再エネ主力化や石炭火力縮減がフォーカスされる一方、石油火力やガス火力に関する議論は深まっていない。電力事業の市場化や新型コロナ禍の経済悪化、そして将来の脱炭素化を見据え、火力が担う役割とは。
【座談会】荻本和彦/東京大学生産技術研究所特任教授、杉山大志/キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)研究主幹、中澤治久/火力原子力発電技術協会専務理事、山岸尚之/WWFジャパン気候エネルギー・海洋水産室長

――非効率石炭火力のフェードアウトばかりが注目を集めていますが、火力政策全体を通じて、どんな課題があるとの認識でしょうか。
杉山 コロナ禍により、3Eの中で安全保障と経済性の重要度が増したと思います。経済性のある石炭火力の重要性が高まりましたし、複合リスク、つまりパンデミックの最中の災害発生時にインフラのオペレーションをどう継続するのか、といった視点も重要です。さらに、国際関係の悪化も大きな要素。中国の一層の強硬姿勢で、日本に対する軍事的攻撃だけでなく、テロやサイバーによるインフラへの攻撃リスクが高まっています。
これらを鑑みて、電力インフラの強靭化へのテコ入れで、供給源の多様化を進めるべきですが、真剣に検討されていません。能動的に出力制御できる電源の中で特に火力が果たす役割は大きく、東日本大震災でも北海道ブラックアウトでも、復興過程で火力が活躍しました。ただ、LNGは長期間備蓄できないので、やはり石炭に頼る面は大きく、フェードアウトの対象である亜臨界や超臨界も有事の際に役立ちます。今の議論にはそうした視点が欠けています。
荻本 中長期の視点では、将来の電力システムの大きな変化の中で、3E+Sを満たす状態をどう定義すべきか、また、利害を主張する前に「社会コストミニマム」の視点に立つなど、常に基本に立ち返って議論することが重要です。変動性再エネが大量に導入されると、天気次第で発電量が欠乏状態となる時間帯が確実に発生します。現在は変動性再エネを遠隔制御できないので、今後10年ほどは需給を安定化しつつ何でその欠乏を補完するか、よく考えなければなりません。
さらに長期的な視点では、先ほど指摘があったように燃料の輸入が滞った際や電源の想定外停止にどう備えるのか。石油火力の休廃止が加速すれば備蓄石油は使えなくなり、LNGは1カ月分も貯められませんが、石炭は貯炭場の容量に応じ長期に貯蔵できます。火力電源がそれぞれのミッションを果たす中で、再エネを最大限活用することができます。
――環境面から世界的に火力への風当たりが強まっていますが、再エネ拡大を火力が支えるという面についてはどう捉えていますか。
山岸 これからの火力は、再エネのしわ取りにマッチする電源であるかどうかが評価の軸になると思います。特にLNG火力の調整力には期待していますが、例えば汽力発電は調整が不得手な設備もあるといった課題など、LNG火力が一概に良いというわけではありません。また、脱炭素化を考える上で、やはり今から建設する火力設備が40年ほどロックインされるという状態は避けるべきです。
一方、石炭火力については、新しい高効率のものは全て認めるという方針は受け入れ難い。3E+Sについても、環境だけを考えれば良いとは思いませんが、結局はどこを強調するのかで意見が分かれます。それぞれ都合良く解釈しているようにも感じます。
中澤 いずれにせよ3E+Sが重要であるということは、どの立場でも共有できていますね。ただ、これからの火力が果たす役割を考えるべきところ、石炭の議論だけに偏っていることには違和感があります。本来は石炭だけでなく、非効率火力のフェードアウトについて考えるべきです。特に石油火力は40〜50年選手が大半で、非効率かつ老朽化が著しい。燃料備蓄の点では使える面もありますが、早急な退出を促すべきです。そしてLNG火力も老朽プラントが結構残っています。最新鋭のコンバインドサイクルと比べると効率の差は1.5倍ほどの開きがあります。LNG火力の設備更新についても忘れずに取り上げてほしい。






