大地震で強靭性を証明した熱供給 コロナ対策では運用を分散化


【北海道ガス】

札幌駅を中心とした128haの広大な都心部エリアには、熱導管ネットワークがある。現在、同エリアでは、五つのエネルギーセンターが稼働しており、面的ネットワークを構築している。2018年9月に発生した北海道胆振東部地震では、同エリアに敷設された中圧ガス導管に被害はなく、エネルギーセンターは稼働を継続した。熱供給が強靭でBCP対策に有効であることを地震を通じて証明する格好となった。

都心部にある創生スクエア。地下にエネルギーセンターがある

安定供給に大きなメリットを有する熱供給だが、コロナウイルス感染症の拡大により運用などに変化はあったのだろうか――。

需要面では、国内外からの観光客が減少したことによりホテルの営業が停止したり、稼働が低下したこと、都心部に事業所を構える企業が在宅勤務に切り替えたことなどが影響し減少した。

運用においては、業務効率化のため、五つあるエネルギーセンターそれぞれで運用を行ってきたのを集約していく取り組みを進めていたが、感染症のリスクを考慮し、従来の分散運用する措置を実施している。

オペレーターの勤務についても見直し、3交代する際の引き継ぎもメールなどを活用して短時間ですませたり、作業が終了しても事務所に立ち寄らず直行直帰を増やすなど、スタッフ同士の接触機会を極力減らすようにした。

働き方や暮らしが変化 今後の需要動向に注目

札幌市内には、都心部と創成川を挟んで隣接する北4東6地区にもエネルギーの面的供給を行っている街区がある。「北ガスアリーナ札幌46(札幌市中央体育館)」をはじめ、275戸が入居する地上21階建てマンションに電気と熱を供給しており、今後は福祉施設やスポーツ施設などにも拡大していく計画だ。都心部の熱導管ネットワークからは独立しており、単独のエネルギーセンターで一元管理しながら、エネルギー供給ネットワークを構築している。同エリアでは、CEMSが導入されており、需要を予測し最適な運転が自動で行われるよう実証が続けられている。

北4東6地区ではCEMSを導入。自動で最適運転が行われている

エネルギーシステム部の栗田哲也部長は「コロナウイルスの感染拡大は、働き方や暮らしに大きな影響を与えています。人の動きが変わると、エネルギー需要も大きく変化します。CEMSなどの最新鋭の自動運用が進む中にあっても、その動向はより注目しなければなりません」と話す。コロナウイルスの感染拡大はエネルギー供給に新たな影響を及ぼしそうだ。

【太陽光】新しい業界ビジョン 20世紀型からの脱却


コロナ禍の影響が日本の太陽光発電業界にも及び、短期的な収益悪化に加え、将来を危惧する声も聞こえてくる。そんな状況下、少し明るいニュースがあった。

太陽光発電協会(JPEA)が新しい業界ビジョンを公開した。2050年の太陽光発電(PV)の導入量を、従来の2億kWでは不十分であり3億kWを目指すべきとする。簡単に言うが、設備容量としては日本の最大電力需要の2倍近い数字だ。将来の話とはいえ大胆過ぎはしないだろうか。JPEAの主張は、国の目標である「50年までに温室効果ガス80%削減」を実現するには、PVの導入量は少なくとも3億kW(電源構成の31%)は必要とのこと。それだけの大量導入になると、調整力は足りるのかとか、国民負担は大丈夫かなどの疑問が湧いてくる。その疑問に対し、JPEAは出力抑制を10%以下に抑えるための蓄電池の必要量や、便益が費用負担を上回ることなどを定量的に評価し、3億kWは技術的、経済的にも不可能ではないことの根拠を示している。この点では、従来のお手盛り業界ビジョンから一歩進み、率直に評価できる。

ただ、現実にはFIT価格の低下や系統制約、度重なる制度変更などの影響で、PVの導入量は減少傾向にあり、このままでは3億kWの実現は極めて困難だ。コロナ禍の影響を克服して、どうやって縮小傾向の市場を拡大傾向に反転させるのか。このことについてもJPEAビジョンにヒントを見出すことができる。

例えば、コスト競争力をつけるために燃料費がかからないPVの稼働期間を延ばす工夫や、小売り電気料金との比較で競争力に勝る自家消費モデルへの転換など、今までのモデルから脱却することで可能性が見えてくる。ただ、これら民間の努力だけでは現状の打開は難しい。やはり、FITからの自立と主力電源化に向けた国の本気でぶれない施策が何よりも重要である。そのためにも50年より先を見据えて、国の脱炭素化を本気で目指し、デジタル化や分散化、全体最適化が遅れている20世紀型の電力システム、官僚機構からの脱却を切に望む。(T)

【住宅】自家消費の蓄電池 支援の正当性は


経産省は6月5日に公開した「エネルギー白書2020」の中で、住宅用太陽光発電の固定価格買い取り制度(FIT)の終了が、2023年に累計165万件、670万kWに達することに言及しつつ、今後は余剰売電を前提としたFITから、FIT対象外となった自立電源と蓄電池や電気自動車(EV)を組み合わせて自家消費率の向上を図っていくことが、新しいZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)のあり方として検討されるべきとしている。

増えていく卒FIT太陽光に対応し、今年は蓄電池を売りたいメーカーや事業者が群雄割拠している。しかもテスラの「Powerwall」という格安の黒船が予約販売を開始しており、激しい競争が予想されている。

一方、住宅用太陽光発電に蓄電池を追加する際の支援政策としては、「災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助金」という補助制度がある。18年に発生した北海道胆振東部地震による北海道全停電を受け整備された。公募は昨年の11月末でいったん終了。現在は6月末が締め切りの追加公募を残すのみで、以降追加の予定はないという。

もともと同制度は時限的なもので、しかもその目的は災害対策であるので、必ずしもエネルギー白書に示されているような平時の自家消費を目的としたものではない。終了によって勢いづくかと思われた家庭用蓄電池市場にブレーキが掛かるかもしれない。

制度の終了に伴い、追加の支援を求める声があるが、そもそも太陽光発電の自家消費を目的とした家庭用蓄電池の価値が、その蓄電池の価格に見合うものなのか、公的な支援に値するものなのか、という疑問もある。

多くの場合、節電効果で蓄電池のコストを回収することは困難であり、さらに蓄電池がなくても電力事業者による電力の買い取りや仮想預かりのサービスがあるので、必ずしも蓄電池を購入する必要はない。万が一のための非常用電源としても、蓄電池を購入可能な個人のみを支援することは、公平性の観点からも問題がある。(T)

【終了】欧州次世代エネルギーシステム動向視察


★オーストリア・ウィーン

〜先進スマートシティ事例調査〜

■Aspern(アスペルン)地区

アスペルン・プロジェクトでは太陽光などの自家発電と蓄電池を利用して地産地消を進めており、エネルギー事業者のWien Energie、通信事業者のWiener Netze、Siemems、オーストリア技術研究所と共同で、ASCR(Aspern SmartCity Research) という研究会社を 設立。ウィーン市が進めるマイクログリッド型エネルギーシステム構築プロジェクトです。

〜エネルギー業界のブロックチェーン取引・サービスの動向〜

■Wien Energie, Grid Singularity など予定

オーストリアはエネルギー業界としてのブロックチェーンへの取り組みに熱心な国であり、ユーティリティ企業やスタートアップ企業での取り組みが活発になっております。

〜VPPビジネスへの取り組み動向〜

■cyberGRID社 など予定

VPPソリューションの開発のスペシャリストとして2010年に設立.。ストレージ容量と大量の断続的なエネルギーを備えた分散型グリッド用のITプラットフォームを提供。既存の発電資源の有効利用、貯蔵、そして再生可能エネルギー資源の統合を促進します。

★デンマーク・コペンハーゲン

■State of Green・・デンマークの再生可能エネルギー全般の紹介

■DBDH(デンマーク熱供給協会)・・地域熱供給全般の紹介

■大規模地域熱供給システム(第4世代地域熱供給導入済の施設など)

 及びその熱導管敷設の現地調査予定

★デンマーク・オールボー

■House of Energyでのセミナー

  (熱供給事業者、研究者、熱供給関連企業の産業クラスター)

■太陽熱収集、蓄熱槽

■熱利用を含めたエネルギー・マネジメント・システム、断熱パイプ、

 スマート熱メーターなどの周辺技術

■オールボー周辺の熱供給関係施設(木質ペレット・ワラを利用したボイラー など)

★デンマーク・フレゼリシア

■Energinet DK (電力と温熱の相互融通システム)