的な面で厳重になっただけで、規制の質自体は大して変わっていない。今の規制体系のままでは、次世代革新炉のような新しい炉への適切な規制はできないだろうし、新増設や建て替えなどで地元の理解を得るのは困難だろう。

国民の理解を得られるか 虻蜂取らずの悲観的な将来

GX実行会議の基本方針では「地元の理解確保に向けて、国が前面に立った対応」を行うとあるが、これは従来言い続けている紋切型の表現である。国自身が行うべき具体的な政策は提示されていないのだ。「具体的には、『安全神話からの脱却』を不断に問い直し、規制の充足にとどまらない自主的な安全性向上……に取り組む」としているが、全く「具体的」ではない。おそらく実現するのは既存原発の運転期間延長くらいで、時間稼ぎにしかならない。

原子力にせよ、かつて私が携わったバイオにせよ、日本の最大の欠点は、革新的な技術を社会で利用する場合に、安全性などを担保するための科学的に合理的な規制や制度を作ることができないことにあると考える。そして、行政が国民にそうした規制の科学的意義を伝えて国民の受容を促すのではなく、国民はゼロリスクを求めて行政に全面的に依存することで、賛成・反対の不毛な二項対立を繰り返してきた。原子力では、こうしたことがこれ以上ないほど如実に表れたのだ。そんな日本の宿痾に対する認識は、GX実行会議の基本方針には微塵もない。

世論調査を見ると原子力に対する国民の意識は10年前からかなり変わってきてはいるが、今提示されている政策体系では具体的な原発立地などで国民の理解を得られることは難しいだろう。私は、この基本方針が政府の「政策の転換」だとは思わない。これまで失敗してきた政策の「惰性による復活」でしかない。その結果、今後日本は脱炭素化社会の実現のために原子力に依存しようとしながらそれも実現せず、新しい技術や産業も発展しないという、虻蜂取らずの悲観的な将来を描かざるを得ないのだ。

科学的思考を欠き、合理的根拠のない決断しかできない無能な政権が続く限り、日本の原子力が世界に冠たるものに復活することはなく、日本の停滞は止まらない。

ふくしま・のぶゆき 1995年東京大学農学部卒、通産省(現経産省)入省。電力・ガス・原子力政策などに携わり、2009年衆院選で初当選。21年秋の衆院選で無所属当選し「有志の会」を発足、現在に至る。

大規模金融緩和が終局へ 電力債の発行に暗雲も

昨年12月、日本銀行が発表した大規模金融緩和の〝サプライズ修正〟。市場は事実上の「利上げ」と受け取り、円安・株安に振れた。黒田東彦日銀総裁は「利上げではない」と大規模緩和の継続を誓うが、総裁任期は4月8日まで。2月10日に新正副総裁の人事案が公表予定で、「誰になっても異次元の金融緩和路線は修正されるだろう」(アジアエネルギー研究所・廣瀬和貞氏)

気掛かりなのは、大手電力会社が発行する社債への影響だ。社債は長期国債(10年債)利回りを基準に金利が決まるため、大規模緩和が行われた直近10年の調達環境は低金利で良好だった。特に電力債は市場に出回る国債の量が少なかったこともあり、国債に準じる債券として機能していた。

では〝黒田後〟の調達環境はどうなるのか。電力債の多くは長期固定金利のため、すぐに経営に影響を与えることはないが、起債時の金利は上がる。廣瀬氏は「利上げで円安が是正され燃料調達環境が好転しても、中長期的に見れば金利上昇の悪影響の方が大きい。いずれは経営を不安視され、売れ残る電力債もあるのではないか」と懸念する。大手電力会社の内憂外患は続く。

メタネーションって面白い! GXで変化する産業界

【業界紙の目】石井義庸/ガスエネルギー新聞 編集部長デスク

さまざまな産業分野で製造工程を大きく変更する脱炭素化技術の開発が進められている。

都市ガス業界が推進するメタネーションの歩みは、他の製造業のトランジション(移行)ともからみ面白い。

 「昔はガス工場から隣の製鉄所にベルトコンベアでコークスを売っていた。脱炭素化で製鉄工程が変われば、今度はe―メタンを売ることになるだろう」。大手ガスのベテラン社員が数年前、こう話していた。これには都市ガスがかつて行ったイノベーションと、鉄とガスがこれから行うGX(グリーントランスフォーメーション)が関わる。

日本でのガス事業開始は1872年、原料にLNGを使い始めたのは1969年のことで、約150年の中でLNGの歴史はわずか50年だ。長らく石炭からガスを作っていた。今も全国に200社近いガス事業者があり、その多くが中小企業だ。それらの相当数が自社工場で石炭を蒸し焼きしてガスとコークスを製造し、コークスは製鉄所などに販売していた。このイノベーションにより、ガス業界はコークスを販売しなくなった。

ガス業界のGX戦略の主軸はメタネーションだ。水素とCO2からメタンを合成するプロセスのことで、その合成メタンを天然ガスに含まれる化石燃料のメタンと区別するため「e―メタン」と呼ぶ。再生可能エネルギー電気由来の水素と、一度排出されたとカウント済みのCO2再利用により、e―メタン燃焼時の排出は再カウントしない。ガス業界は、LNGをe―メタンに置き換えることで、ガスのサプライチェーンのほとんどを現状のままとしながら都市ガスをカーボンニュートラル(CN)にする方針だ。

製造業全体の移行に貢献 多様な熱需要をグリーン化

一方、日本の製鉄業で主流の高炉は、石炭からつくるコークスを主な燃料・原料とし、鉄鉱石を高炉と転炉で還元・溶解している。海外で米国のように天然ガスを安く得られる地域では「直接還元炉」を用いて天然ガスで鉄鉱石を還元する。銑鉄を溶解・不純物を除去する後工程がないので、電気炉も必要だ。

鉄鋼業のGX戦略としては、高炉のままコークスの一部を水素やe―メタンなどに代替する方法や、水素直接還元、天然ガスと水素を混合して還元に使う「部分水素直接還元」などが検討されている。GXにより、ガス業界が原燃料としてe―メタンなどを供給し、何十年かぶりにガスと鉄鋼が接近する可能性があるのは興味深い。

鉄鋼以外の多くの製造業のトランジションにメタネーションが絡む点も面白い。日本ガス協会の「カーボンニュートラルチャレンジ2050」では、まず現状の天然ガスのまま産業用熱需要の都市ガス転換を進めることが第一段階。今すぐCO2を減らすことが、世界平均気温上昇を産業革命以前の1・5℃未満に抑える「1・5℃目標」達成に必要だからだ。次にガス原料をe―メタンなどに変え、CN化するシナリオだ。

水素ではなく、将来のガス原料をe―メタンとしたのには理由がある。水素のサプライチェーン構築や、供給・需要両方の設備の開発や普及が立ち上がるまで水素によるCO2削減はできず、天然ガス転換も需要家から避けられる可能性があり、CO2削減の歩みが止まる可能性があるからだ。

バーナーやボイラー、自家発電所の燃料に石油・石炭を使用している工場などはまだまだある。例えば、化学業界のうち石油化学やガラス製造では高温の熱需要があり、無機化学では多量の電気が必要になるため自家発電が多数ある。愛媛県新居浜市や宮崎県延岡市などでは、LNG基地新設により企業城下町全体を燃料転換するプロジェクトが進行中だ。

製紙業界では、もともと原料の木の中から繊維とエネルギーを取り出し、それを基にバージンパルプを作っている。1990年代から古紙利用が広がり、エネルギーを別途調達する必要があったため、製紙業界での石炭利用が広がった。ここに天然ガスへの転換需要の芽がある。

INPEX長岡鉱場に設置されたメタネーション実証設備

クレジット国際取引をけん引 地方ガス会社への期待も

メタネーションは、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に基づくクレジットの国際取引の初期事例になりそうで、その点も興味深い。例えば、22年11月の経済産業省「メタネーション推進官民協議会」では、東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、三菱商事が米国でメタネーションを行い、日本にe―メタンを輸入する計画を発表した。こうした輸入計画を通じてe―メタンを物理的に持ち込めたとして

も、それが元の排出国でカウント済みと確認できなければ、日本の削減量に貢献できない。そこでパリ協定6条2項の2国間による「協調的アプローチ」が使われる可能性が高い。

一方、メタネーションを国内で実施し利用する事例が出てくるかも注目される。今具体的に検討されているのは、国内の工場などで排出されるCO2の循環利用だ。先述の官民協議会では、アイシン、デンソー、東邦ガスが中部圏に集積する工場でメタネーションによるCO2循環利用に関するケーススタディーを発表している。

再エネは都市部よりも地方に適地が多いため、余剰電力の活用方策としてe―メタンを都市ガス原料とするケースもあり得る。今、多くの地方ガス会社は地方自治体などと組んで地域新電力を立ち上げ、再エネを含めた地産地消電力を具体化している。地産地消電力の電源にもなる下水処理場やごみ発電など、CO2発生源は地方でも豊富だ。実際にごみ発電からCO2を回収してメタネーションに利用する実証試験は、神奈川県小田原市や佐賀市で進行中だ。エネルギー地産地消の試みの将来発展系として、メタネーションが浮上する可能性もある。

10年ほど前、地方ガスのベテラン社員が「昔はうちにも石炭からガスを製造する工場があって、化学に強い技術系の社員がいた。今はパイプラインで大手ガス会社からガスを受けるだけで、自前の技術、ノウハウの層が薄くなり寂しい」と話すのを聞いた。私はこの言葉を思い出しながら、メタネーションにより、地方ガスの工場で再び都市ガス原料をつくるようになる、ということを夢想する。

〈ガスエネルギー新聞〉〇1959年創刊〇購読者数:3万1000部〇読者層:都市ガス事業者、関連メーカー、官公庁など

撮影装置でコンクリート劣化診断 鉄塔基礎点検の負担を軽減

【四国電力送配電】

撮影装置を使い鉄塔の基礎コンクリートの劣化を診断する技術が開発された。

低コストかつ負担軽減の新手法は、開発チームの創意工夫が凝らされている。

四国電力送配電、四国総合研究所、テクノ・サクセスは、鉄塔コンクリート基礎診断にかかる負担を軽減し、手軽に点検できる撮影装置を開発した。従来のような大規模土木工事を伴わず、大幅なコスト削減も実現。この技術は「小口径空洞内撮影装置を用いたコンクリート基礎の劣化診断手法の開発」として、各方面から高い評価を得ている。

鉄塔の基礎部分は通常のコンクリート構造物と同様、コンクリート内のアルカリ成分と骨材中の成分がアルカリシリカ反応(ASR)を起こし、吸水膨張性を持つことでひび割れが発生する。その他にもアルカリ成分と二酸化炭素の反応による中性化、塩害による鉄筋腐食など、さまざまな劣化要因が挙げられる。あらゆる劣化要因に対するコンクリート基礎の状態把握は、設備保守の観点からも重要な要素となっている。

通常の点検では、地上の基礎表面部分からひび割れの進行具合を確認し、場合によっては土砂を掘削して基礎の一部を採取するなどの手法が取られている。しかし土砂掘削による調査では、地山崩壊防止のための大掛かりな土木工事が必要となる。また、一般的な圧縮強度確認のためのコンクリートコア(コア直径10㎝)を採取する場合、鉄塔基礎体に大きな影響を与えかねないなどコスト面、安全面に課題があった。

この問題を解決するため、四国電力送配電では2016年から鉄塔コンクリート劣化診断方法の見直しに着手した。高いボーリング技術を持つ地元企業と連携し、幅約50㎝の地上基礎部分から、コアの直径2・5㎝を、深さ5~7mほどくり抜く手法を取った。しかし、小口径のコアは採取の際に割れやすく、劣化が原因か採取時の破損か判断しにくいという欠点がある。

それを補うのが今回開発した「小口径空洞内撮影装置」だ。前面用と側面用の小型カメラ2台で穴の内部を撮影することで、コアの断面と合わせてひび割れや損傷、腐食による劣化の有無を確認することができる。

壁面を撮影する小口径空洞内撮影装置

装置開発に携わった四国電力送配電送変電部送電グループの藤川真人さんは「従来の技術に比べて、コンクリート基礎への負担が少ない。カメラ映像では0・1mmのひび割れも確認が可能だ」と話す。17年から実際に運用を開始し、現在まで33基の鉄塔基礎の検査に活用している。

創意工夫で編み出した装置 現在も改良を重ねて運用

この撮影装置は特別な機材を使っておらず、四国電力送配電と四国電力グループの四国総合研究所、テクノ・サクセスが協力し、創意工夫で編み出したという点が特徴だ。「カメラは家電量販店のものを使用している。2台のカメラで側面を撮影できるように鏡を内部に取り付けているが、鏡も歯科用ミラーを流用した」(藤川さん)。カメラを束ねるフレームについても、当初はプラスチックなどを代用し試行錯誤を重ね、最終的には軽量で耐久性の高い金属製フレームを使用した。

こうして運用にこぎ着けたが、実際に撮影したところ、掘削時の粉塵や泥水で視界が阻害されるというトラブルに見舞われた。注水して壁面を掃除しても水滴がライトに反射してしまい、撮影時に壁面が鮮明に映らなかったという。「本来なら乾燥させたかったが、孔内は通気が悪く水滴を取るまでに1日単位の手間がかかる」と藤川さんは当時の苦労を語る。

しかしここで「水滴が邪魔なら、水中で撮影してはどうか」と逆転の発想が生まれる。装置に注水する機能を取り付け撮影したところ、より鮮明な映像が撮影できるようになった。映像はパソコンに取り込みパノラマ写真に加工することで、ひび割れの範囲と位置を把握。これにより、発見が難しいとされたコンクリート基礎深部のひび割れを検知できた。

現在は改良を加え、撮影装置にモーターを設置、糸巻きの要領でカメラを等速で引き上げる手法を取っている。人力での引き上げによる速度のムラを抑え、パノラマ画像の合成精度の向上を狙っているという。

撮影装置を使った点検作業

メンテ部門で高い評価 鉄塔設備の早期改修に貢献

これらの技術開発が高い評価を受け、21年12月にインフラメンテナンスの優れた取り組みや技術開発を表彰する、第5回インフラメンテナンス大賞経済産業省部門の優秀賞を受賞した。藤川さんは「光栄なこと。これをきっかけに広くこの技術を紹介していただければ」と話す。

藤川さんは現在、診断結果を蓄積してASRによる基礎地上部のひび割れ状況と基礎構造物の耐力との関連性の評価検討に取り組んでいる。「データを集めていけば、ひび割れを確認することで基礎コンクリート深部の劣化状態を評価する技術につながる」。実現すれば、劣化診断調査の効率的な運用が見込めるという。

四国電力送配電は山の斜面や海岸に近い立地に鉄塔が多い関係上、鉄塔基礎部分の劣化問題に熱心に取り組んできた。今回の診断技術は劣化設備の適切な改修に貢献し、さらなる点検の効率化に寄与すると期待されている。このノウハウを蓄積し、将来的には基礎部分表面のひび割れから内部の劣化状況を推定できる技術開発を目指す。四国電力送配電の創意工夫はこれからも続いていく。

顧客情報管理問題の深刻度 浮上する資本分離の懸念

中部、関西、中国、九州の大手電力4社によるカルテル問題で大揺れの電力業界に、さらなる激震が走った。関西、東北、九州3社で送配電子会社が持つ競合他社の顧客情報を不正に閲覧した問題が発覚。経済産業省・電力ガス取引監視等委員会が調査に乗り出す事態となった。

一部では営業部門が顧客情報を活用していた疑いも浮上。大手電力会社から送配電部門を法的分離し情報を遮断する「行為規制」が機能していなかった実態が浮かび上がっている。「小売り全面自由化後、送配電会社の情報が本社の営業部門に漏れているのではとの疑惑が出てきたため、電取委に相談を持ち掛けていた。今回の騒動はようやくかといった感じだ」。新電力関係者はこう話す。

また大手電力の幹部は「不正閲覧はある意味、電力カルテルよりも深刻だ。行為規制では不十分と結論付けられたら、抜本対策として資本分離の議論に発展しかねない」と指摘する。卸電力取引の内外無差別問題を公正取引委員会が調査する中で発覚した、送配電の中立性問題。公正競争の在り方が改めて問われそうだ。

熟議なき「原発復権」 数々の疑問に向き合え

【論説室の窓】五郎丸 健一/朝日新聞 論説委員

政権が原発の「復権」にかじを切った。だが、数々の課題が置き去りで、見切り発車の色が濃い。
政策を安定的に進めるには、解決の道筋を示し、社会の理解と合意を得る手順が欠かせない。

 昨年末、政府が「GX実現に向けた基本方針」をまとめた。原発の積極活用策が柱で、再稼働の加速に加え、60年超運転を可能にするルール変更と、新型炉の開発・建設推進が盛り込まれた。

福島第一原発事故の教訓から、エネルギー基本計画は「可能な限り原発依存度を低減」とうたってきたが、新方針は「最大限活用」を明記した。古い原発の運転延長や建て替えが実現すれば、一定の依存が固定化することになる。

安倍政権と菅政権が再稼働推進にとどめてきたことを考えれば、重大な政策転換といえる。経済産業省の幹部は「3・11以降、原発政策を前に進めようといろいろやってきたが、今回は階段を大きく上ることができた」と評する。

風向きを変えたのは、ロシアのウクライナ侵略で深まった世界的なエネルギー危機だ。新方針も原発を積極活用する理由として、気候変動に加え、足元の電力供給不安を強調する。二つの危機への対処が重要なのは当然だが、今回の政策論議では、問題のすり替えや優先順位のずれ、対応の先送りが目についた。新方針が最適解なのか、はなはだ疑問だ。

示された方策と現実の課題は、時間軸がかみ合っていない。原発の再稼働には必要な手順があり、目先の供給力の上積みや二酸化炭素の排出抑制の面で、大きな効果は見込めない。一方、60年超運転や新型炉建設は不透明な要素が多く、実現したとしても効果が表れるのは十数年以上先だ。

「原発積極活用論」は、原発の稼働が安定供給や脱炭素化に直結するとの見方を前提としているが、推進派以外の専門家からは異論も聞かれる。「ベースロード電源である原発の稼働が増えると、火力発電の稼働率が下がり、休廃止がさらに進む可能性もある」「電力会社が経営資源を原発に割けば、再生可能エネルギーへの投資は停滞する」といった指摘だ。

年末のGX実行会議で発言する岸田首相

原発に集中した議論 尽きない方策への疑問

安定供給と脱炭素化の両立は、市場制度改革や再エネ拡大、脱炭素技術の普及など、さまざまな手立てで進める必要があるが、議論は原発推進に集中した。経産省の審議会でも、橘川武郎委員(国際大副学長)が「この国はエネルギー基本計画で再エネの主力電源化を決めた。電力不足になったら、まず再エネをどうするかを話すのが普通だと思うが、ここでは少数。原子力の話から入るのは違和感がある」と指摘したが、黙殺された。

方策自体への疑問も尽きない。

運転延長は、事故の教訓を踏まえ、老朽原発のリスクを減らすために与野党の合意で導入したルールを約10年で変えることを意味する。原子力規制委員会が60年超の安全性を審査する方法の検討はこれからだ。規制委が議論を始める前から、水面下でルール変更の検討が経産省主導で進んでいたことも発覚した。「推進と規制の分離」や「安全最優先」が貫かれるのか、疑念を持たれている。

新型炉建設では、経済性や事業リスクが不安視されている。欧米では近年、建設費が膨らむ例が相次ぐ。政府は電力業界の求めに応じて経済支援策を検討中だが、ある大手電力の社外取締役は「原発支援の国民負担に理解を得るには、運営体制を公共性の高い形に再編することが必須では」と話す。

根源的な課題でも、説得力のある答えは依然示されていない。使用済み核燃料や放射性廃棄物が増え続けるが、核燃料サイクルや最終処分の問題を解決できるのか。事故時に安全に避難できるか。新方針は取り組み強化をうたうだけで、具体性に乏しい。

本来、政策を転換するのであれば、必要性や効果はもちろん、コストやリスク、課題の解決策、ほかの選択肢との比較など、多角的な検討が必要なはずだが、なおざりにされた。つまるところ、エネルギー供給への不安心理が広がる状況を原発復権の好機と考え、「結論ありき」で一気呵成に進めたというのが、実情ではないか。

黙殺された審議会での意見 目につく硬直性・無責任

実は筆者は昨年11月、経産省の審議会のヒアリングに呼ばれ、意見を述べる機会があった。原発政策への疑問を指摘し、「積極推進にかじを切るなら、諸課題を解決する具体的な道筋も示す責務がある。日程・結論ありきを排し、熟議を尽くすことが肝要だ」と訴えた。しかし、その後の質疑でほとんど言及はなかった。

その一カ月後、政府がまとめた新方針には、8月の議論開始時に経産省が検討項目として示したものが、「予定調和」のように並んだ。拙速との批判も相次いだが、西村康稔経産相は「非常に慎重な方々のヒアリングもやった」とかわす。やはり、異論に耳を傾け、丁寧に議論を進めたという形を整えるための「アリバイづくり」だった、と思わざるを得ない。

原発政策には、課題に背を向け、ひたすら推進の旗を振る硬直性や無責任が目につく。そのことは福島の惨事につながり、深刻な原発不信を広げた。多くの人にとって事故の記憶が薄れているのは確かだろうが、政策への信頼や理解が十分回復したとも思えない。

政策の質と信頼性を高める土台は、疑問に向き合い、多様な意見を吸い上げながら中身を練る姿勢だが、それにはほど遠い。昨年7月の参院選で政権は原発活用策を明示せず、選挙後になって検討を急いだ。こんな進め方では、政策は民意の支えを欠き、不安定さを抱えたままではないか。

今回の過程から見えるのは、推進官庁が審議会でお墨付きを得つつ、水面下で首相官邸や与党と調整して政策をまとめる手法の限界と弊害だ。本来なら、原発推進論者ばかりでなく、幅広い分野の識者や国民各層の代表も入る場で、熟議を重ねることが必要だった。

この先、議論の主舞台は国会に移る。野党の中には、エネルギー政策を省庁任せにせず、国会に独立機関を設け、検証や提言の機能を持たせることを目指す議員立法の動きもある。政策転換の中身はもちろん、立案や合意形成のあり方についても、将来への責任を意識した真剣な論戦が望まれる。

能代で洋上風力初の商業運転開始 政府は第二弾公募を開始

昨年末、洋上風力にまつわるトピックスが立て続けにあった。まずは12月22日、国内初となる大型洋上風力(秋田県能代港)の商業運転が始まった。秋田県が秋田・能代の両港湾を対象に公募し、丸紅を中心とした特別目的会社が手掛けている。

営業運転を開始した能代港の洋上風力発電設備

そして28日には、再エネ海域利用法に基づく政府の公募二弾がスタート。この制度では特例的に最大30年間の占用許可を与え、今回は長崎・新潟・秋田の4地点が対象だ。第一弾を総取りした三菱商事の出方をめぐってはさまざまな見方が飛び交うが、ある再エネ業界関係者は「現地での活動状況やリソースの問題などの状況証拠的に今回はメジャーポジションで出る可能性は低そうだ」という。

もう一つの注目点が入札価格だ。ルール改正を踏まえ、相対取引を活用して1kW時3円の水準を狙う動きが予想される。他方、こうした動きとは一線を画し、シンプルにFIP(市場連動の再エネ買取制度)のプレミアムで採算を確保しようとする考え方もある。「FIPモデルは事業リスクが低く、こちらを志向する事業者は『3円の戦い』となることを懸念している」(同)。「国民負担抑制」に資する産業に育つのか。その岐路となる可能性がある。

【覆面ホンネ座談会】全面自由化の失策を問う 政策議論の歪みを正せるか

テーマ:電力システム改革

 電力需給ひっ迫懸念やロシアによるウクライナ侵攻に伴う燃料費の高騰、料金の高止まりによる家庭や企業への深刻な影響など、電力市場を巡る課題は尽きない。安定供給体制の再構築に打つ手はあるのか。

〈出席者〉 A学識者  Bコンサルタント  C新電力関係者

―安定供給再構築に向けたさまざまな議論が進められているが、そもそも問題の根幹は何だったのか。

A 政策立案の際には、経済産業省と産業界が交渉した上で行う形式が踏襲されているが、東日本大震災以降、電気事業政策だけが原子力発電の再稼働を人質に行政主導で制度改革を行う特殊な構図になってしまった。ある意味、頭でっかちな改革が行われやすい環境が現在の状況を生み出したと言えるが、最近の混乱の最大要因は、以前に比べて経産省資源エネルギー庁の人員が増えていないのにミッションだけが増えていることにある。

B 2016年の小売り全面自由化以降は、どちらかというと自由化政策よりも安定供給の立て直しの議論ばかりがされてきたと認識している。そういう意味で、12~15年の制度設計ワーキングの議論に課題があったと言わざるを得ない。電力システム改革専門委員会の報告書に基づく制度の詳細設計を議論する中で、果たして本当に安定供給面での考慮がなされていたのだろうか。電力システム改革という政策の負の側面をきちんと評価していたとはとても思えない。

C システム改革の三つの目的は数字に照らしてもクリアできていない。電力安定供給を含め、システム改革は失敗したと総括して然るべきだ。しかし、保坂伸エネ庁長官は昨年11月の電気新聞のインタビューで、自由化によって消費者が選べるメニューが増え、全体のコストが下がったと述べていた。誤解を恐れずに言えば、戯言だね。エネ庁トップがシステム改革は成功しているという認識のままなのであれば、安定供給議論を展開する土台がない。本音を聞いてみたいよ。

供給力確保の重要性が改めて問われている(写真は北海道電力苫東厚真火力)

再エネ導入と発電競争の問題 安定電源を削る発想の改革

―老朽火力の休廃止が進み、需給がひっ迫しやすい状況は改善しそうにない。

A 電力システム改革専門委員会が想定した通りに原発が再稼働できず、FIT(固定価格買い取り)制度により再生可能エネルギーの大量導入が進み、その上で電気料金を抑制しながら競争を促進せよというのが政府サイドの要請だ。制度改革の前提が損なわれているにもかかわらず、そこに力点を置いてしまっているばかりに、今も安定供給がおざなりになってしまっている。

B 再エネ導入のスピードを確実に見誤っていたことは間違いない。大手電力会社に市場への限界費用による玉出しを事実上強制するのであれば、新電力には相対契約を50%確保させるとか、もしくは少なくとも不当率相当分の電源を持つようにさせるとか、そういった規制が必要だったんじゃないかな。経産省は利益の先取りをさせてしまうような市場を設計して、一体何がしたかったのか。

C FITで再エネを入れ、かつ優先給電させながら、発電での競争の活性化というのは無理な話。昨年12月末の再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク小委でも、太陽光や風力といった変動再エネは限界費用が低いから先にバイオマスや地熱に抑制をかけるという議論を相変わらずしている。安定電源優先稼働のマインドがないままでは、需給不安は続くだろう。

―火力の新設投資の必要性を誰もが認識しているはずだが。

C 石炭新設はダメだと環境アセスで位置付けたのがおかしい。23年以降立ち上がるJERAの横須賀火力など数基が最後になってしまうだろう。CO2フリーを奨励したいのであれば、炭素税を導入し、燃料種の設定も含め事業者の裁量に任せておけばよかった。電源不足を予想する事業者は新設に励んで、いくつかの電源は建っていた。電力自由化、競争は供給力が潤沢にある時のみ機能する。安定電源を削るような発想でしか制度改革が進んでいないのだから、今のような状況に追い込まれるのは当然だよ。

B 政策の目的が定まってないよね。

C 変動再エネを最大限導入するという点では一貫している。手段と目的の間のバランスが全く取れておらず、ただ盲目的に再エネ、しかも風力と太陽光という自立できない電源ばかりを導入では持続可能ではない。

東ガス次期社長に笹山氏 注目される提携戦略の行方

東京ガスは昨年12月21日、副社長の笹山晋一氏(1986年入社)が4月1日付で社長に就任する人事を発表した。現社長の内田高史氏(79年)は、6月の株主総会を経て会長に就く。同社は現在、笹山氏が中心となり2023年度からの新たな中期経営計画を策定中。社長就任後は、直面するエネルギー危機やカーボンニュートラル社会への対応など「エネルギー大変革時代を迎える中で、変化に柔軟に対応できるポートフォリオ型経営」の実践を目指していく構えだ。

「グループが一丸となり、協力企業・アライアンスパートナーの皆さまとの連携を密にし、新たな時代を切り開いていく強い決意をもって尽力していく」(笹山氏)

会見した内田社長(右)と笹山副社長

振り返れば、東ガスは関西電力や九州電力、東北電力、ENEOSといった大手エネルギー企業と、事業分野に応じたアライアンスを積極的に展開してきたが、「総じて成功しているとは言い難い」(都市ガス関係者)。笹山氏が信条に掲げる「三鏡」(自分の状況を知る=銅の鏡、歴史に学ぶ=歴史の鏡、厳しい意見を受け入れる=人の鏡)の組織・リーダー論を背景に、東ガスグループの提携戦略をどう描いていくのか。新体制の経営手腕が試される。

【イニシャルニュース 】M社顧問のI氏に注目 原子力復活で存在感

M社顧問のI氏に注目 原子力復活で存在感

原子力復活、防衛費増額という岸田政権の〝安全保障強化政策〟によって、重電大手M社を巡る昨年の人事が再び注目されている。安倍政権時代に首相補佐官として力を振るった有力官僚OBのI氏が昨春に顧問に就任したことだ。「M社救済策」ともいわれる岸田政権の政策に関わり、キーマンとして再び影響力を強めてくるのだろうか。

I氏は昨年、政府系エネルギー企業の首脳に就任すると予想されていたが、経産省内の人事の序列などで流れてしまった。安倍政権時代には「政治的に難しい原子力問題で積極的に政権は動くべきではない」と首相に進言し、政策になったとされる。ただし経産省関係者によると、官邸から退いた後「電力会社と原子力産業がここまで苦しむとは、状況が行き過ぎた。改善の手伝いをしたい」と、周囲に漏らしていたという。

M社への入社は、I氏の意思に加えて、官邸の意向が働いているかもしれない。I氏は首相秘書官のS氏と同期入省で親しい。M社では21年から22年にかけ、火力発電事業、旅客機事業の縮小、大型客船の製造ミスなど失敗が相次いだ。しかし同社は原子力や防衛など国策を担う中核企業であり、政府・官邸はその支援と情報収集などを、I氏を通じて行う可能性がある。

昨年9月、M社は大手電力会社と共同で、革新軽水炉を開発すると発表した。この大型プロジェクトには、原子力関係者から大きな期待が寄せられている。岸田政権は原子力の復活に政策のかじを切った。I氏の人事は、原子力でも、状況を前向きに変える動きの一つだろう。今後注目する必要がありそうだ。

制度議論にも影響波及? 公取委の電力市場調査

公正取引委員会による電力会社間の競争環境に関する実態調査を巡り、新電力各社のスタンスが二極化している。 この実態調査は、競争環境確保の観点から、市場や制度が抱える課題について実態を浮き彫りにすることを狙ったもの。新電力関係者に送付された調査票には、電力調達環境から容量市場、デマンドレスポンス(DR)に至るまで43項目もの質問が羅列されていた。

業界通のX氏は、「新電力のA社とB社などが大手電力会社の不当廉売と内外無差別問題で垂れ込んだと聞く。大手電力が不当な行為によって競争を阻害しようというスタンスで非対称規制を強めたいのだろう」と見る。

高い卸電力価格で経営環境が悪化している新電力関係者Y氏は、「公取委がどこまで踏み込むかは不明だが、少しでも事業環境が良くなるのであれば」と期待を寄せる。

公取委の狙いはどこにある?

一方で、必ずしも全ての新電力が歓迎しているわけではないようだ。「新電力として求めているのは、潤沢で低廉な供給力。大手電力会社を痛めつけたところでそれが出てくるわけではない。悪くすれば共倒れだ」(Z氏)、「内外無差別というのであれば、固定費の塊である原子力の費用をどう配分するのか。安ければ内外無差別を歓迎し、高ければ拒否するのであれば道理が通らない」(Q氏)との声も聞こえてくる。

「公取委は、LNG火力で日本のほぼ半分を占めるJERAの市場支配力を問題視しているようだ。どこまで踏み込むのかは未知数だが、少なくとも資源エネルギー庁の審議会で『内外無差別ではない』と断言された相対卸入札にはメスを入れるつもりだろう」(前出のX氏)

エネ庁が主導する制度議論に大きな影響を与える可能性もあるだけに、その動きに高い関心が寄せられている。

中国警察が国内に拠点 学識者が消息不明に

昨年、中国の警察当局が日本に拠点を設置していることが明らかになった。言論・結社の自由が保障された国に住む者として信じ難いが、すでに国内には中国の「黒い手」が広がっているようだ。

T学園大学に中国籍のS氏という政治学者がいる。衛星放送の報道番組に解説者として登場し、日本でも顔が知られている。そのS氏、10年ほど前に中国に帰国した際、消息不明となった。約半年後に姿を現し日本に戻ったが、スパイ容疑で拘束されていたとされる。

今も報道番組に出演するが、話す内容について「スタジオで直前に当局と携帯電話で打ち合わせをしている」(関係者)。番組では、中国共産党の政策を援護する説を延々と述べている。 

中国当局はエネルギー分野の学者にも目を光らせている。T氏は中国から来日した研究者で、E経済研究所に籍を置いたこともある。その後、都内でコンサルタント事務所を開いていたが、中国に帰国してから消息不明に。以来、関係者と連絡が取れていないらしい。

日本には真面目に研究に励む中国人研究者が多く在住している。家族・親族を故郷に残しながら、帰国をためらう人たちも少なくないという。

太陽光開発問題を静観 奈良県知事の思惑は

「奈良県平群町のメガソーラー計画に対する県の対応は、ずさんの一言に尽きる。だからこそ、一度はNOを突きつけた荒井正吾・奈良県知事の静けさは気になる」

こう首をかしげるのは在阪テレビ局の報道記者だ。平群町では約48‌haの区域に5万枚以上の太陽光パネルを設置する工事で山林が伐採され、地元住民から反対運動が起きていた。21年6月に工事は停止したが、業者からの再申請を受けて昨年12月に県の審議会は計画を承認した。

だがこの再申請についても、河川協議書の未提出が判明するなど、「一般的にあり得ないレベルの不備」(弁護士)が続出。県の対応に批判が集まる中、最終判断を下す荒井知事はここにきてなぜか静観の構えだ。

荒井知事は昨年9月の会見で「(住民に対し)県が直接事情を説明する。積極介入をする」と説明。2月の定例会で、一定規模以上のメガソーラー建設について知事の許可制とする太陽光条例の制定を目指している。メガソーラー問題解決に向け奮闘していたように見えるのだが……。

奈良県知事の姿勢に関心が集まる

「奈良県で影響力を持つ自民党有力議員のT氏が、S省大臣時代に秘書官を務めた官僚を知事に推したいと公言した。4月の知事選は保守分裂選挙になる可能性が高い」(自民党関係者)

荒井知事の静観の裏には、メガソーラー反対派のT氏と距離を置き、「リベラル派の支持を取り込みたいとの思惑がありそう」(前出の報道記者)。9月の会見では「メガソーラーに積極的ではない」と発言した荒井知事だが、選挙の前ではむなしく響く。

新電力から人材流出 ロビー活動にも影響か

電力価格高騰下で経営危機にさらされるスタートアップ系新電力から人材流出が相次いでいる。

16年3月の電力小売り全面自由化後、新たなビジネスモデルの展開や政策提言などで存在感を見せていたA社幹部A氏とB社幹部B氏。有力関係筋によれば、それぞれ退職し、ほかのエネルギー会社に転職したり、新会社を立ち上げたりといった動きを見せている。事情通のX氏が言う。

「A氏も、B氏も、電力ビジネスに精通し、能力面でも秀でた人物という評判だった。それだけにA社、B社ともに相応の痛手があるのではないか。新電力関係者の間では、自民党の再エネ派有力議員に対するロビー活動への影響も懸念する声が聞こえている」

東北電力、東京ガスというエネルギー業界を代表する大手2社の合弁会社、シナジアパワーが昨年12月に自己破産に追い込まれたことが物語るように、新電力各社の多くが調達価格高騰による業績悪化で火の車だ。エネルギー資源価格、電力価格の高止まりは今年も続くとみられ、電力小売り業界はまさに持久戦の様相を呈している。

「沈む船から逃げ出すネズミのごとく、新電力から優秀な人材が流出していけば、業界全体の衰退を招く恐れがある。電力システム改革の軌道修正が待ったなしなのは言うまでもないが、その議論を行っている間にも事業撤退を余儀なくされる新電力が相次ぐだろう。今年が電力全面自由化の終わりの始まりになるのかもしれない」(前出X氏)

ジリ貧の新電力業界を支えるC社幹部C氏、D社幹部D氏の去就も注目される。

【マーケット情報/2月3日】原油急落、経済低迷の見通しが重荷

【アーガスメディア=週刊原油概況】

主要指標、軒並み急落。米国をはじめとする景気低迷、それにともなう石油需要後退への懸念が油価の下方圧力となった。

米国連邦準備理事会(FRB)、および欧州中央銀行、イングランド銀行が金利を引き上げた。FRBの利上げ幅は2022年3月以来の最低となったものの、その後公表された1月の米国における雇用指数は、市場の想定より上昇。失業率は下落し、1969年以来の最低を記録した。インフレの継続を示唆し、FRBが金利を一段と引き上げる可能性が台頭した。これにより、経済の減速、および石油需要の減少に対する懸念が広がった。

また、米国オクラホマ州・クッシングの週間原油在庫が増加し、2021年7月初旬以来の最高を記録。全体の在庫も輸入増で増加し、油価を一段と下押した。

一方、OPECプラスの合同閣僚監視委員会は、現行の協調減産の維持を提案。また、欧州連合の輸入規制を前に、ロシア産原油への駆け込み需要が急増するも、油価への影響は限定的となった。

【2月3日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=73.39ドル(前週比6.29ドル安)、ブレント先物(ICE)=79.94ドル(前週比6.72ドル安)、オマーン先物(DME)=79.61ドル(前週4.87ドル安)、ドバイ現物(Argus)=79.44ドル(前週比5.56ドル安)

【特別対談】深刻化する地政学的対立 危機で進む原子力開発

澤田哲生(エネルギーサイエンティスト)/小山 堅(日本エネルギー経済研究所 専務理事

ロシアのウクライナ侵攻で世界のエネルギー情勢は劇的に変貌した。

混迷が長期化する中、専門家は原子力・核燃料サイクルの重要性を強調する。

澤田 日本が今抱えるエネルギーを巡る問題を考えると、まずウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格の高騰があります。高騰が国民、経済活動を圧迫し始めている。

小山 世界で今起きていることは、半世紀に1度の大きな変化をもたらすものかもしれません。2023年は第一次オイルショックから50年です。エネルギー危機という点で、現状は当時と重要な類似点があります。まず、危機が起こる前からエネルギーの価格が高騰を始めていたこと。つまり需給ひっ迫は危機が深刻化する前から起きていた点です。それから、特定のエネルギー供給源への依存が問題となっていたこと。石油危機では中東、今回はロシアです。

 危機前の需給ひっ迫と特定地域への依存の組み合わせによって、価格高騰だけではなく、エネルギーが手に入らないかもしれないという、物理的供給不足への恐怖が欧州をはじめ世界を震撼させたことも共通です。その対応として、各国でエネルギー安全保障政策が強力に展開されたことも同じです。この政策には、ものすごくコストがかかり努力も要る。しかし恐怖感から「やるべきだ」となった。

澤田 物理的供給不足は先進国だけでなく、特にアジア、アフリカなどの途上国にとっては致命的な問題ですよ。

小山 今回、ロシアのガスに依存していた欧州は、供給をどんどんと絞られた。この冬は何とかなると思いますが、今年から来年にかけての冬は状況がより深刻で、十分な供給量が手に入らないかもしれない。

 ただ、欧州のエネルギー関係者と話すと、「私たちはプレミアムバイヤーであり、他者より高い値段を払って調達できる」と言う人がいる。LNGを高額で奪い取るように買ってでも、自分たちの供給確保を考えていることになる。

露骨な欧州のエゴイズム ダブルスタンダードが明らかに

澤田 それはものすごいエゴイズムだ。欧州諸国が日ごろ強く唱えるSDGs的な理念から大きく外れている。

小山 今、欧州の自己中心的な姿勢が浮き彫りになっているように見えます。彼らは他国が買うかもしれなかったLNGを高いお金を払って買っている。ドイツはLNGの輸入基地を造っています。その基地向けのLNGの追加調達は米国や中東など既存の供給元からです。その一方、LNG供給を増やす投資には後ろ向きです。

澤田 石油については昨年、バイデン米大統領がOPEC(石油輸出国機構)プラスに増産を要請し、増産されましたが、価格低下などで大きな効果はなかった。物理的供給不足に対抗するには、上流の開発に力を入れなければいけません。しかし、脱炭素の潮流と市場の自由化で、投資メカニズムが機能していない。

小山 ロシアから供給されていた天然ガスや石油を他から買おうとするなら、供給力拡大が無ければ限られたパイの取り合いになります。しかし、「化石燃料投資はいけない」というのが欧州の基本スタンスです。これは問題です。

澤田 おかしいですね。

小山 自分の国では補助金を付けて料金を安くする。それは「お金持ち」だからできる。他方、値段が高騰して、ガスが買えなくなった途上国は石炭をより多く焚いている。つまり、欧州による必死のガス・LNG調達は、巡りまわって途上国などの石炭消費を増やしてCO2排出拡大につながっているとも考えられます。

澤田 まさにダブルスタンダードだ。

小山 今年、日本はG7の議長国になります。G7は自国の利益だけでなく、世界の利益・地球益の議論をすべきです。

澤田 厳しい需給ひっ迫はどれくらい続くと見ていますか。

小山 相当長く続く可能性があります。ウクライナ侵攻前、国際的なエネルギー市場は市場機能を働かせて、最も効率的に資源配分ができると考えられていた。しかし侵攻後、起きたのは市場の分断です。西側に対して中国・ロシア、それ以外のブロックという構図ができ、市場が地政学的に分断されてしまった。以前のような自由な取引ができる市場に戻るのは、かなり困難な状況が続きそうです。

澤田 言われたような地政学的な対立、分断の中で、日本もエネルギーの安全保障を考えざるを得ないことになる。「国産エネルギー」として再生可能エネルギーが主力電源と位置付けられ、カーボンニュートラルの政策もあり普及が進みました。しかし急速に進めたため、国民負担の急増など、いろいろなひずみが現れてしまっている。

小山 エネルギー安全保障、地球環境問題は市場の外部性に関わる問題です。市場メカニズムだけに任せていては解決できない。政府の関与・対応が以前に増して問われています。再エネは導入量が増えますが、太陽光発電や蓄電池に必要なものとして、特定の国に偏在するレアアース、クリティカルミネラルの問題がクローズアップされると見ています。

澤田 再エネは発電コストでも不透明な点があります。

小山 発電コストは低下していますが、自然変動型の電源が増えれば、その供給間欠性に対応するための火力発電、バッテリー、送電線網の増強や水素による対応などが必要になり、追加コストも増えていく。総合的な経済分析をして、本当のコストを国民に示していかなければいけません。

澤田 お話を聞くと、やはり日本としては原子力のオプションを捨てられない。原発で使用するウラン燃料はほとんどがオーストラリア、カナダ産で、供給面でリスクが少ない。さらに、いったん燃料を入れると3年間は発電を続けられるというメリットがある。

 政府もようやく、原発再稼働、運転延長、それに次世代革新炉を開発・建設する方針を打ち出しました。

小山 今回の政府の方針は非常に意味があると思います。危機によって、西側の国々で原子力開発が大きく動き出すようになったことを実感しています。

 欧州で専門家と議論をして、「福島事故で多くの原発が止まっているが、もし安全性確保の上、再稼働したらCO2排出削減、低廉・安定的な電力供給ができる。日本はそういう非常に大きなオプションを資産として持っている」と言われました。欧州のエネルギー業界では、そういう見方をする人たちがいます。

澤田 確かにヨーロッパから見ると、「なんで使えるものを使わずに、天然ガスに依存しているんだ」と思うかもしれない。原発再稼働で天然ガスの使用量が減れば、それを途上国などに回して世界のエネルギー安定供給に貢献できる。そう考えると、日本もまたエゴイストですよ。

 ただ、再稼働は進むかもしれませんが、新増設は疑問です。政府は推進を打ち出しましたが、膨大な費用がかかる事業に電力会社などが投資するかは分からない。

新設に総括原価主義を採用へ 自由化「模範国」を参考に

小山 英国は原発の新設を促すために規制資産ベース(RAB)モデルという、総括原価主義に近い制度を導入する考えです。英国は電力市場自由化の模範とよく言われますが、実際には、「原子力発電はこれだけ要る、再エネはこれだけ要る」と投資目標を政府が決めている。しかも、それを実現するために総括原価主義的な制度も入れていく。

 もちろん市場メカニズムには重要な効用があり、その効用は活用すべきです。しかし、市場原理の「陰の部分」は、政府が政策や制度できちんと対応しなければいけない。そうすることで初めて投資が行われ、それが実際の供給につながっていく。自由化のお手本の国が実際に行っていることを、よく参照していく必要があると思います。

澤田 英国は大陸側と送電網などがつながっていますから、他国からのエネルギー供給に依存することができる。それでも、原発新設に総括原価主義まで導入しようとしている。 近隣国からの供給が期待できない日本は、より原発の新増設、さらにウラン燃料をリサイクルする核燃料サイクルに本腰を入れなければいけない。当然じゃないでしょうか。

小山 日本にとって原子力は本当に重要ですから、政府も産業界も共に真剣に取り組まなければいけません。さらに再稼働などだけでなく、澤田さんが言われたように核燃料サイクルもトータルとして考えていく。まさに今がそれを行うべき時だと思います。  今年、恐らく次のエネルギー基本計画の議論が始まります。前回の改定ではいわばカーボンニュートラル一色で議論が進む側面がありました。今回はウクライナ危機を踏まえて、エネルギー安全保障がいかに重要であるか、また市場原理の効用と限界をどう考えるのかをしっかり検討して、改定に向けた議論をしてもらいたいと思っています。

さわだ てつお
1980年京都大学理学部物理学科卒。ドイツ・カールスルーエ研究所客員研究員、東京工業大学助教などを経て2022年から現職。専門は原子核工学。

こやま けん
1986年早稲田大学大学院経済学修士修了、日本エネルギー経済研究所入所。2020年から専務理事・首席研究員。専門は国際エネルギー情勢など。

釧路湿原周辺で太陽光乱立 「行政に打つ手なし」の現実

北海道の中でも平野が広がり年間の日照時間も長いため、太陽光発電の導入に可能性を秘める釧路市。1000kW以上のメガソーラーの導入件数は昨年6月時点で22件と、2016年6月の7件から急増中だ。が、自然豊かな生態系を維持する国立公園周辺での建設が相次いでおり、住民から不安の声が聞こえているのだ。

国立公園周縁部の広大な原野は、釧路市が「無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため」に区分けした市街化調整区域と呼ばれる地域だ。氷河期の遺存種として知られるキタサンショウウオの生息地にも重なる。市の都市計画課によれば「市街化調整区域では原則、建築物の建築は認めていない」と過度な開発を抑制してきたが、こと太陽光発電については「建築物ではなく電気工作物と定義されている。建築物ではないので許可申請も必要ない」(太陽光事業者)というのだ。

となれば、大規模な自然破壊を防ぐ環境影響評価(環境アセス)の出番だが、この区域には北海道環境アセス条例の対象にならない出力2万kW未満の事業が多い。先に挙げた22件のうち、実に20件が2万kW未満なのだ。

地元の環境団体などはメガソーラー建設反対を叫んでいるが、「行政側も打つ手なし」(釧路市関係者)なのが現状。メガソーラー開発の適地が年々減少する中で、規制の網をかいくぐる事業者は後を絶たない。「日本古来の美しい里山の風景が、無機質な太陽光パネルによってどんどん破壊されている。山梨県などのように、地元自治体が太陽光条例を制定するしか乱開発を防ぐ方法はないだろう」(環境NPO関係者)

どうする釧路市!

急務のエネ政策立て直し GX実行会議の舞台裏〈前編〉

【識者の視点】竹内 純子/国際環境経済研究所理事・主席研究員

昨年、岸田文雄首相が主催したGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議が注目を集めた。

エネルギー政策を左右する幅広い議題が論じられた舞台裏を、委員を務めた竹内純子氏が振り返る。

GX(グリーントランスフォーメーション)とは、化石燃料からクリーンエネルギーへの転換を核として、経済・社会、産業構造全体の変革を目指すものだ。その推進策を議論する場として2022年7月末に設立されたのが「GX実行会議」だ。半年で5回と、首相と関係閣僚が毎回出席する会議にしては相当インテンシブに開催されたといえるだろう。同会議の議論は多岐にわたるが、大きく言えば現下のエネルギー危機への対応が議論された前半と、将来的な投資の確保とその財源としてのカーボンプライシングが議論された後半の二部構成だったといえるだろう。2回に分けて同会議での議論を紹介するに当たって、今回は前半での議論に注目したい。

第一回会合では、各構成員が自由に問題意識を述べる機会が与えられた。GXの必要性や、これを成長戦略とすることの重要性について、意見の相違はほぼ無かったと認識している。一方で多くの構成員から示されたのは、現下のエネルギー供給に関する強い危機感であった。端的に言えば、エネルギー供給構造があまりに脆弱になっており、将来を考えられる状況に無い、電力需給ひっ迫や価格高騰にあえぐ現状の立て直しを急ぐべきという発言が相次いだのだ。

これを受けて岸田文雄首相からは、GXと整合的な形で立て直しを図るという方針に加えて、「政治が決断すべきことについて全て指摘してほしい」という要望が示された。第二回で筆者も含めて多くの構成員が指摘したのは、電力自由化の修正と原子力事業立て直しの必要性であり、そこに政治の決断を求める意見であった。

昨年末の会議で議論を取りまとめる岸田首相

電力システム改革を検証  移行期に重視すべき施策共有

電力自由化は、競争原理の導入によって効率化を促し、エネルギーコストの低減を期待する施策である。経済成長の停滞で設備が余剰傾向になったタイミングなどに自由化を行えば、電力コスト抑制の効果が期待されるが、効率化は余裕を削ることにつながる。域内のエネルギー融通や備蓄において有利な欧州諸国と比べて、あらゆる点でバッファーが薄いわが国では相当慎重に行われる必要があった。しかし、これまでの全面自由化の制度設計では、適切な余裕を維持することへの配慮は十分ではなかったと言わざるを得ない。

そもそも、CO2削減やエネルギー安全保障の価値は、市場ではまだ十分評価されない。脱炭素やエネルギー安全保障を実現するには政策の関与が求められる。カーボンニュートラルの実現は、18世紀の産業革命を上回る社会変革であり、長期の移行期間を必要とする。自由化を修正し移行期間に必要な投資を確保せねば、改革半ばでとん挫するだろう。

東日本大震災以降、再生可能エネルギーや省エネの拡大は進んだが、原子力および火力発電所の廃止が進展し、わが国の供給力は大幅に低下した。発電設備(kW)の減少だけでなく、電力自由化の進展と再エネ導入拡大により、電力各社が燃料調達における長期契約を減少させており、第三次オイルショックというべき資源価格高騰が長期化すれば、kW時の確保も危機に直面する。移行期間に求められる発電設備への投資インセンティブや、燃料長期契約に向けた予見性の確保、それらの投資の資金調達コストを引き下げることの重要性が共有されたと認識している。

会議では、再エネの導入スピードを上げるべきという意見も聞かれたが、わが国のFIT(固定価格買い取り制度)導入後の太陽光発電の増加率は世界に例を見ないスピードであった。FIT賦課金や地域住民からの反発が急増する現状を踏まえ、どの程度の増加スピードが妥当かとのクライテリア(判断基準)が示されることはなく、情念的な再エネ推進論の域を出なかったのは残念なことだ。

自由化と相性悪い原子力  政治はどこまで切り込めるか

原子力政策の立て直しについては、電力安定供給やコスト低減、技術・人材の維持といった多様な観点からその必要性が指摘された。余談だが、会議では時間制約から各委員の発言時間が厳しく制限された。しかし構成員の一人が、事務方が差し入れる時間超過を知らせるメモを無視して、技術や人材確保の観点から各国の原子力技術開発競争に日本が遅れを取ってはならない、という問題意識を語り切ったことは印象的であった。

筆者が指摘したのは、脱炭素を掲げた以上、原子力の必要性については議論の余地はなく、事業の健全な発展に向けてさまざまな制度改正を行わねばならない点だ。どんな技術も同様であろうが、原子力は特に「今必要だから稼働させる」といった短期的な利用が許される技術ではない。安全規制の合理化・実効化、発電事業者が無限責任を負う原子力損害賠償制度の改正、原子力防災における国の関与の強化など、一つひとつ改善を図らねば原子力の活用は絵に描いた餅になる。

新規建設を期待するのであれば、加えて英国が導入したRAB(規制資産ベース)モデルや米国の債務保証など、資金調達コスト抑制に資する施策を導入しない限り、プロジェクトは成立しない。電力自由化という投資回収を不確実にする施策と、最も相性が悪いのが原子力発電事業であり、わが国はこの問題に何ら手をつけずに自由化を進めてしまったのである。

しかし、原子力はしんどい。政治的にはできるだけ触れずに済ませたいテーマであろう。長期安定を誇った安倍政権でも、50年カーボンニュートラルを看板政策に掲げた菅政権でも原子力政策が停滞したのは、いざというタイミングで不祥事を起こした事業者側にも大きな責任があるが、政策を前に進めることの政治的なハードルの高さを物語っているともいえる。

こうした中で、岸田政権が原子力の立て直しを進めると明言したことは大きな一歩であったと評価する。しかし、その一歩の先には茨の道が続く。実行会議で示した方針に基づき、今年の通常国会でどのような議論が行われるかに注目したい。

たけうち・すみこ 東京大学大学院工学系研究科にて博士(工学)。慶応大学法学部卒業後、東京電力入社。独立後、複数のシンクタンク研究員や東北大学特任教授を務める。2022年12月末『電力崩壊―戦略なき国家のエネルギー敗戦』上梓。