A 手の打ちようがない状況だと言わざるを得ない。新電力ビジネスは、自社電源を保有しているケースを除けば仕入れ価格と販売価格の「さや」で儲けているに過ぎない。外部の発電事業者か日本卸電力取引所(JEPX)から調達するしかないが、相対では売り物がないし、市場価格では採算が取れない。もはや、需要を手放した者勝ちの様相だ。旧一般電気事業者(大手電力会社)でさえも同様で、潤沢に電源があるわけではなく新規の契約申し込みを断っている。お客さんを押し付け合うようなことが起きており、電力小売りのビジネスモデルが崩壊しかかっている。
B 各社とも需要を手放すか、料金値上げするかしか対応策がないほど、非常に厳しい状況に追い込まれている。このままでは、誰も新電力事業を継続できなくなってしまう。政府が電力システム改革を当初の予定通り進めようというのであれば、早急な改善を求めたい。電源を退出させるインセンティブが働いてしまった電力システム改革そのものに、その要因の一端があることは間違いない。
C 当社のように、自ら発電所を持ちロングポジションになっている新電力の場合、現状ではそれほど経営への影響は大きくない。ただ、逆にJEPXスポット価格が非常に安い局面では、化石燃料による電源を保有するリスクが高まり苦しくなることもあり得る。今がいいからと言って供給力以上に需要を増やそうとは思えないし、新規契約は原則として受け付けていない。顧客を増やすよりも、供給力を温存しておいて市場が高騰した際に供出した方がよほど収益に寄与するからね。今の制度では、そういうインセンティブが働いてしまう。大きなリスクを抱えた業界だと改めて認識している。
顕在化した制度の「抜け」 コスト負担の在り方に課題
―このような状況になった要因は複数あると考えられるが、最も大きな要素と考えられるのは何だろう。
C 例えば2024年度に受け渡しが始まる容量市場は、毎年落札価格が変動するし、稼働率が一定以上確保できないとペナルティを課せられる。本来、再生可能エネルギーの変動性を補うもので低稼働率であるべきなのだから矛盾している。システム改革のコンセプトはいいとしても、詳細制度の整合が取れておらず穴が空いてしまっている。
B 供給力(kW)、発電電力量(kW時)を確保するために必要なコストを業界全体で負担してこなかった結果、現状のような事態を招いたと見ている。新電力からしてみれば、そのような負担を各事業者に課す制度がない以上はどうすることもできなかった。どのような制度が最良かと問われると答えるのは難しいが、設備を持たない事業者も含めて安定供給のために必要なコストを分担する仕組みが早急に必要だと思う。大手電力会社に対し、可変費ベースの市場への玉出しを半強制するようなことを何年も続けてしまったことが間違いだったわけだから。
A 総じて低水準で推移してきたJEPX価格を背景に、発電事業者はピーク・ミドル電源を持つ意味がなくなってしまったことが、需給ひっ迫と市場価格高騰を招いてきたわけだけど、最近の価格高騰の背景には、kWではなくkW時不足がある。これは電力システム改革ではなく、LNG調達におけるスポット調達の比率を高めてみたり、供給の多角化戦略と称してロシアから調達したりといった資源エネルギー政策によるものだ。
欧州天然ガス価格指標である「TTF(Title Transfer Facility、オランダガス取引ハブ)」のガス価格は、2021年12月21日に100万BTU(英国熱量単位)当たり59.5ドルを付けた。また、北東アジアスポットLNG査定価格「JKM(Platts Japan Korea Marker)」は10月6日、同56.3ドルと、それぞれ、例年の月平均の10倍、7倍に跳ね上がり、過去最高値を更新した。