【特集3】新たな技術開発を推進 未利用資源の活用にも期待


レポート/三菱化工機

三菱化工機は、水素の供給コストの低減とともに、廃熱やCO2といった未利用資源の有効活用につながる新技術の開発を進めている。一つが吸蔵合金を用いた水素圧縮機だ。従来、水素の昇圧には電動式のコンプレッサーなどの機械式圧縮機を使用する際、多くの電力コストがかかっていた。

一方、吸蔵合金は、室温程度で水素を吸い込み、加熱すると水素放出圧を増加させる特徴を持っている。この仕組みを利用することで、従来型機器に比べ、昇圧時に機械的な駆動部分が不要となりメンテナンスコストの低減が期待される。

また、水素を昇圧する際の加熱温度が室温から約250℃と比較的低いこともメリットだ。企画本部研究開発部の山崎明良部長によると「工場などから出る廃熱の中でも、これまで使われなかった低い温度帯の廃熱を活用できる」という。加熱源に廃熱などが利用できれば電力コストも低減できる。

同社は那須電機鉄工やダイテック(愛媛県西条市)、広島大学、四国産業・技術振興センターなどと共同で、50サイクルの試験運転を実施した。水素・エネルギープロジェクト部水素・エネルギープロジェクト課の瓶子裕之課長は「吸蔵合金の水素吸蔵と吐出にかかる温度領域やサイクル時間などの最適化を図りました」と説明する。実証の結果、昇圧時の温度、圧力値や吐出時の安定した流量などの目標値を達成。今後は、さらなる耐久性の向上やスケールアップなどを検討し、22年度中の商用化を予定している。

吸蔵合金水素圧縮機の実証機 (写真提供:水素エネルギー製品研究試験センター)

同機は1MPa未満の低圧水素を19・6MPaまで昇圧できる。また、1時間当たり1N㎥の吐出能力を持っている。オフサイト型水素ステーションなどに水素を輸送する際に使用するシリンダーやカードルへの充塡などへの活用が期待される。

バイオマス技術を実証 CO2の有効活用に

一方、もう一つの技術開発としては、昨年、川崎製作所構内に微細藻類バイオマス生産の実証装置を設置し、11月から実証試験を行っている。この試験で使用する「フォトバイオリアクター」は、ガラス管の中で微細藻類を培養する装置だ。都市部のビルや工場への設置が可能。閉鎖空間での培養により不純物が混入しにくく、サプリメントや化粧品といった高付加価値商品向け原料の生産ができる。また、大型台風や地震に備え、飛来物対策や免振構造を採用したオリジナルフレームを考案した。 この実証試験の次なるステップとして、大気に排出されて未利用だったCO2を活用した「カーボンリサイクル技術」の開発に取り組む。バイオマス生産の実証装置は、同社川崎製作所構内の実証用水素ステーションの横に設置されており、ステーションにある小型水素製造装置「HyGeia-A(ハイジェイア-エー)」が都市ガスから水素を製造する際に排出するCO2の一部を直接投入して微細藻類の培養に利用する。今年2月末から実証試験を開始する。

川崎製作所内に設置された都市型フォトバイオリアクター

【コラム/2月10日】いままさに転換期にある電気事業を考える


加藤真一/エネルギーアンドシステムプランニング副社長

新型コロナウィルスに始まり新型コロナウィルスで終わった感が強い2020年から21年に移り、早や1カ月――。

電力事業は年末からの需要ひっ迫に端を発した卸電力取引市場価格高騰、新電力を中心とした小売り電気事業者の窮状、市場連動型メニューを選択した消費者の電気料金高騰、国による措置の話題がこの1カ月の大半を占めたと言っても過言ではない。

まずは1月の危機的な状況に対応した電気事業者全てに感謝したい。筆者も契約している小売り電気事業者がほぼ毎日、通知してきた家庭用デマンドレスポンスに参加し、本当に微力ながら節電に協力させていただいた。

現時点ではLNG船も順次、入港しており、また卸電力取引市場価格も落ち着きをみせているが、まだ冬は終わっていないことから、予断は許さない状況であることに変わりない。この話題はエネルギーフォーラム本誌を含め色々な場でも議論されているので、そちらに譲ることとしたい。

さて、こうして危機的な状況が話題をさらった1か月であったが、電気事業制度を検討・審議する国の審議会などは粛々と開催されている。

もちろん、今回の需給逼迫と市場価格高騰に関する議題もいくつか取り上げられているが、大半は今後の電気事業に関する議題が占めている。

筆者も仕事柄、審議会を追っているが、この1月に電気事業に関連がある審議会などでチェックした会議数は23件。1月は年始の休みがあってスタートが遅いこともあるので、平均1日に約1件は開催されている状況である。電力広域的運営推進機関が開催する研究会などはこれに含まれていないので、それを含めると更に増えることとなる。

議論されている分野を「電力事業のサプライチェーン+その他関連キーワード」別に筆者独自に整理してみたが、多く取り上げられているのは再エネや環境関連となり、これは50年カーボンニュートラル実現や再エネ主力電源化等の流れを大きく受けていると考えられる。

また、昨年6月に成立・公布されたエネルギー供給強靭化法の詳細設計も昨年夏以降に検討されており、多くの制度が施行される22年4月に向けた準備も進みつつある。

例えば、託送料金制度におけるレベニューキャップ制の導入では、今夏の省令改正などを目指し、電取委の料金制度専門会合の下部にワーキンググループが設置され、専門的な議論に入っている。その他、FIP制度の規模の目安や地域活用電源の要件の整理、配電事業や特定卸供給制度(アグリゲーター)における保安の在り方などの議論も進んでいる。

2021年1月に開催された審議会等の状況

今後数年間で予定されている電気事業制度を記してみた。これでも一部を記したものであるが、特徴としては、多くの制度がこの2~3年で同時並行的に進展していくことである。

この全体像を把握し、一つひとつの制度が自社にとってどういったリスクがあるのか、また、逆にどういった事業機会があるのかを見極めながら事業運営を日々行っていくことが求められる。某経営者は「脳に汗をかくまで考える」と言っているが、まずは基本を押さえ、そして考え抜き、行動に移すことが必要であろう。

もちろん、制度は完ぺきではないので、事業者や団体は必要な意見を国に主張していき、国の方でも事業者や団体からの意見に耳を傾けて制度設計や見直しを図っていただく体制ができることが望まれる。

現に、最近の審議会では、例えば、発電側基本料金の議論では、再エネ関連の各団体によるヒアリングを行っており、こうした流れを少しずつ形作っていけるとよいだろう。

主な制度・施策のスケジュール

最後に、今年で東日本大震災から10年が経つ。あの震災を契機に日本の電力事業が大きく変わった。

再エネ導入拡大を求めFIT制度ができ、世界的に低炭素から脱炭素へ舵を切り始め、パリ協定の締結、日本でも第5次エネルギー基本計画で再エネ主力電源化やCO2削減を言及してきた。また、電力システム改革として3段階の施策を実行するなど、矢継ぎ早に制度を進めてきた。一方で、北海道胆振東部地震でのブラックアウトや台風による大規模かつ長時間の停電など災害の激甚化によりレジリエンスの強化といった言葉が強調されるようになった。

こうした中で、エネルギー供給強靭化法の成立や50年カーボンニュートラル宣言など、この10年を踏まえた法改正や国としての新たな姿勢を示したのが昨年。今後は改正法の実行、カーボンニュートラル実現に向けた行動が問われる時代となり、いままさにこの瞬間が電気事業の転換期にあたるのではないかと感じる。

今回の事象の整理・検証を含め、今後のあるべき姿、目指すべき姿を見つめ、行動していくことが大切になってくるだろう。

現状の立ち位置

【プロフィール】1999年東京電力入社。オンサイト発電サービス会社に出向、事業立ち上げ期から撤退まで経験。出向後は同社事業開発部にて新事業会社や投資先管理、新規事業開発支援等に従事。その後、丸紅でメガソーラーの開発・運営、風力発電のための送配電網整備実証を、ソフトバンクで電力小売事業における電源調達・卸売や制度調査等を行い、2019年1月より現職。現在は、企業の脱炭素化・エネルギー利用に関するコンサルティングや新電力向けの制度情報配信サービス(制度Tracker)、動画配信(エネinチャンネル)を手掛けている。

制度Tracker: https://solution-esp.com/seido-joho2.html

新たな柱として電力事業拡大 再エネを軸に県内事業を手掛ける


【鈴与商事】

鈴与商事は主力の石油・LPガスに続く新たな柱として電力事業の拡大に注力している。これまで清水港にある鈴与グループの倉庫屋根を活用した分散設置型メガソーラーをはじめ、静岡市とのエネルギー地産地消事業、資源循環型バイオガス発電、御前崎港バイオマス発電所などに取り組んでいる。

静岡市との地産地消事業は17年2月に開始した。再エネの固定価格買い取り制度(FIT)の買い取り期間が満了を迎える太陽光発電の卒FIT電源を地産電源の一つに組み込み、市内の全小中学校や市有施設に電力供給する。これにより、地域経済の活性化や防災機能の向上、環境負荷の低減などを推進中だ。

鈴与菊川バイオガスプラントの外観

具体的には、静岡市役所庁舎など279の市有施設の電力を市内2カ所の清掃工場から発生する電力と、鈴与商事が調達する電力によって賄い、エネルギーの地産地消を実現する。また、地域の防災拠点となる静岡市内の小中学校80校に蓄電池を設置。蓄電池群制御システムを活用し、平常時は需給調整のため、非常時には防災用電力として活用するスキームを構築している。そうした取り組みによって、19年にはこれらの施設にかかる電気代を1億3672万円削減している。

資源循環型バイオガス発電では、鈴与グループでアグリビジネスを手掛けるベルファームが生食用トマトのハウス栽培を行っており、栽培で発生する食品系廃棄物処分を利用し、メタン発酵によるバイオガス発電を行っている。

現在、効率よくメタン発酵させ、ガスを取り出すプロジェクトを産業技術総合研究所と共同で取り組んでおり、産総研が有する大規模RNA/DNA解析技術を用いて、良好な菌叢・微生物機能が維持されるプラント運転条件を見いだすため研究を続けている。生成されたバイオガスで発電するだけでなく、排出される熱は冬季暖房向けに、CO2はトマトのハウス栽培に供給されるトリジェネレーションとして活用中だ。

御前崎港に発電所を建設 地域活性化に向けた事業

最新の取り組みでは、レノバが主導する御前崎港バイオマス発電所に出資した。鈴与グループなどが保有する当地を発電所候補地としてレノバに紹介したのがプロジェクトの始まりだという。2社に加え、地元の大手電力である中部電力と三菱電機クレジットが参画。4社で発電所の建設・運営やFITを利用した売電事業を行う。

建設・運用に関しては、レノバが先行して運転を開始する秋田県内の発電所をはじめ全国4カ所でバイオマス発電所を手掛けており、そのノウハウを生かす。「特に御前崎港の7万5000kWクラスは他の3地点と同規模であり、運用においてノウハウを横展開して進めている」(レノバ)という。燃料は木質ペレットやパームヤシ殻など輸入材をメインに、静岡県内の未利用材や間伐材なども利用していく方針だ。

御前崎港バイオマス発電所のイメージ図

このように、鈴与商事は静岡県内で地産地消、循環型社会の実現をテーマにさまざまな電力事業を進めている。吉村豊・エネルギーシステム営業部長は「事業を行う上で地元への貢献、地域活性化というキーワードは欠かせません。また、再エネの普及促進や利活用は当社の主要なテーマとして取り組んでいます。菅義偉首相が掲げた50年温室効果ガスゼロ政策は当社の電気事業にとって追い風です。この流れに乗っていきたい」と意気込む。

30年に向けては、電気自動車シフトの動きも活発になってくる。そうした変化にも、EVを活用したエネルギーマネジメントに取り組むスタートアップ企業、REXEVと協業するなど追随する。社内で一致団結してスピード感を持って取り組んでいく。

電気と生活水を自給自足で反響 全国にOTSハウスを展開


【TOKAI】

大規模災害が発生したとき、まず優先的に確保すべきは、電気やガスなどエネルギー、そして生活水だ。水は飲料水としてだけでなく、入浴やトイレなど、多くの生活シーンで欠かせないものとなる。

OTSハウスのモデルハウス

そんなエネルギーと水のBCP(事業継続計画)対策に優れた先鋭的な住宅として注目を集めているのが、TOKAIが提供する「OTSハウス」だ。電気を太陽光発電と蓄電池、水を独自開発の浄化装置を核とした生活水循環システムにより賄い、完全自給自足する従来にない住宅となっている。2011年から9年の歳月をかけて開発・実証が行われ、19年から販売を開始した。

鈴木辰麻理事・新規事業開発部長は「太陽光発電と蓄電池は多くのメーカーが取り扱っていますが、水まで扱って完全自給自足できる家を販売するのは当社しかありません。その独自性から昨年12月に住宅系の展示会に出展した際も、多くの方から関心を寄せていただきました」と反響を口にする。

OTSハウスは全6タイプをラインアップする。最上位クラスの「アドバンス」は、電気を系統電力に頼らずに太陽光発電と蓄電池で賄う。生活用水は建物敷地内に降る雨水を集め、最大1万7000ℓを貯水。この水を独自開発したRO(逆浸透膜)浄化装置を通して浄化、塩素消毒して生活水として利用している。キッチン・トイレを除いた生活排水も合併浄化槽で一次浄化した後、雨水と一緒にタンクに戻され、生活水として循環することを実現している。

昨年6月には、新たな方式で生活水を確保する「ウォーターコンシャススタンダード」を追加した。経済的な活性炭フィルターによるろ過システムを採用するもので、一次ろ過器で砂や鉄サビなど、二次ろ過器で色や臭いの原因物質を除去する。RO装置と同様に浄化後に塩素消毒で一般細菌を除去し水道水と同等レベルにする。

経済的な活性炭フィルターによるろ過システム

このほか、水道水を貯める大容量貯水タンクで断水に対応する「バリュー」に3日間自立する「バリュー3」を新たに加えるなど、導入しやすい低価格帯も追加している。

コンソーシアムを設立 仲間を全国から募る

昨年6月には、これまで静岡県内で進めてきたOTSハウスの販売を全国規模に広めるため、「雨と太陽で暮らす家。On The Spot コンソーシアム(共同事業体)」を設立した。住宅コンサルタントとして実績のある清水英雄事務所と協業し、全国で事業パートナー(代理店)と販売パートナー(会員)を募集。共同でOTSハウスの普及を推進していく構えだ。事業・販売パートナーは「OTSハウス」をはじめTOKAIが提供する規格住宅商品および水と電気の自給自足に必要な設備の取り扱いが可能となるとともに、毎年発表を予定する新商品の取り扱いも可能となる。「これまで当社単独で販売してきましたが、全国展開となると仲間が必要になります。OTSハウスのコンセプトに共感してもらえる企業の参加を募っていきます」と鈴木理事はアピールする。

昨年からの新型コロナウイルス感染拡大で、大規模災害が発生した場合、避難所に身を寄せるリスクもあることから、自宅でライフラインを確保することが従来にも増して重要になってきている。エネルギーと水を自給自足するOTSハウスのコンセプトはそうした新しい生活様式にもマッチすることから、今後より脚光を浴びていくだろう。

温泉とともに湧出するガスを活用 コージェネでホテルなどにエネ供給


【川根温泉】

SLで有名な大井川鉄道で、始発の金谷駅から30分ほど北の山間に向かった所に川根温泉はある。1994年12月に掘削された同温泉は毎分730ℓの湯量が、今も自噴している。島田市観光課観光施設係の天野幸治課長補佐は「温泉を過疎化が進むこの地域の観光や産業振興の起爆剤に位置付け、温泉をつくることになりました」と経緯を話す。温泉湧出とともに、川根温泉ホテルをオープン。現在では多くの観光客を集めている。

メタンガスで発電した電気が供給されている川根温泉ホテル


一方で、川根温泉はお湯とともに湧出するメタンガスを主成分とする可燃性ガスを大気に放出していた。温室効果ガス排出抑制や再生可能エネルギーの活用といった機運が高まりを見せつつあり、可燃性ガスの有効利用について2012年から検討を開始した。
可燃性ガスはメタンガスを86%含む。ガス量も常時1時間当たり30㎥程度が確保でき、25 kWクラスのヤンマーエネルギーシステム製マイクロコージェネを3台稼働するのに十分であると分かった。
だが、計画を進める上で鉱業法に基づく採掘権の取得が課題となった。鉱業法は04年に一部改正され、特定区域制度が導入された。これにより、国が特定区域を指定し開発事業者を募集する制度になったのだ。同制度が導入された直後のため前例がなく、同地を特定区域にしてもらう交渉を国と行い、その後、特定区域の指定と開発事業者の公募を経て、全国初の同制度を利用した鉱業権として設定された。メタンガス発電の検討に入ってから5年の歳月をかけて実現したのである。

ホテル横に設置したコージェネ


ホテルの電力6割を賄う 日帰り温泉に熱を供給


温泉にはコージェネのほか、ガスコンプレッサー、ガスホルダーを設置。発電した電気は川根温泉ホテルに、排熱は隣接する日帰り温泉に供給している。コージェネは4台設置しており最大100kWの発電が可能だ。深夜は需要が少ないため、ガスホルダーに貯めて、ホテルで使用する電力の約6割を賄い、ピークカットにも役立っている。排熱は日帰り温泉の沸かし湯に使われており、ガス代の削減に寄与している。BCP(事業継続計画)対策としても、非常用発電系統の一部負荷を肩代わりすることで、非常用発電機の持続時間を延長できる。
川根温泉の有効利用に関して、アドバイザーを務めた静岡大学グリーン科学技術研究所の木村浩之教授によると、「静岡県中西部一帯は川根温泉周辺だけでなく、温泉を掘ると広範囲にわたって高濃度のメタンガスを含有する可燃性ガスが湧出する可能性が高い。ほかの地域でもメタンガスを活用する事例が出てきてほしい」とさらなる活用に期待する。温泉が静岡県の地域振興や観光だけでなく、エネルギーや環境の面でも貢献していきそうだ。

【終了】水素社会を拓くアンモニア


※本セミナーは、2020年2月24日に開催し終了したものです。

<プログラム>
【13:00~13:30】「CO2フリーアンモニアによる低炭素社会の実現」
東京ガス株式会社アドバイザー 村木 茂 氏
【13:30~14:00】「なぜ、アンモニアか? ~CO2フリー燃料、水素キャリアとしてのアンモニアの可能性~」
住友化学株式会社主幹、元内閣府大臣官房審議官 塩沢 文朗 氏
【14:00~14:30】「JERAゼロエミッション2050」の取り組みとアンモニア混焼の展望(仮)」
株式会社JERA 経営企画本部 調査部長 坂 充貴 氏
【14:30~15:00】「日本の燃料アンモニア導入・拡大に向けた取組について(仮題)」
経済産業省資源エネルギー庁 資源・燃料部 政策課 石油・LNG企画官 渡邉 雅士 氏
【15:00~16:00】パネルディスカッション
モデレーター/塩沢氏、参加者/村木氏、渡邉氏

新電力の苦境は自己責任か 松村東大教授が電力危機で提言


今冬の電力需給ひっ迫により卸市場価格が高騰し、多くの新電力が経営危機に陥っている。電力政策に関わる松村敏弘東大教授は、今回は天災と比較し得る事態であり、新電力の救済を検討すべきだと指摘する。

昨年12月下旬から電力卸市場で、異例な価格高騰が続いた。全容がはっきりしない中、まだ十分に事態を消化できていない私がうかつに発言するのはリスクがある。このような災害ともいえる事態では、慎重に発言する必要がある。しかし、今後理不尽な議論が横行することを懸念している。

今冬の卸価格の継続的な高騰の主な原因は、LNGの調達量不足に起因するkW時の不足で、発電設備(kW)の著しい不足ではない。にもかかわらず、今冬の需給ひっ迫を口実にkWを調達する容量市場の需要曲線の引き方や埋蔵電力の議論などをゆがめ、高すぎる消費者負担引き下げの改革を阻害する、あるいは石炭火力のフェードアウトの議論に逆行する、火事場泥棒のごとき議論が横行しないか懸念している。

発電事業者の責任追及は酷

12月上旬まではかなり穏やかな天候だったため、LNGの調達が厳寒に備えるものになっていなかったと推測している。穏やかな天気が続けば、需要減と太陽光の発電量増加が見込まれ、LNGを厚めに調達していれば結果的に使い切れず、その非効率的な利用で損失が出る可能性もある中、厳寒への備えが足りなかったと発電事業者の責任を追求するのは酷。調達量不足が見込まれた後に慌てて追加調達する局面では、さまざまなLNGの供給支障要因や国際的な需要増が重なり、十分に調達できなかった。

複数の大きなLNGの供給支障を主因として、天候、発電機トラブル、新型コロナウイルスの影響など、ここの要因は「災害」と呼べるレベルでないとしても、これだけ重なれば、大地震などの天災とも比較し得る事態と整理するのが妥当だ。

価格上昇は正常なメカニズム

需給ひっ迫によって価格が上昇すること自体は正常な市場メカニズムの現れだ。正常に市場メカニズムが働けば、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格が200円、あるいは将来はさらに高くなるコマが現れても不思議ではなく、事業者は相対(金融)契約、先物市場やベースロード電源市場で備えておくべきリスクだ。一部の新電力は今冬以前のスポット価格の低下傾向に目を奪われ、リスクに対する正常な感覚と対策が欠如していたのではと疑っている。

一方で、多くの有識者や発電事業者は、今冬の需給ひっ迫の前には、「変動再エネが普及すれば卸市場価格は傾向的に低下する」「卸市場価格には少なくとも一部の固定費は含まれておらず、取引所で電力を調達する小売り事業者は固定費負担を免れてただ乗りしている」などと、ミクロ経済学のイロハが分かっているのか怪しい、物事の一面しか見ない愚かな議論を振りまいてきた。これが正しければ、固定費の乗ったベースロード電源市場を活用せず、小売り事業者が過度にスポットに頼る経営をしたとしても、価格高騰への備えを怠っても、むべなるかな。

 事業者は価格変動に対応すべきだ

理論的には、変動再エネが普及すれば、卸価格がほぼゼロ円になるコマの増加はあるものの、気象条件や供給支障などのショックに反応して価格が高騰する可能性も増加し、価格がただ下がるのではなく変動が激しくなると予測すべきだ。固定費はこの価格高騰時に多く回収されるものだ。あらかじめ手当てしなければ、価格高騰時に小売り事業者は多額の固定費相当額を負担することになる。こんな当然の考えが普及していなかったことは、小売り事業者だけの責任ではない。

さらに、私自身もLNGの調達不調によって、これほど長く取引所の価格高騰が続く事態がこんなに早く起こるとは予想していなかった。今回の事態は想定外の災害とも言える事態で、災害により新電力が壊滅して競争が失われる事態は避けるべき。需給ひっ迫はまだ続いているがその収束を待たず、早急に新電力の救済の可否やそのやり方を検討する必要がある。

一方で今回の事態は長期的な制度設計の観点からも、学ぶべき多くの教訓を含んでいる。kWだけでなくkW時の確保も見据えた安定供給対策とその費用負担の制度設計、燃料制約下での限界費用概念の再整理、リスクを低コストで合理的にヘッジできる環境整備、各種の電力市場、とりわけインバランス市場の再検討など多くの課題がある。

今冬の悲惨な状況を招いた一つの原因は、不適切なインバランス料金かもしれない。(基本的には調整電源の限界費用と等しい)社会的限界費用よりも高いインバランス料金が持続するリスクが起点となって、卸価格を高騰させたと疑っている。従来の議論は、インバランス料金が社会的限界費用を下回ることの弊害に偏り、逆の事態に対応できなかったのかもしれない。

短期対策と制度設計の峻別を

一方で、恒常的な厳しい上限価格規制などの短絡的な制度設計はすべきでない。電力供給の社会的限界費用が200円になるコマでは、価値が200円を下回る電力消費は積極的に抑制されるべきだ。そのような抑制を伴うデマンドレスポンス(DR)に貢献した消費者・事業者が正当に利益を得られる状況をつくり、DRの合理的な発展を促すためにも、卸市場価格が高くなることを安易に「悪」と捉えるべきではない。今冬の経験を、都合よく解釈して制度改革をゆがめ、長期的に消費者負担を増やしてはならない。 今回の問題は卸価格が高いコマがあったことではなく、社会的費用に見合わない高騰が異常に長く継続していることにある。問題をはき違えてはならない。

松村敏弘 東京大学社会科学研究所 教授 1965年生まれ。88年東京大学経済
学部卒。博士(経済学、東大)。大阪大学社会経済研究所助手、東京工業大学
社会理工学研究科助教授を経て現職。専門は産業組織、公共経済。

水素エネルギーへの期待の高まり 燃料電池製品が次々に登場


【リレーコラム】大平英二/新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)次世代電池・水素部統括研究員

水素への関心が国内外で高まっている。2017年12月に日本が世界で初めて水素戦略を策定した後、近年では欧州各国をはじめ韓国、オーストラリア、チリなど多くの国々で水素戦略を発表し、国を挙げて水素の取り組みを加速している。水素に関する国際会議も盛んで、「ウェビナー」というコロナ禍で普及したツールも相まって、大きなものでは1万人規模の参加者という実績もあるようである。世界が目指す「カーボンニュートラル」の実現に向け、水素が大きな役割を果たすことへの期待の表れといえる。

これには、水素を利用するアプリケーションである燃料電池製品が世の中に出てきたことも大きく貢献しているのではないか。09年に販売開始された家庭用燃料電池は国内で30万台を超え、14年12月に市場投入された燃料電池自動車も、20年12月には第二世代が発表されるに至っている。都内では燃料電池バスを頻繁に見かけることができ、水素ステーションは全国で約150カ所を数えるほどになった。他国では燃料電池列車や燃料電池船も開発されている。

とはいえ、これらは「水素社会」の実現に向けた第一歩にすぎない。社会システムの中で、どのように水素を利活用していくか、グランドデザインを描いていくことが必要であろう。その点、欧州の政策の打ち出し方は参考になる。普及が拡大する再生可能エネルギーを電力セクターのみならず、運輸・産業・熱の各セクターで利用する「セクター・カップリング」の概念は、さまざまなセクターをつなぐという水素の役割を端的に指し示すものといえよう。また、「Hydrogen Valley」構想は、地域主導で低炭素社会を構築するというメッセージと受け止めることができる。

水素を巡る夢物語が現実に

日本でも1993年に水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術プロジェクト、通称「WE―NET」プロジェクトで水素社会の絵が描かれた。これは他国で製造した水素を日本に運び、水素航空機も含めてさまざまに利用するという将来の姿で、当時は夢物語ともされた。だが、現代では燃料電池車が走り、水素タンカーが開発され、水素飛行機も開発計画が発表されるなど、夢が現実につながっている。 先達の長年にわたる取り組みが下敷きとなっていることは言うまでもないが、われわれはこれを享受するだけでなく、新しい未来の姿を描き、50年カーボンニュートラルを担う次の世代にいかにつなげていくか、あらためてその責務の大きさを感じるところである。

おおひら・えいじ 1992年東京理科大理学部卒、NEDO入構。経産省出向、NEDOバンコク事務所駐在、蓄電技術開発室室長などを経て、2018年7月から現職。

次回は日本エネルギー経済研究所新エネルギーグループ研究主幹の柴田善朗さんです。

USBは電線路の夢を見るか? 進む直流化で新ビジネスの可能性


【リレーコラム】橋本道雄/京都大学特定教授

2014年の春、ブルームバーグNEF社が主催する世界未来エネルギーサミットに参加する機会を得た。ジョン・ブラウンやエイモリー・ロビンスなど錚々たるメンバーによる講演もさることながら、エネルギービジネスの未来を占う挑戦的なメッセージがあちこちに掲げられ、熱い議論が交わされていた。その中の一つに「2025年、USBはコンセントに取って代わるか?」というものがあった。確かにスマートフォンやPCなど身の回りに情報機器が増え、交流のコンセントからAC‐DCアダプターを経て直流で充電されている。「いっそのこと最初からUSBで供給してくれれば」という気持ちはわからないでもない。

あらためて、そういう目で見回してみると直流化はあちこちで進んでいる。需要側では、モバイル機器のみならずテレビなどの大型家電でもアダプター経由で電力供給されている。試作段階ではあるがエアコンの直流仕様もあるそうだ。さらにその先には電気自動車だってある。12年にUSB‐PD(Power Delivery)の規格が制定されて最大で100Wの電力供給が可能になったそうで、この流れを加速しそうだ。発電側を見ると、太陽光発電や燃料電池など直流の発電機の普及が進んでいる。送配電では、例えば北海道と本州の間などの長距離大容量の送電には直流送電が使われている例がある。欧州においては、近年の洋上風力発電の著しい拡大により海底での送電網構築が必要になっているが、そこでは高圧の直流送電も検討されていると聞く。

さらに配電はといえば、内閣府とソニーコンピューターサイエンス研究所が、13年に沖縄科学技術大学院大学の教職員住宅を使って、直流で配電し余剰の再エネを相互融通する実証事業を行っている。電力システムのあらゆる段階で直流化は着実に進んでいる。

直流化に挑戦し新たな価値を見出す

だからといって直ちに全てが直流に置き換わっていくかというと、きっとそうではないのだろう。交流には交流の良さがあり、それゆえ電力システムが現在の形になっているからである。しかし、だからといってこのまま手をこまねいて見ているだけでよいのだろうか? 技術にしてもユーザーにしても常に変化しているものであり、この変化をつかまえてチャレンジをしていかなければ新しい価値は生まれない。世界を見渡すと6年前にはもう議論が始まっている。エネルギーのビジネスは価格競争が激しくなってきているが、周りをよく見渡せば高付加価値路線に転換する新しいネタが、まだまだありそうだ。


はしもと・みちお 1988年3月九州 大学工学部応用原子核工学科卒。 NEDO 新エネルギー部長などを経て 2020 年 5 月から現職。東京工業大学 特任教授、大阪大学招へい教授を兼 務。

次回は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の大平英二さんです。

インスタの口コミで広まる「乾太くん」 テレビCMで新たな利用シーンを提案


便利な生活設備として、口コミで広まるガス衣類乾燥機「乾太くん」。オール電化への流出防止のキラーコンテンツとして注目が集まっている。

「乾太くん」でランドリースペースを設けた生活シーン

リンナイのガス衣類乾燥機「乾太くん」が好調だ。コロナ禍にあって、2020年の出荷台数は昨年の約7万台を上回り10万台に迫る勢いという。ここまで普及しているのはガス事業者の営業が奏功しているのはもちろんだが、近年はインスタグラムをはじめとするSNSによる消費者の口コミが大きく影響しているそうだ。確かに「#乾太くん」で検索すると多くの投稿があり、「導入して良かった設備」「これは外せないオススメ設備」「使って良かった」といったコメントが見受けられる。
インスタに掲載される投稿の中には、乾太くんを設置する棚を自宅のインテリアに合わせて造作されている写真も多数見られる。同社も、従来の脱衣室兼洗濯部屋にアイロン掛けまでできるランドリースペースを設けるといった提案を行っていて、最新のテレビCMでは、そのような生活シーンを映像化した。同CMは消費者だけでなく、設計事務所やハウスメーカーから問い合わせがあるなど反響を呼んでいる。営業企画部の中尾公厚部長は「利用者によるSNSへのコメントや口コミによる反響が、そのまま販売台数につながる好循環を生んでいます。この流れを続けていきたい」と好調ぶりを口にする。

業務用も販売を促進 ペット関連で新たな需要

同社では、業務用「乾太くん」にも注力する。業務用の販売領域は病院や介護施設、ホテルなどの宿泊施設、社員寮などに設置する5~9kgクラスだ。今般、コインタイマーを内蔵した製品をラインアップした。従来は外付けコインタイマーを販売していたが、顧客からの要望で製品化した。これにより、電気乾燥機のリプレースを狙っていく。
また、新たな用途としてリンナイが注目するのがペット分野だ。ペットサロンではペットをトリミングするとき、たくさんのタオルを使う。使用後のタオルは店舗で洗濯するわけだが、その際乾太くんが思いがけない点で重宝するというのだ。
「タオルに付着したペットの毛は洗濯しただけでは落ちず、以前はペットサロンのスタッフが手で取り除いたそうです。乾太くんを使うと、ドラム回転によって毛がたたき落され、除けるため手間が省けます。さらに、ペットのウイルスも80℃以上の高温風によって除去できるため、非常に好評です」と中尾部長は語る。
リンナイでは家庭・業務用問わず好調な乾太くんを、オール電化への食い止めや見直し、新たな用途開拓に貢献するキラーコンテンツとして、今後もアピールしていく構えだ。

LPガスで都市ガスと電気を製造 病院や避難所のBCP対策に貢献


【I・T・O(旧伊藤工機)】

ガス供給機器メーカーのI・T・O(旧伊藤工機)は、地震や台風でライフラインが停止した時に、LPガスを利用して、都市ガスと電気を製造する防災対応システム「BOGETS(ボーゲッツ)」を販売している。

学校空調で採用された「BOGETS」

「BOGETS」は、液化石油ガスエア(プロパン・エアー)発生装置「New PA」、発電機、耐震LPガス容器スタンド、都市ガスとプロパン・エアーガスを切り替えるワンウェイロックバルブなどで構成される。災害発生から72時間をしのぐことをコンセプトに開発された。病院や福祉施設、避難所、企業のBCP向けに、初心者でもタッチパネルの操作などで供給を簡単に再開できる仕組みだ。

システムの根幹をなすプロパン・エアー発生装置「New PA」の開発は1990年にさかのぼる。当時の旧通産省では都市ガスを高カロリーガスに統一する「IGF21」計画が進んでおり、日本ガス協会のワーキンググループにおいて、13Aガスに統一するための熱変工事用ツールとして同装置の原型「移動式ガス発生装置」が取り上げられた。

しかし当時はガス事業法で使用が認められておらず、95年の阪神・淡路大震災の際、避難所で都市ガスが使えないことが各方面から指摘された。「移動式を活用できないか」との要望で急きょ制度が見直され、同年中に製品化にこぎつけた。

その後、2007年に発生した新潟県中越沖地震の災害対応で注目され始め、11年の東日本大震災でも活用。その存在が広く認知されるものとなった。

複雑な操作は不要 マンションからも引き合い

同装置の有用性は認識されたものの、従来型では手動による都市ガスラインとプロパン・エアーラインの切り替えなど複雑な作業が必要で専門性が高く、操作要員の確保が依然課題だった。これらの課題を解決したのが、前述の「BOGETS」だ。19年には「新型プロパン・エアー発生装置を用いた防災減災対応システム」としてコージェネ大賞の技術開発部門特別賞を受賞している。

同社は現在、全国の自治体に小中学校の体育館の空調用に「BOGETS」の導入を提案している。最近は高級マンションからも、防災のため引き合いが増えているとのことだ。

【マーケット情報/10月19日】原油混迷、方向感を欠く値動き


先週の原油価格は、強材料と弱材料が混在し、各地で方向感を欠く値動きとなった。16日時点で、米国のWTI先物、および北海原油の指標となるブレント先物は、前週比で上昇。一方、中東原油を代表するドバイ現物は軟化した。

米国の週間在庫統計は、前週比で減少。また、ロシアの調停で停戦協定を結んだにもかかわらず、アゼルバイジャンとアルメニアの軍事衝突が激化。周辺地域からの供給不安がさらに強まった。 一方、供給増加の予測も台頭。米国メキシコ湾岸では、ハリケーンDeltaからの復旧が進み、16日時点で、92%の原油生産設備が再稼働済み。リビアのEl Sharara油田は、11日に生産を再開し、日量30万バレルの増産が見込まれている。さらに、ノルウェーでは9日、労働ストライキが終了。石油ガス田での生産が、近く再開する見通しだ。

WTI先物(NYMEX)=40.88ドル(前週比0.28ドル高)、ブレント先物(ICE)=42.93ドル(前週比0.08ドル高)、オマーン先物(DME)=42.25ドル(前週比0.31ドル安)、ドバイ現物(Argus)=41.93ドル(前週比0.28ドル安)

出力580Wの新パネルを発売 大型発電所などへの設置を狙う


【ジンコソーラー】

日本国内では、再エネの固定価格買い取り制度(FIT)の価格が年々下がっている。海外では買い取り価格自体がなくなる国もあるなど、太陽光発電市場は大きく変わろうとしている。そうした中、太陽光発電事業者や投資家が太陽光パネルメーカーに求めるのは、同じ広さの敷地でより多くの発電量を確保するため、高出力、高変換効率など、パネル性能のさらなる向上だ。

「Tiger Pro」シリーズ

そういった要望に応えるため、ジンコソーラーは6月、最大出力580W、変換効率21・21%の太陽光パネル「Tiger Pro」を発表した。従来品は475Wだった出力を、新技術の採用と大面積化することで高性能を実現した。新技術のうち、タイリングリボンは、モジュール製造時にセルとセルの間隔をなくして実装できる独自のもの。モジュールエネルギー密度を高め、LCOE(発電量当たりのコスト)の大幅な低減を実現している。また、従来角型だったリボンを丸型にすることで、接地面積が小さくなるのに加え、太陽光の一部がリボンで反射してパネルに届くようになり、出力を向上することが可能となった。

さらに、前シリーズ製品では5本だったセル上のバスバーを9本に増やすことで、間隔を半分にし、セルにマイクロクラックが発生した際の出力ロスを減少するようにした。

このほか、セルを半分にカットするハーフセル技術を採用する。セルの電流値を半分に下げ、セル内部の発電ロスを低減したり、太陽光が日陰になったときのロスを低減できる。

日本市場では大規模発電所向けの割合が7割を占めている。今回の「Tiger Pro」も高出力、高効率を武器に、同用途に向けて拡販していく構えだ。9月から販売を開始する。

日本はPPAモデルが成長 屋上設置型パネルを開発中

一方で、新たな市場として自家消費向けが盛り上がりを見せている。中でも、工場や事業所、店舗など需要家が屋根など設置場所を提供する代わりに、事業者が太陽光など発電設備を設置して需要家に電気を販売するPPA(第三者所有)ビジネスモデルが急成長する見込みだ。同社でも同モデルが拡大すると見ており、大規模発電所向けと自家消費向けの出荷量の比率は今後半々になると予測している。このため、自家消費に適した新製品の開発などにも注力していく構えだ。

大地震で強靭性を証明した熱供給 コロナ対策では運用を分散化


【北海道ガス】

札幌駅を中心とした128haの広大な都心部エリアには、熱導管ネットワークがある。現在、同エリアでは、五つのエネルギーセンターが稼働しており、面的ネットワークを構築している。2018年9月に発生した北海道胆振東部地震では、同エリアに敷設された中圧ガス導管に被害はなく、エネルギーセンターは稼働を継続した。熱供給が強靭でBCP対策に有効であることを地震を通じて証明する格好となった。

都心部にある創生スクエア。地下にエネルギーセンターがある

安定供給に大きなメリットを有する熱供給だが、コロナウイルス感染症の拡大により運用などに変化はあったのだろうか――。

需要面では、国内外からの観光客が減少したことによりホテルの営業が停止したり、稼働が低下したこと、都心部に事業所を構える企業が在宅勤務に切り替えたことなどが影響し減少した。

運用においては、業務効率化のため、五つあるエネルギーセンターそれぞれで運用を行ってきたのを集約していく取り組みを進めていたが、感染症のリスクを考慮し、従来の分散運用する措置を実施している。

オペレーターの勤務についても見直し、3交代する際の引き継ぎもメールなどを活用して短時間ですませたり、作業が終了しても事務所に立ち寄らず直行直帰を増やすなど、スタッフ同士の接触機会を極力減らすようにした。

働き方や暮らしが変化 今後の需要動向に注目

札幌市内には、都心部と創成川を挟んで隣接する北4東6地区にもエネルギーの面的供給を行っている街区がある。「北ガスアリーナ札幌46(札幌市中央体育館)」をはじめ、275戸が入居する地上21階建てマンションに電気と熱を供給しており、今後は福祉施設やスポーツ施設などにも拡大していく計画だ。都心部の熱導管ネットワークからは独立しており、単独のエネルギーセンターで一元管理しながら、エネルギー供給ネットワークを構築している。同エリアでは、CEMSが導入されており、需要を予測し最適な運転が自動で行われるよう実証が続けられている。

北4東6地区ではCEMSを導入。自動で最適運転が行われている

エネルギーシステム部の栗田哲也部長は「コロナウイルスの感染拡大は、働き方や暮らしに大きな影響を与えています。人の動きが変わると、エネルギー需要も大きく変化します。CEMSなどの最新鋭の自動運用が進む中にあっても、その動向はより注目しなければなりません」と話す。コロナウイルスの感染拡大はエネルギー供給に新たな影響を及ぼしそうだ。

【太陽光】新しい業界ビジョン 20世紀型からの脱却


コロナ禍の影響が日本の太陽光発電業界にも及び、短期的な収益悪化に加え、将来を危惧する声も聞こえてくる。そんな状況下、少し明るいニュースがあった。

太陽光発電協会(JPEA)が新しい業界ビジョンを公開した。2050年の太陽光発電(PV)の導入量を、従来の2億kWでは不十分であり3億kWを目指すべきとする。簡単に言うが、設備容量としては日本の最大電力需要の2倍近い数字だ。将来の話とはいえ大胆過ぎはしないだろうか。JPEAの主張は、国の目標である「50年までに温室効果ガス80%削減」を実現するには、PVの導入量は少なくとも3億kW(電源構成の31%)は必要とのこと。それだけの大量導入になると、調整力は足りるのかとか、国民負担は大丈夫かなどの疑問が湧いてくる。その疑問に対し、JPEAは出力抑制を10%以下に抑えるための蓄電池の必要量や、便益が費用負担を上回ることなどを定量的に評価し、3億kWは技術的、経済的にも不可能ではないことの根拠を示している。この点では、従来のお手盛り業界ビジョンから一歩進み、率直に評価できる。

ただ、現実にはFIT価格の低下や系統制約、度重なる制度変更などの影響で、PVの導入量は減少傾向にあり、このままでは3億kWの実現は極めて困難だ。コロナ禍の影響を克服して、どうやって縮小傾向の市場を拡大傾向に反転させるのか。このことについてもJPEAビジョンにヒントを見出すことができる。

例えば、コスト競争力をつけるために燃料費がかからないPVの稼働期間を延ばす工夫や、小売り電気料金との比較で競争力に勝る自家消費モデルへの転換など、今までのモデルから脱却することで可能性が見えてくる。ただ、これら民間の努力だけでは現状の打開は難しい。やはり、FITからの自立と主力電源化に向けた国の本気でぶれない施策が何よりも重要である。そのためにも50年より先を見据えて、国の脱炭素化を本気で目指し、デジタル化や分散化、全体最適化が遅れている20世紀型の電力システム、官僚機構からの脱却を切に望む。(T)