蓄電池やEVといった低圧の分散型エネルギーリソース(DER)の導入が急速に拡大している。こうしたDERを活用した分散型システムの構築で、脱炭素と安定供給両立を実現するか。
2050年のカーボンニュートラル(CN)実現に向けて、太陽光や風力といった変動型の再生可能エネルギー大量導入を見据えた電力ネットワークの次世代化が喫緊の課題となっている。
従来の電力システムを引き続き効率的・合理的に運用していくことに加えて、次世代の分散型電力システムと調和させ、安定かつ持続可能な電力システムを構築していくことがその要諦。キーワードは「脱炭素」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「レジリエンス(強靭性)」だ。
基幹系統側では今年3月、電力広域的運営推進機関が再エネの最大限導入による脱炭素化と電力安定供給両立の切り札として、将来の広域系統の絵姿「マスタープラン」を公表。その具現化には、再エネ適地から大消費地への大容量送電を可能にする高圧直流送電(HVDC)など、新たな技術の開発が不可欠となる。
既に再エネが多く接続されているローカル系統(電圧77 kV以下)では、既存系統の空き容量を活用しながら系統増強を待たずに新規の再エネ電源を連系する「ノンファーム型接続」が21年4月に始まった。系統の増強には時間と費用がかかる。そこで系統混雑が生じた際の出力制御を大前提に、再エネ接続量を増やす狙いだ。
そして需要側の電化が加速し、EVや蓄電池といった分散型エネルギーリソース(DER)の導入拡大が見込まれる配電系統もまた、改革が待ったなしの様相だ。
25年度次世代スマメ導入へ 配電運用の高度化に期待
これらDERにより、混雑発生や電圧維持管理の困難化といった配電の課題が一層顕在化することになれば、系統全体にも悪影響を与えかねない上、それを回避しようとすれば人口減少時代に過大な送配電投資が必要になってしまう。逆に、デジタル技術を活用して最適に制御できれば、再エネ大量導入とレジリエンス向上を実現しつつ、運用効率の向上に資する可能性がある。
20年の電気事業法改正により、アグリゲーター制度や配電ライセンス、特定計量制度といった、DERを活用するためのおぜん立てとなる制度整備はある程度なされた。そして、それ以降も、新たなビジネス機会創出につなげつつ、配電系統運用の高度化を実現するための技術面・制度面の議論が続いている。
IoTによる系統運用や設備の制御、システム全体の最適運用のためのデータ取得の精緻化―。それを実現する手段として期待されているのが、25年度以降、順次導入が始まる次世代スマートメーターによる遠隔監視・制御だ。

資源エネルギー庁は20年3月から2年間にわたって、「次世代スマートメーター制度検討会」を開催し、有識者や業界関係者を集めて次世代型に求められる機能などを検討してきた。その結果、使用量データを現行の30分ごとから短縮し、15分単位で計量しデータ蓄積できるようにするほか、配電レベルの再エネ需給調整(バランシング)に寄与すべく、電圧データの収集が可能になった。