
1988年北海道大学大学院工学研究科修了後、環境庁(現・環境省)入庁。官房審議官、官房政策立案総括審議官などを経て20年7月、総合環境政策統括官。22年7月より現職。
環境アセスメント法制定やCOP交渉官、福島復興再生事業などタフな問題をまとめあげた。
カーボンニュートラル実現へ経済産業省と連携を深め、環境対策と地方創生の両立に奔走する。
北海道大学大学院で衛生工学(環境工学)を学んだ。公務員として仕事に携わり、社会の役に立ちたいという気持ちは強く、学科の専攻を生かせる環境庁(現環境省)を志望。しかし当時は公害問題が下火になり、環境庁不要論も挙がる「冬の時代」。環境庁主導の政策も、他の省庁から反対を受け成立できないなど、霞が関では存在を揶揄されていた。
潮目が変わったのが、1988年の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)設立だった。この時期から地球温暖化に注目が集まり、後に各国の政策に大きな影響を与える組織が自身の入庁年に生まれた。「今は小さな役所だが、やるべき仕事はたくさんある」と環境庁でのスタートを振り返る。
入庁後は環境庁プロパーとして多くの業務に従事した。「環境影響評価法(環境アセスメント法)」制定に向けた法案の作成や、第12回、第13回の気候変動枠組み条約締約国会議(COP)で交渉官を担った。福島復興再生事業にも携わり、困難な問題に対しても素早く、かつ粘り強く対応。仕事に向き合う姿勢の根幹となったのは、90年からの大阪府庁出向だという。
「公害行政の最前線で何百という工場に立ち入り、配管を見ればどの施設か分かるほど現場で仕事をさせてもらった」。霞が関の役人として重要な「人間関係構築」「現場感覚」の二つが培われた。「相手の気持ちが分かること、現場感覚を忘れないことが私にとっての原点だった。自治体の現場行政を通じて、後々のアセス法制定やCOPでの交渉、福島復興再生担当につながった」と胸を張る。
政策で経産省と連携深める エネルギー×地域でインフラ実現へ
今年7月の幹部人事で事務次官に就いた。目下の重点政策として、カーボンプライシング(CP)導入がある。環境省は長年、炭素税や排出量取引など手法ごとの効果や課題について議論を重ねてきた。今年5月には岸田文雄首相が「GX経済移行債(仮称)で政府資金を調達することを検討する」と表明。150兆円超の官民投資を先導するための政府資金を「将来の財源の裏付け」を持ったGX移行債で先行して調達する政策と一体的に検討するとしている。
CP導入について「環境省は炭素税導入自体が目的だ」と言われるが、そうではないと話す。山口壯前環境相が描くグランドデザインにもあるように、CPには「CO2排出にはコストがかかる」とのメッセージを込めたプライシング効果と「制度導入で得た収入を政策や技術に活用する」財源効果の二つがある。「その使途をどうするか。ここを詰めていかなければならない」。日本が導入しているCPは、CO21t当たり289円の地球温暖化対策税のみであり「来年日本開催のG7で、日本のCPはどうなのかという議題は間違いなく出る。その時に政策を発信できる状態にしないといけない」と指摘する。
環境省の事務方トップとして日本のエネルギー環境対策を進める上で、経産省との連携が不可欠だと語る。「カーボンニュートラル(CN)を筆頭に、環境政策がエネルギー政策にドライビングフォースをかけている。再エネを上手に活用することで、地方創生だけでなく安定供給にもつながる。国際社会との戦いに生き残っていくためにも経産省との連携が必要だ」。かつては「エネルギーと環境は相反する事柄」という認識が根強かったが、今はESG(環境・社会・統治)投資やSDGs(持続可能な開発目標)を重視したビジネスがトレンドだ。「これまで環境ビジネスのマーケットは育ってこなかったが、現在は世界の競争力の分岐点になる可能性がある。そうなった時、両省が連携していないと日本は置いていかれる」と警鐘を鳴らす。
特に環境省で力を入れているのが、CNによる地域の活性化で、今年度から脱炭素先行地域の選定を進めている。「目指すは地方創生byCNだ。地方創生とCNは親和性が高い。地域がエネルギービジネスを始めることで、地域にオーナーシップが生まれる」。これまでは国や政府の政策を地方で実施しても、地方のニーズに合っていないことが多かった。「本質的な意義は地方が主役であること。そのための脱炭素先行地域だ」と、政策の意図を明かす。
地方にはエネルギー行政担当がいなかったが、現在は再エネなど地域の資源を生かす自治体の部署や取り組みが増えた。「ガス会社など高い地域密着性を持つエネルギー企業が、自治体と共同プロジェクトで事業経営を行ってほしい」。目指すは「エネルギー×地域」による社会インフラの実現。そして地域資源を活用した自立・分散型社会である「地域循環共生圏」の創造だ。大阪府庁時代に得た環境行政の経験を忘れず、エネルギーと地方活性化を実装段階へ推し進める。






