【特集2】都市ガス事業の歴史をひもとく 利用も競争も「全ては照明から」


明治初期、同時期に開業した鉄道と並び文明開化の象徴とみられていた「都市ガス」。国民経済にとって不可欠な重要インフラへと発展するまでの軌跡をたどる。

大阪造幣局・横浜馬車道 鉄道と同時期に開業

エネルギー源としての「ガス」の始まりは、1609年にさかのぼる。日本では徳川家康が江戸幕府を開いて間もないころ、ベルギーの科学者ヘルモントが、石炭を蒸し焼きにしてエネルギーに利用。ギリシャ語で混沌を意味する「CHAOS(カオス)」にちなんで「GAS」と名付けたのが最初とされている。

しばらくの時を経た1792年、スコットランドの技師ウイリアム・マードックが、照明用としてガス灯の開発に成功し、世界初となる「都市ガス」が誕生した。その後、欧米で都市ガス事業の研究が行われ、1812年には英国のフレデリック・ウインザーらによって、世界初の都市ガス会社「ロンドン・アンド・ウェストミンスター・コーク」が発足。15年に仏パリで、16年に米ボルチモアで、41年に豪シドニーで、それぞれ都市ガス会社が設立され、世界に広まっていた。

日本はといえば、欧米から遅れること71年(明治4年)、大阪造幣局が石炭の製造過程で発生するコークスガスを燃料に、実用的なガス灯を設置したのがそもそもの始まりだ。その前年、神奈川・横浜では、実業家の高島嘉右衛門氏が日本初のガス会社「横浜瓦斯」を設立。中国上海でガス灯整備を手掛けたフランス人のアンリ・フレグランを招きガス灯の開発を進めた。翌72年10月31日、鉄道の開業と時を同じくして横浜馬車道でガス灯数十本の運用が始まった。日本初の都市ガス事業の誕生だ。

日本初のガス事業となった横浜馬車道のガス灯

そして74年11月に神戸で、12月には東京でそれぞれ都市ガス事業が始まった。東京初のガス灯は銀座通りに設置された86本。それまで暗闇に包まれていた夜の街を一面に明るくするガス灯は文明開化の象徴となり、都市ガスの利便性が多くの庶民に知れ渡ることになった。なお、当時のガス灯1本当たりの料金は1カ月3円55銭5厘。現在価値に換算すると3万円強という高水準だった。

一方、世界では照明の革命が起きる。米国人のトーマス・エジソンが白熱電球を実用化したのだ。83年に日本初の電力会社「東京電燈」が設立され、87年から一般配電事業が始まった。当時の東京府はガス灯から電灯への切り替えを検討したが、性能上の課題がありガス灯の存続が決まったという。ガスと電気の競合も、照明分野から始まったわけだ。

活躍の場は熱利用へ 大正時代に瓦斯事業法

その後、97年から1913年(大正2年)にかけて大阪瓦斯、神戸瓦斯、名古屋瓦斯、西部瓦斯が次々と設立され、15年には全国各地で都市ガス91事業者が誕生した。他方11年に電気事業法が制定され、タングステン灯などによる照明の電化が進展。ガスは照明用から厨房や給湯などの熱源へと活躍の場を移す。調理器やストーブ、風呂釜など多彩なガス機器が登場。また工業の動力としてガスエンジンが輸入され、14年には2700台に達した。

近代日本の暮らしの発展を支えたガス機器

こうしてガス産業の礎が築かれていく中、14年~18年の第一次世界大戦を背景に物価が高騰。ガス料金は自治体との契約から1.5倍程度までしか値上げができなかったため、多くの都市ガス事業者が赤字に転落し撤退も相次いだという。どことなく現在の新電力事情を彷彿とさせるが、それはさておき、関東大震災直前の23年の帝国議会で瓦斯事業法が成立、25年に施行された。都市ガス事業は電気事業と並ぶ公益事業に位置付けられ、基幹インフラとして地域独占が認められたのだ。

昭和時代を迎え、都市ガスは順調に普及拡大を図っていく。1935年(昭和10年)には全国の需要家数が200万件へと拡大した。そんなさなかの39年、またも世界は戦争に突入する。第二次世界大戦だ。日本では前年の電力国家管理法成立を受け、日本発送電が発足。民間電力会社は地域の配電9社に再編され、電力事業は国家管理体制に組み込まれた。その波はガスにも押し寄せる。同年、ガス需給調整命令が発令され、節ガスのための統制色が強まった。

戦後復興は値上げから 天然ガス時代の幕開け

41年に太平洋戦争が始まると、日本中が軍需化の波に飲み込まれ、44年には東京ガスも軍需会社に指定。電力を参考にガス事業者も全国8ブロックに再編する方策が検討されたが、45年の敗戦で実現することはなかった。戦争を通じて都市部の多くが焦土と化したことで、全需要家数は100万件を割り込む水準にまで激減した。

そして、そこから現在の都市ガス事業へとつながる目覚ましい発展、成長が始まる。戦争終了とともに全国で順次、都市ガス供給が再開され、導管などインフラの復旧作業が急ピッチで進んだ。設備投資増大への対応から、事業者は相次いでガス料金の値上げに乗り出す。47年に日本瓦斯協会が発足、49年には需給調整が撤廃され、ここでようやく24時間の安定供給体制が確立された。

戦後の団地ブームで注目されたキッチンとガス

その後の高度成長の波に乗って、都市ガスの需要は急拡大した。当時の原料は石炭由来から石油系の改質ガスにシフトし、熱量や成分の違いによってグループ化されている特徴があった。昭和20年代後半からは、LPガスをシリンダーに充填し配送する供給方式が登場。また建設ラッシュを迎えた団地にボンベ小屋を設置して、そこから導管供給する方式も始まり、都市ガスとの無秩序な競合が激化していった。この問題を解消すべく、70年のガス事業法改正で制度化されたのが、供給地点ごとに事業を認可する簡易ガスである。

一方高度成長の影では、大気汚染をはじめとした環境問題が深刻化していた。何とか青い空を取り戻せないものか―。その解決策を導き出したのが、東京ガスと東京電力だ。69年、アラスカから日本初のLNGを輸入。これを受け、東ガスは石油系ガスからクリーンエネルギーの天然ガスへと原料を切り替え、高圧導管など供給インフラの整備に着手。その後、大阪や東邦などが相次いでLNGの導入に踏み切り、本格的な天然ガス時代が幕を開けた。

LNGの導入が都市ガスを劇的に進化させた

20年事業の高カロリー化 高度利用と自由化の時代

次なる課題は、全国の都市ガス事業者へのLNG拡大と、高カロリー化に向けたガス種の統合だった。85年に天然ガス導入促進センターが設立され、国の利子補給制度が開始。91年(平成2年)からは官民連携の下で、2010年まで約20年をかけて全事業者の熱量変更を行う一大事業「IGF21計画」がスタートした。

大都市部では地冷による熱の面的利用が加速

そしてこの間、都市ガス業界では電力業界とのし烈な競争を背景に、産業用から家庭用まで幅広い分野で利用技術の開発が加速した。GHPや吸収式冷温水器に代表される「ガス空調」、エンジンやタービンをベースに熱と電気を併給する「コージェネレーション」、それを燃料電池などを使って超小型化した「家庭用コージェネ」、潜熱回収方式によって給湯器の大幅な省エネを図った「エコジョーズ」、優れたデザイン性と同時にセンサー技術を駆使して調理機能を高性能化した「ガラストップコンロ」、ガス調理器を使いながら涼しい厨房を実現した「涼厨」など、枚挙にいとまがない。

分散型エネルギー時代を開いたガスコージェネ

その一方で、95年のガス事業法改正による大口需要部門の自由化を皮切りに、自由競争の導入を柱とした制度改革がスタート。旧通産省(現経済産業省)主導の下で、産業用から業務用へと自由化範囲は段階的に拡大され、料金制度についてもヤードスティック(比較)査定や選択約款の導入によって低廉で多様な料金メニューが登場した。「天然ガスの高度利用と自由化」が、平成時代を象徴するキーワードだ。

                                                               ◇  ◇  ◇

2011年の東日本大震災を経て、平成から令和に至る動きは誌面の都合上割愛するが、LNGを巡る50年間については本誌19年11月号の特集で詳報している。また都市ガス200年に向けた今後の展開については、本特集をご覧いただきたい。

【記者通信/10月28日】電力ガス負担軽減策が決定 本格値上げへの露払いに


政府・与党は10月28日、物価高対策などを盛り込んだ「新たな総合経済対策」を閣議決定した。2022年度第2次補正予算案の一般会計29.1兆円を財源に、地方支出や財政投融資を含めた財政支出総額は39兆円規模に達する。最大の焦点である電気・ガス料金の負担軽減策については、標準家庭で月平均3000円前後の補助を見込んでおり、早ければ来年1月から実施する。この対策に歩調を合わせるかのように、北陸電力は27日、規制部門を含めた全ての電気料金を来年4月に改定する方針を発表。翌28日には、東北電力が規制料金の値上げ申請に向けた準備を、四国電力も規制料金の値上げ検討を、それぞれ表明した。既に値上げ検討に着手している中国電力を含め、大手電力各社による規制料金の値上げが来年4月以降相次ぐ見通しだ。エネルギー関係者の間では「今回の負担軽減策が、電力本格値上げへの露払い的な役割を担うことになりそう」と見る向きも。SMBC日興証券の宮前耕也・シニアエコノミストは「来年 1 月に(物価の)伸び率が急縮小しても、4 月 に本格改定値上げで伸び率が急拡大する可能性が出てきた。消費者マインドが一旦改善した後、再び悪化する可能性がある」と指摘。来年9月以降の出口戦略をどう描くも含め、課題山積の状況だ。

総合経済対策によると、まず電気料金の負担軽減策については「来年度初頭にも想定される電気料金の上昇による平均的な料金引き上げ額を実質的に肩代わりする額を支援し、企業より手厚い支援とする」として、低圧契約の家庭用で㎾時当たり7円を補助。これは現行の電気料金の2割程度に相当するもので、標準家庭だと月平均2000円程度の負担軽減になる。高圧契約の企業などに対しては、「FIT賦課金の負担を実質的に肩代わりする金額(1kWh当たり3.5円)の支援を行う」とした。「来年春に先駆けて着手し1月以降の可及的速やかなタイミングでの開始を目指す」という。一方、都市ガスについては「電気とのバランスを勘案した適切な措置を講ずる」として、1㎥当たり30円を支援する。標準家庭で月平均1000円程度の補助だ。

「金額少なく期待外れ」「一律の給付金を」の声

この負担軽減策について、宮前氏は「今般の負担軽減策は、来年春の電力会社や都市ガス会社による本格改定値上げに備えたものであるため、見方を変えれば、本格改定値上げが実施される確度が高まったとも言える」と指摘する。現在、北陸電力が来年4月からの規制料金の値上げを発表し、中国電力、東北電力、四国電力の3社が規制料金の値上げ改定に向けた検討や準備を表明しているが、経済産業省の関係者によれば「大幅赤字が予想される他の大手電力会社も追随する可能性が高い」。そうした情勢を見越しての支援策という位置づけが総合対策に明記されたことは、電力会社にとっては朗報といえよう。

ただ、標準家庭で月平均3000円前後の支援を巡っては、需要家から「岸田首相が『前例のない思い切った対策』とぶち上げたわりには、金額が少ない。正直、期待外れ」「都市ガスではなく、LPガスを使っているので、ガス料金がバカ高いにもかかわらず、ガス代での恩恵を受けられない。各家庭一律の給付金にしてほしい」といった声が聞こえている。総合経済対策は、LPガスについて「価格上昇抑制に資する配送合理化等の措置を講じる」と記すのみで、需要家への支援を見送った格好だ。経産省は「LPガスの原料費はLNGほど上昇していないため」としているが、LPガス原料の都市ガス事業者や簡易ガス事業者の需要家支援はどうなるのか、現時点でははっきりとしていない。また電力についても、再生可能エネルギー100%電気や卸電力市場連動型の料金メニューの利用者はどうなるのかなど、課題も多い。

岸田政権が狙うは支持率の回復だが・・・

大手シンクタンクによると、電気・ガス料金対策で、今後1年間で必要となる財政支出は約4兆円に上る。ガソリンなど石油燃料の補助金と合わせれば、10兆円規模だ。しかし、これほどの政策資金を投入したところで、消費者が物価抑制効果を実感できるかは不透明。前出の宮前氏は「来年 1 月に負担軽減策で電気代・都市ガス代が大幅に引き下げられても、4 月には大幅に引き上げられ、乱高下する可能性が高そうだ。負担軽減策がない場合と比べて、家計や企業の負担は軽くなるが、 価格水準が乱高下する影響 には注意すべき」だと警鐘を鳴らす。

自民党関係者によれば、「今回の総合経済対策で政権が狙っているのは、旧統一教会問題で低迷する支持率の回復」だという。しかし需要家からは支援額の水準や対象への不満が高まっており、思惑通りになるかは極めて微妙だ。先行実施された石油燃料補助金の費用対効果が疑問視される中、一連のエネルギー高騰対策の出口戦略をどう描くかも含め、岸田政権は難しいかじ取りを迫られそうだ。

【目安箱/10月24日】エネルギー広報のテーマに「産業遺産」は?


◆歴史は常に人気のコンテンツ

コンテンツ産業の人と話すと、「歴史」はテーマとして常に注目するという。歴史好きな人が各年代に性別を問わず多くいて反響が大きく、書籍、雑貨、映像、ネットなど同じ素材をさまざまな形で提供でき、課金できる可能性があるためだ。

産業遺産情報センター(東京・新宿区)

歴史では政治史だけではなく、社会、経済、文化などを学際的に横に見ることが流行している。その中で、産業史が注目され始めた。エネルギー産業の広報や社会貢献の取り組みで、この流れを使うことができないだろうか。産業遺産情報センター(東京・新宿区)を訪問して考えた。

2015年7月にユネスコの世界遺産委員会において、「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産として登録された。製鉄・製鋼、造船、石炭の分野で、全国23ヶ所、8県11市にまたがるものだ。その情報発信の拠点として同センターが2020年6月に開所した。

◆産業は明治維新と富国強兵の隠れた主役

日本は明治維新をきっかけに政府の力によって、近代化が成し遂げられたという印象がある。それは事実ではあるが一面で、民間と各地方の底力によって産業が成長し国が発展できた。このセンターの展示ではそれがよく分かった。

迫力のあるV R(仮想現実)による端島炭坑の映像。見せ方に工夫を凝らしていた

製鉄、造船、石炭の各産業は、江戸時代後期から各藩、また民間が行っていた。岩手や北九州では製鉄業が発展し、それに伴って高温の炉を運用するために、石炭産業が勃興した。鹿児島(薩摩藩)、佐賀(肥前藩)、山口(長州藩)という明治維新を牽引した西日本の雄藩では、海外から刺激を受け、自発的に造船業を作り出していた。

展示は、映像、V R(仮想現実)、また写真が活用されていた。映像と印刷技術の進歩で、迫力のある美しいものだった。製鉄、造船、石炭の各産業は設備の規模が大きいので、産業遺産も見栄えのあるものとなっていた。ボランティアの説明がついたが、どの方も熱心で博学で、聞きがいがあった。

さらに石炭産業は日本でほぼなくなったが、造船や製鉄は一時世界トップの生産量となり、今でも重要な産業として各地域に残っている。各自治体も、産業遺産を活かした観光、広報、講演会などを行っていた。産業遺産は、コンテンツとして魅力的で、さまざまな楽しみ方、活用方法があることも理解できた。

◆政治問題に企業は関わりづらい−軍艦島の難しい例

しかし、このセンターへの訪問で、産業遺産に伴う難しい問題が見えた。ここは「外交戦」「歴史戦」の舞台になっていた。

端島(軍艦島)展示コーナーのかつての居住者の人たちの写真と、居住者のボランティア。故郷への誹謗を解消しようと熱心に説明していただいた

上記の産業遺産に「軍艦島」と呼ばれた石炭採掘場だった端島炭坑(長崎市)が加えられた。ここは明治期から三菱財閥が購入し、島から海底に伸びるトンネルで、石炭採掘事業を明治初期から1974年まで行っていた。古い建物が廃墟のように残り、観光名所になっている。

ところが、韓国から「軍艦島で、強制的に徴用された朝鮮人労働者が奴隷の如く働かされた」という批判が行われた。同国政府はユネスコに抗議を今でも繰り返している。それは誤りだ。

展示ゾーンの一部は、この軍艦島についてのものだ。当時の島民の証言が集められている。中には朝鮮出身者の声もある。終戦前後には朝鮮人には日本人と同じ高い給金が与えられ、待遇に差別なく、一緒に仲良く暮らしていたという内容の証言ばかりだ。当時の端島にいた島民の方がここにボランティアとして詰めて、説明もしている。ところが韓国は、そうした記録を全く受け止めず、被害を受けたという主張を執拗に続けている。このセンターにも韓国の反日団体、そして日本の同調者が何度もやってきて抗議をし、ユネスコにまで訴えて展示内容を彼らのいう通りにせよと圧力をかけているという。

もちろん日本人として、こうした韓国の動きは不快だ。誤りならば反論するのは当然で、この施設が設けられたのは適切なことだ。このセンターは安倍政権時代に、「歴史戦」の必要性を訴えた安倍晋三首相の政治判断で作られたという。ただし、企業や政府が、そうした外交戦、歴史戦の矢面に立つのはためらいがあるようだ。

この施設は一般財団法人の産業遺産国民会議が運営し、施設は国が貸し出している。ところが政府側に熱心さを感じない。このセンターは、観光名所や博物館の集まる都心から離れた東京都新宿区若松町にあり、既存の政府の古い建物を使っていた。玄関は、主要通路から外れた路地裏の道から入る場所にあった。休日は休みで、コロナを名目に入館制限をしている。他の国営の博物館は休日に開館しコロナの制限も撤廃しているのに、おかしな話だ。

ユネスコ関係の対外広報は外務省、施設運営は内閣府・総務省、観光は国土交通省が関わっているようだが、各役所は存在を明確に示していなかった。故・安倍氏が首相として指示をしても、現場の役人たちはこのセンターを目立たせないように設置し、そして自らの責任逃れをしているのかもしれない。

軍艦島の石炭事業は三菱合名、その後に三菱鉱業に受け継がれ、閉山後は事業の後始末は、三菱マテリアルに受け継がれた。この展示では、同社や三菱グループは、資料提供以外に積極的に協力していなかった。筆者の推測だが、政治問題に巻き込まれることを嫌がり、消極的な関係にとどめたのかもしれない。役人が事なかれ主義に逃げることは批判されるべきだが、企業が消極的になることは理解できる。

◆エネルギーは産業遺産の宝庫

産業遺産情報センターの展示を見ながら、エネルギー業界の広報を考えた。

エネルギー業界の多くの会社が、企業博物館を運営している。この業界は真面目な社風の会社ばかりで、どの博物館も企業の歴史を丹念に広報している。しかしそれは個社の視点にとどまり、日本の歴史、地域社会の発展と企業の関わりを説明する大きな視点を組み入れたものは少ないように思う。

また2011年の東京電力の福島原発事故前まで、電力各社は原子力広報に力を入れ、専用の巨大なP R館を作っていた。そこでは原子力の安全を訴えていたが、歴史の視点は少なかったように思う。

産業遺産がブームだ。エネルギー産業は、明治に起源を発する古い企業が多く、地域の発展、人々の生活、国の歴史と密接に関わってきた。エネルギーインフラには歴史を感じさせる古いものがあり、巨大であり、見栄えがする。例えば電力会社のダムや発電施設、ガス、石油の精製施設は、その巨大さゆえに、多くの人に珍しく、また圧倒されるものだ。

各企業はこれまでも考えてきただろうが、歴史との関係を活用して企業広報をしてはどうか。その歴史を考える際に、企業の歴史だけを訴えるのではなく、日本全体や地域の歴史と絡め、リアルの観光と連動することで、新しい形のP R、企業広報が行えるように思える。産業遺産の側面を強調するのだ。露骨な企業を前面に出した広報は今では嫌われる。歴史を使いながら、各企業が行ってきた社会貢献を、さりげなく世の中に伝えて、印象を改善するのだ。各地域は観光に力を入れており、産業遺産の公開をすることで地域社会との交流も行いやすい。

ただし石炭の歴史に沈黙してしまった三菱マテリアル、三菱グループのように、歴史問題で政治や外交という難しい問題に巻き込まれてしまうかもしれない。

【目安箱/10月20日】今も続く福島「報道被害」東京新聞の処理水報道を斬る


◆放射能を検知させない測定器を使用? 奇妙な印象操作

「東電、トリチウムを検知できない線量計で処理水の安全性を誇張 福島第一原発の視察ツアーで」

東京新聞は2022年10月3日、1面トップとオンライン記事で東京電力福島第一原子力発電所の事故処理で出た処理水について、このような見出しで、問題があるかのように報じた。内容はタイトルの通りで、「同原発の視察者に配られる線量計は、トリチウムが検知できず、セシウムなど有害な放射性物質が反応しない線量計を使っている」というものだ。

そして記事は、これは「処理水は安全」という印象操作を行う行為で、「処理水の海洋放出に向けた印象操作と言われても仕方ない」「本当に処理水への理解を得る気があるのか」との言葉で結ばれている。

この記事を受けて、反原発の人々が騒いだ。「息を吸う様に嘘をつく」「インチキとゴマカシ」「原発汚染水の海洋放出に反対します」と、そうした人たちがよく使う批判がネット上では並んだ。

しかし、この記事には、事実が違うと、批判が殺到。また東京電力は10月3日に「ご視察時のALPS処理水サンプルキットを用いたご説明について」という文章を出した。この説明を要約すると、処理システムのALPSを通った水は、放射性物質が低減され、放射線量は微量すぎて人体に影響を与えないし、通常の機器では検知できないと、主張している。

つまり東京新聞は、「微量な放射線を検知できない測定器を使っている」という点では、積極的に嘘をついていない。しかし、その理由を全く説明せず、東電が意図的に悪いことをしているかのような印象操作をしているのだ。

そしてこの記事は、国際的に風評を広げてしまった。福島の処理水を危険だとなぜか騒ぐ韓国メディアがこれをそろって紹介した。東京新聞は福島と日本を誹謗し、誤った情報を拡散しているのだ。

◆読者にも、批判にも耳を貸さない東京新聞

東電の原発事故の後で、原子力と放射能をめぐる誤った情報がメディアによって拡散した。そして、それに騒ぎ、自分の政治主張を拡散しようとする人がいた。ようやく落ち着きそうした動きが消えつつあったのに、うんざりするほど繰り返された動きがまた復活した。「印象操作」という批判が向けられるべきは、東京新聞自身と執筆した記者自身である。

東京新聞は、原発事故をめぐり、これまで非科学的で異常な情報を繰り返し報道してきた。事故直後に、福島で子供たちが鼻血を出していると強調して報道したのは、東京新聞と朝日新聞の特集記事「プロメテウスの罠」とT B Sだった。その報道姿勢を今でも続けている。そして態度も傲慢だ。東京新聞にライターの林智裕さんが質問状を出したところ、同社の答えは「掲載した記事の通りです」と書いただけの、読者を馬鹿にしたものだった。

◆世論の体制は批判一色、デマ発信者を孤立させる態度を

このおかしな騒ぎを巡る救いがあった。多くの人が東京新聞の記事を批判し、印象操作と言えるおかしな情報の影響がネットの上では打ち消されている。

日本では報道量が少ないが、日本政府、東京電力は、処理水の安全性についての説明を繰り返している。IAEA(国際原子力機関)は今年2月に調査団を派遣。処理水を検証し、放出される処理水に含まれる放射性物質の特性評価、処理水の放出プロセス(放出のために使用される装置など)の安全性、人と環境を守るための放射線影響評価の3点の調査が行われた。そこで「安全性を確保するための予防措置が的確に講じられている」と評価している。東京新聞などのメディアは、こうした事実にほとんど触れていない。

世の中の大勢は放射能をめぐるデマに、普通の常識を持つ人はもう騙されなくなっている。デマに世論を動かす力もなくなった。しかし、そうした現実に焦っているのか、東京新聞と記事の執筆者などデマを流す人、反原発の主張をしている人の一部は、確信的に原子力と原発事故をめぐるおかしな情報を流そうとしている。そして他人の批判も聞かないし、正しい情報を広げようともしない。

原発事故から11年が経過してもその態度ならば、もう永久にその態度を改めることはないだろう。私たちは、そうした人々の説得を諦め、誤りを指摘した上で、社会的な悪影響を広げないように、発信者を孤立させていくしかないようだ。

【記者通信/10月15日】原発運転延長へ法改正 経産省主導に落とし穴も!?


経済産業省が原発の運転期間を原則40年、最長60年とする規制(40年ルール)の撤廃に動き出した。原子炉等規制法(炉規法)を改正して運転期間の上限を撤廃し、経産相が運転継続を判断した原発は原子力規制委員会の審査通過後、60年を超えても稼働できるようにする。政府は2023年秋の臨時国会までに炉規法を含む一連の法律改正を視野に入れるが、一連の動きは異例づくしの展開となっている。

運転期間の延長は岸田文雄首相がGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で8月、検討を指示していた。制度案は年末までに同会議でまとめる。

40年ルールは福島第一原発事故を受け12年、議員立法によって成立したが、40年という期間に科学的根拠はない。「安心」を求めて政治的に導入された日本独自のルールだ。欧米には運転期間に期限を設けていない国も多く、米国では運転期間を80年に延長した原発も存在する。

40年ルールが見直されなければ、国内で40年に稼働可能な原発は8基・956kW、50年はわずか3基・414万kWにとどまる。運転期間を60年に延長した場合でも、50年は23基・2374kW、60年にはその半分以下となる。震災後の停止期間を運転期間から除く案(カウントストップ)もあるが、50年カーボンニュートラルを目指す我が国にとって40年ルールの見直しは、革新炉開発とともに避けて通れないハードルだ。

経産省「運転延長は原発利用政策の一環」 

今回の炉規法改正については、実は経産省が主導している。炉規法は規制委が所管するため、改正案は環境省から提出されるのが通常だが、運転延長問題は「原発利用政策の一環」との理由から、資源エネルギー庁が立ち入ってきた格好だ。

規制委は10月5日、定例会合にエネ庁の関係者を呼び聞き取り聴取を行った。規制側が推進側を呼ぶ異例の展開の中、エネ庁は運転期間について「政策側の法体系の中で取り扱うことを検討する」と主張。実質的な“炉規法改正宣言”を行った。規制委の山中伸介委員長は「運転期間がどうなろうとも、厳正な規制ができる仕組みにするよう規制庁に指示した」と述べ、エネ庁の方針を容認した。

原子力行政については、かつてエネ庁の特別機関として原子力安全・保安院が存在した。しかし11年の福島第一原発事故を受け、原子力利用の「推進」と「規制」を分離するため、12年に廃止。規制行政は環境省の外局である規制委へ移管された。

そんな中、ここ数年はエネ庁による規制委への介入が目立っていた。事務方である規制庁のトップ人事に保安院出身の官僚を据えたり、現在の主要幹部も経産省出身だったりと、「保安院へ先祖返り」との声も聞こえる。炉規法改正は、先祖返りへの決定打となるかもしれない。

改正案の「提出方法」にリスク

関係者によると、経産省は運転延長のための炉規制法改正案を「電気事業法(電事法)改正の付帯」として提出すべく画策しているという。このやり方なら主眼が電事法の改正に置かれ、世論の批判を浴びにくいとの思惑が垣間見える。

しかし、旧統一教会問題や安倍晋三元首相の国葬儀の是非をめぐり、支持率の下落に歯止めがかからない岸田政権にとって、このテクニカルな手法にはリスクが伴う。野党から「姑息なやり口」と批判を受ければ、支持率がさらに下がりかねないからだ。そうなれば、GX実行会議でぶち上げた原子力推進政策が失速しかねない。岸田首相が正面から炉規法改正の必要性を語るのか、注視していきたい。

【目安箱/10月14日】「統一教会」騒動に見るエネルギー業界への余波


旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題を巡る騒動が、エネルギー政策に影響を与えるかもしれない。安倍晋三元首相の死去と、自民党安倍派の影響力の低下によって、原子力の活用と電力システム改革の見直しに積極的だった議員の動きが抑えられるのではないかという観測が出ている。味方の少ない電力業界、原子力関係者にとって、応援する政治の力が弱くなりかねない状況は、視野に入れるべきかもしれない。

◆安倍派、エネルギーでの強さは福田赳夫首相時代から

安倍元首相は21年11月に細田博之衆議院議長の後で安倍派(清和政策研究会)の会長に就任した。自民党の派閥の政治的影響力はこのところ低下しているが、国民的人気があり、首相退任理由の病気も治癒し、影響力の増大を考えているように見えた安倍氏の下で、同派は大きな存在感を持った。現時点で所属する議員は97人と同党最大で、人事上も政府と自民党の主要ポストに人を送り込んでいた。

安倍元首相は在任中に、エネルギーの正常化や原子力の活用に熱心ではなかった。しかし7月に亡くなる前まで、原子力の活用、新増設と新型炉、電力不足の解消を訴えていた。同派議員によると、派内の非公開の会合ではエネルギーの正常化を「(政権で)やり残した問題の一つ」と、まで言ったという。

もともと安部派には、経済安全保障やエネルギー問題に関心を寄せる議員が多かった。自民党の議員グループで原子力の活用を訴える「電力安定供給推進議員連盟」は細田氏がまだ会長で、同派の議員が多い。この理由について、同派の中堅議員にかつて聞いたことがある。同派は福田赳夫元首相が作った政策グループだ。福田氏は首相在任当時(1975−76)に、第一次石油ショック(1972年)の反省から、自主エネルギー源の確保に関心を寄せ、原子力発電の建設を支援し、地方の議員と結んで原子力発電の立地を進めた。そうした地方政界の人々の一部をスカウトして国会議員にした。

また池田勇人首相が作り、のちに福田氏のライバルとなった大平正芳首相の派閥となった宏池会は官僚出身の議員が多く、リベラル色が強かった。それに対抗するため、福田氏は保守色を強め、台湾などとの関係を強めた。「世代は変わったものの、そうした人たちの二世議員や後継者が多くなり、清和会は党内の中で、原子力推進、経済安全保障重視の人が目立つようになった」(同中堅議員)という。

◆歴史の因果が今に影響、批判の対象

ところが、その歴史の因果が今に影響を与えてしまった。安倍氏の暗殺事件で状況は変わる。統一教会で関係が深いと名前が浮上したのは、安倍派の有力議員が多かった。細田衆議院議長、羽生田政調会長などだ。同派はかつて反共を強く主張したため、それに共鳴した統一教会が、すり寄ってきたのだろう。そして、安倍首相の下で力を持った議員が多かったからこそ、安部氏の批判勢力に狙い撃ちされた傾向がある。さらに安部氏の存在感が大きかったゆえに、彼がいない後で派閥の求心力も党内での力も揺らいでいる。

「旧統一教会の問題では、本当に我々が標的にされるような状況の中で、悲しみと、つらさ、不愉快さも含めて皆さん方が結束を乱さず、耐え忍んでいただいている」。安倍派(清和政策研究会)が9月18日に行った研修会で、同派会長代理の塩谷立衆議院議員(静岡県)は苦しそうに述べたという。今後は塩谷氏を中心にしたベテラン議員が派閥を仕切るようだが、10月15日時点で安倍派の後継者は不透明だ。

さらに岸田文雄首相は、安倍首相に近かった甘利明議員(麻生派)、山際大志郎氏(同)、高市早苗議員(無派閥)から、岸田氏の宏池会の人脈に経済政策の主軸を移すとの観測が囁かれている。実際に9月の内閣改造では、安倍派から西村康稔議員が経済産業相に入閣した。安倍派外しの動きは見られなかったが、その懸念はくすぶる。

◆政治に振り回されたエネルギー業界、影響には警戒を

こうした安倍氏の不在と安倍派の力の低下は、エネルギーと原子力の先行きに影響を与えるかもしれない。前述したように、原子力の活用と電力自由化の問題点の是正に熱心な議員は安倍派に多かった。もちろん岸田首相も安倍派の議員たちも、同じ自民党である以上、経済政策の面で大きな違いはないだろう。しかし岸田首相は経済安全保障やエネルギー政策の正常化に、首相就任まで積極的に関心を示してこなかった。

元経産事務次官の嶋田隆氏が現在は首相補佐官だ。嶋田氏は原子力が動かず、自由化の軋みが出ている今の電力産業の問題を認識しているだろう。しかし経産省の担当者として、そうした政策を推進してきた人物だ。政策の転換よりも、失敗を認めずに、取り繕いを推進するだろう。それは波風を立てない岸田政権の態度と符号しそうだ。つまり安倍氏の不在は、電力の問題の是正のスピードを緩めてしまうかもしれない。

福島原子力事故以来、電力業界は政治に引き摺り回された面がある。こうした政治の微妙な力関係が、ビジネスに悪影響を与えてしまうかもしれない。社会を見る中で、視界の片隅に入れておいてよい動きだろう。

【記者通信/10月14日】託送、賦課金、原燃調…電気ガス高騰対策で有力なのは?


岸田政権が10月中の取りまとめを目指している総合経済対策の重点事項案が14日、明らかになった。「エネルギー価格高騰への対応と安定供給確保」を筆頭項目に掲げており、次のような書きぶりになっている。

〈燃料油の高騰対策に加え、社会全体が影響を受ける電力料金負担の増加を直接的に緩和する思い切った対策を行う。電気と同様に社会経済活動の基盤となるガスについても、ガスの特性も踏まえつつ、ガス料金の高騰に対する対策を講じるなど、電気とのバランスを踏まえた対応を進める〉

〈また、再エネの最大限の導入、系統用蓄電池の活用、安全性最優先での原子力の最大限活用等によるエネルギーの安定供給の確保ための取組を速やかに強化する。さら、企業の複数年にわたる設備更新ニーズも踏まえた徹底した省エネの推進等によるエネルギーの価格・供給量の変化の影響を受けにくい経済社会構造を実現するための取組を加速する〉

重要なポイントの一つは、電気料金の高騰対策と並び、ガス料金の高騰対策が盛り込まれたことだ。しかも、当初案にはなかった「ガス料金の特性も踏まえつつ」という文言が入ったことも注目される。「電気とガスでは違う方式を取る可能性もあるという意味ではないか」。ガス業界の関係者はこう解説する。また、「都市ガス」ではなく、「ガス」となっていることで、「LPガス料金も対象になるのでは」との声が業界の一部で聞こえている。

高騰対策を巡る三方式案はどれも一長一短

さて、具体的にどのような対策になるのかだが、14日現在、経済産業省資源エネルギー庁部内の調整は依然として難航しているもようだ。政府関係者によれば、①託送料金減免方式、②再エネ賦課金凍結方式、③原燃料費調整方式――と三つの案が浮上。うち、①については、システム対応上の難しさや、料金明細に記載できないといった問題から「可能性は極めて低い」という。②については、利用者への分かりやすさの面で利点があるものの、電力多消費事業者に賦課金が免除されていることや、この方式ではガスが対象にならない問題にどう対処するのかが課題になる。

その意味で有力なのは、③だという。料金明細に明示でき、電力とガスがある程度、平そくを合わせることも可能なためだ。ただ一方で、問題点もあり、「再エネ100%電気」を扱っているメニューの利用者や、燃調ではなく卸電力市場連動を採用するメニューの利用者は対象にならない。これらをどう解決するのか。

都市ガスと違い、LPガスは対象にならず!?

「結局、どの方式にも一長一短があり、全ての需要家が満足するような対策は見当たらないのが現状だ。それを踏まえた上で、『燃料調達費の高騰によってエネルギー料金が上昇する影響をできるだけ抑える』という趣旨に沿った対策を講じることになるだろう。ただ、LPガスについては、輸入価格がLNGほど上昇していない、小売り事業者の数があまりにも多すぎて料金表の補足ができないといった実情を踏まえて、対策から外される可能性が高い。当然、LPガスの需要家からは『都市ガスの負担は軽減されるのに、われわれに何もないのはおかしい』という不満が出てくるだろうが、そこは何とか理解してもらうしかないだろう」

来週には高騰対策の方向性が決まりそうだが、突っ込みどころのある対策となるのは間違いなく、総合経済対策を巡る臨時国会の論戦は大荒れの展開になるかもしれない。

【記者通信/10月13日】東電が柏崎刈羽再稼働に本腰 問われる「政治力」の発動


東京電力ホールディングスの小早川智明社長が9月30日の会見で、原子力発電事業を巡る今後の方向性を発表した。柏崎刈羽原発について、核物質防護事案に対する36項目の「改善措置計画」の成果を取りまとめて知らせるほか、本社機能の柏崎市への移転については2026年度までに職住環境を整備する。また福島第1・第2の廃炉部門の統合に向けた検討を始める。柏崎刈羽の再稼働へ向けた動きが加速してきた。

廃炉部門を分離 再稼働への足がかりか

柏崎刈羽では21年、IDカードの不正利用や不審者侵入の検知設備の故障が相次いで判明。事実上の運転停止となる核燃料の移動禁止措置を命じられている。再稼働に向けた終盤のステップには使用前事業者検査が必要だが、移動禁止措置によって実施できていない。

東電は21年9月、「改善措置活動の計画」を規制委に提出。現在、計画に盛り込んだ36項目すべての措置を実施中で、冬場における迷惑警報対策の効果などを評価した後、全項目の成果を取りまとめて発表する。

新規制基準に基づく安全対策工事の一部の未完了が発覚した問題については、総点検が9月30日に一巡した。今後、使用前事業者検査を進める中で追加対応が必要であれば、適宜是正する。

東電は一連のトラブルを受け、原子力改革に本腰を入れている。中でも大きいのが、本社機能の柏崎移転と外部人材の登用だ。

本社機能の柏崎移転については、26年度までに柏崎駅周辺に200人規模の執務室を新設、発電所構内にも100人規模の執務環境を整備するなど職住環境を整備し、300人程度を柏崎に異動させる。すでに配置転換は始まっており、5月までに64人が異動した。

外部人材の登用については、柏崎刈羽原発所長補佐に中部電力・浜岡原発で総合事務所長を務めた水谷良亮氏を採用したほか、核物質防護の機能強化や安全性向上のため、自衛隊・警察・消防・他電力OB、他機関OB、製造業から計10人を登用。10月には追加で2人を登用する。

また設備対策にさらなるリソースを投入するため、3年で200億円超の設備予算を確保していたが、約580億円に増額することも明らかになった。

同社の「原子力・立地本部」から、福島第2の廃炉部門を切り離し、福島第1の廃炉部門「福島第1廃炉推進カンパニー」と統合する検討を始める。原子力・立地本部は柏崎刈羽の再稼働を管轄しており、廃炉部門切り離しの狙いの一つは再稼働に本腰を入れるためとみられる。

待たれる「政治力」発動のタイミング

小早川社長は再稼働時期について記者会見で、「現時点において積み上げでどの時期を目指すと申し上げられる段階にない」と述べた。しかし、半月前の9月16日に行われた記者会見では、23年4月以降の電気料金の算定基準に、柏崎刈羽の再稼働を織り込むことを明らかにした。「23年度に柏崎刈羽7号機の稼働75%」を前提に電気料金の値上げ幅を計算するとのことだが、「稼働75%」は「23年7月」の再稼働を意味する。小早川社長は「来年7月の再稼働を目指すものではない」と強調したが、「一日でも早く、再稼働を目指す方針に変わりはない」とした。

一方、政治の側はどうか。岸田文雄首相は8月24日、GX実行会議の第2回会合で、安全審査に合格している7基の原発について、来夏以降に再稼働を進める方針を示した。「国が前面に立ってあらゆる対応を取っていく」(岸田首相)というのは、再稼働に向けて「政治力」を発揮するという意味だろう。

7基の原発(柏崎刈羽6・7号機、東海2号機、女川2号機、島根2号機、高浜1・2号機)のうち、自治体の合意がないのは柏崎刈羽6・7号機と東海第2だ。中でも、東電がトラブルを連発し、花角英世新潟県知事が県独自の「3つの検証委員会」の結果と県民の意思確認を再稼働の条件として掲げる柏崎刈羽は、「政治力」が求められる。10年前になるが、当時の野田佳彦政権は枝野幸男経済産業大臣を福井県に派遣し、大飯原発3・4号機の再稼働を要請。1カ月後、おおい町議会は再稼働を決定した。来年4月には統一地方選も控える中、どのタイミングで政治力が発揮されるのか注視したい。

【記者通信/10月5日】再エネ賦課金を減免!? 電気料金負担軽減で妙案浮上


「これから来年春にかけての大きな課題は、急激な値上がりのリスクがある電力料金です。家計・企業の電力料金負担の増加を直接的に緩和する、前例のない、思い切った対策を講じます」

岸田文雄首相が10月3日に開かれた臨時国会の所信表明演説で、10月中に取りまとめる総合経済対策に関連し電気料金の負担軽減策を表明。上昇を続ける電気料金対策が、にわかに政権の重要課題に浮上してきた。

「前例のない思い切った対策とは、一体なんだ?」「およそ700社に上る電力小売り事業者の料金を一律に低減する方策など存在するのか?」――。エネルギー関係者の間には、さまざま噂や憶測が飛び交っている。関係筋が言う。

「一部報道でも出ていたように、大手電力の送配電会社に補助金を出し、託送料を軽減する方法が考えられる。ただ、小売り事業者がその分料金を引き下げるのかという問題や託送料金システム上の問題などがあり、実効性をどう担保するのかが難しい。小売り事業者全てに補助金を支給する方法も現実的ではない。岸田首相が、『前例のない思い切った対策』と言ってしまった以上、小手先のものでは国民の理解を得られないだろうし。重い宿題を突き付けられた資源エネルギー庁関係者は、四苦八苦しているようだ」

こうした中、エネルギー関係者の一部から興味深い方策が聞こえてきた。再エネ賦課金の徴収を一時的に停止するというものだ。2022年度の再エネ賦課金の水準は1kWh当たり3.35円。平均的な家庭で月額千数百円程度の負担になる。自民党の萩生田光一政調会長は10月2日のNHK日曜討論で「いま電気料金は家庭で2割上がっており、少なくとも半分ぐらいまでは戻していく必要があるのではないか」と指摘した。平均家庭の電気料金が1万円程度とみれば、賦課金停止効果とのつじつまも合ってくるというわけだ。

なかなかの妙案に思えるが、再エネ推進政策との整合という壁は立ちはだかる。また、この方法だと、都市ガス業界が求めているガス料金の負担軽減につなげることは不可能だ。果たして、経産省はどのような答えを出してくるのか。総合経済対策の動向から目が離せない。

【目安箱/9月29日】迷走続く日独の脱原発政策


日本の政治家の行動で、エネルギーを巡りまたがっかりする話があった。立憲民主党代表の泉健太衆議院議員と同党首脳部は、日本在駐の各国大使と意見交換をしているという。泉氏は9月17日にツイッターで次の文章を出した。

〈ドイツもロシアからのLNG供給制限で国内のエネルギー価格が高騰。それでも政府も政党も「新型炉には手を出さない。原発はゼロにする方針は不変」とのことでした。〉

この書き込みは間違っている。ドイツはロシアからLNGを購入していない。パイプラインでガスを引いている。そしてドイツの脱原発方針を肯定的に受け止めているようだが、それは同国内で、そして世界で問題になっている。それに気づいていないようなのだ。早速この書き込みは「炎上」してしまった。

◆ドイツ、脱原発を実施できるのか

ドイツは今年末までに原子力発電を全て停止する計画だった。ハーベック副首相兼経済・気候保護相(緑の党)は9月15日、現在稼働している3基の原発を計画通り今年末に停止し、脱原発を実行すると表明した。ただし、緊急時に備えて2基のみ来年4月まで待機状態にすることも発表した。

ドイツは福島第一原発事故後に脱原発を決め、徐々に原発の閉鎖を進めてきた。これは当時の保守政党系のメルケル政権が決定した。1980年代に創立した緑の党は脱原発を党是にしてきた。昨年末にできた左派連立政権に緑の党は参加し、その政策を継承した。ところが情勢は変わった。ウクライナ戦争以降の化石燃料価格の高騰、ロシアからエネルギーを買わないというEU全体の政策に押され、脱原発政策の見直しが問われていた。

ただし、脱原発を断行するとしても、その先行きは依然不透明だ。日本の資源エネルギー庁の資料によれば、ドイツは21年に石油で34%、天然ガスで43%、石炭48%をロシアから購入している。それをいきなりゼロにはできない。またドイツでは国と民間企業が世界各地で天然ガス、電力などのエネルギーを購入し、他のE Uの小国が、それらを調達しづらくなっている。

スウェーデン緑の党の国会議員テイク・アナンストゥット氏は、「もしドイツが自国のエネルギー安全保障に責任を持たないのであれば、スウェーデン政府にバルト海の送電線を切断するように提案したい。連帯は誰にも傷を負わせない限り成立する」と、ドイツの政治家とツイッターでやり取りし、世界中のメディアに転載された。欧州各国の政治家や、専門家から、ドイツの脱原発政策を批判する声が出ている。ドイツ国内でも議論が混乱し、連立を作る社会民主党と緑の党の対立も伝えられ、国内世論調査は原子力の停止の反対が多数になっている。9月の脱原発決定がそのまま実施されるかは不透明だ。

つまりドイツの脱原発政策は、「原子力発電が生み出せる巨大な電力の代替策をどうするのか」という根本的な問題に解決策を作れないまま進行してきた。とりあえずの対応策として「ロシアのガスを使う」という方向に動いたが、それが今では難しくなり、混迷の度合いを深めている。日本ではドイツの脱原発を讃える情報がメディアや研究者を通じて広がっている。しかし、現在起こっている混乱の情報量は少ない。

◆笑えない日本の政策の曖昧さ

しかし、日本政府もドイツと同じように原子力を巡る対応が混乱している。政府が8月24日に開いた「GX=グリーントランスフォーメーション=実行会議」で、岸田首相は地球温暖化防止と電力需給ひっ迫に対応するために、来年の夏以降の原子力の追加の7基の再稼働と、次世代革新炉の開発・建設など「(電源確保に)あらゆる手段を取る」と表明した。

これは、これまでの脱原発政策からの転換と受け止められた。けれども、その後に岸田首相は会見などで「脱原発政策は変わらない」と質問に答えた。同実行会議から1カ月近く経過したが、特に新しい話は政府から出ていない。掛け声だけだったのか。

2011年の東京電力の福島第一原子力発電所事故以来、日本ではエネルギー政策で原子力発電が中心になった。脱原発が当時の民主党政権、そして2012年から交代した自民党・公明党の連立政権でも政策になった。ところが、ドイツと同じように、政治的な思惑、反対への警戒で、脱原発が不可能と明らかになっても、なかなか政策が是正されない。

日本の岸田首相、ドイツのショルツ首相は共に、「リーダーシップに乏しい」と批判される。2人とも、世論に左右される問題で、途端に動きが鈍くなる。

◆政策は「合理性」で判断してほしい

印象的な光景があった。 NHK・BSが国際報道2022(9月1日放送)のリポートで、ドイツの脱原発を巡る問題を伝えていた。デモでは参加者は高齢者ばかりで、若者が「経済を考えろ」「電力料金が高い」とデモに野次を飛ばしていた。2013年ごろの日本の脱原発デモでも同じような光景があった。デモに若い人の数は少なく、世論調査でも現役世代、若い世代ほど原子力への感情的反発は少ない。

1960年代から、核兵器や反戦運動と絡んで、原子力が政治問題になってきた。その残滓が日独に残っているのだろう。他国ではこうした原子力に対する感情的な反発はあるものの、政策に影響を与えるまで至っていない。

電力料金の負担や暖房のない極寒の冬を経験したくはないのだが、その事実を深刻に受け止めない、もしくは知らない人たちが、エネルギーの政策、企業活動を左右する。これはおかしい。もちろん、エネルギーを巡る多様な意見を尊重するが、その議論では「合理性」が判断の中心になってほしい。存在する原子力発電所を活用する。それで多くの問題が解決するのに、なぜしないのか不思議だ。冒頭の事例でもわかるように、泉立憲民主党代表のように、世論におもねるが不正確なエネルギーをめぐる知識しか持たないのに、多くの政治家が問題に参加する問題もある。

日独の原子力政策の迷走を見ながら、民意とエネルギーの関係が、「これでいいのか」という思いは深まるばかりだ。

【記者通信/9月29日】風雲急を告げる革新炉開発 「周回遅れ」を挽回できるか


革新炉開発を巡る動きが加速している。経済産業省は9月26日、高速炉開発会議の戦略ワーキンググループ(WG)を開き、高速炉開発に向けた「戦略ロードマップ」の改定案を提示した。首相直属のGX(グリーンイノベーション)実行会議が次世代革新炉の開発・建設を政治決断が必要な項目の一つに掲げたことを受け、革新炉開発の推進に向けた議論が加速し始めた。国際的に出遅れていた日本の技術力の強化を図るべく、開発情勢は風雲急を告げている。

日本原子力研究開発機構が保有する高速増殖実験炉の「常陽」

開発の段階的目標と役割を明確化

同会議が2018年に提示した改定前の戦略ロードマップでは、当面5年間程度を「ステップ1」として民間のイノベーションによる多様な技術間競争を促進。24年以降の「ステップ2」では、国と日本原子力研究開発機構、電気事業者がメーカーの協力を得て技術の絞り込み・重点化を行った上で、各炉型などの有効性を評価・検討するとしていた。

今回の戦略ロードマップの改定案では、24年以降の開発のあり方について具体的な開発目標を設定し、関係者の役割をより明確化。50年までの実証炉の運転開始を目指し、23年夏には24年度以降の概念設計の対象となる炉概念の仕様と中核企業を選定する。24~28年度には実証炉の概念設計、必要な研究開発を行い、28年頃にも炉の概念設計の結果と制度設備の状況などを踏まえた「ステップ3」への移行を判断する。

関係者の役割については、国が目標と実用化に向けた行程を提示することで、研究開発を先導する。開発の司令塔となる組織には「もんじゅ」運用の反省などを踏まえ、研究開発全体を統括する機能の強化を求めた。また日本原子力研究開発機構には「もんじゅ」の設計・建設・運転・保守の経験の有効活用を、電気事業者に対しては軽水炉運営の経験、新規制基準対応の経験を活かし、原子力人材の基盤強化を期待する。メーカーにはイノベーションの促進やサプライチェーンの維持・発展を求めている。

IEA事務局長「原子力発電がカムバックした」

高速炉をはじめとした革新炉の開発は待ったなしだ。その理由として、まず挙げられるのが脱炭素である。各国は脱炭素関連の技術開発に莫大な予算を投入し、あらゆる産業で脱炭素社会に向けた大競争時代に突入した。いまや国家戦略が脱炭素に資するかどうかが、国際競争力を左右する。脱炭素社会の実現に原子力発電が必要なことは論を待たない。9月26日に開催された第2回アジアグリーン成長パートナーシップ閣僚会合で、世界エネルギー機関(IEA)のファティ・ビロル事務局長が「原子力発電がカムバックした」と述べたように、需要は急速に高まっている。

しかし、わが国では3・11以降、国内で進行・計画中だった新設プロジェクトはいずれも中断し、英国やトルコ、ベトナムで計画されていた輸出案件も中止・終了した。空白期間の長期化により、川崎重工業や住友金属工業、古河電気興業といった大手企業が原子力事業から撤退し、原子力従事者も減少の一途をたどる。エネ庁の資料によると、プラントメーカーにおける建設経験者は3.11後から21年度までの9年間で約4割減少した。建設経験者の年齢層は51歳以上が半分を占める。それに伴い、原子力関係の学科・選考の数も減少傾向だ。

それでも、日本はエンジニアリング、燃料、濃縮、原子炉容器、蒸気タービンなど、幅広い範囲で強固なサプライチェーンを温存している。これは原子力大国のフランスに匹敵する範囲だ。さらに革新炉の中でも、革新軽水炉や小型軽水炉は既存の大型軽水炉のサプライチェーンと共通する部分が多く、海外プロジェクトにおいては国産比率を重視される傾向がある。つまり、日本が革新炉開発で世界の需要に応えることは、技術・人材・サプライチェーンの維持に直結するのだ。

国内の原発に目を転じると、50年頃には多くの原発が40年の運転期間を終える。40年ルールが見直されなければ、40年に稼働可能な原発は8基・956kW、50年はわずか3基・414万kWにとどまる。仮に運転期間を60年に延長した場合でも、50年は23基・2374kW、60年にはその半分以下となる。今、革新炉開発を急がなければ、将来的に国内の原発産業は消滅してしまいかねない。

革新炉WGでの「大きな一歩」

革新炉開発で先行するのは、ロシアと中国だ。ロシアは16年に高速炉の実証炉を、中国は21年に高温ガス炉の実証炉を、それぞれ運転開始した。一方、欧米は約20年にわたるプロジェクト不在で、原子力サプライチェーンが脆弱化していたが、ここ数年、新たな革新炉の実証炉プロジェクトを立ち上げ、大規模な政府支援を行っている。米国は小型炉の開発に注力し、28年に高速炉と高温ガス炉の実証炉2基の運転開始を目指す。英国は自国の原子力潜水艦技術の応用で製造できる小型軽水炉に注力し、30年代初頭に高温ガス炉の実証炉の運転開始を目指している。フランスは22年、6基の革新軽水炉の新設と、8基の新設に向けた検討を表明。小型モジュール炉(SMR)については、投資リスク低減のために開発すると位置付けている。

こうした中、日本の革新炉開発は「周回遅れ」(電力関係者)の状況で、課題が山積している。ひとえに「革新炉」といっても、革新軽水炉、SMR、高速炉、高温ガス炉、核融合炉……。その種類は多様で、炉ごとの開発工程や、どの炉を優先して開発するかという順位付けが行われていない。研究開発費にしても、エネ庁の予算は直近20年間で最大でも年間100億円ほどで、ここ10年ほどは半減している。新規制基準は既存の軽水炉を念頭に置いたもので、「革新炉規制」は存在しない。

このような現状を踏まえ、総合資源エネルギー調査会(経産省の諮問機関)原子力小委員会の革新炉WGは7月29日、①基本方針の明確化、開発のポートフォリオとロードマップの策定、②システムエンジニアリング機能を強化するプロジェクトの創出・支援、③導入に必要な事業環境の整備、④民間のイノベーションを喚起する開発の司令塔機能、⑤サプライチェーン各工程に即した多様な支援メニューの整備・導入――五つの課題を提示。同WGの黒崎健座長は9月26日、本誌の取材に対し「大きな一歩だと感じている。いろんな物事が動き出すきっかけになるのではないか」とコメントした。

カーボンニュートラル、エネルギーセキュリティ、レジリエンスといういずれの観点からも、日本にとって原発は必要不可欠。世界の趨勢と日本が置かれた現実から、革新炉開発を着実に、スピード感を持って進めることが求められている。

【記者通信/9月21日】東電が標準料金値上げを発表 柏崎刈羽の再稼働が焦点に


東京電力ホールディングス(HD)と東京電力エナジーパートナー(EP)は9月20日、2023年4月からの特別高圧と高圧向け事業者を対象とした電気料金標準メニューの詳細を発表した。基本料金に反映する燃料費等調整単価の算定に関し、これまでの電源構成や燃料価格を最新値に置き換えた上で、卸電力取引所におけるスポット市場価格の変動を受けた「市場価格調整項」を導入。料金体系を見直すことで、調達費用が収入を上回る「逆ザヤ」状態の解消を目指す。

特別高圧・高圧電気料金見直しの概要

新設した「市場価格調整項」は、スポット市場価格の加重平均値である平均市場価格と、17.44円に設定した基準市場価格(21年7月~22年6月のスポット価格をもとに決定)の差額に、市場価格単価を乗算したものとなる。市場価格単価は、平均市場価格が1円増減した際の1㎾時当たりの変動額で、特別高圧は32銭8厘、高圧は33銭7厘に設定している。東電EPが試算した参考値によると、仮にスポット市場価格が直近(22年7月21日~8月20日)の32.29円で推移した場合、事業者側の値上げ幅は約12~14%程度になるという。東電EPの秋本展秀社長は会見で「特別高圧、高圧のお客さまに一層のご負担をお願いするということは、非常に当社としても大変心苦しい決断」と話し、秋本社長ら取締役4人と東電HD小早川智明社長の月額報酬10%を、22年10月から23年3月まで自主返納すると明らかにした。

会見する東電EPの秋本社長(右)

料金改定は23年4月1日からの予定だが、契約満了日が4月1日以降の事業者に対しては満了日まで現行制度を維持(託送料金見直し分のみ加算)する。最終保障約款を契約している事業者が東電EPとの契約を希望する場合の協議も再開し、10月中旬の同社ウェブサイトで必要書類や具体的な申込方法などを周知するとしている。

原発再稼働で2000億円削減も「具体的時期示すものでない」

今回の電気料金算定基準には、新潟県の柏崎刈羽原子力発電所7号機の稼働を75%織り込み、約2000億円のコスト軽減を図っている。これにより、東電HDの小早川智明社長が16日の会見で示唆した23年7月再稼働に向けた準備が進むとみられているが、秋本社長は「具体的に再稼働時期を示すというものではない」と再稼働時期を明確にはしなかった。一方で「原料価格や市場価格の高騰を全てお客さまに転嫁することはできないと経営判断した」と話し、原発再稼働による安定供給と財務状況改善に全力を尽くす姿勢を見せている。

記者からは値上げによる収支への影響について質問が出たが、「経営する者として一日も早い黒字化へ、できることを最大限するに尽きる」と話すにとどまった。低圧の規制料金の見直しを含めた対応については、「現時点では考えていない。今後は状況の変化を踏まえて、総合的に判断していく」と述べた。

【記者通信/9月10日】スマエネWeek秋に3万人来場 電力高騰で注目される再エネビジネス


電気料金の高騰が、再生可能エネルギーを巡るビジネスを大きく変えようとしているのか。国内外のエネルギー関連団体や企業が集まる日本最大級の総合展示会「スマートエネルギーWeek秋2022」が8月31日から9月2日まで、千葉県の幕張メッセで行われた。380の企業や団体が最先端技術を出展し、3日間合計で約3万人が来場。コロナ禍にもかかわらず、全国から大勢の来場者が詰めかけ、再エネビジネスへの関心の高さを浮き彫りにした。

7つの展示ゾーンで構成された今回の総合展。注目は、2050年カーボンニュートラル(CN)実現に向け、主力電源としての期待される洋上風力発電だ。電気料金高騰局面の長期化がささやかれる中、コスト競争力の観点からも関心が高まっている。「WIND EXPO 風力発電展」では、関係者によるセミナーのほか、風力発電所の建設、保守運用、洋上風力技術などで技術を持つ企業団体が出展した。来場者からは「国の後押しもあり見通しは明るい」(曳船サービス担当者)と期待の声が聞こえる一方、「日本は風車の大型化が進み大量生産には向かない。技術力を示して海外企業にアピールしないと儲けにはつながらない」(塗装メーカー担当者)と冷静な意見も出た。

SEP船で大型化する洋上風力事業に対応

「遠浅の海が少なく適地が限られる日本で洋上風力を進めるなら、大型化は必須」と話すのは、海洋土木工事を多く手掛ける五洋建設の担当者。国内で初めて大型クレーンを搭載した800t吊の自己昇降式作業台船(SEP船)を投入するなど、今後は風車の大型化に対応した1600t吊のSEP船を23年4月稼働に向けて建造中だという。担当する洋上風力事業本部の島田遼太郎氏は「1600t吊のSEP船が完成すれば、15MW級の着床式洋上風力設置工事にも対応できる」。自然災害による故障リスクや建築コストの増大など、大型化による弊害についても「1600t吊のSEP船なら悪天候下でも制度の高い作業が可能」と将来を見据える。五洋建設は今後3籍のSEP船を保有し、海底ケーブル敷設や15MW級洋上風力建設の競争力を高めていく構えだ。

洋上風力は浮体式が「世界基準」になるか

三菱重工業グループは、浮体式洋上風力技術の一般化に向け、福島浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業を推進。こちらも15MW級といった風車の大型化に対応する。三菱造船の小松正夫海洋開発担当部長は「3~4年後にも洋上風力は浮体式が世界標準になると予測している」と話す。三井造船の手がけるフロート技術は既存造船所の設備を活用でき、港湾の作業が可能なため、日本の海岸での製造に適しているという。自然災害リスクに対しても「50年に1度の波高、潮流に耐え得る設計で製造している」(小松部長)と自信を見せる。将来的には曳航可能な浮体式の利点を生かしてアジア各国で市場拡大を目指していく。

国際エネルギー機関(IEA)によると、洋上風力市場は、40年には全世界から120兆円超の投資が見込まれるという。特にアジア市場は欧州とは海の形状や気象条件が異なり、現在の風車設計の中心である欧州とは違う技術コンセプトが求められる。今回の総合展で、日本の部品メーカーはアジア市場開拓が可能な技術力を国内外にアピールした。それらを商用化のベースに乗せられるか、注目だ。

蓄電システムへのニーズ高まる

洋上風力とは別に来場者の関心を集めたのが、二次電池や太陽光発電のゾーンに展示された蓄電システムだ。脱炭素と節電を両立させるため、企業や家庭の需要が高まっている実態が浮かび上がった。

蓄電システムは蓄電池とパワーコンディショナーが一体となっているため、電気を蓄え、必要に応じてその電気を利用することができる。中でも大型の蓄電システムは、コンビニやホテルなどの施設にソーラーパネルを設置する企業のニーズが高い。企業の蓄電池導入では国や地方自治体の補助金も手厚く、たとえば東京都は「地産地消型再エネ増強プロジェクト」として、太陽光と蓄電池をセットで導入した場合、経費の3分の2を助成している。

現在、村田製作所やパナソニック、京セラなど電機メーカー大手が販売しているが、新たに参入するのが中国のファーウェイだ。年末を目途に、スマート産業用蓄電システムの発売を予定している。スマートフォン生産などで培った技術を活かし、コンピューター上で行うシステム管理などの使いやすさが強みだ。会場では住宅用蓄電システムの展示も行っていたが、来場者のお目当てはもっぱら産業用。担当者は「用意したパンフレットがなくなりそうです」と嬉しい悲鳴を上げていた。

FIT期間終了の利用者に照準

家庭用の蓄電システムを展示したのが、台湾のプラスチックジャパンニューエナジーだ。台湾プラスチックは化学分野や半導体分野で世界トップクラスの大型複合企業グループで、日本での家庭用蓄電システムの販売に関して7月、双日と総代理店契約を締結した。双日建材を販売窓口として、この秋から販売を開始する。

双日の担当者は「昨年夏から、『(再エネ電気は)売っても安いので貯めたい』という声が増えている」と語る。固定価格買い取り制度(FIT)の開始から10年が経過。今後、10年間の契約期間を終えた住宅は、発電した電気をこれまで通り売電するか、蓄電池を導入して自家消費にまわすか選択を迫られる。ここで重要なのが、蓄電池を導入したとして、採算を取れるのかという問題だ。住宅で蓄電池を導入するには、100万円以上の費用がかかることが多いうえ、蓄電池の寿命は、10~15年ほどとされる。

丸紅エネブル蓄電池の試算では、太陽光パネルを設置している一般家庭で蓄電池を導入、自家消費率を30%から70%まで向上させた場合でも、電気料金の年間削減額はわずか3.5万円にとどまる。これでは、仮に蓄電池の導入に100万円かかったとして、採算が合うのは蓄電池の寿命がとうに尽きた28年半後となってしまう。この状況を見越して補助金が交付されているが、補助金を利用して導入費を抑えられたとしても、初期費用を回収できるかどうかは微妙だ。

今年に入り見積依頼が急増

とはいえ、ある出展企業の担当者によると、電気料金の高騰トレンドが続くと見て蓄電システムの導入を検討する家庭もあり、22年になって以降、見積もり依頼が急増しているそうだ。その中には、太陽光パネルは設置していないが、電気料金が安い夜間に電力を蓄電し、その電力を日中に利用することにより、節約を見込む家庭もある。もちろん、災害や停電時の非常電源として利用できるメリットも考慮した上でのことだ。

企業、家庭ともに、蓄電池を求めているのは採算上のメリットだけが理由ではない。例えば、企業であれば脱炭素経営に取り組むため、家庭であれば災害への備えや、サステナブルな生き方をするため。金銭だけでは計れない価値のために脱炭素を選択する。そして、そこに巨大なビジネスチャンスが生まれ、経済は大きく変容しようとしている――。今回の総合展では、そのうねりを体感することができた。

【記者通信/9月7日】実に快適!「E Vトゥクトゥク」に乗ってみた


東南アジアを中心に移動で使われる「トゥクトゥク」と呼ばれる3輪バイク。これをE V(電動車)にした「E Vトゥクトゥク」が日本で売り出されている。これに試乗してみた。「快適」「軽快」「安全」「かわいい」。印象を言葉にすると、こんな単語が浮かんだ。E V(電気自動車)、小型自動車、バイクの「いいところどり」をしている印象だ。

EVトゥクトゥクのイメージ

◆E V、バイクの「いいところどり」した乗り心地

「E Vトゥクトゥク」の本体サイズは、99.5×102×201cm(幅×高さ×長さ)で小型のボックスカーを、さらに小さくした印象だ。重量は212kgだが、電動モーターで動き、加速も減速もスムーズ。操縦はバイクのようなバーハンドルで行うが、左右に曲がるときリーンしない(車体が左右に傾かない)ためハンドルを切る感じは、独特のものだ。しっかり減速すれば小回りもよく効く。乗車の際にはヘルメットはいらない。街乗りで使いやすい移動手段と思った。

バイクと違って屋根があり正面にはフロントグラスがあるため、雨風をある程度防げる。横にドアがないため、オープンカーのようで、走ると風が心地良い。最高速度は時速40kmで、スクーター程度だ。そしてエンジンを使う自動車やバイクと違って、音はなく振動も少ない。航続距離は1回のフル充電で80km程度、バッテリーを2個搭載すれば約150kmも走れ、かなり遠くまで往復できる。

足による操作がないため乗車姿勢にはかなり自由度があり、3輪自立型で床にはフロアパネルがあるためバイクのように停車のたびに地面に足をつけて車体を保つ必要がなく、安定している。乗車の気分はどちらかと言えば自動車のようだ。ブレーキは、スクーターのようなレバー操作だが効きは良かった。バイクのようなエンジンの振動も音も匂いもなく、出力1000Wのモーター駆動でスムーズに発進、加速ができる。

ハンドルにあるボタンを操作することで「リバース(後進)」ができ、その際にはモニター画面の表示が切り替わって、後部の映像(リアビュー)が映る。スピードや充電量などは液晶画面に映し出される。後部座席には、大人が2人程度乗ることもできるし、かなり大きな荷物も運ぶことができる。E V、バイク、自動車の「いいところどり」をしたような印象だ。

◆とにかく安いランニングコスト

E Vトゥクトゥクの費用はどうだろうか。

電気は、家庭用100V電源から充電するだけだ。充電時間は電気容量ゼロからフル充電まで約5時間程度だ。夜に充電にできる。またバッテリーを取り出して屋内で充電することも可能だ。電気代も充電1回平均50円程度で、財布にも環境にもやさしい。

本体価格は税込み77万円だが、ナンバープレート取得代行や自賠責保険の加入手続などの「納車パック」に11万円かかる。

これは法律の上では「側車付軽二輪」という扱いになる。側車とはバイクのサイドカーの事だ。税制上、軽二輪の扱いとなり、軽自動車税は3600円で毎年必要だが、車検が無く重量税(4900円)は納車時の一度だけだ。電気代はフル充電時で1回100円~150円程度。ランニングコストは、自動車よりもはるかに安くなる。駐車はバイクの駐車スペースがあればよく、車検や車庫証明も不要だ。

経費的には、自動車などの他の移動手段と比較して、かなり手頃だ。

◆観光業での導入拡大に期待

E Vトゥクトゥクは、ビーグルファン(東京)社が、中国のメーカーと共同して開発し、2019年から売り出した。同社の松原達郎社長は、電動キックボードを日本で初めて輸入して広めた人だ。中国のバイク(自動二輪、スクーターも含む)は、電動が大半を占めるが、その中に3輪もある。それとトゥクトゥクを組み合わせたらどうかというアイデアを持ち、中国メーカーと一緒に開発した。現在600台ほどを販売した。

販売代理店の日本環境防災(東京)の本郷安史社長は、E Vの充電器の設置や広報活動に関わってきた。これを自分でも購入し、買い物など近場の移動で「自転車のようにサンダル代わりに気軽に使っている」という。

個人の利用に加えて、宅配や訪問介護、また工場内での移動などに使うための企業の購入、また交通の脱炭素化のために行政機関の購入も増えている。そして今、本郷さんらは観光への活用の提案を続けている。排気ガスがなく騒音もないので観光地の環境を傷つけずに、訪れた観光客が近距離を楽しく、快適に移動できる。実際に観光事業者や、自治体や公的団体の問い合わせや納入が増えている。駅前やバス停でこれを貸し出し乗ってもらう。

「試乗のアンケートでは『快適』という感想が多い。環境にやさしい車としてマイクロE Vはこれから大きく伸びるだろうが、使い心地の気持ちよさがないと広がらないはずだ。E Vトゥクトゥクはその利便性に加えて、気持ちの上でも満足いただける移動手段だと思う」と、本郷さんは話す。

移動手段の脱炭素化は、これからのG X(グリーントランスフォーメーション)を進めるための大きな課題だ。E Vトゥクトゥクは、その快適さなどの長所を活かし、大きな役割を占めるかもしれない。

経産省の概算要求案 「エネ安全保障の再構築」明記


経済産業省はこのほど、2023年度予算の概算要求案をまとめた。総額は前年予算比13.7%増の1兆3914億円で、一般会計は19.2%増の4186億円、エネルギー対策特別会計は15.2%増の8273億円。エネ特会のうち、エネルギー需給勘定は18.3%増の6534億円で大幅増、電源開発促進勘定は3.6%増の1669億円で微増した。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、海外権益の維持や再エネの安定化など、エネルギー安全保障に寄与するとともに、脱炭素効果の高い電源の活用を促す中身となっている。

エネ特会の要求の柱は、「福島の着実な復興」と「国民経済を守りながら、未来を切り拓くためのエネルギー需給構造への変革」の2つ。前者では、①原子力災害からの復興と再生に619億円、②福島新エネ社会構想と福島イノベーションコースト構想の実現に679億円――。後者では、①エネルギー安全保障の再構築に4784億円、②GX(グリーントランスフォーメーション)の実現に4949億円、③地政学的不確実性とカーボンニュートラルに対処するためのグローバル戦略の展開に1150億円――を充てる。

海外権益の維持に注力 GXリーグに20兆円

具体的に見てみよう。

エネルギー安全保障の再構築では、石油や天然ガス、ベースメタル、レアメタルなどの海外権益を確保するためのリスクマネー供給、深鉱、技術開発で871億円を計上。新規予算では、系統用蓄電池などの導入支援による電力網の強化で80億円、電力需給ひっ迫に備えた揚水発電の機能向上とFS調査支援で17億円、海底直流送電の実用化に向けた調査や技術開発で30億円をそれぞれ要求する。高速炉や高温ガス炉などの革新炉の研究開発には119億円を充てる。

GXの実現では、GXリーグの実行に20億円を充てた。政府はGX実現に向け、10年間に150兆円を超える投資の実現を目指しており、GXリーグはその柱の一つとされる。電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)などの導入支援や充電・充てんインフラの整備には、410億円を要求。政府は35年までに新車販売で電動車を100%とする目標を掲げ、骨太の方針にも明記されている。

そのほか、新規に洋上風力発電の適地の基礎調査で45億円、安価な水素の安定供給のための運搬技術や共通基盤技術の確立で89億円、先進的なCCS(CO2の回収・貯蔵)事業の支援で45億円、省エネの深化に1017億円を計上した。

グローバル戦略の展開では、資源国との脱炭素技術などの協力事業による資源外交に155億円、アジアのゼロエミッション化に向けた脱炭素技術の実証・導入、人材育成に100億円を充てた。東南アジアでは電源構成の約8割を化石燃料が占め、他地域と比較して脱炭素化が遅れている。政府はアジアのカーボンニュートラルを促進する「アジア・ゼロエミッション共同体構想」を掲げ、CCSなど関連技術の開発を東南アジア諸国連合(ASEAN)各国と協力して進める方針だ。

エネルギー政策の変化見えるも今冬の不安ぬぐえず

前年度予算と異なる点は、「エネルギー安全保障」という言葉が前面に出ていることだ。前年度予算案は「福島の着実な復興」と「(前略)エネルギー基本計画の実現等による『経済』と『環境』の好循環」の二本柱であり、後者の筆頭は「イノベーション等の推進によるグリーン成長の加速」、次点が「脱炭素化と資源・エネルギー安定供給確保との両立」だった。温室効果ガスの2050年排出ゼロ、2030年の2013年度比46%削減という目標実現に重点が置かれ、エネルギー安全保障という言葉はない。

ところが、23年度の概算要求では二本柱のうちの一つ「国民経済を守りながら、未来を切り拓くためのエネルギー需給構造への変革」の筆頭に、「エネルギー安全保障の再構築」が明記された。ロシアのウクライナ侵攻を受け、脱炭素という中長期目標の実現に向けた歩みを進めながらも、エネルギー価格の高騰や不安定化する供給網の維持・再構築といった目の前の課題に対処する姿勢が見てとれる。

原子力政策を巡っては政府が8月24日、GX実行会議の第2回会合で次世代炉の新増設・リプレースの検討を柱とする今後の方向性を打ち出し、「可能な限り依存度を低減する」としていた従来から大幅な方針転換を図った。ただ、概算要求で計上した高速炉や高温ガス炉などの革新炉の研究開発費119億円は、政府の方針転換を受けてのものではないとしている。

現在、日本はエネルギー価格の高騰、今冬の電力需給ひっ迫という危機に直面している。政府はこれまでに再稼働した10基に加え、7基の原発については「来夏以降」の再稼働を目指すとしているが、今冬の不安は全く解消されていない。「来年度」予算案の概算要求なので今冬の電力需給ひっ迫とは直接関係ないが、今後も政府・経産省の対応から目が離せない。