IPCCが新たな報告書発表 最悪シナリオには注意必要

ギリシャでは7月下旬以降、熱波が原因と見られる大規模な山火事が多発した(提供:AFP=時事)

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第一産業部会の第六次評価報告書が8月9日に発表され、将来の気候予測などに関する科学者の見解が示された。報告書を受けて、小泉進次郎環境相は談話を発表。各国の〝野心〟が高まるよう、温暖化防止国際会議・COP26で「日本の環境外交力を発揮する」とし、カーボンプライシングなど施策強化の必要性を改めて強調した。

大きく報じられたのは、産業革命前からの世界気温の上昇が1・5℃に到達するとされる時期が、2030~52年との従来予測より10年ほど早まるとした点。予測には五つのシナリオが使われ、このうち最も温暖化ガス排出量が大きくなるシナリオ(RCP8・5)は、化石燃料依存型のシステムの下で、政策を導入しないケースとしている。しかし専門家からは「排出量の上振れが大きいRCP8・5は、既にシェールガス革命で脱石炭が進んでいるため現実的ではない。また気候のシミュレーションも気温が実際より上振れする傾向が指摘されている」(杉山大志・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)といった意見が出ている。

温暖化への人間の影響について「疑う余地がない」と、これまでの表現より踏み込んだ点についてもポイントとして報じられた。ただ、人為起源に関する見解自体はこれまでの報告書でもたびたび、「可能性が極めて高い」などと示されており、内容が目新しいという訳ではない。

来年2~9月にかけては、第二作業部会、第三作業部会、そして統合報告書が発表される。一連の報告書の冷静な受け止めが必要だが、その前に開催されるCOPでの交渉劇が気がかりだ。

熱海災害で遺族が刑事告訴 太陽光との因果解明なるか

静岡県熱海市で死者24人・行方不明者3人(8月22日現在)を出した大規模土石流災害の発生と、近隣の太陽光発電所建設との因果関係は解明されるのか。同災害の遺族や被災者らが8月17日、伊豆山の崩落現場である盛り土周辺地の現旧所有者2人を、熱海警察署に刑事告訴した。

盛り土の現旧所有者を刑事告訴した被害者の会の瀬下雄史会長(右)ら(8月13日、熱海市内)

関係者によると、具体的には①盛り土を行った不動産会社元社長の天野二三男氏について、届け出とは異なる高さ50mの盛り土を造成したり、排水管を設置しないなど注意義務を怠ったりした業務上過失致死の疑い、②現所有者の麦島善光氏について、盛り土の危険性を認識しながら対策を講じなかった重過失致死の疑い―だ。

「多くの方が亡くなられた被害の解明につながっていくのではないかと期待している」。弁護団は盛り土周辺の管理がずさんだったことが被害を甚大化させたとして、所有者らの責任を徹底追及していく構えだ。今後、損害賠償を求める民事訴訟も予定している。

本誌8月号で既報の通り、崩落地の南西側すぐ隣には、麦島氏が役員に名を連ねるZENホールディングス(東京・五番町、松瀬賢亮社長)の太陽光発電所がある。また上部の北側でも、ZENグループのユニホー(東京・五番町、松瀬社長)と中央ビル(愛知県名古屋市、麦島善廣代表)が、それぞれ2013年8~10月に太陽光発電のFIT認定IDを取得。空撮写真を見ると、発電所の建設予定地なのか、森林が伐採されたような場所が複数確認できる。

東電訴訟の河合氏が代理人 被告側弁護で攻守逆転か

麦島氏の代理人である河合弘之弁護士は、災害発生後にいち早く盛り土崩落と発電所の因果関係を否定。盛り土自体についても「麦島氏は10年前に土地を購入してから、一度も手を加えたことがないと言っている」との見解だ。

しかし静岡県側の調査では、現所有者によって盛り土周辺地で土地の改変が行われた可能性や、上部からの雨水流入が崩落の一因になった可能性が浮上している。果たして、運用中の発電所や計画地点付近の土地造成が、崩落の引き金を引いたのかどうか。

折しも、河合氏は現在係争中の東京電力福島原発事故を巡る株主代表訴訟で原告側の団長を務め、勝俣恒久・元会長ら旧経営陣に対し22兆円の損害を個人の財産で賠償するよう求めている。「事故を予見できたはずなのに、なぜ対策を講じなかったのか」。河合氏が熱海土石流訴訟で麦島氏の弁護人を務めることになれば、今度は一転、被告側の立場でこの問題を追及される可能性も。刑事、民事とも厳しい訴訟になるのは必至で、脱原発派弁護士として名を轟かせる河合氏の対応が注目される。

8月中旬、西日本から東日本にかけての広範囲が記録的大雨に見舞われ、各地で河川氾濫や土砂崩れが発生した。山間部における太陽光発電所の造成に絡む災害リスクは、もはや放置できないレベルにまで高まっているのは明らかだ。地元住民の危機感も強い。国・自治体には規制強化などの対策を早急に講じることが求められる。

エネ基同様に亡国路線か 温対計画も画餅化避けられず

2030年度46%減に向けた地球温暖化対策計画がまとまったものの、やはり実現可能性は極めて乏しい。

部門ごとに過大な削減目標が示されたが、コストや、そのための実行策など詳細は見えてこない。

温暖化ガス2030年度46%削減目標のあおりで、また一つ実現可能性の乏しい政府計画が策定された。8月4日、環境省と経済産業省が合同で開いた有識者会合で、新たな地球温暖化対策計画の中身が固まった。30年度26%減目標に沿った現行計画から大幅に引き上げる形で、部門ごとのCO2排出量目標を提示。しかしこれは、トップダウンの目標とのつじつま合わせに苦しんだ第六次エネルギー基本計画の数字をそのまま書き込んだものだ。約6200万㎘もの大幅な省エネを前提としたエネルギー需給見通しで示した部門別排出量を、温対計画にスライドしたにすぎない。

コロナと同じ精神論 目標の詳細詰め切れず

改めて中身を見ると、ハードルが極めて高い数値が並ぶ。30年度のエネルギー起源CO2排出量の目安は、13年度比45%減の6億8000万t(CO2換算)に設定。19年度実績は10億2900万tであり、ここからさらに3億5000万tほど排出量を減らさなければならない。

その内訳も、産業部門が2億9000万t(13年度比37%減)、業務部門が1億2000万t(同50%減)、家庭部門が7000万t(同66%減)、運輸部門が1億4000万t(同38%減)、エネルギー転換部門が6000万t(同43%減)。これらを達成するには、いずれも大幅な対策強化が必要だ。

だが、積み上げた目標ではないため、これまでの計画とは異なり、業種や取り組みごとの詳細な削減目安は示していない。また、分野ごとの対策も推進すべき取り組みの羅列で、政策の方向性もふわっとしている。例えば、家庭部門の目標は、エネ基の需給見通しを達成したらどこまで達成できるのか。電気以外について、ガスや石油を使う機器の入れ替えなどの対策がどの程度必要なのか。そういった詳細は詰められていないのだ。

産業界関係者は「それぞれの対策は定性的に書かれており、何が決まっているのかが明確でない。部門ごとの対策も、コストはフローも初期投資も見えない。値段を見せずに、性能は良いが一番高い車を買わせるようなもの。そしてコロナ対策と同じで精神論になっている」と評する。

計画達成のためにどれほどのコストを要するのか、という指摘は、複数の委員からたびたび上がっていた。その点、4日に示された案には、計画の進捗点検で精査する内容として、当初はなかった「当該対策の費用対効果」という一文が加わった。ただ、経産省側のワーキンググループ座長を務めた山地憲治・地球環境産業技術研究機構理事長・研究所長は同日の会合で、この一文が加わったことは一歩前進だとした上で、「具体的な費用には何も触れられていない。(さまざまな対策の効果が書かれている)資料に費用を書き込むといった対応をすべきではないか」と強調した。

この間の議論で、同計画に関連する政策について毎年CO2削減の費用対効果を示し、それによって政策を見直す「政策のカーボンプライシング制度」を提唱してきた委員の杉山大志・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹は、「今後この計画が実行されると費用が膨らむ可能性が大きい。例えば、住宅の断熱改修などは1件で何百万円もかかる。また、筋の悪い省エネはいくらでもあり、用心しなければさまざまなコストがかかることになる」と指摘。費用対効果の検証を、具体的にどのような制度に落とし込むかが重要だと訴える。

家庭部門のCO2大幅減は本当に可能か

産業空洞化に拍車か 計画の位置付け明確化を

産業構造の空洞化に拍車が掛かることも懸念されている。

産業部門はこれまでの枠組み通り、日本経済団体連合会のカーボンニュートラル行動計画(旧・低炭素社会実行計画)に基づき取り組みを進める。ただ、46%減に沿った各社の計画目標は今後の作業になる。

ここで再度注意すべきは、過度な省エネ目標だ。従来の目標から全体で約1200万㎘の深掘りとなり、うち産業部門は約300万㎘積み増す必要がある。だが、例えば鉄鋼業の省エネ量は、30年度の粗鋼生産量見通しをこれまでの1億2000万tから9000万tへ引き下げた上での数字。業界は一部の高炉を止め、生産を合理化する方針は発表しているが、生産見通し9000万tにはコミットしていないのだ。

家庭部門はさらに不透明だ。企業のような枠組みもなしに、19年度実績(1億5900万t)の半分以下の排出量に抑えなければならない。今後、実際に目標未達が判明した際、全体のつじつま合わせで産業などの他分野を深掘りすべきだ、といった論調が出ることも警戒した方がよいだろう。

「そもそもパリ協定に基づけば46%減は努力目標。今後、各業界が努力しても達成できないときにペナルティーを負うことがないようにしてほしい。同床異夢の計画となり、『どんなにコストをかけても目標達成せよ』と変な方向に行くことを心配している」(産業界関係者)

これらの懸念は、全て過度な目標設定に起因する。積み上げでない、従来とは性質が違う計画だと、改めてはっきりさせる必要がある。その点エネ基では、明記こそしていないものの、ほのめかすように「さまざまな課題の克服を野心的に想定した場合のエネルギー需給の見通し」だとくぎを刺した。一方、温対計画の部門ごとの目標については、そうした表現は控えめだ。杉山氏は、「温対計画の閣議決定に当たっては、この方向で取り組むが、経済性や供給安定性についても逐一検証して柔軟に変更していく、と位置付けをはっきりさせるべきだ」と提言する。

今後の具体的政策は明らかではないが、気候変動を巡る昨今の風潮を見れば、規制的手法を求める意見が強まることも予想される。しかし常に「環境と経済の好循環」の大前提に立ち、日本の産業政策が誤った方向に向かっていないか、検証を続けるべきだろう。

【コラム/8月30日】制度設計は続くよ どこまでも 2021夏

加藤真一/エネルギーアンドシステムプランニング副社長

東京オリンピックの終了とともに、次は高校野球へと移ったが、夏の最大需要電力のピークは高校野球の決勝戦の時期に発生することが多く、十数年前に自家発を使ったオンサイトエネルギーサービスに携わっていた時に、ディーゼル発電機のトラブルが起こるたび、冷や冷やさせられた記憶が蘇る今日この頃である。

 今回も前回に続き、電気事業制度に関する議論の状況について振り返ってみたい。

再エネ・環境関連の議題が多い制度設計

 前回に続き、今回は6~7月(8月11日時点)に審議会等で取り上げられた内容を電力サプライチェーン上にプロットしてみた。相変わらず再エネや環境に関連する議題が多い。

 エネルギー基本計画や地球温暖化対策計画、長期戦略見直し、カーボンプライシング、トランジション・ファイナンスといった国のエネルギー、気候変動に関する大きな方策から、エネルギー供給強靭化法に係る具体詳細設計、洋上風力の案件形成拡大を支援する取組等の具体的な制度設計まで検討の裾野は広い。

 6~8月にかけてエネ庁・環境省を中心に筆者がチェックした審議会等は約80本。3~5月の120本と比べればだいぶ減ったが、新たな審議会等も出てきており、目まぐるしいばかりである。

この時期は取り纏めが盛ん

 この数か月、様々な議論がされてきた中で、議論の整理・取り纏めが多く出されている。

例えば、6月18日には、「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太の方針)、成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ、規制改革実施計画といった大きな方向性を示した施策が閣議決定され、これに併せて経産省からはグリーン成長戦略が公表された。

 同じく6月には地域脱炭素ロードマップが公表され、地域の脱炭素の取り組みを継続的包括的に支援する方策が示された。

 そして、7~8月にはエネルギー基本計画の素案、地球温暖化対策計画(案)、脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等あり方・進め方(案)が提示された。特にエネ基と住宅・建築物の省エネ対策等は、委員の間で様々な議論が飛び交い、何とか取り纏めたところである。いずれも、最終的にはお決まりの「座長一任」で締めくくられ、今後、パブコメや閣議決定といった場に移される予定である。

【マーケット情報/8月27日】原油反発、需給引き締まり買い優勢

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、需給の引き締まりを好感した買いが強まり、主要指標が軒並み反発。前の週の下落分を取り戻した格好だ。

供給面では、メキシコ国営ペメックスの洋上石油生産施設で22日、火災が発生。日量42万1,000バレルの生産が停止した。これは、同社の1日あたりの平均生産量の40%を占めることから、市場に与える影響は大きい。そうした中、メキシコ湾でハリケーン「アイダ」が発生し、同湾で操業する石油施設が相次いで稼働を中断。27日時点で、生産の約59%が停止したため、供給逼迫を懸念する買いが一気に強まった。

米国の石油サービス会社ベーカー・ヒューズが先週発表した国内の石油掘削リグの稼働数は410基となり、前週から5基増加。本来なら供給が増えるとの観測が弱材料として働くが、増加の背景には新型コロナウイルスの感染拡大で低迷していた需要の回復期待があることから、買い戻しを誘う要因となった。

中国では、新型ウイルスの変異株の感染拡大が減速。景気の回復と、それにともなう石油需要の改善に期待感が強まった。また、ポーランドの7月原油処理量が前年比で10%増加し、パンデミック前の水準近くにまで回復している。

27日時点で、米国のWTI先物原油価格はバレル68.74ドルとなり、前週比で6.42ドル上昇。北海原油を代表するブレント先物は、前週比7.52ドル高の72.70ドル。いずれも、前の週の下落分を相殺して上回る値上げとなった。

【8月27日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=68.74ドル(前週比6.42ドル高)、ブレント先物(ICE)=72.70ドル(前週比7.52ドル高)、オマーン先物(DME)=70.35ドル(前週比4.65ドル高)、ドバイ現物(Argus)=70.61ドル(前週比5.28ドル高)

【省エネ】省エネ法の大転換 担当課の手腕に期待

【業界スクランブル/省エネ】

経済産業省の省エネルギー小委員会(6月30日)において、「非化石エネルギーの導入拡大に伴う省エネ法におけるエネルギーの評価と需要の最適化」が議論された。単なる「エネルギー消費原単位」の改善のみを求めていた省エネ法から、「非化石エネルギーの導入拡大」の評価も加えた「実質的な需要側脱炭素法」への大転換である。当然、CO2排出量削減のためには、「省エネ深掘り」と「非化石導入拡大」を両輪で進めることが必須だが、後者を担う地球温暖化対策推進法は単なる報告制度であり、削減誘導という点では極めて限定的であった。今回、何らかの形で非化石導入拡大が努力義務の一部として組み込まれれば、省エネ法が、需要家の脱炭素実現を強力かつ総合的に誘導する最大かつ唯一の政策手法となる。企業の脱炭素促進制度としては、EUのC&T(キャップ・アンド・トレード)制度が有名だが、直接排出のみの規制であり、「新しい省エネ法」の方が全てのエネルギー消費・非化石導入をカバーしており、優秀な制度といえる。

オブザーバーの業界団体意見は、結局、自分たちの負担増加に反対ということだが、産業配慮で、全体の規制強化を断念していたら、高いCO2削減目標は実現できない。必要な業界配慮は、産業政策として減免措置で対処すればよいだけである。

脱炭素社会実現のためには、燃料側のCO2排出量が課題であり、燃料の省エネ努力の比重を高めることが必要となる。今までは電力の省エネ評価にげたを履かせて高く評価していたが、全電源評価による評価指標是正だけでなく、燃料の省エネ推進のための補助制度などの支援策も検討する必要がある。また、燃料側の非化石導入評価としては、国のインベントリ上でも評価される「再エネ熱証書でのオフセット都市ガス」と、日本の排出量削減には貢献しない「カーボンニュートラルLNG」の扱いも整理することが必要である。

需要側のトランスフォーメーションのツールを所有し、温室効果ガス削減誘導の執行責任を担うことになる省エネ課の今後の手腕に期待したい。(N)

【住宅】省エネの概念 CNで変わるか

【業界スクランブル/住宅】

資源エネルギー庁の省エネポータルサイトには「省エネルギーは、エネルギーの安定供給確保と地球温暖化防止の両面の意義をもっています」との説明がある。需要の削減が、海外からの化石燃料調達削減につながるのはその通りである。ただ、家庭向けへの説明では、2050年カーボンニュートラル(CN)実現に向け方向転換が必要だろう。要約すると、「節電:家庭のエネルギー消費の50%以上は電気であり、家庭で節電を進めるためには、三つの方法があります。①カット:消費電力を減らすことです。節電と省エネの両方に効果があります。②シフト:電気を使う時間帯をずらすことです。エネルギーを使う量は変わらないので、節電にはなりますが、省エネにはなりません。③チェンジ:ほかの方法に切り替えることです。省エネになるかどうかは場合によります」と記載されている。まだ、①減らすことが重要で、②③の方策はマイナス評価である。

しかし、CNを目指すのであれば、再生可能エネルギーの拡大は不可欠であり、夕方から夜の電力ピークを解消することが重要課題になると考える。そのため、時間帯によっては「②ずらす」は「①減らす」より評価が優先されるべきである。

例えば、蓄電池に昼間PVの余剰電力を充電し、日没後放電する場合、充放電ロス分だけ消費電力は増加し、省エネではないが、安定供給には寄与できる。もっと大きなずらしでは、翌日は悪天候でPVの発電量が期待できないとすると、前日の晴天昼間にPVの余剰電力でエコキュートに2日分の貯湯を行う。これも熱損失の分は省エネではないが、安定供給、再エネの利用拡大につながる。

このように発想転換をしないとCNの実現は困難であると考える。再エネは偏在するため安定供給が重要課題であり、需要をずらすことは有効対策になる。 エネ庁の記述が「減らす」偏重ではなく、「ずらす」や「切り替える」の意義も明確にすることを期待する。CNにはルールチェンジが必要である。(Z)

【太陽光】脱炭素で加速化 新社会の実現へ

【業界スクランブル/太陽光】

 昨年10月、菅義偉首相が2050年カーボンニュートラルを宣言し、21年4月には30年度のCO2排出量を13年度比46%削減する政府目標が掲げられた。まずは30年度の目標達成に向けた計画設定が重要であるが、従来の対応の延長線上では間に合わないため、関係する国の各省庁の横断的な対応が加速している。

その手段として、再生可能エネルギー電源の主力電源化、省エネの促進、CO2の回収、この回収したCO2と再エネ電源で製造した水素を合成した燃料のe-fuel生成に関連する技術開発、電力系統に関連するルールや法令の見直しなどが挙げられる。

再エネ電源の主力として期待される太陽光発電は、住宅や工場などの屋根やその周辺地域に設置できる。需要地に近接設置でき、電力需給システムとして理想的なものでもある。今後、EVの普及が進むと、充電に伴う電力需要が急増するため、電源、送配電網の増強が必要となる。太陽光が発電している時間帯に充電すれば余剰電力を有効活用できる。

また、送電網を介さない電力供給によって、送電網で発生する電力損失の抑制など、省エネにも寄与する。また、太陽光発電は、蓄電池と組み合わせることで天候に左右される変動電源から安定電源になるほか、火力発電のような電力系統の周波数・電圧の変動緩和に係るサポート制御が可能になり、アグリゲーションなどの電力制御も容易になる。さらに、停電時の予備電源として活用する電力レジリエンスや輸入燃料に依存しない電力セキュリティーの強化にもつながる。このような利点を有効にするためには、将来を見据えた技術開発の推進、系統整備の計画、関係法令・グリッドコードの整備が急務となる。これらは国や電力広域的運営推進機関が中心となり、現在対応中だ。

太陽光発電は地域密着型の電源である。太陽光発電の利点の一例は前述の通りであるが、太陽光発電の大量普及に伴う関連する産業やサービスの活性化による地域経済への貢献も大きい。太陽光発電を中心とした新しい社会の実現に期待したい。(T)

【再エネ】資源外交から転換 脱炭素外交へ

【業界スクランブル/再エネ】

 国内再生可能エネルギー企業の海外展開が拡大している。最近2年ほどの動きをみても、自然電力(ベトナム・太陽光)、ジャパン・リニューアブル・エナジー(台湾・太陽光)、イーレックス(カンボジア・水力)、レノバ(ベトナム・陸上風力)、ユーラスエナジーホールディングス(チリ・太陽光ほか多数)などの取り組みが挙げられる。

海外での再エネ開発は、洋上風力に代表されるような再エネの輸出産業化や、JCM(二国間クレジット制度)による排出削減価値の獲得などを通じた脱炭素と経済成長の両立の観点から、重要性がさらに高まるだろう。日本政府もCEFIA(Cleaner Energy Future Initiative for ASEAN)やAETI(Asia Energy Transition Initiative)といったプラットフォームを立ち上げ、海外での排出削減への貢献に動き出している。

一方、英国やドイツ、デンマークなどは、既にアジア市場における再エネ開発の実績を積み上げている。これらの国は、地場企業だけでは事業化が困難な陸上風力や洋上風力を主なターゲットに、現地大使館によるプロモーション、公的な貿易金融などを駆使し、自国企業による事業への入り込みや受注獲得を全面的に支援する体制を構築。支援は案件形成段階の技術的面にも及び、企業と政府の二人三脚による対応が特徴だ。

これまで日本は、海外における化石資源権益の確保を目的として、政治的な根回しとトップダウンのアプローチによる「資源外交」を展開してきた。しかし、今後求められるのは欧州勢が展開するような「脱炭素外交」であり、これには「資源外交」とは異なるアプローチが必要だ。そもそも再エネは「権益」ではなく地域資源を生かす「事業」である。よって、資源の価値を最大化するための「パッケージ型の付加価値提案力」が問われることになる。海外事業における金融面の支援の重要性は論をまたないが、それ以前の事業化のための環境整備が肝になるということだ。日本政府にも、そうした新たなアプローチへの転換に向けた「脱炭素外交」に大きく踏み出してもらいたい。(C)

【メディア放談】政治とエネルギー 揺れる与党のエネルギー政策

<出席者>電力・石油・ガス・マスコミ業界関係者/4名

都議選で自民党は予想外の敗北を喫し、総選挙も情勢は厳しいようだ。

エネルギー政策には政治の安定が不可欠だが、雲行きが怪しくなった。

―7月の都議選は大方の予想に反して、自民党は惨敗に近い結果となった。

電力 選挙戦の最終日に過労で入院していた小池百合子都知事が応援に出て、都民ファーストに同情票が集まったといわれている。だけど、自民党が負けた本当の理由は、コロナ対策だと思う。

ガス 同感。デルタ株がまん延して、感染者が増えてきた。東京・大阪などの大都会で、自民党の支持率が急落している。このまま総選挙に突入すると、自民党はかなり議席を減らすことになる。

石油 政府・与党幹部は秋の総裁選・総選挙に向けて、「ホップ、ステップ、ジャンプでいく」と言っていた。まず都議選で圧勝し、東京五輪・パラリンピックを成功させ、衆院選で勝つという構図だった。

 ところが、楽観視していた初めの都議選でつまずいた。五輪も無観客が決まり、宿泊・飲食業者は不満を募らせている。これでコロナ感染者が急増したら、衆院選も厳しい結果になりそうだ。

エネ基で新増設見送り 沈黙守る「長老」議員

―自民党=原発維持・推進、野党=原発反対という構図で考えると、自民党が議席を減らすことはエネルギー政策への影響も大きい。カーボンニュートラル、それにCO2排出46%削減の目標を達成するには、原発の稼働や新増設・リプレースなどが欠かせないが。

電力 もちろん、自民党内には原発立地地域の出身議員を中心に、原子力は欠かせないと考える議員は多くいる。だが、衆院で過半数の議席を得ている今も、党として原発に寛大になったわけではない。原子力推進の象徴だったエネルギー基本計画での新増設・リプレース記載も結局、見送られた。

マスコミ 与野党問わず、常に政治家の頭の90%を占めているのは選挙のことだ。福島事故から10年たったが、今も原発への反感は強い。もし自民党が原発推進だけの政党ならば、多くの国民の支持は得られない。

 党内には河野太郎行政・規制改革相、小泉進次郎環境相をはじめ、反原発派議員が少なからずいる。エネルギー政策を真面目に考えている議員にとっては、こういう人たちの発言や態度は無責任としか映らないだろう。

 だけど、河野さんや小泉さんがいることは、党にとって、そんなに悪いことじゃない。都心部を中心に、一定の有権者の支持をつなぎ留めている面がある。

石油 そういう面もあるかもしれない。だが、やりすぎじゃないか。河野さん、小泉さん、それに金融機関を通じて酒類の提供停止の圧力をかけようとした西村康稔経済再生担当相。この3人への役所の評判は非常に悪い。官僚からすると、西村さんのやったことは普通はあり得ない。3人とも事務方の言うことを聞かず、半ば思い付きで物事を進めているという。

マスコミ 安倍晋三前首相が月刊誌で、次の首相候補を挙げている。加藤勝信官房長官、下村博文政調会長、茂木敏充外相、岸田文雄前政調会長の4人。河野さん、小泉さんはともかく、総裁選に立候補したこともある西村さんの名前を挙げなかったことは意味深だった。

電力 エネ基での原発の扱いの件も、再エネ拡大しか念頭にない小泉さんが大分、いろいろと動いたようだ。不思議なのは細田博之さんや額賀福志郎さんのような、エネルギー関連議員の「長老」が、小泉さんたちがやりたい放題やっていることに、声を上げないことだ。さすがにある幹部は「調子に乗るな」と一喝したようだが。

ガス 小泉さんは今までも、ことあるごとに脱原発を主張してきた。今回エネ基のことで、党内に150人近くいる原発推進の議員を完全に敵に回したと思う。ただ「これで政治家として一皮むけた」という人もいる。脱原発を政治信条として、今後もぶれないで主張していくということだ。

―一方、都議選の敗北で自民党内がぎくしゃくしだしたようだ。

マスコミ 3A(安倍前首相、麻生太郎財務相、甘利税調会長)と二階俊博幹事長との関係は相当、深刻らしい。岸田派の林芳正元文部科学相が、参院からくら替えし衆院選に山口3区から立候補する。この選挙区には二階派の重鎮で、官房長官、文科相を歴任した河村建夫さんがいる。二階さんとしたら、完全にけんかを売られたと思うだろう。

 二階さんは、中央政界復帰がうわさされる小池都知事との関係が良い。脱炭素化を目指す中、きちんとしたエネルギー政策を進めるには、自民党がしっかりしてもらわないと困る。だけど総裁選も絡んで、これから一波乱あるかもしれない。

太陽光の発電コスト 朝日の「偏向報道」再び

―話題を変えるが、経産省が7月12日に2030年の電源別の発電コストの試算を公表した。太陽光発電が原発を下回ったことで、各紙大きく取り上げている。

電力 朝日は「発電コスト最安、原子力→太陽光」、毎日は「発電費最安は太陽光」。いずれも13日の朝刊一面で扱った。ただ今回、「朝日はひどいな」と思った。太陽光など出力が天候で変わる電源を系統につなぐと、変動を吸収する火力発電が必要になる。そういった系統安定化費用について全く触れず、龍谷大の大島堅一さんに「原発が経済性に優れている根拠はなくなった」と言わせている。

 毎日も同じように、大島さんの主張を掲載している。しかし、東大の荻本和彦さんの「(系統安定化費用が)含まれていない要素も多い」とのコメントを掲載して、わずかだがバランスを取ろうとしている。

―朝日だけ読んでいる国民は、完全に「洗脳」されてしまうな。

【石炭】120年に一度 竹の花の枯死

【業界スクランブル/石炭】

 米東海岸でセミの大量発生が始まった。17年周期で現れることから「周期ゼミ」「素数ゼミ」などと呼ばれる。17年に一度だけ大量発生を迎えるとは何とも不思議だ。これだけ気温が上昇し、土も一定の温度に上昇すると、「ブルードX」と呼ばれるセミの集団が一気に姿を現す。17年間、木の根元で生きてきた何十億匹ものセミの幼虫が地中からはい出て、羽化し、餌を食べて繁殖の相手を探し始める。これはセミの氷河時代の生存戦略がいまに続いているためだといわれている。

一方、120年に一度しか咲かない「竹の花」が2021年に入って日本各地で開花し続けている。歴史から見るこの示唆は諸現象の「完全なパラダイムシフト」への徴候といえるかもしれない。

竹という植物は、花が咲くと、竹林ごと一斉に枯れてしまう。竹を主食にするジャイアントパンダにとっては試練の年になるが、一斉に新しい竹の生命群が誕生する意味がある。すなわち完全に刷新されるということに気付く。

竹の開花後の枯死では、若い竹も古い竹も完全に枯れてしまうので、中途半端な再生産ではなく、「完全に消えて」「完全に生まれ変わる」。例えば大規模な枯死のあった 08年という年を「逆」から見てみれば、確かに大変な状況の年だったかもしれない。「リーマンショック」だ。多くの人々の考え方が、一気に変転した年でもあった。価値観の変転、あるいは完全なる生まれ変わりの年だったように思える。

1960年代の枯死の時がどうだったかというと、日本では高度経済成長に突入し、産業構造が大きく変化した。エネルギー革命が進展し、蒸気機関車は徐々に見られなくなった。「石炭利用200年」の歴史の間に竹の花が何度咲いたかは分からないが、いくつかのタイムエポックがあったことは間違いない。未来から振り返ったとき、21年は「脱炭素」へとシフトチェンジするエポックメイキングのタイミングだったと、記憶されることになるのだろうか……。(C)

消費行動に変化の兆し 当たり前の基準が変わる

【リレーコラム】岩船由美子/東京大学生産技術研究所 特任教授

 あるシンポジウムで、カーボンニュートラル(CN)に向けて、地球温暖化・エネルギー問題を各消費者に「わがこと化」してもらうためにどうすればいいだろう、という議論になった。環境問題のわがこと化とは、環境にいいことをしたいという気持ちを持てるか、実際にそれを行動に移せるか、の二段階ある。後者は行動時にどの程度のコストなり時間なり手間なりを負担できるか、というレベルもあるだろう。CN実現のためには、ドラスティックな対策が必要である。国際エネルギー機関が言うように、建物で燃焼系の暖房給湯機は禁止しなくてはならないかもしれないし、屋根への太陽光発電の義務化が必要かもしれない。しかし今春設置された「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」では、住宅の省エネ基準の適合義務化や太陽光発電の義務化が検討されたが、結局後者は消費者負担などを理由に見送られた。国が一般消費者の私財への義務化に踏み込むのは容易ではない。

環境配慮の行動が浸透

温暖化問題は、一般的に被害が顕在化するまでのタイムラグが長く、実感が持ちにくいため、優先順位が低いといわれてきた。特に日本では、異常気象との関連は懸念されるものの、人々の関心が薄く、グレタさんのような活動に対しては、冷笑的な反応が多かったように思う。私も長いこと、家庭部門の省エネ、低炭素化に取り組んできたが、環境配慮型の消費者というものを前提としない、つまり性善説は期待しないでどう仕組みを作るべきか、という視点で考えてきた。

しかし、ここにきて日本でも、人々の消費行動が変化しているように思う。プラスチック利用や再配達削減など、負担の小さい範囲から環境に配慮した行動が浸透しつつある。エコな製品の選択の幅も広がり、民法テレビ番組の中でSDGsを取り扱った番組も多くなった。フランスでは電車で2時間半以内で行ける国内線空路を全面禁止するという。より大きな負担を許容するような消費者が日本にも今後増える可能性も十分期待できる。

エネルギーに関する環境配慮行動はコストがかかるので、プラスチックのようにはいかないかもしれないが、このような消費者の変化を捉え、適切な情報を提供し、省エネ・低炭素な暮らしが積極的に選択されるようなムードを作っていけないものだろうか。テレビの喫煙シーンも、会議でのペットボトルの利用も当たり前だったものが当たり前でなくなった。当たり前の基準は変わる。エネルギーに関する当たり前の基準もきっと変わる。

いわふね・ゆみこ 1991年北海道大学大学院電気工学専攻修士課程修了。三菱総合研究所入社。住環境計画研究所、東京大学生産技術研究所エネルギー工学連携研究センター講師、准教授を経て2015年4月から現職。

※次回はLooop電力事業本部エネルギー戦略部の渡邊裕美子さんです 。

【宮沢洋一 参議院議員】拙速な議論をすべきではない

みやざわ・よういち 1974年東京大学法学部卒、大蔵省(当時)入省。92年首相首席秘書官、2000年衆議院議員(当選3回)、08年内閣府副大臣、10年参院議員(当選2回)、14年経済産業相。自民党税制調査会長などを歴任。

自民党内の「税制のプロ」として、脱炭素化政策を踏まえた税金の在り方に取り組む。

だが、カーボンプライシングの導入には市民生活、産業への影響から拙速な議論にくぎを刺す。

2015年10月、自民党税制調査会長のポストに就いた。現在も税調小委員長として、市民生活や企業活動に大きな影響を与える税制について、さまざまな利害を調整する重責を担う。

昨年10月、菅義偉首相は50年カーボンニュートラルを宣言した。また、今年4月には30年度に温室効果ガス排出を13年度比で46%削減すると表明。エネルギー・環境政策は、脱炭素化の方向に大きくかじを切った。再生可能エネルギーの普及拡大や原子力などの在り方に加え、地球温暖化防止策としてカーボンプライシング(CP)の導入についても検討が加速することになる。

だが、CPについては、導入を前提とした議論が拙速に進むことにくぎを刺す。「30年度46%削減を意識したカーボンプライシングについては、十分に気を付けなければいけない。導入して消費者や企業の負担が増えることになった場合、市民生活への悪影響や企業が生産拠点を海外に移すなど、経済に打撃を与えかねない」

長年税制に取り組んだ政治家として、CPは制度そのものが、「仕組みとして非常に難しい」と話す。「これから伸びる企業や成長する産業の分野が損をして、衰退産業が得するようにしてはいけない。省エネなどに熱心に取り組んだ企業や国民が損をする制度は導入してはいけない」。現実的で実効性・公平性のあるCPが望まれるが、「乗り越える知恵はなかなか出てこない」と認める。例年、難題が持ち込まれる党税調に、また一つ大きな課題が増えたことになる。

一方、EUが導入に前向きな炭素国境調整措置(炭素価格が低い国で作られた製品を輸入する際に、炭素の価格差を事業者に負担させる仕組み)には目を光らせている。「ヨーロッパが実際に実行し始めたら、当然、対抗措置を考えなければならない」と注意を怠らない。

脱炭素化の柱の一つである電気自動車(EV)。しかし、ガソリン車などと同じく道路を利用しながら、揮発油税など燃料諸税を支払っていない。EVの大量普及、また電化などの拡大を前に、石油石炭税、温暖化対策税、揮発油税など現在の化石燃料関連税制の見直しを求める声がある。これらの声に真摯に耳を傾ける。

「カーボンニュートラルを目指す中で、化石燃料の税制を今後、どうするか考えなければならない状況になっている。電気もつくるときはかなりのCO2を排出する。まして日本は、世界を見ても太陽光発電や風力発電に最も向いてない地域の一つ。そういった要素を勘案して、税の仕組みを考えていかなければいけない」。税制のプロとして、手腕を振るう考えだ。

菅首相の脱炭化政策を評価 税制などで政策を支援

政治家一族に生まれ、幼少時、「将来は自分も政界に」との思いがあった。だが大学卒業後、大蔵省(当時)に入省し、日夜陳情や交渉に明け暮れる政治家の姿を目のあたりにして、「大変な仕事だな」と気持ちに揺れが生じる。

1993年6月18日、伯父・宮沢喜一首相の政権に対して、衆議院で内閣不信任案が可決される。自国開催の先進国首脳会議(東京サミット)を7月7日に控えながら、宮沢首相は衆院を解散。総選挙になるが、首相は地元に帰らず、代わりに選挙区を回ることに。「これでもう、政治の世界から抜け出られなくなった」。その後、元首相の政策秘書を経て、2000年の衆院選で初当選を果たす。

14年10月に経済産業相に就任。前年の13年にポーランドで開かれたCOP21 (第21回気候変動枠組み条約締約国会議)では、各国に排出削減目標の作成を求めていた。この策定作業では、次の2点を官僚に指示した。①基準年を最新のものにすること、②再エネ、原子力などの割合に幅を持たせること―。結果として、「30年度26%削減」と現実的な削減目標がつくられた。

その経験を踏まえて、「46%削減」について、「かなり高い目標。さらに排出量を減らすのは大変な作業になるだろう」と話す。さらに50年目標については、「現在は存在しない技術がないと達成できない。カーボンニュートラルは30年度目標の先にあるのではなくて、おそらく異次元のことを行わなければ達成できない。それがこの問題を難しくしている」と見ている。とはいえ、菅首相の判断を「大変大切なことであり、良いこと」と評価。税制などさまざまな面で脱炭素化の政策を支援していく意向だ。

趣味のゴルフはコロナ禍で足が遠のいている。最近はもっぱら料理で気分転換。半日かけてシチューをつくったり、夫人と交互に酒肴をつくり、晩酌を楽しむことも。

【石油】産油国の決裂 脱炭素の影

【業界スクランブル/石油】

 7月5日、OPEC(石油輸出国機構)プラス閣僚協議が事実上決裂した。サウジとロシアが事前合意した8月以降の減産緩和(増産)方針について、アラブ首長国連邦(UAE)が異議を唱え決議できなかった。UAEの主張は減産の基準生産量の増量である。基準である2018年10月生産量は原油生産能力に比して小さ過ぎるというものだ。

予想外の展開に、市場も直後は「8月以降の増産はない」と、WTI先物は時間外で75ドル台から77ドル目前まで上昇したが、6、7日と続落して72ドル台となり、不安定な動きを示した。

過去、UAEは石油政策でも外交政策でもサウジと同一歩調を取ってきたが、近年、不協和音が聞こえている。カタールとの国交回復でも、イエメンからの軍事撤退でも、イスラエルとの和平でも、サウジと対応が異なった。

特に反発したのは、サウジによる海外企業に対する24年以降の政府取引におけるリヤドへの中東本社・地域本部設置義務である。現在、本邦企業を含め中東本部はドバイに置かれることが多い。これは「ポスト石油」を見据えたUAEの長年の努力の成果である。UAEにすれば、ビジョン2030もアラムコ株式上場も難航しているサウジによる横暴である。その意味でOPECプラスでは、UAEはサウジと最後まで対立しない。

明らかに、今年に入りサウジもOPECプラス参加各国も、脱炭素を意識し、原油高価格誘導政策に転換した。「稼げる間に稼ぐ」ということだ。いつもとは違い、原油が高くなると違反増産に走る産油国も出ていない。サウジも、スイング拒否・シェア優先から自主減産を宣言、高価格政策に転換した。その中で、脱炭素に準備万端なUAEがわがままを言った、ということだろう。したがって、昨年3月の協議決裂時のように、サウジが増産で安値価格戦争を仕掛けることはない。石油需要が本格的に減少を始めるまでの間、原油価格は高止まりする可能性が高い。(H)

【マーケット情報/8月20日】原油急落、感染拡大で需要減少の観測強まる

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み急落。20日時点で、米国のWTI先物価格はバレル62.32ドルとなり、前週比で6.12ドル下落。北海原油を代表するブレント先物も、前週比5.41ドル安の65.18ドルまで値を下げた。いずれも5月20日以来、3カ月ぶりの安値だ。

新型コロナウイルスの変異株が猛威を振るうなか、世界各地で感染が拡大してる。ニュージーランドとイランは、ロックダウンを再導入。日本も緊急事態宣言の対象地域と期間を拡大しており、石油需要が冷え込むとの見方が広がった。

また、経済活動の減速に加えて、欧米では、ガソリン需要が盛り上がりを見せる夏季のドライビングシーズンが終わりに近づいている。実際、米エネルギー情報局が毎週発表する統計では、ガソリン在庫が増加。買いを慎重にさせる材料となった。

さらに、米国の石油サービス会社ベーカー・ヒューズが先週発表した国内の石油掘削リグの稼働数が、前週から8基増えて405基となり、2020年4月以来の最高を記録。OPECプラスによる協調減産で7月の遵守率が前月を3ポイント下回る109%に低下したことも、価格を押し下げる要因となった。

【8月20日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=62.32ドル(前週比6.12ドル安)、ブレント先物(ICE)=65.18ドル(前週比5.41ドル安)、オマーン先物(DME)=65.70ドル(前週比4.39ドル安)、ドバイ現物(Argus)=65.33ドル(前週比4.57ドル安)