インタビュー:額賀福志郎/自由民主党総合エネルギー戦略調査会長 衆議院議員
ウクライナ危機によって浮き彫りになった日本のエネルギー構造の脆弱性。額賀福志郎氏は、改めて安定供給と自給率向上の重要性を強調する。
参院選とエネルギー政策
ロシアのウクライナ侵攻により、エネルギーやさまざまな資材、食料価格が高騰しています。エネルギーは全ての社会・経済活動の土台であり、安定的で安価な供給が必要不可欠です。エネルギー安全保障の観点から自給率を向上させていくことが極めて大事です。
そのために、まず徹底した省エネを図らなければなりません。石油危機を機に官民を挙げて省エネ政策と産業構造の転換を図った結果、高度成長から安定成長につなげ産業界の競争力を高めてきた実績があります。
サハリン1、2
サハリン1は、原油輸入の9割を中東に依存するわが国にとって、貴重な調達先です。サハリン2からはLNG輸入量全体の約9%を調達しており、長期かつ安定的な供給に貢献している重要なプロジェクトです。日本が権益を手放しロシアや第三国がそれを取得した場合、ロシアを利する可能性があるばかりか、わが国のエネルギー安全保障を害し、制裁も緩みかねません。ロシアの侵略行為は、決して許すことはできない暴挙であり、価値観を同じくする欧米諸国などと連携し対応することは極めて重要です。一方で、したたかに国益を守る視点も忘れずに対処しなければなりません。
エネルギー価格高騰
ガソリンや農業、漁業の燃料費などの価格の高騰の激変緩和措置として、まず補助金を投じ、一定の抑制効果を上げています。政府として高騰に対応するため、引き続き価格抑制策を検討し万全を期します。同時にEVの補助金の増額、企業への省エネ設備導入補助など、需要面におけるエネルギー構造転換も支援し、国民生活や産業を守っていきます。
原発再稼働
エネルギー自給率の向上で求められているのが、再生可能エネルギーと原子力の最大限の活用です。エネルギーの安定供給により、中長期的な目標を持ちながら生活基盤、産業構造の転換を図ることが、カーボンニュートラル社会に向けて不可欠です。
新規制基準に適合すると認められた原子力発電については、地元の理解を得ながら再稼働を進めるほか、小型炉や高温ガス炉など革新炉の技術開発促進によって原子力の拡充を急ぎ、人材や技術者の維持・拡大につなげるとともに、サプライチェーンを守っていかなければなりません。
脱炭素社会の実現
バブル経済崩壊後、日本の産業の生産性、競争力は下降線をたどってきました。それは国家的な目標がなく、企業がリスクを負って投資できなかったためです。今、デジタルトランスフォーメーション(DX)、グリーントランスフォーメーション(GX)という国としての目標が立てられることで技術革新へのチャレンジがなされ、新しい成長産業が生まれ、国際競争力強化へと結びつきます。結果を出せるよう、これらの取り組みを支援していくことが、政府に課せられた最大の使命です。
ぬかが・ふくしろう 1944年生まれ。早大政治経済学部卒。茨城県会議員などを経て83年衆院議員当選。防衛庁長官、経済企画庁長官、財務大臣などを歴任。現在、総合エネルギー戦略調査会会長。当選13回。