【私の経営論(3)】吉本幸男/エフビットコミュニケーションズ社長
1964年に発足した当社は、通信事業を手はじめに、ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)やVOD(ビデオ・オンデマンド)、高圧一括受電、メガソーラー開発、電力・都市ガス小売り事業と、その時代の旬のビジネスにいち早く乗り出し大きな成長を遂げてきました。
当社は、これら全ての事業を現在も変わらず手掛け続けており、それぞれがお客さまのニーズに合わせ、豊かな生活を提案するために欠かせないサービスの一角を担っています。
前回は、今後、こうしたビジネスを結び付けトータルでサービス提供することで、ドイツにおける多様な社会インフラを提供する公益企業「シュタットベルケ」のような地域密着型の事業展開を目指していきたいというお話をしました。最終回となる今回は、その具体的な取り組みについて述べたいと思います。
当社は、再生可能エネルギーFIT(固定価格買い取り)制度のスタートと同時にメガソーラーの開発を手掛けるようになり、今年8月には、新電力のFパワーが千葉県袖ケ浦市に所有していたガス火力発電所「新中袖発電所」(ガスコンバインド/出力11万kW)を買収するなど、発電事業にも本腰を入れ始めました。
そして、次の成長領域として見据えているのが、過疎化が進む中山間地におけるバイオマス発電と農業を組み合わせた「次世代農業プラント」(NAP:Next Agriculture Plant)事業の実現です。
これは、地産地消の未利用資源を活用する2000kWのバイオマス発電設備を建設し、地域の旧一般電気事業者にFIT電気として販売。発電の副産物であるCO2と熱を利用し、高収量・高品質な野菜や花などをハウス栽培するものです。
エネルギーと農業を融合 地方創生に貢献
いくらFITを活用したとしても、2000kWの規模、しかも地産地消の間伐材のみを燃料とするバイオマス発電では採算を取ることができません。しかし、ここに農園からの収益が加わるのであれば話は違ってきます。
ハウス内を年間を通して27℃程度に保つことで、農作物の収穫率は各段に向上するといわれます。そのために、次世代農業を営んでいる農家は、熱源として灯油を焚き、農産物の成長を促すCO2をわざわざ購入しているわけです。同事業では、発電所からの副産物を利用することでこれらを無償で活用できるのですから、収益性の高い農業経営が可能になることは間違いありません。
既に高知県本山町で同事業に着手しており、自治体からも地方創生を後押しするものと大きな期待が寄せられています。バイオマス発電所と農園で設備投資額は28億円。これにより、毎年約4000万円の償却資産税が自治体の税収増に貢献しますし、さらに、20年に渡って約30人の新規雇用が創出されるからです。
また、地方の林業は、木材はいくらでもあるが伐採したとしても収入につながらないことが悩みの種になっています。同事業では、木を切り出し発電所まで持ってきていただければ全て買い取ることにしています。町民の方にとっては新たな収入源となり、年間3億円を超える経済効果を生むと見ています。
バイオマス発電所と農園の売り上げを合わせ、年間15億円ほどのビジネスになると見込んでいます。それだけではなく、自治体の税収増、新規の雇用創出、農林業の活性化を実現し、地方における産業の好循環を生むのですから、「SDGs(持続可能な開発目標)」経営に叶う新事業モデルと呼んで過言ではないでしょう。
高知県本山町との協定締結式
NAP事業を展開する地域での取り組みは、これだけではとどまりません。町庁舎などへの地産地消の電気の供給、住民を対象にした電気やガス、電話やインターネットサービスの提供と、水道を加えた多様なインフラサービスの請求代行の一括請負など、地域のインフラに関わるさまざまな事業を展開していきたいと考えています。まさに、当社のこれまでの事業を全てつないだ集大成となりますし、これが実現できることは、当社がこれまで取り組んできたことが財産となり、強力な武器になっている証だと思っています。
本山町と同様の取り組みを、今後は全国10カ所程度に広げていく考えです。人口1500~5000人程度の限界集落と呼ばれるところにしか進出しません。その地域では当社が最も大きな企業となり、地域のインフラを支えていきます。「義」のあるビジネスになると思っていますので、地域のみなさんに喜んでいただけるものと自負しています。