インタビュー:小川哲司 エリーパワー社長
国を挙げて蓄電池ビジネスに注力する中国・韓国勢に押され、日本メーカーは劣勢気味だ。国産リチウムイオン電池(LIB)の可能性を追求するエリーパワーの小川社長に現状と展望を聞いた。
―事業の特徴を教えてください。
小川 かつて電力貯蔵用大型LIBの量産化を目指すメーカーが不在の中、原発の夜間電力活用のために国産蓄電池メーカーの必要性を鑑み、2006年に創業しました。筆頭株主の大和ハウスグループの新築住宅向け製品から始まり、他のハウスメーカーにも導入いただけるようになり、今は既築住宅向け、オフィス用、産業用製品も揃えています。
蓄電池の開発・量産時に最もこだわるのは安全性で、これはハウスメーカーも重視する要素です。業界全体では発火事故やリコールが増加する中、当社はこれまで8万4000台以上を出荷していますが電池起因の重大事故は全く起こしていません。世界的な第三者認証機関であるドイツのテュフラインランドが独自に策定した厳格な安全性認証を大型LIBでは世界で唯一取得した電池セルで、世界一安全な製品だと自負しています。高温時の寿命劣化や低温時の放電ロスの少なさも特徴で、屋外設置でも問題ありません。蓄電池は性能が重要ですが、消費者が現状これらを知る指標が無いため、価格のみで製品を選ぶ傾向にあります。消費者が安心して最適な製品を選択できるような指標・規格作りが必要だと考えます。
―自社製品の価格競争力をどう評価していますか。
小川 蓄電システムは購入から廃棄に至るまでのライフサイクルコストで検討することが重要です。導入時価格が安く一見魅力的でも、長期間使用すると利用可能な蓄電容量が限定される製品があります。一方、当社製品は15年使用しても70%以上の容量を維持できる長寿命を実現しています。蓄電池普及に向け今後も期待される補助金を考慮すれば十分設備コストが回収でき、電力価格高騰局面ではさらなる削減効果も期待できます。
―ビジネス拡大のポイントは。
小川 当社は10年に第一号製品を投入し、ハウスメーカーとともにマーケットを創ってきました。一方ここ数年、日本市場で急速に台頭する中国・韓国のメーカーは、各国政府による資金面や需要創出面での手厚い支援を受けて成長していると想定されます。わが国においても生産効率を上げ製造コストを圧縮するために蓄電池市場の創出は重要で、政府による支援が期待されるところです。
全固体の前に液系追求を 技術改良の余地大きく
小川 政府は30年ごろに次世代全固体LIBの本格実用化を目指す方針ですが、大型全固体LIBの製造は技術的ハードルが高く、当面液系LIBが主流になると考えられ、新たな材料の開発も進んでいます。当社も新バージョンの製品を投入する計画で、不燃性電解液も開発中です。従来の電解液を用いた電池は消防法上の危険物に分類されますが、不燃性になれば適用外となり、より幅広い用途での活用が期待できます。この不燃性電解液に高容量の電極材料を組み合わせ、エネルギー密度のさらなる向上も目指しています。
