新電力決算で影響浮き彫り 尾を引く価格高騰の余波

新電力各社の2021年3月期決算が、5月から7月にかけて続々と発表されている。20年度冬に、電力需給ひっ迫に伴う日本卸電力取引所(JEPX)スポット価格のかつてない高騰と、「玉切れ」によるインバランスの大量発生という二重苦に見舞われた新電力。各社の決算からは、需給ひっ迫が経営に与えた打撃の大きさをうかがい知ることができる。

梅雨明け後の猛暑で、今年夏のスポット価格は上昇傾向だ(東京・銀座)

まず注目されるのが、仕入れにかかる費用に当たる売上原価が売上高を上回った事業者が目立つことだ。たとえばみんな電力は、売上高を昨年度比2・3倍の131億円に伸ばしたものの、売上原価が同2・5倍の135億円となり約3億5000万円の売上総損失を出している。九電みらいエナジーも、売上高を昨年度比倍増させたが、売上原価は同2・7倍に。売上総損失は158億円に上る。

短期の借入金も軒並み増加。価格高騰による調達コスト増に加え、電力供給の計画と実績の同時同量を達成できなかったことに伴うインバランス精算の負担が重くのしかかり、「エナリスやSBパワー、HTBエナジーなど、多くの新電力が親会社や金融機関から資金を借り入れることで苦境をしのいだ」(新電力関係者)ためだ。

その一方で、増収増益の好決算となったのがイーレックスだ。「自社・相対電源を中心に調達コストの低減に努めたほか、冬の価格高騰時には、相対電源を積み増し、一部を卸売りしたことで収益を伸ばした」ことが、他社との明暗を分けたという。

今年度夏・冬も厳しい需給が見通される中、新電力の間では採算性の低い顧客の切り離しや、新規の獲得を控える動きも出ている。価格高騰の爪痕は深い。

山間部太陽光「乱開発」の恐怖 土石流災害でリスク浮き彫り

静岡県熱海市の土石流災害は、山間部での太陽光開発のリスクを浮き彫りにした。

盛り土のあった崩落現場周辺で一体何が起きたのか。事実関係を取材した。

 「7月3日の土石流災害を引き起こした伊豆山の盛り土崩落現場の周辺一帯(約120ha規模)は、麦島善光氏が所有している土地だ。その中に、問題の太陽光発電所や計画中の太陽光案件がある」

静岡県熱海市の事情に詳しい関係者はこう話す。メディアではあまり報じられていないが、固定価格買い取り制度(FIT)の事業計画認定リストを見ると、伊豆山界隈では麦島氏が関係するZENホールディングスの既存発電所のほかに、グループ企業で二つのソーラー計画が持ち上がっている。

一つは、中央ビルの「47.3kW×14件(662.2kW)」(伊豆山字獄ケ1172ノ1)。もう一つは、ユニホーの「47.3kW×4件(189.2kW)」(伊豆山字獄ケ1172ノ27)。いずれもZEN社と同時期の2013年8~10月にFIT認定を受けたものだ。「当時の買い取り価格はkW時36円と高額。発電事業者にとって、おいしい案件なのは間違いない」(大手電力関係者)

FITリスト上では、まだ運転開始前の状態。ネット上の地図で「伊豆山字獄ケ」を検索したところ、場所を特定できなかったため、法務局に問い合わせると、崩落現場のすぐ北側であることが分かった。改めて空撮写真(左頁写真)で現場付近を確認すると、小規模な太陽光発電所が1地点あり、その西隣には土色の地肌が見える場所が二カ所。さらに北側を大きく蛇行する道路の先には、森林が伐採されたような広い土地がある様子がうかがえる。この辺りが太陽光の計画地点なのだろうか。

宅地開発がなぜ太陽光に? 疑問符だらけの計画

関係者によれば、崩落地の元所有者である新幹線ビルディングでは、伊豆山周辺で大規模な宅地開発を検討していた。麦島氏が同地を購入する2カ月前の10年12月に、現場周辺を撮影した動画がネット上に残っている。その中で、撮影者らは「35万坪の広大な敷地に住宅が建つ」「眺望が最高」「温泉の掘削機もある」などと土地の良さを盛んにアピール。既に盛り土も行われており、周辺一帯で大型リゾートのような開発計画があったことを裏付ける。

そのような土地を麦島氏がなぜ購入し、10年以上たった現在も宅地開発が行われていないのはどうしてか。複数の太陽光発電所がどのように計画され、その一部はなぜいまだ着工していないのか。疑問符だらけの状況について、前出の関係者があくまで個人的見解と断った上で、こう推測する。

「麦島氏が土地を買った経緯は分からないが、ZENグループは不動産事業がメインのため、そもそもは宅地開発を行うつもりだったのだろう。しかし購入後に調べてみたら、地質は火山灰だし、ハザードマップ上の危険エリアだし、保安林指定もあるしと、宅地開発には不向きな場所であることが分かった。ただ全てそのまま放置しておくのももったいないといった理由からか、とりあえず一部の地域に関しては、高収益が期待できる太陽光発電事業を計画したと考えられよう。実際、麦島氏側はメディアの取材に対し、盛り土付近の場所ではさまざまな計画を考えていたと話している。そんなところが裏事情なのではないかな」

今回の盛り土崩落の原因について、現地調査を行った地質学者の塩坂邦雄氏は7月9日の会見で、太陽光パネル造成で尾根が削られたことで、雨水の流れ込む範囲が変化し盛り土側に流入した結果、土石流を誘発したと言及。上部の高い地域からの流入量を考慮すべきだとの見方を示した。

これに対し、静岡県の難波喬司副知事は当初、塩坂氏の見解を真っ向から否定したものの、14日になると一転。「流域外からの地下水を考慮しなければならない」「逢初川源頭部には流域外の地下水が流入した可能性がある」と修正し、塩坂氏に謝罪したのだ。

県側の分析では、現所有者によって盛り土周辺地域で土地の改変が行われた可能性や、上部からの雨水流入が崩落の一因になった可能性を示唆している。太陽光建設計画が何らかの影響を及ぼしたと考えても不思議ではない。

果たして、事実関係はどうなのか。麦島氏の代理人を務める河合弘之弁護士に質問状を送ったところ、次のような回答があった。

Q 盛り土は10年間放置状態だったとの話に間違いはないか。

A 崩落地は一切触っていない。40万坪のほかの部分には施工をしたことがある。

Q ZEN社の太陽光発電所の土地から盛り土方面に雨水は流れていないとしているが、専門家の中には「実際は流出していた」と見る向きもある。

A ソーラー側から崩落地に雨水が流れたことはない、その証拠もないと認識している。

Q 中央ビルとユニホーの太陽光計画の地点は、法務局によれば崩落現場の北側とのこと。計画は現状どうなっているのか。

A 計画は着工していないし、当分そのままになる。

Q 今回の崩落について、麦島氏側は土地所有者としての責任をどう考えているか。

A 崩落の原因が不可抗力とも言うべき天災のためか、ずさんな工事のためか、行政の規制権限不行使のためなのか、分からない現状で、責任問題を軽々に論ずることはできないと考えている。

崩落前の盛り土(写真下側)周辺地。左下に太陽光発電

「伊豆山」は氷山の一角 山間部太陽光を禁止の声

いずれにしても、現在も調査は続いている。梶山弘志・経済産業相は7月16日の会見で、「発災当初から(太陽光発電の)事業者に対し、設備の健全性などの確認を行ってきた」「事業者からは(直接)現地確認はできていないが、太陽光設置現場に損壊はないと判断していること、排水施設等を設けていることなどの回答が得られている」などとした上で、「国土交通省や自治体、特に静岡県が中心となって調査を進める中で、情報提供などで連携しながら対応を検討していく」と強調した。

熱海災害を独自に調査している物理学者の高田純氏(札幌医科大学名誉教授)は、太陽光乱開発全般に警鐘を鳴らす。

「(伊豆山は)氷山の一角にすぎない。全国に同様のリスクがあると考えている。政府は山間部での太陽光開発計画を全て凍結させ、再発防止策を講じるべきだ。最良の策は山間部太陽光開発自体を禁止すること。国土破壊は絶対に許されない。破壊された山は修復できず、さらに災害を誘発する」

本誌では次号以降も、全国で多発する太陽光乱開発の実態を取材し、問題点を検証していく。

太陽光開発などが影響か? 熱海土石流で浮上する人災疑惑

7月3日午前10時半ごろ、静岡県熱海市で未曽有の土石流災害が発生した。長引く大雨の影響で伊豆山上部の盛り土が崩落。海岸へと続く逢初川を大量の土砂などが流れ落ち、瞬く間に人や家屋を飲み込んだ。報道などによると、7月20日現在、死者19人、不明者9人で、被害を受けた家屋は約130棟に上る。

熱海土石流の発生現場から下流を望む。右側にZEN社の太陽光発電所

「今回の災害は人災だ」。多くの専門家や地元関係者は、異口同音にこう指摘する。というのも、崩落現場(伊豆山赤井谷)にあった人工の盛り土が大雨によって岩盤ごと崩れ落ちる「深層崩落」が発生。大規模な土石流となった可能性が高いとみられているからだ。

問題の盛り土は、2006年9月21日に同土地の所有者となった不動産関連企業の新幹線ビルディングが宅地開発を目的に造成。同社の破綻を受け11年2月22日に熱海市がいったん差し押さえ、3日後の25日に現所有者である麦島善光氏の手に渡った。その後、現在までの約10年間にわたって事実上放置されていたもようだ。一部では、盛り土が県条例に基づき熱海市に届け出られた計画の高さ15mを超え、50m近くになっていた可能性も指摘されている。

加えて、崩落との因果関係が指摘されているのが、盛り土現場の南西側すぐ隣にある大型の太陽光発電所だ。ネット上では災害直後から「適切な雨水対策が講じられていないように見受けられる」「防草シートなどによる保水力の低下が原因では」「発電所上部が盛り土現場よりも高い場所に位置するため、大量の水が流れ落ちて崩落につながったのかも」などと指摘する声が上がっていた。

太陽光発電を巡る疑惑 所有者側は関連否定

実は、この発電所の土地所有者も麦島氏である。同氏が役員に名を連ねるZENホールディングス(東京都千代田区五番町)が13年10月に、「46・2kW×11件(合計508・2kW)」で固定価格買い取り制度(FIT)の事業計画認定を受け、発電所を開発・運営している。気になるのは、厳しい安全規制が適用されない「低圧分割案件(17年度からFITの適用除外)」として制度の抜け穴を利用していることに加え、県の土砂流出防備林保安林指定区域とみられる地域に立地していることだ。県が開発を認めているため違法とはいえないが、事実なら県の責任も問われる可能性がある。

こうした疑惑に対し、麦島氏の代理人はいち早く「発電所内の雨水は、盛り土とは反対側の斜面に流れるように設計されている。崩落との関係はない」と否定。また盛り土自体についても「麦島氏は10年前に盛り土の土地を購入してから、一度も手を加えたことはないと言っている」などとして、火消しに躍起の状態だ。

ただ災害の前まで、盛り土付近をトラックなどの重機が頻繁に往来していたと証言する住民も。また崩落現場周辺では、麦島氏と関連のある別の企業が大型太陽光発電所の建設を計画していることも本誌の調査で判明した。果たして実態はどうなのか。(本号28頁の「調査報道」で詳報)

福島事故を機に原子力研究 安全運転の継続へ学術的に貢献

【中森文博/電力中央研究所 エネルギートランスフォーメーション研究本部 材料科学研究部門主任研究員】

なかもり・ふみひろ 大阪大学大学院で博士号を取得後、2018年入所。燃料被覆管に関する研究を行う。また、1Fの廃止措置に関する研究を東京電力HDとともに行う、原子力分野の若手第一人者。日本原子力学会若手連絡会の副会長(企画)も務める。21年7月から現職。

通常運転時における燃料被覆管や1Fの廃止措置に関する研究を行う、電中研・中森文博主任研究員

大学院から原子力の研究に足を踏み入れた中森氏にこれまでのキャリア、今後の目標を聞いた。

 一緒に頑張りませんか?――この言葉が、電力中央研究所の中森文博主任研究員が原子力技術の研究に踏み出すきっかけになった。2011年3月、舞鶴工業高等専門学校専門科で電気・制御システム工学を専攻していた中森氏は、電気・情報系の大学院への進学を考えていた。進学先を検討していた矢先に、東日本大震災、福島第一原発(1F)事故が起きた。

ほどなくして、通っていた高専で開かれた大学院の説明会に福井大学大学院原子力・エネルギー安全工学専攻の福元謙一教授(当時)が来た。事故後、原発に対する世間のイメージは悪化していた。福元教授は、中森氏らに語りかけた。「われわれも今まで見たことがない事故が起きた。今後の事故対応や、原子力発電の安全性向上など、やらなければいけないことがたくさんある。何とかしなければならない。一緒に頑張りませんか?」

「君たちの世代で課題を解決してほしい、ではなく『一緒に』という言葉に引かれたんです」。福元教授の言葉に胸を打たれた中森氏は、福井大学大学院への進学、そして原子力技術を本格的に学ぶことを決意する。

当然のように親族からは反対に遭った。しかし、工学系の仕事をしていた親戚は「文博君がこれからやろうとしていることは大切な仕事だと思う。誰かがやらなければいけない」と背中を押してくれた。最終的には父と母も応援してくれた。

大学院では、燃料に用いられるウランを使用した研究に従事した。進学し、博士号を取得した大阪大学大学院では、福島第一原発事故によって生成した可能性がある燃料デブリの物理的性質の研究を行った。

「原子力を学ぼう、と決めてからは毎日、目の前のことをこなすことに必死でした」。原子力工学を学んだバックグラウンドを持たない「新参者」だった中森氏は懸命に研究を重ねた。福井大学大学院、大阪大学大学院の教職員をはじめ、多くの学友にも恵まれたという。「やっぱり、福島第一原発事故直後に原子力を研究した最初の世代なので、とにかく学生が不足していました。その分、先生方のお時間を使い放題であり、また先生方の責任や熱意も違いました。本当に人に恵まれていたと思います」

博士号を取得した後、18年から、電力中央研究所の原子力技術研究所で主任研究員として働く。

電中研では主に二つのテーマを研究する。一つ目は、燃料被覆管の微細構造の分析。3次元アトムプローブ装置を用いて、燃料被覆管に使用されているジルコニウム(Zr)合金を原子レベルで観察・分析する。この研究では、加圧水型原子炉(PWR)の燃料被覆管として使用されているニオブ添加ジルコニウム合金の照射によるニオブ分布の変化などを明らかにした。

二つ目は過酷事故時に燃料から放出されるセシウムと材料との反応性の評価。東京電力ホールディングスとともに、福島第一原子力発電所で使用されている塗料に沈着、浸透していると考えられるセシウムの性状を検討した。廃止措置や通常運転時の継続した安全性向上に資するため、通常から事故時の燃料と材料の挙動を学術的に取り上げる。

[3次元アトムマップ]照射によって形成されたナノレベルの原子の濃化(ナノクラスター)が観察されている

安全性向上が自分の使命 1F廃止措置に決着

10年前、原子力の「げ」の字も知らなかった中森氏は、今や博士号を取得し、電中研の主任研究員を務めるなど、原子力の若手第一人者になった。研究を続けていくうちに、原子力技術に対する使命感や責任感が日に日に強くなっているという。

「修士、博士時代にアメリカやドイツに研究で滞在したり、文部科学省から研究の支援をしてもらったり、教育にお金をかけてもらいました。それに見合うよう成果を創出し、後進につなげていきたいです」。事実、博士号を取得した大阪大学大学院で所属した研究室では、原子力に携わる日本人博士学生としては中森氏が約10年ぶりの採用だった。人材不足は、11年当初よりは解消傾向であるが、原子力技術研究の裾野を広げたいと常々思っている。幸い、同研究室で博士課程に進んだ後輩も現れた。

最後に、今後の目標を聞いた。中森氏は、定年までに福島第一原発の廃止措置に決着をつけるために、研究者として成果を出し続けることを挙げた。原子力発電に関する技術の安全性を学術的に担保することが役割だという。事故後に研究者としてのキャリアを歩み始めた中森氏には、達成目標に驕る、という考えは毛頭ない。定量的な指標を定める一方で、その指標がゴールだと思わずに研究を積み重ねる。継続した安全性の向上を追い求めることが、自分の使命だと覚悟する。

中森氏は日本原子研究開発機構が主催する研究者育成事業「英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業(英知事業)」のインタビューを受けた。後輩への応援メッセージには、「1Fの廃止措置の達成~『一緒に』頑張りませんか?」と記した。「福元先生のぱくりですよ」。笑って話すその姿は、頼もしかった。

【コラム/8月2日】第6次エネルギー基本計画論序説

福島 伸享/元衆議院議員

 7月21日の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会で、第6次エネルギー基本計画の素案が公表された。私は、今年2月の「これでいいのか、第6次エネルギー基本計画」と題したコラム(https://energy-forum.co.jp/online-content/3974/)で、

【第5次エネルギー基本計画は従来の電源構成に焦点を当てた基本計画とは異なり、日本の産業構造全体の中での将来のエネルギー産業の姿を描いた革新的なものであること、技術や金融といったこれまでのエネルギー政策のツールとして中心的に捉えられてこなかった分野に焦点が当てられていること、などを指摘し・・・この路線を引き継いだ、革新的なエネルギー基本計画が策定されるのかどうかが、第6次エネルギー基本計画の見どころである】

と指摘してきたが、全体を通じて読んでみると、残念ながら革新的なものにはなっていない。今回のコラムでは、第6次基本計画の中身そのものへの評価の前に、その前提条件についていくつか思うところを述べてみたい。

 「はじめに」を読むと、冒頭東日本大震災及び福島第一原発の事故への言及がある。これは、ここ数次のエネルギー基本計画での通例ではあるが、さらに本文でも「東京電力福島第一発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて、エネルギー政策の再出発を図っていくことが今回のエネルギー基本計画の見直しの原点となっている」としている。

確かに、福島第一原発事故で明らかになった原発の「安全神話」を反省した規制のあり方の見直しや、同原発の廃炉、福島の復興への支援などは重要な政策課題である。一方、基本計画の根拠となるエネルギー政策基本法では、第12条で基本計画は「エネルギーの需給に関する施策」に関するものであるとされている。簡単に「反省と教訓」と言っているが、福島第一原発の事故が、日本のエネルギー(・・・・・)()需給(・・)()関する(・・・)政策の何の問題を浮き彫りにし、どのような方向性を示したというのか。この計画では、何ら実証的、論理的に示されていない。まさか、「原発は危ないから頼るのはやめましょう」という、俗耳に入りやすい情緒論ではあるまい。福島第一原発の事故が「エネルギー政策の再出発」と書きながら、この点が明確でないことが、第6次エネルギー基本計画が何を目的とした計画なのか、その性格を歪める原点となってしまっている。

「はじめに」で次に出てくるのは、「気候変動問題への対応」である。これも、昨今の国際状況を踏まえると、見逃すことのできないエネルギー政策上のテーマであるが、果たしてエネルギー政策上の主役に位置付けるべきものなのか。エネルギー政策基本法では、第2条で「安定供給の確保」、第3条で「環境への適合」、第4条で「市場原理の活用」という順序で、エネルギー政策の理念が列挙されている。立法時に、環境が先か市場原理が先かはかなり激しい議論が繰り広げられたが、「安定供給の確保」がエネルギー政策上の第一の目的であることは、誰しも否定する者はいなかった。言うまでもなく、小資源国の我が国にとって、いかにエネルギーの安定供給を実現するかが国家の要諦であり、環境問題の制約にいかに対応するか、効率的な供給をいかに実現するかは、それに従属する政策課題である。

「気候変動問題への対応は、これを経済成長の制約やコストとする時代は終わり、国際的にも、成長の機会として捉える時代に突入し」たと書いてあるが、あまりに楽観的に過ぎるのではないか。当然、各国の持つ資源の状況、地政学的条件、現時点での技術力や産業競争力などは異なる。それぞれの国に、それぞれの領域での強みと弱みがある。そうした中で、国家の存亡をかけて、気候変動問題というパラメーターを使って、国家の基盤であるエネルギーの安定供給を競うゲームをしているのが、世界の現状なのではないか。そもそも、エネルギーの安定供給なき国に、「成長の機会」などありえない。

気候変動問題への対応は、環境省、外務省など他省や政府全体でも取り上げるべきものである。一方、エネルギー政策基本法に基づくエネルギー基本計画は、我が国のエネルギーの需給に関する政策を示すもので、資源エネルギー庁以外で責任をもって構築できる省庁はない。「はじめに」の「日本のエネルギー需給構造の抱える課題の克服」に書かれている、エネルギー設備の高経年化や自然災害の問題、電気料金の高止まりは、日本のエネルギー需給構造の本質的な問題ではない。結局のところ、第6次エネルギー基本計画は、そうした本質的な問題には踏み込まず、政権からの目先の政治的要請とメディアが注目する点に応えようとするに過ぎないものになってしまっているのではないか。

この基本計画を読んでいるとそもそも、エネルギー基本計画とは何のためのものなのか、我が国のエネルギー政策の目標とは何なのか、資源エネルギー庁の役割とは何なのか、という根源的なところが日本政府の中で曖昧になっていることに、大きな危機感を感じざるを得ないのである。

【プロフィール】東京大学農学部卒。通商産業省(現経産省)入省。調査統計、橋本内閣での行政改革、電力・ガス・原子力政策、バイオ産業政策などに携わり、小泉内閣の内閣官房で構造改革特区の実現を果たす。2009年衆議院議員初当選。東日本大震災からの地元の復旧・復興に奔走。

【マーケット情報/7月30日】原油続伸、燃料需要の回復を好感

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油市場は、燃料需要の回復を好感した買いが強まり、主要指標が軒並み続伸。7月30日時点で、米国のWTI先物はバレルあたり73.95ドル、北海原油の指標となるブレント先物は同76.33ドルまで値を戻し、いずれも同月13日以来の高値を付けた。

新型コロナウイルスのワクチン普及を背景に、経済活動が徐々に回復。移動規制の緩和によって、ジェット燃料やガソリン等の輸送燃料に対する需要が改善しつつある。そうしたなか、米国では製油所の稼働率が落ちたこともあり、ガソリンと軽油の在庫が減少。さらに、原油在庫の減少も続いていることから、石油製品の需給逼迫を懸念した買いが強まった。

米エネルギー情報局が発表する最新の週間在庫統計によると、同国の原油在庫は9週連続で減少。5月半ばと比べると、5,000万バレル以上も減少している。生産と輸入の減少が背景にある。米国の石油サービス会社ベーカー・ヒューズが先週発表した国内石油ガス掘削リグの稼働数は488基となり、前週から3基減少。減少を示すのは、6月上旬以来、約2カ月ぶりとなる。

他方、インドでも石油需要の回復が予想されている。国営石油BPCL社とMRPL社は、9月または10月以降、製油所稼働率を100%まで引き上げることを計画しているもよう。現在は85~90%で稼働していることから、実現した場合は原油需要の増加が見込まれる。

ただ、新型コロナウイルスに対しては変異株の感染拡大に対する懸念は根強い。また、サウジアラビアとロシアの8~9月産油量が増える見通しであり、価格の上昇は幾分か抑制された。

【7月30日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=73.95ドル(前週比1.88ドル高)、ブレント先物(ICE)=76.33ドル(前週比2.23ドル高)、オマーン先物(DME)=74.03ドル(前週比1.32ドル高)、ドバイ現物(Argus)=74.54ドル(前週比2.15ドル高)

【省エネ】脱炭素での需要対策 国交省が担う重責

【業界スクランブル/省エネ】

2030年46%削減や50年脱炭素社会実現のためには住宅、建築物、街づくり、運輸、物流における徹底的な省エネ、再生可能エネルギー導入、脱炭素化が不可欠である。日本の産業競争力維持の点からも、30年までに工場などの産業部門の排出量半減は困難であり、その未達分も含めて、民生・運輸部門が大幅に削減する必要がある。当然、誘導施策では達成不可能な水準であり、従来とは次元の異なる建築規制強化などを実施せざるを得ない。これらの所管は国土交通省である。また、国の率先行動の観点からも、国交省の官庁営繕部が、CO2ゼロの新築官庁建築、建物・官舎改修、ゼロエミッション工事を先導する立場にある。

海外の先進規制事例でも、新築建物の断熱強化やPV・EVコンセント設置義務、m2当たりのCO2排出量規制、燃焼暖房禁止、ガソリン車の新車販売禁止などが進んでいる。関連機器などの市場拡大・価格低下効果は、導入補助事業よりも標準化規制の方が大きい。

政府の地球温暖化対策計画にも挙げられている通り、民生・運輸部門ではさまざまな取り組みが行われているが、国交省の規制強化こそが根本的かつ確実な対策といえる。一方、規制措置は影響が大きいことから、早期に具体方針を示し、十分な準備期間を設ける必要がある。当然、規制コスト増への対策も必要だ。例えば、自治体の建築確認申請手数料を引き上げ、審査体制を強化することも必要となる。また、中小工務店などへの習熟プログラム強化や、縮小業種の業種転換支援策(PV設置工事の技術講習など)も必要だ。

国内のZEB、ZEHなどの建築規制強化は、日本の建築技術力向上・メーカー技術力向上にも貢献し、C&T制度や炭素税のように国内産業界の競争力低下影響の懸念もなく、導入支援補助事業などよりも優先して取り組むべき課題である。この困難な規制措置実現のために、多くのハードルを越えるのは国交省の重責である。つまり、日本政府の温暖化目標が達成できるかどうかは、エネルギー供給側は経済産業省、需要側は実質的に国交省の努力が必須となる。(Y)

【住宅】太陽光の設置義務化 個人の自由束縛か

【業界スクランブル/住宅】

昨年10月の「2050年カーボンニュートラル宣言」を受けて国土交通省でも「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」が進行中である。21年5月開催の第3回の資料「今後の取組のあり方・進め方」を筆者なりに解読した結果を述べる。

まず、「住宅・建築物における省エネ性能の底上げ」については、「省エネ基準適合義務化を進めることについては各委員とも同意見」「義務化に際して財産権や職業選択の自由等の侵害とならないよう丁寧な制度設計が必要」などの記述があり、「省エネ基準適合義務化」に関しては、やるやらないの議論ではなく、どのように実施するかの次元に入ったとみるのが妥当であろう。

一方、「再エネ・未利用エネルギーの利用拡大に向けた住宅・建築物分野における取組」については、「太陽光発電設備の住宅等の屋根への設置を義務化すべき」「少なくとも新築住宅には義務化をしていくべき」という賛成意見と、「設置の義務化は慎重に検討すべき」「義務化すると個人の負うリスクが顕在化する」という反対意見が二分しているとの印象を受けた。現時点では、太陽光発電の設置義務化までは時期尚早との判断に落ち着くだろう。

ただ、この夏にまとめられるエネルギー基本計画見直しの結果が非常に気になる。国レベルのカーボンニュートラルは、ありとあらゆる分野の努力を結集しないと実現できない高い目標であり、やや暴言になるが個人の自由をあるレベルで束縛しないと実現できないと筆者は考える。

エネルギー基本計画では、CO2削減でカバーできない部分はCO2固定などの要素も加えて帳尻を合わせると推定しているが、50年に向けては、各分野でさらなるCO2削減量の積み増しが必要になってくる。その際には、「カーボンニュートラルは、個人の自由束縛、負うリスクをどの程度まで許容して、実現すべきか」という、より深いレベルでの有識者の検討を期待する。(Z)

【太陽光】達成は非常に困難 30年の46%削減

【業界スクランブル/太陽光】

4月22~23日に行われた米国主催のオンライン形式による気候変動サミットにおいて、40カ国の首脳が地球温暖化防止に向けたビジョンと目的を示した。地球の気温上昇を2050年までに1.5℃に抑えること、地球は極めて深刻な事態にさらされているという共通認識が確認された。

菅義偉首相は、日本政府は30年までに温室効果ガスの排出量を13年比で46%削減すると述べた。これまで日本は26%削減目標を表明していたことを考えると、非常に野心的な目標設定といえる。また、日本は国連の緑の気候基金に最大30億ドル(およそ3300億円)を拠出することを明らかにした。こちらはお金の工面なので全く先が見えないことはないだろうが、排出量46%削減目標の達成は容易ではない。

これまで、総合資源エネルギー調査会では、第6次エネルギー基本計画策定の基本方針として、50年カーボンニュートラルを見据え、30年削減目標26%をマイルストーンと位置付け政策検討を重ねてきた。それが政策主導とはいえ、いきなり2倍弱の目標を突き付けられ、従来の検討ストーリーが覆ってしまった。

カーボンニュートラルに向けての有望株としての洋上風力、火力+CCUS(CO2回収・利用・貯留)、水素・アンモニアなどのゼロエミガス火力には大いに期待したいが、削減目標を26%としていたときでも、30年の目標をなんとか達成できる再生可能エネルギーは工事期間の短い太陽光発電しかなく、それでも目標を達成するのは容易ではないため、さまざまな規制緩和を含む政策支援が必要なことが示されていた。

今回の政府の決定を受けて、一部からは、原子力発電の再稼働・稼働期間の延長、さらにリプレース・新増設を求める意見が表明されているが、国民の合意が得られる見込みは低い。首相が表明した新目標をどのように達成するか、政府は具体策を示しておらず、環境省、経済産業省、国土交通省を含むあらゆる省庁と企業、業界団体が一致協力して明確な道筋を早急に示す必要がある。(T)

【マーケット情報/7月23日】原油上昇、燃料需要増加への期待高まる

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み上昇。燃料需要回復への期待感が、価格の支えとなった。

欧州では、夏季休暇を前に、新型コロナウイルス感染防止を目的とした移動規制の緩和が続く。一方で、世界各地のデルタ変異株の感染拡大にともない、旅行は域内に限定されるとの見方が台頭。これにより、欧州のガソリンおよび軽油需要が、一段と増加するとの予測が強まった。

6月には既に、イタリアおよびフランスで、ガソリンと軽油の消費量が、パンデミック前の2019年6月を上回っている。また、ノルウェーでも、6月の軽油需要が、前年および2019年6月から増加している。

加えて、インドでもロックダウンの緩和が進み、6月のガソリンおよび軽油消費量が、前月比で増加。同国からの石油製品輸出が、減少する要因となった。

ただ、デルタ変異株の感染拡大が、経済と石油需要回復に対する先行き不透明感を強めている。インドネシア、英国、ロシア、米国などで、感染者数が増加している。

【7月23日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=72.07ドル(前週比0.26ドル高)、ブレント先物(ICE)=74.10ドル(前週比0.51ドル高)、オマーン先物(DME)=72.71ドル(前週比0.42ドル高)、ドバイ現物(Argus)=72.39ドル(前週比0.28ドル高)

【再エネ】再エネ100%へ 系統安定化の課題

【業界スクランブル/再エネ】

5月の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の会合において、地球環境産業技術研究機構(RITE)が、政府が参考として示す2050年の電源構成によりカーボンニュートラルを達成する場合、電力コストが2倍、再生可能エネルギー100%のシナリオでは4倍程度まで上昇するとの結果を発表した。多くの委員からは「産業競争力上、大変なことになる」「既に確立した技術を活用すべきだ」といった声が相次いだ。

再エネ100%シナリオでは、太陽光や風力など自然変動電源の出力変動に対応するための「システム統合費用」が大きくなる。これに対して地球環境戦略研究機関(IGES)は前提条件の設定に疑義を唱え、システム統合費用はもっと安くなるのではと問題を提起する。シナリオの分析結果は前提条件次第で変わり得るため、数字の絶対値に意味があるというよりはむしろ、シナリオ間の比較衡量を行う上で有用だ。さまざまな機関により前提条件を含めた活発な議論が行われ、ブラッシュアップされることが重要であろう。

ところで、筆者が興味深く感じたのは、IGESが自然変動電源の電力量の変動に関して「新たな重要な問題提起」としている点である。前回の長期需給見通し策定時、系統安定化費用として明示的に全て算入はされなかったものの、かかる調整費用に関しては既に議論されており、その結果「調整費用は実際の費用より低く試算される可能性がある」と注記された経緯がある。また、昨年末から今年1月にかけての需給ひっ迫時、悪天候で太陽光の出力が低下した日には、LNGなど火力で不足を補ったことは記憶に新しい。

再エネ100%の電源構成は理想的だが、経済性の問題以前に安定供給の確保についてしっかり議論する必要がある。kW時のバランス、周波数・電圧の維持に加え系統安定性が大きな課題となる。この点、実はRITEの分析は「電源脱落時のブラックアウト対策のため系統全体での慣性力の確保といった課題が克服され」たことを前提としている。いよいよ、この課題に向き合うときに来ているのではないだろうか。(N)

【メディア放談】電力需給を巡る論説 新聞は電力ピンチに向き合ったか

<出席者>電力・石油・ガス・マスコミ業界関係者/4名

冬の需給ひっ迫にかかわらず、今年度の夏、冬も電力不足の可能性があるという。

新聞各紙も問題視しているが、どう解決するか正面から向き合う論説は少ない。

―今年の冬に電力需給ひっ迫があったにもかかわらず、夏も需給が危ないという。梶山弘志経産相が会見で厳しい見通しを明らかにしている。

電力 自由化の進展で競争が激しくなり、電力会社は効率の悪い老朽火力を廃止していく。一方、再エネの拡大は止まらず。原発の再稼働も遅々として進まない。すると需給が厳しくなることは必然で、誰もが分かっていたはずだ。

―「ならば、なぜ火力のリプレースを進めなかったんだ」という批判がある。

電力 福島事故で原子力規制委員会の規制が厳しくなって、原発の安全対策工事に膨大な費用がかかった。それで、火力のリプレースにまで手が回らなかったことがある。そのうちに脱炭素の潮流が急速に強まって、石炭火力は新設が難しくなっていった。

ガス 経産省は、「2024年からは容量市場が始まる」と繰り返している。「それまでは辛抱しろ、何とかしのげ」ということだろう。だが、関係者には「容量市場で需給のバランスが取れると思ったら大間違い」という人もいる。

 結局、新型コロナ感染防止でのワクチンに匹敵するのは、原発の稼働しかない。ところが、希望の星だった柏崎刈羽原発が核物質防護体制の不備などで当面、再稼働がおぼつかなくなった。ほかに近々新たに再稼働しそうな原発は見当たらない。当面、今の状態が続きそうだ。

石油 6月8日の国会で、国民民主党の浜野喜史議員が需給ひっ迫について、「電力システム改革、自由化、再エネ大量導入の当然の帰結」と指摘している。その通りだ。もし停電が起きたら、それらを進めた経産省の自業自得というしかない。

原発報道の変わらぬ構図 朝日・東京の思想信条

―梶山大臣の発言もあり、マスコミも需給ひっ迫の問題を取り上げている。原発の扱いを巡っては意見が分かれている。

石油 やはり、朝日・毎日・東京対読売・産経の構図だ。朝日は社説(6月2日)で、「中長期的に需給を安定させる抜本策を講じる必要がある」とした。まったくその通りだ。

 ところが続いて、大量のCO2を出す古い火力は頼みにできず、原発もリスクの大きさや国民の不信、廃棄物の問題から「当てにするわけにはいかない」と書いている。結局、結論は「再エネの拡大を急ぐべきだ」になる。

マスコミ 今年のゴールデンウィーク中の5月3日、四国電力で太陽光の出力(232万kW)が需要(229万kW)を上回った。四電はエリア外送電などで、何とか停電を回避した。

 ところが2週間後、悪天候で太陽光はストップ。今度は関西電力から50万kW融通してもらっている。火力発電のトラブルなどが起きて、本州側の電力会社に余裕がなかったら、四国の電力供給は危なかったかもしれない。

―四電は供給力確保に血眼になったはずだ。

マスコミ 不思議なのは、朝日の記者・編集者が、このまま再エネが野放図に普及すれば、こういったことが全国で頻繁に起きることを理解しないことだ。あるいは、分かっていながら書かないのかもしれない。ならば、本当にたちが悪い。

電力 東京新聞に至っては、「電力不足への対応が原発再稼働につながらないよう、厳しくチェックすることも必要だ」と書いている。こうなると、もう客観的事実は意味がない。再エネ推進・反原発は思想信条に近い。

マスコミ それと同じことを、日曜日朝のTBS系「サンデーモーニング」で、造園家のWさんも言っていた。地上波は影響力が大きいから、自分の「思想」を述べるのはやめてほしいと思うけど、無理だろうな。

日経のあいまいな論説 再エネ偏重を見直し?

―日経も編集方針がよく見えなくなった。

電力 6月5日の社説で「中長期で供給力を安定的に確保する仕組みを整えなければならない」と書いている。続いて読んでいて「おやっ」と思ったのは、再エネに触れていないこと。あいまいな内容だけど、要するに高効率の天然ガス火力の建設を増やすべきだと言いたかったようだ。

マスコミ 無責任な社説だね。日経の記事は再エネ偏重で、再エネ関連の広告も多い。だけど、このまま増えていけばかなりの調整力が必要で、コスト面からもまずいことが分かったんじゃないか。

 かといって、原発の役割は書きたくない。さらにSDGs信奉で「火力に頼らざるを得ない」とも書けない。それで結局、CO2排出が比較的少ない天然ガス火力に落ち着いたんだろう。

―一方、原発に理解のある読売・産経は。

石油 読売の社説(5月31日)は、「太陽光発電は天候に左右され、供給を不安定にする一因となっている」「出力が安定している原発の利用が有力な選択肢だ」と書いた。さらに、「国民に原発の必要性を説き、理解を得るのは政治の責任」とも主張している。

 産経も主張(5月27日)で「安全性を確保した原発の早期再稼働を含め、安定電源の確保が急務」「基幹電源として活用できる原発の再稼働は当然」と書いている。

―電気事業にある程度理解があれば、正論だと思うだろう。だけど、国は動くだろうか。

電力 菅政権の支持率が低下している。総選挙で「自民党は50議席減らす」との分析もある。すると当然、不人気な原子力政策には触れなくなる。残念だが、政治・行政には期待できない。

―すると、また何も変わらずか。

【石炭】慣性力と負荷調整力 認知変わる石炭火力

【業界スクランブル/石炭】

従来の“読むニュース”から、 欧米型スタイルの“語るニュース”へと定着させた磯村尚徳氏は、日本のニュースのパイオニアである。磯村氏がNHKニュースセンター9時(愛称:NC9)のニュースキャスターとして登用されたのは1974年。約半世紀前になる。磯村さんのNC9がスタートして数カ月はニュースの印象が大きく変わったことで、視聴率が低下したが、海外メディアから好評であったことから、うなぎ上りに視聴率が向上し、“語るニュース”が定着した。その後のニュース番組では、久米宏氏、古舘伊知郎氏らが続く。語るニュースの先駆者の跡を継ぐ彼らは当時、多くのバッシングを受け、さぞ苦しんだのであろう。磯村氏の座右の銘「多く苦しむもの 多くを学ぶ」を口にして、過去の苦しかった頃を振り返る。

火力の世界では2018年ごろから欧米を起点として石炭のバッシング(脱石炭への動き、投資撤退)が強くなった。そして今ではASEAN(東南アジア諸国連合)にもその流れが広がっている。また、日本では菅義偉首相が就任し「2050年ゼロエミッション」を表明後、国内においても石炭火力に対する逆風は強くなるばかりである。このような急激な環境変化で、石炭火力に従事する者にとっては辛い時期であろう。ただ、とことん追い込まれると新たなアイデアが湧いてくるものだ。10年前にはなかなか理解されなかった石炭火力の負荷調整力の必要性は、今では理解されるようになってきた。また、回転体の発電機が持つ慣性力も電力系統安定化を維持するために重要な機能であることも注目されてきた。「石炭=ベースロード」一辺倒だった認知が、少しずつ変化してきている。

再生可能エネルギーが50年ゼロエミッション達成に向けてその比率が大幅に増える将来、再エネの欠点である非連続性、レジリエンス機能に劣る点を補完する石炭火力による負荷調整力と慣性力が重要な役割を果たす時代が来るであろう。その時に、磯村氏と同じように火力発電従事者が「多く苦しむもの 多くを学ぶ」と語っていることを願って止まない。(C)

エネルギーを学ぶということ 「光を灯す」ミッション

【リレーコラム】中山寿美枝/J-POWER執行役員

エネルギーを一生の仕事にしようと決めたのは、高校生の時だった。「光を灯す者をこそ世は呼べ、光を灯す者と我等ならめ」という校歌にインスパイアされたのか、私はエネルギーの研究者になろうと思うようになった。

大学院でエネルギー科学を専攻したところで、研究者向きではないと悟り、世界中に電気を届ける仕事をしようと決めた。そして、国際事業に力を入れる電力会社に入社した。そこで改めて、自分はエネルギーの実態を何も知らないと実感した。大学で学んだのは理論と技術ばかりで、世界と日本のエネルギーの需給動向や政策や課題といった「生きた」エネルギー関連知識を学ぶ機会はなかった。それを知りたい、学ばなければ、と思った。

6度目の社内異動で、気候変動問題を担当することになった。各種エネルギー統計、IEAやIPCCの報告書を読み、専門家と会い、COPなどの国際会議に参加して情報収集を行った。その約20年間の蓄積から、エネルギー・気候変動の動向と展望、地域特性、国際交渉の裏表、対策と課題などを把握し、分析・評価できるようになった。この生きたエネルギーの知識を学生に伝えたいと思った。

教壇に立ち生きた知識を講義

その機会が来て、京大経営管理大学院で後期1科目を担当することになった。授業のうち9回は、①エネルギーの歴史、②エネルギーの不都合な今、③エネルギーの将来と低炭素シナリオ、④COPとパリ協定、⑤SDGsと気候変動、⑥気候変動の科学(IPCC報告書)、⑦気候変動対策(食サイクルから気候工学まで)、⑧最新のエネルギー展望(WEO2020)、⑨エネルギービジネスの変革、とエネルギーと気候変動をテーマにした。

シラバスを見て30人強の履修登録があった。学生が興味を持てるように、データと文献と専門家ネットワークを駆使してファクトフルかつ新鮮な講義資料を作成し、毎回の課題は、自分だったら(CO2削減の行動変容メニューから)どれを選ぶ?(SDGs達成のために)何ができる? といった観点で出題した。課題回答と質問には全てに必ずフィードバックを行うようにした。

期末の最終アンケートの結果、多くの学生がエネルギーを当事者として考えるようになった、今後も関心を持ち続けたい、という回答だった。一つ、小さい光を灯せたような気がした。今年度の講義でも最新情報を全力で伝えたい。全ての学生がエネルギーをしっかり学ぶ機会が得られるようになり、全ての大人と子供がエネルギーに関心を持つ日まで、私の「光を灯す」ミッションは続く。

なかやま・すみえ 1988年東京工業大学大学院エネルギー科学専攻修了、電源開発(J-POWER)入社。火力部、技術開発部などを経て、2001年から経営企画部で気候変動を担当。21年4月から現職。19年博士(工学)取得。20年から京都大学経営管理大学院特命教授を兼務。

※次回は東京大学生産技術研究所特任教授の岩船由美子さんです。

【石油】創立理念はどこに 有害無益のIEA

【業界スクランブル/石油】

国際エネルギー機関(IEA)は5月18日、英国で11月に開かれるCOP26のアロック・シャルマ議長(英)の要請に基づき、2050年カーボンニュートラル実現からバックキャストしたロードマップを公表した。翌日の日経朝刊でも「化石燃料へ新規投資停止」との見出しでキャリーされた。内容的には、既に世界的に提唱されているものではあるが、先進石油消費国からなる専門国際機関から発表されただけに、関係者に大きな衝撃を与えた。

しかも、加盟国政府への根回しはなく、事務局内でも限定メンバーで取りまとめられたらしく、その唐突感が衝撃を増幅させた。そのためか、石油業界からはまとまったコメントはなく、英フィナンシャル・タイムズ紙は「石油業界反応せず」と報じた。

IEAは、第一次石油危機直後の1974年、米キッシンジャー元国務長官の提唱で、石油輸出国機構(OPEC)に対抗すべく経済協力開発機構(OECD)に付置された国際機関である。OECD加盟国で、一定水準の石油備蓄保有を加盟条件としており、過去、エネルギー安全保障を最優先目標として、石油安定供給に貢献してきた。供給削減時に石油を相互融通する緊急時融通システム(ESS)を有しており、1991年の湾岸戦争勃発時には、協調的緊急時対応措置(CERM)を発動、各国が石油備蓄を放出するなど、供給不足を回避した。

そんなIEAが、化石燃料への新規投資停止を含む、脱炭素実現に向けたレポートを発表した。化石燃料への投資停止で、石油供給のOPECシェアは、現在の約3割から30年には5割超とセキュリティー上、脆弱になるとする。今後、先進国の石油消費は減り、増加するのは途上国だから、投資不足になろうが、OPEC依存度が上がろうが構わないというのか。

最近のIEAは、明らかに気候変動対策最優先である。「EUの下請け機関」との陰口も聞こえる。エネルギー安全保障を忘れたIEAなど有害無益である。このままだと「さらば、IEA」と言わざるを得ない。(H)