「2050年よりもできるだけ早く、国よりも早く、CO2ネットゼロを東京ガス単体として達成したい」
東京ガスの内田高史社長は11月30日に行われた定例会見で、脱炭素化に向けた意気込みをこう強調した。同社は長期経営ビジョン「Compass2030」で、2050年代のできるだけ早い段階で「CO2ネットゼロ」を目指す方針を掲げている。去る10月26日、菅義偉首相が臨時国会の所信表明演説で「2050年のカーボンニュートラル実現」を表明したことを背景に、内田社長は会見で「(ネットゼロの達成時期が)45年なのか、40年なのかはまだ分からないが、国の政策をリードしたいという考え方自体は変えていない」と述べ、国の目標に先駆ける形でネットゼロを目指す考えに改めて言及した。
具体的な方策としては、①太陽光発電やバイオマス発電、洋上風力発電など再エネ電源の導入拡大、②カーボン・オフセットされた「カーボンニュートラルLNG」の普及拡大、③メタネーションに活用可能な水素の製造コストの低減、④CCUS(CO2の回収・貯留・利用)などCO2マネジメント技術の開発――などを提起。ガス体エネルギーの脱炭素化に向けた技術開発を軸に、ネットゼロの取り組みを加速させる方針を打ち出した。
「(エネルギー事業者だけでなく、社会・経済全体のパラダイムを変えてしまう意味で)50年前のLNG導入時のパラダイムシフトを大きく超えるものだと思っている」。内田社長は、カーボンニュートラルがもたらすインパクトの大きさをこう表現した。
そもそも天然ガス転換を行った70年代当時は、地域独占・総括原価が認められていた時代だった。そうした中で大手都市ガス会社に続き、地方ガス事業者が高カロリー化のための熱量変更作業に着手したのは90年代前半。日本ガス協会が主導する「IGF21」計画の下、国の補助を受けながら、2010年の完遂を目標に、都市ガス業界の総力戦で転換作業に当たった。それが今や全面自由化によって地域独占・総括原価は事実上の崩壊状態。し烈なエネルギー間競合に対応しながら、都市ガスのネットゼロ対策に取り組んでいくわけだから、内田社長のみならず、ガス業界関係者の危機意識の高さは相当なものだ。
果たして、全国の都市ガス事業者はカーボンニュートラル時代に生き残ることができるのか。まずは、最大手である東ガスの動向に業界関係者の視線が集まっている。