世界的なエネルギー危機に発展していくのか。石油、天然ガス、石炭などのエネルギー資源価格が秋の不需要期にもかかわらず、異常な高値を記録している。米ニューヨーク市場の先物価格動向を見ると、10月5日に天然ガスが100万BTU約6・3ドル、石炭が1t約270ドル、20日には原油が1バレル約83ドルと、いずれも年初来最高値を記録した。前年の同時期と比較すると、2~4倍程度の大幅な値上がりだ。

アジア市場も同様だ。例えば、石炭では中国の山西省を襲った洪水で炭鉱閉鎖が相次ぎ、先物価格は一時1507元と過去最高値を更新。またLNGでも欧州や中国での需要増を背景に、アジア向けスポット価格「JKM」の先物が一時50ドルに達するほど急騰。10月中旬現在は38ドル前後の取引で推移している。
脱炭素化の潮流を踏まえ、環境派が訴えるように脱化石が世界的に進んでいるとすれば、石炭や天然ガスの価格は需要の落ち込みによって下落傾向にあっていいはずだが、現実は真逆。コロナ禍の収束に伴う世界的な経済回復、脱炭素化を見据えた資源開発投資の停滞、天候に左右される自然エネルギー発電の急増―。さまざまな要因が同時多発し異常な価格高騰を引き起こしている、というのが専門家の一致した見方だ。
需要期の冬場に向けては、さらなる需給ひっ迫・価格上昇も予想される。「日本が前年の冬以上の電力危機に見舞われる可能性も否定できない」(新電力幹部)。電力卸市場価格が10月に急上昇したことも懸念に拍車を掛ける。
有力候補は女川2号か 野田政権時代に実績も
エネルギー緊急事態ともいえる情勢下で、関係者の一部から聞こえているのが「原子力発電所の緊急再稼働」だ。「原子力規制委員会の適合性審査に合格しながら、地元同意など手続き上の問題から未稼働の原発がある。足元の有事に対応するため、政治判断による特例措置として緊急的に動かすべきではないか」。エネルギー会社の幹部はこう指摘する。
現在、審査に合格し未稼働の原発は、東北電力女川2号、東京電力柏崎刈羽6・7号、日本原子力発電東海第二、関西電力高浜1・2号、同美浜3号、中国電力島根2号―。うち、原発がいまだに1基も動いていない50 Hz地域にあって、訴訟やテロ対策などの大きな問題を抱えていない女川2号が、まずは緊急再稼働の対象として考えられそうだ。
2012年4月、当時の野田佳彦政権は夏場の需給ひっ迫に対応するため、定期検査で停止中だった関電大飯3・4号機を政治判断で再稼働させた実績がある。再エネ依存度が飛躍的に高まっている現在、電力ひっ迫のリスクは9年前どころではない。
「ベースロード電源に厚みを持たせることが、停電リスクを回避する最良の手段。いま頼りになるのは原発しかない」(前出の新電力幹部)。岸田新政権は、国益を守るための政治判断に踏み切れるのか。「国民の声を聞く内閣」の英断が問われる。





