【福島廃炉への提言〈事故炉が語る〉Vol.1】石川迪夫/原子力デコミッショニング研究会 最高顧問
福島第一発電所事故の後、原子炉をどう廃炉にするのか、国民の関心は高い。
更地に戻す解体撤去だけでなく、国際原子力機関(IAEA)は他に二つの方法も示している。
原子力デコミッショニング研究会の石川迪夫最高顧問は、国内外を問わず長く原子力発電所の廃炉に携わってきた。福島第一発電所の廃止措置という難題を抱える日本。どうすれば、最も安全かつ合理的で国民負担の少ない廃炉ができるのか―。自らの経験と、数多くの事例の調査・研究を踏まえた石川氏の考察、提言の寄稿を連載する(編集部)。
事故を起こした原子力発電所の廃炉とはどのようなものか。福島第一発電所事故の後、国民の関心は高い。政府は事故後40年をめどに廃炉工事を完了させると約束し、東京電力が廃炉作業に取り組んでいる。しかし、その進捗状況はどうなっているのか、詳細を国民は知らない。福島について報道される問題は、汚染水の処分や廃炉工程の手直しなどいろいろあるが、それが廃炉全体の中で何を意味するのか、知る人は少ない。
知らない、知らされない―。その間に時は過ぎて、事故から10年を迎えた。このあたりで、福島第一発電所の廃炉が持つ問題を可能な限り具体的に検討し、世に警鐘を鳴らすのは廃炉経験者の役目であろう。
だが、事故炉の廃炉を語ることは難しい。前例がないからだ。一般の廃炉の概略を述べて、事故炉のそれと比較すれば理解が容易となるのが、困ったことに、廃炉そのものが始まったばかりで、広く知られていない。まさに解説者泣かせだ。
この連載では、原子力発電所の一般の廃炉の話は必要なときにのみ引き合いに出し、事故炉の廃炉と比較していくことにする。
IAEAが廃炉を3分類 「石棺」は密閉管理方式
原子力発電所の廃炉といえば、解体して撤去するもの、跡地は更地に戻るものと多くの人は思っている。だが、この理解がまず間違いだ。これは解体撤去方式と呼ばれる、廃炉工事の一方法だ。
「えっ、ほかの方法もあるの」と驚く人もいるだろうが、廃炉は解体撤去だけではない。国際原子力機関(IAEA)が定めた文書には、①密閉管理、②隔離埋設、③解体撤去―の3方式が記載されている。
数年前、福島県知事が原子力損害賠償・廃炉等支援機構の山名元理事長の話を誤解して、「福島第一発電所を廃炉にせずに、石棺にするのか」と激怒されたそうだが、これは福島県の勉強不足だ。昨年完成したチェルノブイリ原発の石棺を覆う構築物は、密閉管理方式による具体的な廃炉例だ。
今回は、それぞれの廃炉方式についての説明から始めよう。
隔離埋設は、昔の研究用原子炉の廃炉に多い。原子力が始まったばかりの頃の原子炉は、出力が小さく放射能の汚れもそれほどでないが、やたらに頑丈につくった。このため壊すのが大変で、燃料棒を取り除いた後の残りの施設は全て地中に埋めて、埋め殺し処分とした。これが隔離埋設方式だ。
隔離埋設方式の実例は日本にもある。日本人の手で設計・建設された最初の国産原子炉、「国一」の愛称で呼ばれた旧JRR―3がそれだ。約20年間働いて使い勝手も悪くなったので、格納容器や補助設備は残して原子炉だけをつくり替えた。これが現在の3号炉だ。


