【多事総論】 話題:CCS・CCUの役割
カーボンニュートラル実現のためには、CO2を貯留、利用する技術も重要になる。CCS、CCUの社会実装に向けて、専門家の視点を紹介する。
<投資リスクの大きさが共通課題 技術同士の対立招かない視点が肝要>
視点A:秋元圭吾/地球環境産業技術研究機構主席研究員
菅義偉首相が2050年までの実現を目指すと宣言したカーボンニュートラル(正味ゼロ排出)のためには、一次エネルギーは原則、再エネ、原子力、化石燃料+CO2回収・貯留(CCS)のみでの構成となる。完璧なエネルギーはなく、これらすべての組み合わせの追求が求められる。再エネ拡大は必須であるが、太陽光、風力発電は、間欠性の課題がある。設備コストの低下は期待できるものの、導入量を拡大していけば、条件が悪く単価が高くなるポテンシャルも利用することになるし、間欠性に対応するため、系統増強、蓄電池の導入、水素に転換するなど、さまざまな追加コストが必要になる。脱炭素電源の原子力の必要性は言うまでもないが、社会的な受容性の問題などから、その役割は限られる。そうした中、CCSの必要性が高まっている。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、05年に技術に焦点を当てた初の特別報告書としてCCSを取り上げ、その重要性を指摘した。しかし、その後のCCSの普及が早かったとはいえない。考えられる理由としては、①再エネのコスト低減が相当進んだこと、②米国ではシェールガスが普及し、CCSなしでも相応に排出削減が進んだこと、③CCSは地中を対象とするため状態の完全な把握が難しいこともあり、投資回収の不確実性が相対的に高いこと、④欧州では排出量取引制度(ETS)のオークション収入の一部をCCSに利用しようとしていたが、ETSの炭素価格の低迷により、その収入が当初の見込みよりも相当小さくなってしまったこと――などが挙げられる。日本では、CCSの実証試験が新潟県長岡市、北海道苫小牧市で行われ、多くの有用な知見が得られてきた。しかし、日本でも貯留における不確実性や、現実的な貯留ポテンシャルの点から、慎重な見方もあった。ただ、少なくとも技術的には、日本でも1500億tCO2程度ものポテンシャルがあると見積もられている。
燃料利用CCUは水素が必須 負の排出技術・DACCSも重要
一方で、CCSの課題も相まってCO2回収・利用(CCU)への期待も大きくなっている。CCUは、CO2を有効に利用するという良いイメージを持ちやすいし(実際にそうであるが)、正味ゼロ排出を目指す上での重要性は大きい。特に非電力での脱炭素化は容易ではなく、合成燃料製造のためのCCUは期待が大きい。ただ注意が必要なのは、CO2はエネルギー価値がほとんどないため、回収したCO2を使って、合成メタンや合成液体燃料として利用する場合は、エネルギー源として水素が必要な点である。そして水素も二次エネルギーであるため、一次エネルギーとしては、再エネ(グリーン水素と呼ばれる)、化石燃料+CCS(ブルー水素)のいずれかが必要となる。つまり、合成燃料用のCCUは、再エネもしくはCCSと組み合わせなければ成立しない。回収CO2は燃焼時に再び排出されるので、あくまで水素エネルギーを運ぶのを助ける役割となり、カーボンフリー水素が化石燃料を代替することによって排出削減効果がもたらされる。
CCUとしては、合成燃料のほか、化学品利用や、コンクリート部門での鉱物化もある。しかし、化学品の場合は燃料と同様に水素が必要であるし、用途としての量も限られる。鉱物化は、CCUの中では比較的経済性が高いと推計されるが、コンクリートは経年とともに自然にCO2を吸収するため、CCUの削減効果は自然吸収分を差し引くべきなので、必ずしも大きな量を稼げるわけではない。
最後に、大気中CO2の直接回収・貯留(DACCS)について触れておこう。化石燃料を脱炭素エネルギーに代替することでコストが急増してしまう部門・技術もある。そこで負の排出を実現できるDACCSを利用すると、その分だけCCSなしの化石燃料利用が許容され、あたかもCCS付き化石燃料のように取り扱えることを意味する。よって、特に正味ゼロ排出目標においてはDACCSの重要性は高いと考えられる。ただ、濃度の低いCO2を回収するのでコストは高くなりやすい。一方で、集中的なCO2排出源がなくても、貯留に向いた地点で実施でき、経済合理性の高い地点を選ぶことができるという利点がある。また回収エネルギーは大きく必要だが、世界で余剰の再エネや、将来的に余剰となる可能性もある天然ガスなどを活用することで、安価に実現できる可能性もある。
CCS、CCU、DACCSは、これらの技術間の関係性に加え、再エネや水素などとも併せた全体システムとして考えることが大変重要であって、これら技術同士が対立するような考えを採るべきではない。
あきもと・けいご 1999年横国大大学院工学研究科博士課程(後期)修了、博士。エネルギー関連の多数の政府審議会委員や、IPCC第6次評価報告書代表執筆者も務める。

