【コラム/8月12日】再生可能エネルギーの普及に欠かせないビジネスとしてのO&M

渡邊開也/リニューアブル・ジャパン株式会社 社長室長

 先日、リアスプ(再生可能エネルギー長期安定電源推進協会)のとある打ち合わせの中で、「今後、再生可能エネルギーの発電所、特に太陽光発電所が増えていく中で、発電所の運営・維持管理をするO&M(オペレーション&メンテナンス)の重要性が高まっていくのでは」という会話があった。脱炭素社会を目指していく中で再生可能エネルギーの重要性は色んな所で話題になるが、再エネ発電所の運営・維持管理というものはどちらかというと黒子的な役割で余り話題になることはないのではないだろうか?今回はその黒子というか縁の下の力持ち的な役割のO&Mについて触れてみたいと思う。

これまではいわゆる電力会社が、地域毎(北海道なら北海道電力、東北は東北電力…といったように)に発電、送配電、小売とワンストップで電力の安定供給を行い、戦後の日本経済の発展をエネルギーの面で支えてきた。電力会社は発電所を資産として自社保有し(自社BSの固定資産)、自社(グループ会社として)で運営・維持管理をしていた。従い、O&Mというのは、ビジネスとしてというよりは電力会社内の一つの機能として行われてきた。

 しかしながら、電力の自由化に伴わせて発電所が火力発電所といった大規模な電源(バルク電源)から太陽光発電所をはじめとする全国各地に点在する分散型電源としての発電所が増えてきたこと、それらの発電所の保有者が電力会社だけでなく、機関投資家、事業会社、個人等といった様々な方が保有するようになったことで、発電所を運営・維持管理するということが、新たなビジネスチャンスとして広がってきている。固定買い取り制度(FIT制度)が始まり、再エネ発電所による売電収入というビジネスチャンスに様々な業態のよる参入が促されたわけだが、O&Mというビジネスはその派生的なものとして拡大していくだろう。FIT制度初期のころは、FIT単価が高いこともあり、O&MはEPCひも付き、投資家もそのサービスと対価の関係等をそんなに気にしていなかったが、FIT単価が徐々に下がっていくに従って、期待収益が低下する中でO&Mに対しても費用対効果といった、サービスとしてのO&Mという意識が年々高まりつつあると考えている。この動きは今後益々拡大していくであろう。

 こうした中で、手前味噌な話にはなってしまうのだが、私が所属しているリニューアブル・ジャパンのO&M事業について、これまでの取り組みや今後についてご紹介したいと思う。

まず実績として、既に1GW超の太陽光発電所のO&Mを行っている。元々は自社で開発し、自社保有、公募私募ファンド、別の事業者等に発電所を保有していただき、そのO&M受けることからスタートしたが、そこで蓄積したノウハウを活かして、数年前から他社が開発した発電所のO&M部分を受けるということを始めた。その結果として1GW超の発電所を管理するに至ったのである。それを可能としたのは、1つには、全国展開ということであろう。北は北海道から南は九州鹿児島県まで全国約30か所に拠点を構え、可能な限り地元の方を採用している。また、新しいO&M受託する発電所が既存の拠点の近くにあれば、その拠点から管理することになるが、ない場合は、新たに地域拠点を開設して対応している。今後、もちろん地域特化型のO&M事業者もあるとは思うが、保有者が色んな地域に保有しているのであれば、全国展開していることは魅力的に思えるのではないだろうか?

また、特別高圧、高圧といったように様々な規模の発電所にも対応していること、サービスメニューとして遠隔監視業務やサイト管理業務、保安業務、報告書作成といった一般的なものだけでなく、計画策定や地元対応といった幅広いサービスメニューを用意し、顧客のニーズに合わせたサービスを提供できることであろう。体制としても電気主任技術者が多数在籍しているだけでなく、EPCや土木の人材もバックアップ体制として有していることも大きいであろう。そして価格面である。FIT単価が高い頃はO&Mコストはそれほど、議論にならず、EPCとセット、セカンダリーで譲渡する時はO&Mがセットということがよくあることであるが、売電単価が下がるにつれて、O&Mサービスに対する費用対効果の要求はますます高まっているであろう。そうした中、ノウハウを蓄積することによる業務効率の改善、徹底的に内製化を進めることでのコスト削減、高専生を始めとした若手人材を新卒から採用して、現場で実務経験を積み上げながら主任技術者として育成していく「RJアカデミー」育成プログラム、多数の発電所を個別でなく統合的に発電収入等の予実対比といったものを月次レベルでの報告ではなく、リアルタイムでのモニタリングできるウェブサービスシステム「ソーラーバリュー」といったものを将来的に提供していこうと考えている。

今後、太陽光発電所を中心とした再エネ導入量の拡大を通じて、カーボンニュートラルを目指していくうえで、事業規律、地域との共生といったことが叫ばれている中、O&M事業者がそれらのことを意識しながら、お互いに切磋琢磨し、ビジネスとして発電所保有者の期待に応えられるサービスの向上に努めることは、余り語られてはいないことではあるが、実はとても重要なことである。

【プロフィール】1996年一橋大学経済学部卒、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2017年リニューアブル・ジャパン入社。2019年一般社団法人 再生可能エネルギー長期安定電源推進協会設立、同事務局長を務めた。

農村モデルの脱炭素化 強靱化と耕作放棄地解消の両立へ

【地域エネルギー最前線】 滋賀県米原市

世界情勢が激変する中、日本のエネルギー、食料自給率の低さという弱点が改めて突き付けられた。

「脱炭素先行地域」に選ばれた米原市は、農村モデルの脱炭素化という時宜にかなった事業に挑む。

 かつて日本のTPP(環太平洋連携協定)参加を巡り、国内農業のさらなる衰退を危惧する声に対し、「関税を下げ安い農産品を輸入してくれば問題はない」といった声が一部政治家からも上がった。しかし今はそうした地合いではなくなった。ロシアのウクライナへの軍事侵攻が浮き彫りにした、日本のエネルギーと農業の自給率の低さ、そして安定調達リスクという課題に真剣に向き合うことが求められている。

環境省が4月に発表した「脱炭素先行地域」第一弾では、こうした課題解決の糸口となり得るモデルが選ばれた。農山村の脱炭素と地域活性化を目指す滋賀県米原市の「ECO VILLAGE構想」だ。

先行地域は、2030年度までに民生部門の電力消費のCO2排出実質ゼロに挑む。事業実施期間は5年程度。再生可能エネルギー設備や基盤インフラなどの整備に対し、原則交付率3分の2の助成金で手厚く支援する。

同省はその選定に当たり、脱炭素化だけでなく、地域の課題解決にどう資するかというストーリーを重視した。米原の場合、農山村の人口減・少子高齢化、それに伴う耕作放棄地の拡大、防災対策、系統電力購入に伴う資金の域外流出といった地域課題に対し、農地で太陽光発電しつつパネル下で営農を継続するソーラーシェアリングを柱に脱炭素化を目指す、といった絵姿を描いた。これが他地域のモデルになり得るとして、先行地域に選定された。県とヤンマーホールディングス(HD)と共同で取り組む。

「ECO VILLAGE構想」での取り組みイメージ図

営農型発電を柱に課題解決 再エネで4地点を地産地消

市役所のそばにヤンマー中央研究所が立地することもあり、先行地域に応募する前の21年初頭から両者でカーボンニュートラル(CN)に向けた検討に着手。先行地域の詳細が公表された後は、要件に沿って応募に向け計画を煮詰めた。「市では『気候非常事態宣言』を目指しているが、そのための財源確保が大きな課題だったことから、先行地域を目指した。さらに市では耕作放棄地でのソーラーシェアリングの拡大が課題であり、5年という期間も踏まえて実現可能な計画をヤンマーと組み立てた」(同市自治環境課)。

耕作放棄地での営農型発電については、本来の目的である農業生産を主とした使途ではなく、農業的な優先度は低い。しかし、CNに向け地域外から再エネ電気を調達するより、地域内で農地を再エネ発電に活用することを選択した。

民生部門の脱炭素化については、家庭の需要は含めず、市庁舎1棟、県工業技術センター3棟、ヤンマー中央研究所7棟、民間施設2棟の4地点を対象とする。各地点の駐車場や屋根に、計3000kW程度の太陽光発電を新設。敷地内に自営線を設置して自家消費する。

そして柏原地区の2〜4ha程度の耕作放棄地ではソーラーシェアリングを行う。農地法に基づく一時転用で1600kW程度の太陽光パネルを設置、周辺にはそれに相当する大型蓄電池やパワーコンディショナーを整備する。

ガス空調やガスコージェネレーションなどによるエネルギーサービスを手掛けてきたヤンマーエネルギーシステムが、今回は脱炭素型でのエネルギー管理を担う。同社と各需要家との間でPPA(電力販売契約)を締結し、自家消費に加え、耕作放棄地から系統を通じて4地点に電力を供給する。4地点の電力需要は年間920万kW時程度。積雪地の太陽光の標準稼働率で見て、これらの設備で需要の100%超を賄える計算だ。地域のレジリエンス(強靭性)確保と耕作放棄地の解消という一挙両得を狙う。

最先端ハウスで雇用創出 横展開に向け課題洗い出し

農林水産省がソーラーシェアリングを推進して久しく、導入事例は徐々に増えているものの、全国での19年度までの導入面積は742ha程度。全国の耕地面積(同年度439万7000ha)からすると、まだまだ一般的な取り組みとは言えない。市内でも3件のみで、その背景としては「農地所有者からすれば農地に太陽光を設置する明確な意義が見いだせない。一方、太陽光発電事業者にとっても、農地を一時転用してまで農業を積極的に行う理由が乏しい」(同)。そもそもの担い手が見つかりにくい事情がある。

その点、今回はヤンマーHDのグループ会社がソーラーシェアリングでの農業生産を担う。農業もエネルギー事業も包含するヤンマーHDとの連携で、課題の第一関門をクリアすることができた。

今回、AIやIoTで環境を自動制御する環境配慮型栽培ハウスを導入。農業の低炭素化を進めつつ、地域の女性や若者の雇用を創出し、さらに障がい者らに農業への従事を促す「農福連携」も図っていく。

市は「先行地域に選ばれ、脱炭素化と最先端農業に挑戦する機会を得た。横展開に向けてソーラーシェアリングなどの課題を洗い出していく。農地が農産物だけでなくエネルギーも生産する場を目指し、新しい農村モデルを確立したい」(同)と強調する。ただ、ヤンマーとの連携はスケールメリットを生かして雇用創出を図る大企業モデルだ。「大企業モデルの課題洗い出しも大事だが、市民・小規模農家レベルの課題は違うところにあるだろう。そうしたモデルに今回の成果を落とし込むことも検討していきたい」(同)と続ける。

歯止めがかからない農業離れは長年の深刻な課題で、脱炭素化も一朝一夕には進まない。だが、両者とも日本にとって重要な課題であるだけに、今回の実証が有意義な成果を示すことに期待したい。

うまく「軟着陸」できるか ガソリン補助金の出口戦略

参議院選挙は与党の圧勝に終わった。これで2兆円に近い予算の燃料油価格激変緩和補助金も、予定通り9月末終了の公算が強くなった。問題は終了方法、いわゆる出口戦略である。補助金がなければ原油価格から見て終了時には1ℓ当たり30~40円の値上げになるだけに、どう軟着陸するか政府、石油業界ともに頭を痛めている。

現在、毎週の補助金は想定価格から基準価格(現行168円)を控除した額だが、政府筋からは、基準価格を段階的に引き上げ、補助金を順次圧縮、終了させるとの案が漏れ聞こえる。これに対しスタンド業界は、段階的引き上げは歓迎だが価格転嫁の観点から、1回の上げ幅は消費者に見える5円程度にしてほしいという。

原油価格上昇に伴う在庫評価益による巨額黒字を批判された元売りからは、補助金はトンネルをしているだけで、「お荷物」との声も出ている。幸いにも最近、原油価格は先進国の利上げによる景気後退懸念で軟化気味、1バレル当たり100ドル割れの日もある。補助金軟着陸のためにも、もう一段の値下がりを期待したい。

物価高対策の「本筋」 賃上げで人に投資へ

【脱炭素時代の経済探訪 Vol.5】関口博之 /経済ジャーナリスト

 参議院議員選挙の最中に信じられない暴挙だった。安倍晋三元首相が遊説中に銃撃され死去した。犯行の動機は今後の取り調べを待つしかないが、テロの蛮行は決して許されるものではない。われわれは言論による民主主義をより強固なものにするしかない。

その意味で今回は、選挙で与野党の争点になった「物価高対策」について考えたい。消費者物価指数は4月、5月と生鮮食品を除く総合で前年比2.1%上昇し、消費税増税の影響を除けば13年半ぶりの高い伸びとなった。ただ、米国や欧州が8%台のCPI上昇率なのに比べればまだ低い。岸田首相が「ロシアの侵略による有事の価格高騰」というのも間違いではない。物価上昇の中身、寄与度を見ると「エネルギー」が約6割、生鮮を含めた「食品」が約4割で、財・サービスに幅広く値上がりが及んでいるわけでもない。

物価・賃金・生活総合対策本部に出席する岸田首相
提供:首相官邸ウェブサイト

それでもにわかに高まった物価高への懸念に、選挙では各党が対策を掲げたが、多くはかなりピント外れだったと言わざるをえない。政府・与党は昨年から実施・拡充してきたガソリンへの補助金などに加え、「2000円相当の節電ポイント」を打ち出した。電力会社の節電プログラムに協力した家庭に上乗せで国がポイントを付与するという。しかしこれは電気代の負担軽減が目的なのか、それとも節電要請が狙いなのかあいまいだ。一石二鳥といえば聞こえがいいが、中途半端でもある。ここはデマンドレスポンス(DR)を定着させるための政策と位置付けるべきだろう。

一方、野党の対策の柱は「消費税の引き下げ・廃止」だった。しかしこちらはいきなり「大ナタ」を振り回し始めたという印象で、目的と手段のバランスがとれていない。社会保障の財源である消費税に正面から切り込むだけの緊迫性が今、物価や消費の現状にあるのだろうか。もちろん生活に欠かせない電気・ガス・食品などの値上がりは低所得層ほど苦しめることになる。対応策は不可欠だが、それなら生活困窮世帯などに的を絞った臨時給付金の方が有効だと思われる。

より本質的にとらえるなら、物価が上がってもそれを上回る賃上げがあればよい、ということにもなる。人々の不満や先行き不安の根底には「上がらぬ賃金」がある。しかし政権側からの賃上げ要請だけで大幅なベースアップなどは実現できない。企業レベルでも産業レベルでも、生産性の向上や付加価値の増大がカギになる。

岸田文雄首相が「新しい資本主義」で掲げる「人への投資」もここに狙いがあるはずだ。人件費はコストではなく投資と考え、働く人の能力開発・スキルアップ、リカレント教育などで生産性をあげる。遠回りなようで、こうした政策の継続こそが、物価上昇に負けない経済を作る“本筋”だ。実はこの人的資本重視の経営に既に動き始めている企業も少なくない。賃上げや教育研修費の増加が中期的な自社の株価上昇につながるという実証研究もある。政治の側の“看板”はむしろ遅れていると考えた方が良い。

【脱炭素時代の経済探訪 Vol.1】ロシア軍のウクライナ侵攻 呼び覚まされた「エネルギー安保」

【脱炭素時代の経済探訪 Vol.2】首都圏・東北で電力ひっ迫 改めて注目される連系線増強

【脱炭素時代の経済探訪 Vol.3】日本半導体の「復権」なるか 天野・名大教授の挑戦

・【脱炭素時代の経済探訪 Vol.4】海外からの大量調達に対応 海上輸送にも「水素の時代」

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せきぐち・ひろゆき
経済ジャーナリスト・元NHK解説副委員長。1979年一橋大学法学部卒、NHK入局。報道局経済部記者を経て、解説主幹などを歴任。

優しさ持ち人間力あった安倍元首相 エネルギー政策の足跡を振り返る

【永田町便り】福島伸享/衆議院議員

 7月8日、安倍晋三元首相は参院選挙の応援演説の最中に、奈良県西大寺駅前で凶弾に倒れた。自らの政治理念を強烈に押し出したリーダーが、政治上の理由ではなく、一個人の宗教上のトラブルの逆恨みで倒されたことは、何とも言えない釈然としない思いが募るばかりだ。

私は、小泉純一郎政権の内閣官房で働いている時に当時の安倍内閣官房副長官と接点を持ち、民主党政権時には勉強会をご一緒する機会などもあった。第二次安倍政権になってからは、2017年2月17日の予算委員会で私が初めて森友学園問題の追及を行い、当時の安倍首相から「私や妻が関係していたら、総理も国会議員も辞める」という答弁を引き出したことが知られている。

このようないきさつはあったが、私が落選した時には他党の候補者であるにもかかわらず慰めの電話を下さるなど、真の優しさを持った人間力のある方だった。安倍元首相のご冥福を心からお祈りする。

問われる政策の実行力 安倍氏への供養に

さて、その安倍政権時代のエネルギー政策はどうだったか。発送電分離・導管分離という歴史的な電力・ガスシステム改革は、民主党政権時に検討が始まり、第二次安倍政権発足直後に決定されたものであるが、そこに安倍元首相の政治的な意思を感じるものはほとんどない。むしろ、政権再交代時の政治不在のドサクサ紛れに経済産業省主導で行われたものと言える。

何よりも、7年8ヶ月もの長期の安定した権力基盤を誇り、エネ政策の専門家である今井尚哉補佐官を擁しながら、中長期的な視点に立って日本のエネルギー安全保障のために、原子力をどのように位置づけ、国民の信頼を大きく失った原子力政策をどのように再構築し、原子力を再起動していくのかという政治決断を避け続けてきた。

プーチン大統領と27回もの会合を重ねた対ロシア外交においても、領土問題解決への期待は高まったものの、エネルギー安全保障上ロシアとどのような関係を持とうとしていたのか、その理念は明らかではなかった。こう振り返ってみると、長期安定していた第二次安倍政権の時にエネルギー政策での何らかの決断をしていてくれれば、差し迫っている日本のエネルギー安定供給の確保や夏冬の電力・ガス需給のひっ迫などへの対応の道が少しでも開けていたかもしれないのに、とも悔やまれる。

岸田政権は、この度の参院選で大勝し、衆議院の解散がなければ3年間は国政選挙がない強い基盤を獲得した。岸田文雄首相は、安倍政権でなし得なかった明確な理念と戦略を持ったエネルギー政策を決断し、実行することこそが、選挙中に倒れた安倍元首相への供養となろう。

私自身、エネルギー政策を軸に、自公政権に対抗し得る野党への再編につながるよう、精進してまいりたい。

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ふくしま・のぶゆき
1995年東京大学農学部卒、通産省(現経産省)入省。電力・ガス・原子力政策などに携わり、2009年衆院選で初当選。21年秋の衆院選で無所属当選し「有志の会」を発足、現在に至る。

北陸の「セブン」に再エネ電力を供給 オフサイトPPAで地域を脱炭素化へ

【北陸電力】

 福井県坂井市で建設していた「北電BESTテクノポート福井太陽光発電所」(出力6220kW)が営業運転を開始した。北陸3県のセブン‐イレブン303店舗に向けて、この発電所で作った再生可能エネルギー電力を供給する。契約は20年間。北陸電力にとって初めてのオフサイトPPA(電力購入契約)だ。

同社が保有する約6万㎡の未利用地を活用し、約1万1700枚のパネルを設置した。塩害対策を兼ね裏面をガラス面にしたことで、両面で発電が可能。約10%発電量が増える。発電量は年間約673万kW時で、各店舗の電力使用量の1~2割分を賄う。一般家庭約2200世帯の年間使用量に相当する。

北陸電力ビズ・エナジーソリューションが運営する

導入需要家にとってオフサイトPPAのメリットは、①初期投資をせずに太陽光発電所で発電した再エネ電力を使用できる、②施設の脱炭素化を促進できる―などが挙げられる。

セブン&アイ・ホールディングスは、2050年カーボンニュートラル(CN)に向けた取り組みで、「省エネ」「創エネ」「再エネ調達」を3本柱として掲げる。全国約2万2700の店舗運営では、省エネや、店舗の屋根に太陽光パネルを設置するなどの創エネに取り組んできた。

北陸電力は電力自由化を機に、19年から首都圏のセブン―イレブン約1600店舗に電力を販売。セブン&アイの取り組みを知り、自社の未利用地を活用して「再エネ調達」を支援できると考えた。

店舗の脱炭素化を支援 自治体連携でモデル都市へ

21年4月、当時担当常務だった松田光司社長は、セブン&アイの井阪隆一社長と面談する機会があった。「当社は従来より水力発電の開発に力を入れ、再エネへの思いが強い。脱炭素社会に向けた互いの思いが一致した」と、とんとん拍子に話が進み、異例の早さで着工、完成した経緯を振り返る。

井阪社長も「再エネの地産地消にもなる。北陸地域のCNを実現するお手伝いができることを大変うれしく思っている」と話す。

北陸電力は坂井市と地域創生に関する包括連携協定を結んでいる。

坂井市は、福井県内17の市町の中でいち早くゼロカーボンシティーを宣言した自治体だ。北陸電力、セブン&アイ、坂井市が連携し、エネルギーの地産地消のふるさととして全国のモデル都市を目指していく。

完成披露式での松田社長(左)と井阪社長

洋上風力一社総取り阻止 入札評価基準を見直し

結果ありきの評価基準見直しは、果たして日本の洋上風力産業発展に寄与するのか―。

再エネ海域利用法に基づく洋上風力公募制度が見直され、早期の運転開始時期の提案にインセンティブを付けるため「事業計画の迅速性」を評価項目として新設するほか、多数の事業者に参入機会を与える観点から、複数区域で同時に公募する際に「落札制限」を設ける方向性が固まった。

この背景には、昨年12月に公表された秋田県と千葉県の3海域の公募、いわゆる第1ラウンドで、他社の追随を許さない低価格を提示した三菱商事を中心とするコンソーシアムが総取りしたことがある。この結果に、資本力で劣る新興事業者などから「価格偏重」の審査基準に不満が噴出したのだ。

新たな評価基準では、早期運転開始が大きく評価される一方、価格評価のウェートは著しく下がることになる。ただでさえ、2030年度には、電気料金が現行の2倍にまで上昇するとの予想もある中、国民負担を抑制しつつ、再エネを最大限に導入することは最重要課題だ。業界関係者の中には、一部再エネ事業者と政治家への忖度で決まった新たな評価基準を疑問視する向きも多い。

【コラム/8月9日】コーポレートガバナンス考える~政府関与の意味、依然分からず

飯倉 穣/エコノミスト

1,バブル崩壊後ゼロ成長に近い状況が続く中、成長を求める政・官・学による様々な安易な案が浮かび消えた。企業不祥事や企業活力に絡んで米国流企業統治(コーポレートガバナンス)が喧伝された。投資家重視、取締役会の監督強化、社外取締役の活用や経営陣の第三者的委員会による指名等である。そして会社法改正や証券市場主導のコーポレートガバナンス・コード策定が進む。

それらがなぜ経済成長に結実するか腑に落ちない中、報道があった。「「投資家を社外取に」に提言 経産省、市場との相互理解を促す 金融知識持つ取締役 米英の1/3」(日経22年7月12日)。毎年のように見直しが継続し、企業サイドも疲れ気味である。改めてコーポレートガバナンスとそのコード等を考える。 

2, 90年代企業不祥事やリストラに直面し、コーポレートガバナンスの問題が浮上した。業務執行と監督で取締役会の在り方が問われた。メインバンクシステムの過大評価を背景に銀行に代わるチェック機能が必要とされた。民の活動として日本コーポレートガバナンスフォーラム開催(94年)、経済団体等の提言(日経連(現:日本経団連)『日本企業のコーポレート・ガバナンス改革(98年)』)、日本取締役協会設立(02年)もあった。それらの主張も契機に、02年改正商法で社外取締役制度が明記される。

東京証券取引所は「上場会社コーポレートガバナンス原則」(04年)で、企業価値を高める企業活動の枠組み=企業統治(動機付け、監視)を提示する。①株主の権利、②株主の平等性、③コーポレートガバナンスにおけるステークホルダーとの関係、④情報開示と透明性、⑤取締役会・監査役(会)の役割を述べる。これらは各企業の取り組みで十分である。「どうぞご自由に」であろう。

3,それが国家政策の柱に取り上げられ、企業統治の枠組みに政府関与が強まる。端緒は、アベノミクスの成長戦略である。「日本再興戦略」(13年6月14日)は、成長戦略を打ち出し、「成長への道筋」に沿った主要施策例で、民間の力を最大限引き出すとして、コーポレートガバナンスの見直しをあげた。具体的には、会社法を改正し、外部の視点から、社内のしがらみや利害関係に縛られず監督できる社外取締役の導入を促進する。第二に機関投資家が、対話を通じて企業の中長期的な成長を促すなど、受託者責任を果たすための原則(日本版スチュワードシップコード)を取り纏める等である。

金融庁は、スチュワードシップ・コード(14年2月策定、17年5月改訂、20年3月改訂)とコーポレートガバナンスコード(2015年策定、18年6月改訂、21年6月再改訂)を提示した。

そして推進者の経産省は、コーポレート・ガバナンス・システム研究会(CGS研究会)でコーポレートガバナンスコードを補完するコーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)を検討し、CGSガイドライン(17年策定、18年改訂)を示す。

コーポレートガバナンスの重要性を強調し、取締役会の経営機能・監督機能の強化、社外取締役の重視、役員人事の客観性とシステム化、CEOのリーダーシップ強化、指名・報酬の在り方を検討する。そして市場からの評価や投資家との対話を通じて経営を改善することを目論む。投資家代表の出現となる。今回実務指針(22年7月)は選出の留意点を示す。

4,コーポレートガバナンスコード(東京証券取引所)を拝見すると、副題に「会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために」とある。基本原則は5つである。①株主の権利・平等性確保、②株主以外のステークホルダーとの適切な協働、③適切な情報開示と透明性の確保、④取締役会等の責務、⑤株主との対話である。

基本原則は、株主重視(受託責任・説明責任・企業価値向上・対話)をうたう。そしてステークホルダーは配慮の対象となる。資本と経営の分離は消え、雇用を第一と考える理念も後退している。且つ安定経営に必要な持ち合い等の縮減を求める。全体的に株主というか投資家重視かつ証券市場の利益維持・拡大目的と見受ける。

5,コーポレートガバナンスの成果の評価項目は、世界競争力ランキング、世界の時価総額上位100社企業の構成、世界の企業の時価総額ランキングである(経産省CGS研究会資料)。いずれも低迷である。そして社外取締役の選任状況、指名委員会・報酬委員会の設置状況、独立社外役員比率、経営者報酬変化、営業利益と設備・研究開発投資比率、実質賃金推移、企業業績(営業利益率)国際比較等々を紹介する。各項目を一覧すると、コーポレートガバナンス・コードの実践・制定で企業成長可能と思えない。経営側の負担増加が目立つ。

6,企業とは何か。通常の理解では、目的は利益追求、手段は経営資源の有効活用、理念は自己否定であろう。加えて民間企業は、社会的存在としての役割がある。雇用の維持・拡大である。そう考えるものには、経済成長や証券市場と関連付けたコーポレートガバナンス・コードに違和感を覚える。企業は、法令・会計規則に違反してはいけないが、それ以外は、社会的存在を意識しつつ、利益追求の自由な活動が当然である。

コーポレートガバナンスは、抑も民間企業が、法令の下で自主的に考えていくべきものである。箸の上げ下げ指導という感覚で、政府が関与するものでない。あくまで民間の自由な発想で考えて実行すべきである。投資家は、それを評価して投資の適否を判断するだけである。投資家への阿りは不要である。ゼロサムゲームの金融という虚業と実業の峻別こそ大事である。且つ民間企業は、国営企業ではない。政府主導のコーポレートガバナンス押付けは、不要である。

7,繰り言になるが、企業統治は、基本的に企業経営問題で、社内外で議論を尽くして、それぞれの会社が最適解を選択していくことで十分である。「頑張ってください」で済む話である。 雇用の視点から見れば、投資家の願望や欲望より、まず働く人を考えた企業経営であるべきである。新しい資本主義が雇用重視なら、官製コード棚上げが妥当である。

【プロフィール】経済地域研究所代表。東北大卒。日本開発銀行を経て、日本開発銀行設備投資研究所長、新都市熱供給兼新宿熱供給代表取締役社長、教育環境研究所代表取締役社長などを歴任。

勝俣氏らに13兆円を命令 福島事故で賠償責任認める

東京地方裁判所が福島第一原発事故で東京電力旧経営陣の責任を認める判決を下した。地裁は7月13日、勝俣恒久元会長らに賠償を求めた株主代表訴訟で、勝俣氏ら4人に13兆3210億円を支払うよう命じた。

福島事故を巡る訴訟では、既に刑事裁判の一審で勝俣氏らに無罪判決が出ている。だが今回、刑事裁判でも焦点になった国の地震予測の「長期評価」と東電子会社による最大15.7mの津波予測について、信頼性があったと判断。主な機器を水密化して浸水対策をすれば事故は防げたと指摘した。

一方、住民らが国と東電を相手に賠償を求めた4件の集団訴訟で、最高裁判所は長期評価や津波予測を基に国が東電に防潮堤を設けるなどの措置を取らせたとしても、事故は防止できなかったとの判断を示している。ある法律家は水密化について、「福島事故の前に、国が事業者に最低限の措置として自主的に講ずべき対策と認めるには過度な要求」と話す。

今回の判決は上訴審で覆される可能性が高い。だが一人当たり3兆円を超す賠償責任は、それまで4人の肩に重くのしかかる。

車部品産業支える中小企業 脱炭素で迫られる意識改革

【業界紙の目】穐田晴久/交通毎日新聞 編集局記者

日本のモノづくりを長らく支えてきた自動車部品産業。脱炭素化という大きな試練に直面している。

中小企業が多いという特徴を踏まえ、業界一丸となり事業再構築を進めるためのカギは何か。

 「2050年カーボンニュートラル(CN)」の実現に向け、全産業がさまざまな取り組みを進めている。とりわけわが国におけるCO2排出量の2割近くを運輸部門が占めていることから、脱炭素化に向けた早急な対応が迫られているのが自動車産業界だ。「CASE」(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)と呼ばれる100年に一度の大きな変革の渦中にある自動車産業は、CN化という新たな試練に立ち向かうことになり、CNをキーワードにした動きが活発化してきた。

電動化社会に向け施策展開 経営者の本音と温度差も

日本最大の自動車技術展で知られる「人とくるまのテクノロジー展」。横浜市で5月25~27日に開催された今年の展示会では、CNに関連した新技術や製品などを出展した企業が目立ったほか、主催者の自動車技術会が「新たな脱炭素技術が照らすCNへの道」をテーマにした企画展を開催。世界最高水準の高効率太陽電池パネルを搭載したEⅤの実証車両を展示するなどして話題を集めたのは記憶に新しい。

クルマのCN化を実現する上で最大のテーマとされているのは、電動化社会の構築だ。そのための取り組みとして経済産業省では「電動車の導入加速」「充電・充てんインフラ整備」「蓄電池産業の育成」「サプライヤー等の構造転換支援」を施策の4本柱に掲げている。

その中で特に注目したいのが、自動車部品を中心としたサプライヤーの支援をどう進めるのかという問題だ。

自動車部品産業の最大の特徴は中小企業が多いことと、取り扱う部品の種類が多いことだ。日本自動車部品工業会(部工会)によると、わが国の自動車部品産業では「従業員300人未満」の中小規模の企業が事業所数の9割以上を占め、雇用4割を創出し、製造品出荷額2割以上を占めている。

部品は「エンジン」「駆動・足回り」「車体・外装」「内装」などの部門で多岐にわたっている。このうちエンジン部品やエンジン関係の電装品・電子部品、駆動・伝導・操縦装置部品など内燃機関に関連した部品が、自動車の電動化に移行した場合に影響が大きい領域として指摘されている。CNに向け電動化に対応した事業転換をいかに進められるかが大きな課題と言える。

「テクノロジー展」でのCN対応自動車部品

ある金融機関が今年7月に実施した「中小企業のCNに関する意識調査」によると、CNの流れの中で中小企業の多くは自社の経営に何らかの影響があると感じつつも、具体的な方策については検討が及んでいない状況であることが分かった。

複数の中小部品メーカーの経営者らにCNへの対応を聞いてみると「CNの必要性は理解するが、何から手を付けていいのか分からない」「試作品を作りたいが専門的な技術もないし、投資資金も足りない」などと悩みを打ち明けた。中には「まだまだ先の話だからそんなに慌てることはないよ」と話す経営者もいて、対応の難しさをまざまざと見せつけられた。

経産省ではCNに向けた中小企業支援として、「相談」「設備投資」「事業再構築」「研究開発」など企業のニーズに対応した支援メニューを取りそろえている。その中で22年度の新規事業として「CNに向けた自動車部品サプライヤー事業転換支援事業」(当初予算額4・1億円)を打ち出した。

この事業は、自動車のライフサイクル全体でのCN化や、35年までに乗用車の新車販売で電動車100%を目指すという政府の政策実現のため、大きな影響を受ける中堅・中小企業のサプライヤーの事業再構築を支援するのが目的。

特にバッテリー式電気自動車(BEV)で不要になる部品を製造するサプライヤーの電動車部品製造への挑戦や、軽量化技術をはじめ電動化による車両の変化に伴う技術適応などについて専門家を派遣するといったことで、サプライヤーの事業再構築などを支援するという。事業期間は26年度までの5年間で、初年度は約1000社の支援を目指している。

先駆的取り組みはごく一部 業界一丸での推進のカギは

一方、部工会もCNの推進を22年度の重点施策の一つに掲げている。その実現に向けて「国際競争力の強化」「サプライチェーンのものづくり力維持」「国内の生産・雇用確保」の観点を重視し、会員企業の課題・ニーズの把握や政府への各種要請などの活動を加速させたいとしている。

世界最大手の自動車部品メーカーのボッシュが、日本を含め全世界400超の拠点で自社事業所のCN化を20年春に達成。またデンソーグループでは35年に工場の完全CN化を目指し、取り組みを進めている。自動車部品産業界ではこうした先駆的な取り組み事例はあるものの、中小メーカーによるCN化はまだまだ先の話だ。

岸田文雄首相が6月17日、愛知県豊田市のトヨタ自動車元町工場を視察し、日本自動車工業会会長の豊田章男・同社社長と、部工会会長の有馬浩二・デンソー社長らとCNに向けた取り組みなどについて意見交換した。その席上、有馬会長が「自動車部品産業界は多くの中小企業で構成し、これまで長きにわたって日本のモノづくりを支えてきた。部品業界一丸となってCNに取り組んでいきたい」と抱負を述べた。

部品業界一丸となってのCN化は実現できるのか。そのカギを握っているのは中小企業であり、中小企業がCN対応にいかに取り組むかによってその方向性が見えてくる。

そのためにも、中小企業のCN化に向けてのニーズをしっかり把握し、課題を洗い出し対策を推進することが重要なポイントだ。対策を進める上で政府や業界団体などの多様な支援も欠かせない。しかもその場限りではなく、長期間の継続した支援が求められる。

そして何より大切なのはCN化に向けた中小企業の意識改革。日本のモノづくりを支えてきた中小企業の「やる気」をCN実現に向け発揮できるかどうか注目したい。

〈交通毎日新聞社〉○1924年創刊○発行部数:週2回5万6000部○読者層:自動車・部品・タイヤメーカー、ディーラー、整備事業者など

【マーケット情報/8月5日】原油急落、石油需要の後退観測が台頭

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み急落。世界経済の冷え込みに懸念が強まるなか、石油需要が後退するとの観測が広がった。

米国のWTI先物原油価格は4日、バレル88.54ドルとなり、ロシアがウクライナに侵攻する前の2月2日以来、約半年ぶりの安値をつけた。

米国、欧州、中国で、景気の悪化を示唆する製造業指数が立て続けに発表されたことで、石油の消費は伸びないとの見方が台頭している。そうしたなか、英国のイングランド銀行が、同国のさらなる経済減速を予測。原油価格を一段と下押した。

米国では、ガソリン需要が、小売価格の下落にもかかわらず減少。一方、原油在庫は増加している。このことからも、原油の需給が弱いことが見て取れる。

OPECプラスは、9月の原油増産幅を日量10万バレルに留めることで合意。これによって、品薄感が広がったものの、価格を押し上げる材料にはならなかった。

【8月5日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=89.01ドル(前週比9.61ドル安)、ブレント先物(ICE)=94.92ドル(前週比15.09ドル安)、オマーン先物(DME)=94.37ドル(前週比10.59ドル安)、ドバイ現物(Argus)=93.07ドル(前週比13.17ドル安)

原発再稼働の機運高まる 岸田首相が審査見直し着手へ

【論説室の窓】宮崎 誠/読売新聞 論説委員

参院選を終え、政府・与党は原子力発電所の再稼働に向けた動きを強める見通しだ。

原子力規制委員会による安全審査の長期化が再稼働の障害となっており、是正を急ぐ。

 「原子力規制委員会において、過去の審査における主要論点の公表などによる事業者の予見性の向上、審査官の機動的配置などを着実に実施していく」

先進7カ国首脳会議(G7サミット)の閉幕後、ドイツ南部エルマウで6月28日に開かれた内外記者会見。岸田文雄首相は、原子力発電所の再稼働に向け、規制委の安全審査の迅速化に取り組む方針を示した。

国政選挙の最中に、自民党総裁でもある首相が大型外遊に出るのは異例だ。記者会見は、有権者に「外交の岸田」をアピールする場だったが、首相はあえて規制委の在り方に言及してみせた。

首相が日本を飛び立った6月26日、政府は、東京電力管内で電力需給ひっ迫注意報を初めて発令している。6月としては記録的な暑さに見舞われ、国民の間に電力不足への不満が増幅する中、首相として何を発信するのか。下手なことを言えば参院選の結果にも響きかねない。首相が出した答えは、規制委の在り方に関する具体的な見直し策だった。

規制委は2012年9月、環境省の外局として誕生した。原子力を推進する経済産業省の下に置かれた原子力安全・保安院が、東京電力福島第一原発事故を防げなかった反省を踏まえ、人事や予算を独自の判断で執行できる「3条委員会」として、高い独立性を確保している。

しかも、東日本大震災後、原発アレルギーが強まった国民の間には、規制委を「正義の味方」と見なすムードさえある。規制委に口を出すことは、政治的に大きなリスクを伴う。

それでも、首相が規制委の在り方に一歩踏み込んだ発言をした背景について、政府関係者は「誰が規制委に『鈴』を付けるのか。首相以外にはできない」と解説する。

G7終了後、記者会見に応じる岸田首相
出所:首相官邸ウェブサイトより

原子力規制庁の人員拡大 安全審査の迅速化が必要

規制委による安全審査の長期化が、原発の再稼働が進まない要因となっていることは明らかだ。

電力各社が新規制基準に基づく安全審査を申請した16原発27基のうち、審査に合格して、一度でも再稼働にこぎ着けることができたのは6原発10基。合格してもテロ対策施設の設置や安全対策工事が間に合っていないといった、さまざまな事情で再稼働できていない原発は7基に上る。

残り10基は審査が長引いており、稼働の見通しは立っていない。例えば、北海道電力泊原発の安全審査は9年にも及んでいる。

長年、規制委の強すぎる独立性を危ぶむ声はくすぶり続けていた。問題点は明らかなのに、政治的なリスクを恐れ、歴代内閣は懸案の先送りを重ねてきたと言える。

しかし、潮目は変わってきた。石油、ガスなどのエネルギー価格の高騰や電力需給のひっ迫を受け、停止中の原発の再稼働を急ぐよう求める声が国民の間で強まっており、長年の課題に取り組む「好機」を迎えている。

参院選を終え岸田政権は、規制委の在り方について、見直しを急ぐ構えだ。自民党の「原子力規制に関する特別委員会」は5月16日、規制委に対し、安全審査の効率化を促す提言を首相に手渡しており、党のバックアップも期待できる。

今後の検討では、原子力規制庁の増員が俎上に上がるとみられる。規制庁の発足時の定数は473人。14年に「原子力安全基盤機構」を統合するなどして、現在は約1000人まで増員した。それでも米原子力規制委員会の約4000人に比べると少ない。

審査会合では、規制委が求めた資料とは異なる資料を電力会社が提出して、出し直しとなるケースも多く、改善が急務だ。

規制委の更田豊志委員長は5月18日の記者会見で、「審査の効率化は規制当局にとっても良いことなので、できるだけ努力していきたい」と述べており、政府に協力する姿勢を見せている。

再稼働には信頼回復が不可欠 東電は企業体質の改革を

参院選が終わり、首相が自ら解散・総選挙を断行しなければ、25年の夏の参院選まで選挙がない。安定した政治基盤を得た岸田政権には、この「黄金の3年間」を使い、原発の活用を定着させていくことが求められている。

安定した電力供給は、国の産業競争力に直結する。05~16年の平均年間停電時間は、英国やフランスは70分程度、米国は100分超だったのに対し、日本は、東日本大震災の影響があった11年を除けば20分程度と少なかった。停電を招かないように節電を常に意識しながら、操業しなければならない状況が常態化すれば、日本経済は停滞を余儀なくされる。

ロシアのウクライナ侵攻によって顕在化したエネルギー安全保障上のリスクを軽減するためにも、原発の再稼働は必要だ。欧米では、原発を再評価する動きが加速している。25年の「脱原発」を目指していたベルギーの連立与党は3月、25年までに閉鎖予定だった原発2基について、10年間の稼働延長で合意した。英国は30年までに最大で8基の原発を新設する方針を表明している。

岸田政権が今後、原発の再稼働を目指していく中で、大きなリスクとなるのは、電力会社が不祥事などで世論の信頼を失ってしまうことだ。

東電の柏崎刈羽原発では昨年春、社員が他人のIDカードで中央制御室に入ったことや、侵入を検知する複数の機器の故障が放置されていたことが判明した。東電は、柏崎刈羽原発が21年度以降、順次再稼働すると見込んでいたが、相次ぐ不祥事によって、その時期は全く見通せなくなった。東電は、自らの企業体質に踏み込んで、抜本的な改革に取り組み、信頼回復に努めなければならない。

東電のみならず、ほかの電力会社でも、原発に絡んだ大きな不祥事が再び起きれば、再稼働に向けた政府のシナリオは一気に崩壊する。現在の電力需給のひっ迫により、原発再稼働を容認する声が増えていることは確かだ。しかし、電力各社は原発に厳しい視線を向けている国民が少なくないことを忘れてはならない。

端境期の需給危機が再来 冬の電力不足回避策は

季節外れの猛暑が日本列島を襲った6月下旬、経済産業省は東京エリアに初の「電力需給ひっ迫注意報」を4日間にわたって発令した。供給力の積み増しや需要側の節電協力により大規模停電は免れたものの、3月22日の東日本エリアを対象とするひっ迫警報に続き、こうした端境期に需給危機が生じるケースが増えている。

火力のトラブルが大規模停電の引き金にも

7月に入ってからは比較的過ごしやすい天候が続き、高需要期に向けて補修停止中だった火力発電が稼働したこともあり、安定した需給状況が続いている。それでもこの夏は、10年に1度の猛暑を想定した場合の予備率が安定供給に最低限必要な3%ギリギリの見通し。経産省は7年ぶりに全国的な節電要請を行い、9月末までの間、無理のない範囲での節電協力を呼び掛けている。

より需給が厳しくなるのは冬。岸田文雄首相が言及した原発9基の稼働は、多くは冬の供給力に織り込み済みで予備率改善には寄与しない上に、ロシア・サハリン2からのLNG調達懸念が高まり、老朽火力の追加稼働やLNGの代替調達先の確保は急務だ。需要側では節電や節ガス要請の検討が進むが、生活や経済活動に甚大な影響を与えかねない対策は、あくまでも最終手段でなければならない。

【覆面ホンネ座談会】経産・環境両省の人事を読む 新体制で協調路線へ転換も

テーマ:経産省・環境省の幹部人事

 ロシア・ウクライナ問題、エネルギー価格急騰、電力需給ひっ迫と、今まで以上にエネルギー・環境政策を巡る情勢が危機的な状況だ。経済産業省、環境省は7月からの新たな布陣で、この難局をどう突破しようとするのか。

〈出席者〉A経済産業省OB Bマスコミ Cエネルギー業界関係者 

―今回のテーマは毎年恒例の霞が関人事。まずはトップが交代した環境省人事の感想から。次官が財務省出身の中井徳太郎氏から、環境省プロパーの和田篤也氏に交代した。

A 今回は環境省プロパーと財務省により、水面下で調整が行われたといわれている。防衛省次官の留任を巡り、官邸が任期2年の慣例を理由に交代させたと話題になった。次官を2年務めた中井氏もその余波を受けたという声もあるが、そうではない。組織で仕事をする財務省が、鑓水洋官房長(1987年大蔵省)を確実に次官にするために話をつけた。和田氏も任期は1年と覚悟している。

中井氏留任か交代か 水面下で調整難航

B 中井氏が退任するか否かで最後までもつれていた。1年前から中井氏本人が留任に強くこだわり始め、環境省内やOB、永田町を含め、周辺が翻意させようと強く働きかけてきた。昨年末ごろには、中井氏もいったん納得したかに見えたが、諦めきれずに山口壮環境相に働きかけ、留任工作をしてきた。省内では春ごろに「中井氏続投」とのうわさも立ったくらいだ。中井氏は官邸に直談判までしたが、結局はノーを突き付けられた。

C 中井氏が財務省、山口環境相が外務省役人時代に仕事での関係もあり、そのときからのつながりがあるとのことだ。中井氏はカーボンプライシング(CP)、特に炭素税という「戦勝記念碑」を建てないうちは退任できない、との思いが強かったと聞く。

―では後任に和田氏という人事はすんなり決まったのだろうか。

B それもひと悶着あった。和田氏は技官で88年環境庁入庁。一方、鑓水氏は年次が和田氏より上だが、和田氏の方が年上だ。慣例では年次で考えて鑓水氏となるが、それでは和田氏が次官になる際に定年延長が必要になるし、2年連続次官が財務省出身という点も引っ掛かる。結局は中井氏が和田氏を後任に指名し、決着した。

C 「鑓水氏は財務省から来て今のポストでまだ1年。さすがに次官は早い」との判断もあったようだ。ただ、鑓水氏が控える中、和田氏の任期が1年となってしまうのであれば残念なこと。和田氏が地球環境審議官を経て次官、というルートもあり得たが、Bさんの指摘通り60歳を超えての次官就任が懸念された。実力派で知られた森本英香元環境次官も、再度定年延長しての3年目は選択しなかった。また修士で88年入庁の和田氏は、民間では86年入社扱いだが、霞が関では異なる。修士が多い技官が次官になり得る環境省などでは、今後も年齢問題が出るだろう。

環境省の事務官不足 今後に続く問題に

B ただ、元をただせば中井氏の前任・鎌形浩史氏がわずか1年で退任を申し出たことで歯車が狂った。鎌形氏が2年勤め上げていれば、鑓水氏を財務省から呼び寄せる必要もなく、ここまでこじれはしなかった。本当の問題は和田氏、鑓水氏の後だ。オーソドックスに考えれば今回総合環境政策統括官に就いた上田康治氏(89年環境庁)だが「上に立つタイプではない」といった評判だ。

A 今回の人事は、上田氏を後々次官にするためのメッセージだとも言える。だが、和田氏も上田氏を指名しているものの、やや不安を感じてもいると聞く。

B 対抗馬の松澤裕地球環境局長(89年厚生省)も技官だし、白石隆夫地域脱炭素推進審議官(90年大蔵省)はまだ局長でもない。環境省の適齢期の事務官が相次いで審議官までで辞めてしまい、穴あき状態がしばらく続く。他省庁から呼び寄せても、財務出身者ばかりでは経産省が「環境省は炭素税一般財源派か」と警戒する。

―その点、和田次官体制は経産省にとってはウェルカムだろう。

A 和田氏には環境省プロパーの代表として、後に残るような足跡を築いてほしい。意外としたたかに動くのではないか。他方、中井氏はわが道を行くタイプ。省内であまり頼れる人がいなかったのか、周りが止めたにもかかわらず小泉進次郎前環境相に入れ込み過ぎた。

C 小泉氏とタッグを組んで炭素税で実績を残そうとの思いが、結果的に裏目に出た。

B 和田氏のことは官邸も評価しているようだ。小泉大臣時代、和田氏とともに水面下で事態を収めてきた秦康之氏(90年厚生省)が水・大気環境局長に、西村治彦氏(94年環境庁)が総合政策課長に就いた。今後は経産省との協調路線が強固になったと言える。

C 日下部聡元資源エネルギー庁長官との良好な関係を築いた森本元次官、そして和田氏の意思を継ぐのが、秦、西村両氏。ただ、年次が空いている点がやはり気掛かりだ。

A いずれにせよ、今は環境省が原理主義から融和型に脱皮する過渡期。環境省プロパーを大事にしつつ、3年後には環境省の庁舎が経産省の隣に移転することだし、経産省とはより綿密に調整して現実路線に進んでほしい。経産省が間違えることもあり得るのだから、産業界にとっても環境省が強くなりバランスが取れるようになるのは良いことだ。

B その文脈で言えば、ほかの幹部人事でも、数少ない原理派の局長の芽をつぶしている。あとはレンジャー(自然保護官)を中心に原理主義者が多い自然環境局の改革が必要。ただ、これまでも試みたもののうまくゆかなかった。根気よく取り組むことが必要になる。

経産省は手堅い布陣 問題山積の分野は経験者そろえる

―対して経産省は多田明弘次官(86年)、保坂伸エネ庁長官(87年)が留任。ほかの幹部は局長級の入れ替えであまり動かなかった印象だ。

A 今回の特徴は四つ。第一点は、次官の留任など予想通りの人事だった。二点目は、次官レースの行方だ。87年組ならば保坂氏。88年組なら飯田祐二経済産業政策局長か、藤木俊光官房長。どちらかはまだ分からないが、候補は絞られてきた。

 三点目は、エネルギーと通商政策の担当部署には経験者や技官を多く配置したこと。通常のように、各業界との癒着防止で1~2年で交代させることもなかった。飯田産政局長や小澤典明エネ庁次長、茂木正商務・サービス審議官らがそうだ。そして四点目が、これまでは「陽・動」の人が評価されてきたが、今回は守りの人材をそろえた点。ここ30年くらいでまず見られない布陣だ。

C あるOB評は「オーソドックス」。エネ庁長官を変えなかった。また片岡宏一郎前総括審議官を福島復興推進グループ長にしたあたりは、福島第一原発の処理水問題をどうにか解決したいとの意図も見える。他方、問題解決の途上にある資源・燃料部や電力・ガス事業部は部長以下の主要メンバーは変えていない。

 そのほか経済安全保障通の飯田陽一氏が内閣官房の経済安保担当部署に、前産業技術環境局長の奈須野太氏が内閣府科学技術・イノベーション推進事務局統括官に就任し、それぞれ納まるところに納まった感じだ。

経産省はエネルギー問題やGX対応などで手堅い布陣に(7月5日のGX実行対策本部)

「Eメタン」が本格始動 東ガスは実証設備を公開

「2030年に合成メタンを既存の導管に1%、50年に90%注入を目指す。制度設計による合成メタンの環境価値確立に向けて働きかけたい」。7月15日、日本ガス協会の本荘武宏会長は定例記者会見で、大手都市ガス会社が取り組むメタネーション戦略の展開について言及した。業界としては、「e-methane(Eメタン)」の呼称でまずは認知度を高めて、カーボンニュートラルを進める。

東京ガスが運用するメタネーション設備

最大の課題はコストだ。30年時点でさえ、目標とするLNG価格水準とは、2~3倍とも推定されるほどの大きな開きがある。打破するためには、大量の水素とCO2が不可欠で、合成メタンを生産する大型プラントも必須だ。

こうした大量生産化への第一歩となる設備を、東京ガスがマスコミ向けに公開した。生産能力は1時間当たり12・5㎥と小型だが、まずは実証を進めていく。同時に自社開発製セルスタック搭載の水電解装置、メタン生成時の発熱を有効活用する仕組みなどを取り入れてコスト低減する考えだ。

大阪ガスでも自社の研究設備でメタネーションの実証を加速させている。今後、Eメタンのネーミングが広く産業界に浸透していくのか。業界挙げての取り組みに要注目だ。