
世界的に脱化石燃料シフトが進む中、カーボンリサイクル技術に着目した議連を立ち上げた。
日本の産業競争力を守る観点から、欧州主導の気候変動政策に強い危機感をにじませる。
幼少期から「国のために働きたい」との思いが強かった佐藤氏。祖父は旧内務省の土木官僚で、英国大使や国会議員を務めた親戚もおり、「日本のために、世界に通じるグローバルな人材を目指していた」という。
高校卒業後はいったん上智大学に入学したが、その後、米コロンビア大学に編入。ニューヨーク大学で経済学博士号を取得した。欧米で計16年を過ごし、帰国後は外資系証券会社でエコノミストとして活躍する傍ら、経済産業省の審議会委員、財務省や日本銀行の審議委員の経済ブレーンも務めた。そして「実際に政策を決定する側で、日本経済を再建する」との思いで政治家に転向した。
2005年岐阜1区から出馬して衆議院初当選。参議院を経て、14年大阪11区より出馬し衆院議員に返り咲いた。
経産大臣政務官、総務副大臣、環境副大臣を歴任し、現在は自民党政調の経済産業部会長などを務める。
昨年10月、菅義偉首相は米中に先立ち「50年カーボンニュートラル目標実現」を掲げた。再生可能エネルギーの大量導入や火力発電所のゼロエミッション化、原子力発電の活用など、進展させるべき事項が多いだけに、実現には相当なチャレンジが必要だと予想される。
そうした中、佐藤氏は自民党内で今年3月26日、「カーボンリサイクル技術の国内確立及び需要拡大のための議員連盟」を発足。同議連の発起人代表として、会長に就任した。
技術確立に加え〝需要拡大〟も議論 欧州の脱炭素シフトに強い危機感
議連はカーボンリサイクル技術の確立および推進に加え、「需要」の拡大にも主眼を置いている。佐藤氏を含め、経産省、環境省、国土交通省や農林水産省の副大臣経験者を巻き込み、エネルギー、運輸、素材化学、農業など、幅広い産業に議論を進めていく構えだ。
特に注目するカーボンリサイクル技術が、石油の代替燃料となる合成燃料「e-fuel」。これは水素とCO2の利用により精製する液体合成燃料で、カーボンニュートラルとなる。またe-fuelの供給に既存のガソリンスタンドなどのインフラを再活用できるのも、産業上の大きなメリットだ。
「商用化に向けては大口需要家の育成が必要になる。自動車のほか船舶や航空機などで本格的活用につながるよう需要喚起も必須。産業間の横断的連携が重要だ」と強調する。
これらの新技術を確立するのに鍵を握るのが水素の調達方法だ。現在は川崎重工業やJパワーが豪州で採掘される褐炭から水素を精製してタンカーで輸送する実証事業など、資源国から化石燃料由来のブルー水素を輸入する取り組みを行っている。ただし、これらはあくまで過渡期の対応で、「中長期的には一定量の水素需要を国内で賄うサプライチェーンの確立が必要だ」と持論を語る。
「カーボンニュートラル実現に向けて燃料や原材料の脱炭素化が進めば、エネルギーも中東依存から脱却し、国内自給率を高められる可能性がある。水素調達も100%輸入に頼るのではなく、自給率を高めることが重要だ。再エネで精製するグリーン水素の国内生産の商用化を実現するためには、再エネ価格やグリーン水素の生産コストを下げる生産技術の確立も必須。議連ではこれらを見定め、政策提言を行っていく」
電源構成については、現在の石炭火力への依存を低減し、カーボンフリーな電源を増やすという点で原発にも理解を示している。
「国内で安価な水素を製造するためには、再エネの大量導入も含め、カーボンフリーな電力供給を増やすことが大前提。カーボンニュートラルの推進と電力需給調整の安定化を両立するためには、現実的に原子力の役割は小さくない」。国の安全審査をパスし、地元住民の合意を得た原発の再稼働に向けた議論は不可避と容認する姿勢だ。
座右の銘には、「レガシーからの脱却」という言葉を挙げた。「日本の重厚長大な産業は高度成長期の経済発展を支えたが、安価な化石燃料が土台となった。新興国では最先端技術が一足飛びで普及するリープフロッグの現象も起きる。〝先進国〟では老朽設備の廃棄コストがかかり、これが大胆で新鮮な発想の阻害要因ともなっている。これまで積み上げてきたレガシーを捨てる覚悟も必要だ」
急速に進む脱化石燃料シフトに対する危機感は強い。「欧州では製造過程でCO2を多く排出する製品をサプライチェーンから外したり課税したりする国境炭素調整のような議論も活発化している。日本が欧米のルール作りに積極的に参画し、製品規格化に関わっていくことが国内産業競争力の維持にとり重要だ。まさにこの4~5年が正念場になる」
日本が再び世界に伍する成長を遂げるようどう設計するのか。大きな注目が集まる。


