2017年の全面自由化を機に、多くの既存事業者で料金規制が撤廃済みの都市ガス。ここにきて原料費調整制度の調整上限を巡り、新たな動きが出てきた。
本稿締め切り直前の7月21日、驚きのニュースが飛び込んできた。東京ガスが、原料価格や為替の変動を都市ガス料金に反映するための原料費調整条項に基づく調整額の上限を引き上げると発表したのだ。現行では、基準平均原料価格の1・6倍の9万1600円を上限としているが、これを10月から段階的に引き上げ来年3月には15万6200円にする。
同社は、2021年10月に経過措置料金規制が解除されて以降も、規制下で義務付けられていた上限を維持してきた。しかし、原料費高騰の影響により、7~9月の3カ月連続でこの上限を超過。膨れ上がるコストを適切に料金に反映し、事業の安定性を確保できるよう見直しに踏み切った形だ。
強まる収益圧迫懸念 原調見直しへ他社も続くか
都市ガスの原料であるLNGの輸入価格は、全面自由化から新型コロナウイルス禍前までは1t当たり4万5000~6万5000円程度だったが、20年以降は9万5000円まで大幅に上昇。東ガスのほかにも、大阪ガスや北海道ガスなど、規制解除後も調整上限を維持している事業者は複数ある。いずれも8月の段階では若干の余裕があるとはいえ、上限到達が迫っているのは事実だ。

規制の縛りを受けないはずの都市ガス会社であっても、家庭向けをはじめとする一部の料金種で原調の上限を設定していれば、これを超えた分は自社で負担するしかなく、収益が圧迫される懸念が強まっている。
北海道ガスは「さまざまな状況を踏まえ、慎重に対応していきたい」(広報グループ)としているが、東ガスが先行したことで見直ししやすい空気は醸成されたはず。各社がどう動くのか。今後の業界動向が注目される。
都市ガス関係者の一人は、このタイミングでの東ガスの決断に、「7月末に大手電力会社が燃料費高騰対策を表明するとのうわさがあり、様子見するとばかり思っていた」と驚いた表情で語る。
とはいえ、料金規制が撤廃されたのであれば、当然、上限の廃止やフレキシブルな原調の見直しが可能であるはず。実際、全面自由化と同時に規制が外れた西部ガスや広島ガスは、早々に上限を廃止した。だが、今回の東ガスの原調見直しは、あくまでも上限の引き上げで廃止ではない。
実は、当初、規制解除と同時に上限を廃止してしまおうという動きはあったようだ。それが、大手3社の一角である東邦ガスと、地方の中小3社に経過措置規制が課されたままで原調の上限が継続されること、そして何よりも、電気料金との兼ね合いで資源エネルギー庁が難色を示したことにより実現には至らなかった。
「当時は、まさか上限までいくわけがないという甘い見通しもあった」と語るのは大手都市ガス関係者。その時点であれば、経営判断で上限廃止を断行できたのかもしれないが、「さまざまな要因で議論が停滞しているうちに、物価全体が高騰する今の情勢下で、需要家への影響が軽微とは言えない料金値上げや、それに伴う原調の基準価格見直しには慎重にならざるを得なくなった」という。









