【業界紙の目】津金宏嘉/燃料油脂新聞社編集局石油部長
新型コロナウイルス感染拡大下の石油製品需要の動向は、油種間でギャップが出始めた。経営環境は、メーカーの元売りと、SSなどを運営する販売業者の間で、明暗が分かれている。
新型コロナ禍における国内燃料油需要(経済産業省・石油統計)は、国の緊急事態宣言などで4月に前年同月比89・5%、5月に86・6%に縮小した。ただ6月には90・0%、7月は91・6%と9割台に回復。現時点でも多くの産業が需要減退に苦しんでいる点を踏まえると、石油需要の戻りは全体としては早かったと言える。なかでもガソリンは4月の77・3%から、6月には95・5%に回復。軽油は観光バス向けの大幅減退を、「巣ごもり」での宅配需要の増加などが補い、最も落ち込んだ5月でも89・4%と振れ幅が小さく、翌6月には91・7%と早くも9割台に戻った。
そもそも燃料油需要は、低燃費車の普及や燃料転換、少子高齢化の進展などにより、年率2%程度の減退が予想されていた。98%を基礎需要とすれば、ガソリンや軽油に対するコロナの影響は、6月以降は数%にとどまり、両油種が夏場の主力商品となる石油販売業者(SS)にとっては、経営上の打撃は限定的に収まった。
一方、元売りにとってはコロナ禍が難しい経営環境をもたらした。まず私たちの目に飛び込んできたのは、8月に発表された2020年度第1四半期(4~6月)決算で、ENEOSホールディングスが49億円、出光興産813億円、コスモエネルギーホールディングス260億円と大きな純損失を計上した。もっとも減益の大半は油価急落による在庫影響損、および原油調達と製品販売のタイムラグが原因で、これらは時間軸の長短こそあれ、油価が回復すれば解消する。むしろ元売りの頭を悩ませているのは、油種による需要回復度合いの違いだろう。
旅客機需要大幅減が打撃 タブーの超低生産体制を断行
ガソリンや軽油の需要は比較的短期間で9割台に回復したが、コロナ禍のもっとも大きな影響は、航空機向けのジェット燃料油に現れた。石油統計によると、4月の国内販売量は前年同月比23・8%、5月も24・6%と、2カ月連続で4分の1に縮小。緊急事態宣言が明けると6月51・4%、7月64・7%、8月85・7%と持ち直したが、国際線は依然、深刻な状況が続いている。成田国際空港の8月発着数は前年同月比33%の6098回、中でも旅客便は15%の2443回と、8月としては過去最低に沈んだ。大手元売り販売部門担当者は「ジェット燃料油需要はどのように回復していくのか、イメージが描けない。政府は海外との往来を順次再開する方針を打ち出したが、観光客が行き来する状態に戻るのはまだ先だろう」と厳しい見通しを示す。
連産品の特性上、石油製品の供給では常に油種間の需要差異への対応が課題になる。コロナ禍がなくても予想外の厳冬で灯油需要が急伸したり、猛暑でガソリン需要が増大した際などは油種間ギャップが発生するが、今回ほど大きな差異は極めて異例といえる。需要回復が早かったガソリンや軽油に対応して製油所稼働率を上げれば、ジェット燃料油を含む〝灯油留分〟が余る。新型コロナの影響で旅客機が飛ばないのは世界共通で、国内で余剰になったジェット燃料油(灯油留分)を輸出しようとしても、買い手はなかなか見つからない。元売りは対応策として、需要が低迷する灯油留分に合わせて製油所稼働率を落とし、不足するガソリンは輸入で補う形で今夏を乗り切った。
結果として7月26日~8月1日の週の装置稼働率は57・7%(石連週報)と、異例の低水準を記録。前年同期は87・6%で、本来なら盛夏の製油所稼働はガソリン需要に合わせて高水準を保つはずだが、今年はメーカーではタブーともいえる超低生産体制を余儀なくされている。
冬場はジェット燃料油とほぼ成分が同じ、灯油の需要が本番を迎えるため、製油所稼働率も灯油の売れ行きに合わせて改善が見込まれる。ただ石油連盟の杉森務会長(ENEOSホールディングス会長・グループCEO)は「春までにジェット燃料油需要が回復すれば良いが、厳しい状況だ」と、当面は油種間の需要差に合わせて、難しい製油所オペレーションが続く様子を示唆する。












