A 菅さん本人が「仕事をする内閣」と言っているように、閣僚の顔ぶれを見ると、何よりも安定感や堅実さを感じる。支持率の高さの裏には、安倍政権があまりにも長く続きすぎたため、菅政権が新鮮に見えていることもあるのだろう。期待値の表れだ。
D 同感で、仕事師をそろえてきたなという印象だ。うわさされていた橋下徹さんは入閣しなかったし(笑)、○○チルドレンといった人気だけの若手も登用せず、無理に世間受けを狙っていないところは好感が持てる。それが逆に支持率を高めているのかな。女性の入閣が上川陽子法相の一人にとどまったのは、個人的には残念だ。
B 全体的に安定感、経験を重んじた体制になっているという点は、私も同じ。具体的には、梶山さん、小泉さんのほか、麻生太郎財務相、茂木敏充外務相、西村康稔経済財政・コロナ担当が留任したことや、田村憲久厚生労働相、上川法相、平井卓也デジタル改革担当相が復活してきたことに注目している。
C 順当な人事で、国会対応を想定した陣容と言ってもいい。いずれも答弁能力のある大臣ばかりだ。野党第一党の立憲民主党は苦労するだろう。
エネ政策に思い入れ強い梶山経産相小泉環境相は原子力に理解を
―派閥への配分を考えた人事と報じられているが。
B そういう人選ではないと思う。例えば石破派の田村さんのように、経験重視で人選したら、結果として石破派からの登用という形にもなったという側面もある。
D 派閥よりも即戦力だよ。そこは菅さんが強調する「コロナ・経済最優先」の方向性が色濃く表れている。
C まあ、梶山さんの再任は、経産省としては大歓迎だろうね。エネルギー政策見直しについても本腰を入れて進めてほしい。
D 政権交代に当たって、梶山さんはエネルギー政策見直しを引き続き主導していきたいということで、経産相の続投を申し入れていたらしい。経産省の幹部異動があった際の定例会見でも、資源エネルギー庁の人事に関して異例の言及をしていたし。旧動力炉・核燃料開発事業団(現原子力研究開発機構)の出身ということもあって、エネルギーへの思い入れは人一倍強いようだね。
A その意気込みを、ぜひ全国の原子力発電所の再稼働に生かしてもらいたい。これは電力業界の総意だと思う。梶山さんには実務的な課題を押さえながら地に足のついた政策展開を期待したい。
―一方で、小泉環境相は交代確実と見られいたが、再任された。
D 環境省の官僚は大半が退任と思っていたし、小泉さん自身も8月ごろから「心ここにあらず」で、次は防衛大臣かなと冗談交じりに漏らしていたらしい(笑)。
B 環境副大臣経験のある井上信治氏の大臣就任を期待する向きが多かったけど、ふたを開けてみれば万博担当。省内では「あれ? なんで?」という声が聞こえていたね。
C 小泉さんの再任のあいさつは自画自賛が多くて、調子に乗り過ぎていた感じだった。もう少し謙虚になって、周囲に気を配れるといいんだけど。
A 小泉さんの政治スタイルを見ると、梶山さんとは対照的だが、環境省のスタッフが以前に比べて現実路線を重視してきていることは歓迎したい。脱炭素化への思いは業界も同じなので、原子力への理解をいかに深めてもらうかがカギになるだろう。
A 今井さんが外れたことで、経産省色が薄まる感じも受けるが、業界にとってはむしろそれがプラスに作用する可能性もある。
B 経産内閣という形ではなくなったとすれば、原発政策に臆病だった前政権とは違う踏み出し方をする可能性があるのではないか。
D いろんな意味で今井さんは、エネルギー政策にもちょっかいを出してきたからね。特命担当内閣参与の飯島勲さんが週刊誌の連載で痛烈に批判していたのは興味深かった。
C 経産省関係では、佐伯耕三首相秘書官が大臣官房参事官に異動。その後任に門松貴内閣官房長官秘書官が就き、門松さんの後に曳野潔大臣官房参事官が就いた。曳野さんは電力システム改革に長年携わってきただけに、これからの動きに注目したい。
A それと、エネルギー政策に熱心に取り組んできた阿達雅史内閣府大臣政務官が首相補佐官になったことは大歓迎だ。
D 経産内閣は終わったという話だけど、実際はどうかなと見る向きもある。私の記憶だと、実は菅さんは1990年代後半の駆け出し議員の頃、師匠である故・梶山清六さんの指示を受けて、経産省の若手官僚と一緒に朝食勉強会をやっていた。彼らが今の局長級になっているので、つながりは深いはず。その意味でも菅政権誕生を喜んでいて、関係の再構築に向けて活発に動いているよ。