政府は3月22日、電力需給状況が極めて厳しいとして、東京電力管内と東北電力管内に初となる「電力需給ひっ迫警報」を発令した。寒気の影響で暖房などの電力需要が増しており、経済産業省は各家庭や企業に節電を呼びかけている。東電管内の供給力に対する需要の割合を示す「使用率」は、午後2時台の実績で107%となり、データ上で需要が供給を上回る状況に。東京電力パワーグリッドは、午後8時以降に揚水式水力発電の運転が停止し、約500万kW(200万~300万軒規模)の停電が発生する恐れがあり、「さらに毎時200万kW程度の節電が必要」として、需要家への節電強化を要請。その後、他エリアからの電力融通や需要家の節電協力などが奏功し、電力使用率は午後8時現在、安定的とされる89%まで低下。経産省は午後9時ごろ、東京、東北の両電力管内で停電の恐れなしと発表した。東日本大震災以来となる50Hz地域の電力ひっ迫の原因は、原子力発電所が1基も再稼働していないことに加え、今月16日に福島県沖で起きた地震に伴う大型火力発電所の相次ぐ停止によるものだ。

JERA、東北電力などで火力が停止 綱渡りの状況続く
JERAによると、地震の影響で現在も停止しているのは広野火力発電所6号機(60万kw)。5号機は18日に復旧したものの、6号機では主変圧器の配管が損傷。復旧までに1カ月程度かかる見通しを示している。JERAは「安全面を最優先に、22日から一部発電所で出力を増やして運転している。また、千葉・品川・富津の各火力発電所で予定されていた定検時期を調整しながら運転を継続し、電力不足に対応できる体制を取る」と対策を講じている。
東北電力については、新仙台火力発電所3-1号機(52.3万kw)と原町火力発電所1号機(100万kw)が現在も停止中という。東北電力は節電を呼びかけながら「復旧作業に全力で取り掛かっているものの、現状で運転再開の見込みは立っていない。秋田発電所や東新潟発電所など、日本海側の火力発電所では増出力運転を行っている」(広報部)状況だ。
深刻なのは相馬共同火力発電の新地発電所だ。東電管内に送電している大型火力だが、今回の震源域に近いこともあり、地震によって稼働中の1号機(100万kw)が自動停止した。その後の調査で、石炭を陸揚げする楊炭機4機のうち2基の損傷が判明。残る2基も「稼働できる状況かは不明(新地発電所)」という。地震の数日前に電気設備の修繕工事中だった2号機(100万kw)と合わせて、運転停止の状態が現在も続いている。新地発電所では「昨年2月の地震で停止した際、1号機は同年9月、2号機は12月に再稼働した。前回のノウハウを生かし復旧作業を行うが、今回も同じ程度の期間が掛かるのではないか」(広報担当者)との見通しを示している。
23日は天気が回復するものの、関東や東北では気温が低いこともあり、暖房の需要含めて電力ひっ迫の綱渡りが一両日中は続くと見られている。
東日本大震災で電力供給「強靭化」のはずが逆に「脆弱化」へ
今回、地震が原因となって深刻な電力ひっ迫を引き起こしたことで、首都圏の需要家の中には11年前の東日本大震災後の大規模計画停電を思い起こした人も多いのではないだろうか。当時、こうした事態が二度と起きないよう、電力供給の「強靭化」を目的に、経産省が主導する形で電力システム改革の議論が始まった。しかし結果としてみれば、再エネ大量導入、脱原発、小売り全面自由化、発送電分離といった一連の改革は逆に供給の「脆弱化」を引き起こした格好だ。22日のひっ迫状況を見る限り、震災の教訓が生かされているとは言い難い。今後、経産省には、これまでの脱炭素偏重主義から脱却し、エネルギー安定供給の確保というライフラインの原点に立ち返った政策議論を期待したい。














