インタビュー:羽田由美子/資源エネルギー庁 資源・燃料部 石炭課長
昨年顕在化した石炭市場の変貌を、政策当局はどう捉えているのか。
石炭調達や利用政策の展望を、資源エネルギー庁の羽田石炭課長に聞いた。

―2022年の石炭市場の変化をどのように受け止めていますか。
羽田 石炭は低廉で地政学的リスクが比較的低い資源であることが特徴の一つですが、日本を含むG7(先進7カ国)各国がロシア炭輸入のフェーズアウトや禁止を決め、22年末には価格が前年同期比約2倍に高騰するなど、市場環境が短期間で劇的に変わってしまいました。いずれ新しい安定状態を迎え価格は落ち着くと考えられますが、それまでの間は、影響が出ている産業分野の動向をしっかりと注視し対応していきます。
―ロシアから輸入していた企業にとって、調達先を変えることは容易ではありません。
羽田 調達先を切り替えるにあたり、石炭の保管施設(バース)の仕様を変える必要がある場合、サプライチェーンが遮断されることがないよう支援するための予算措置を行っています。また、一部の大手電力会社が経過措置料金の値上げ申請を行いました。中小の製造業を含む各事業者が、コスト増分を取引価格に転嫁できるよう後押ししています。
中長期的な方向性が重要 低炭素型の技術開発を支援
―石炭火力の活用についてはどうお考えですか。
羽田 第六次エネルギー基本計画において、石炭火力は30年のエネルギーミックス(電源構成比率)の19%を占め、30年以降も活用し続けます。50年カーボンニュートラル(CN)実現に向け資源の多くを輸入に頼る日本がトランジション(移行期)に安定的にエネルギーを供給するためには、低炭素化の技術開発が欠かせません。
これまでも発電事業者が取り組んできたタービンの効率化や低品位炭の受け入れ拡大の取り組みはもちろんのこと、石炭ガス化複合発電(IGCC)やCCS(CO2回収・貯留)、カーボンリサイクル、アンモニアやバイオマスの混焼といった技術開発を評価し、引き続き支援していきます。また、再生可能エネルギーの調整電源としての役割を担うことになりますので、調整力に優れた技術の開発も求められます。
―中長期的には上流投資の先細りは避けられません。
羽田 日本はS(安全)+3E(安定供給、経済、環境)の観点から、エネ基を策定しエネルギーミックスを示していますが、これはマーケットに対するシグナルになると考えています。生産者が上流投資をする上で、いつどれだけの需要があるかが分かるため、過不足なく投資を行うインセンティブが働くからです。
今回のように、マーケットが劇的に変わった時の対応が難しいことに変わりはありませんが、国としての中長期的な方向性を示すこと、それを踏まえ需給双方でコミュニケーションを図ることがこれまで以上に重要になるでしょう。オーストラリアやインドネシア、そして新興の石炭生産国とも官民問わず資源外交を展開し、需給をバランスさせながら50年CNの実現を目指します





