【特集2】方針の公表で連携を強化 移行期間も低・脱炭素に貢献

【ジクシス】

ジクシスは4月、2050年脱炭素社会の実現に向けた挑戦として「カーボンニュートラル(CN)取組方針」を公表。①直接削減、②LPガスの低炭素化、③LPガスを利用した燃料転換(削減貢献)、④LPガスの脱炭素化、⑤アンモニアによる脱炭素化貢献(削減貢献)―の五つの行動指針とロードマップが示されている。

同社はLPガスの安定供給を前提とした上で、脱炭素社会の実現だけでなく、その前段階であるトランジション期間においても、LPガスの特性やインフラを生かして貢献していく構えだ。

社会実装と事業化が命題 経営資源を生かして挑む

50年の温室効果ガス排出量のネットゼロ達成を見据え、まずは30年に20年度比で90%のCO2直接排出(スコープ1、2)の削減を目指している。具体的には、主に基地で使用する電力の非化石化などに取り組んでいる。加えて、LPガスを用いた低・脱炭素化の取り組みとして、ボランタリーカーボンクレジットによるオフセットや、産業用ボイラーの燃料を重油からLPガスへ切り替える燃料転換、外航船のLPガスと重油の2種類を使用可能なデュアルフューエル船への切り替えなどを進めている。

長期的な取り組みとして、生産から消費までの過程でCNに貢献するグリーンLPガスの技術開発と社会実装、さらには燃料アンモニアの事業化にも挑む。グリーンLPガスについては、21年秋にジクシスを含むLPガス元売り5社で結成された日本グリーンLPガス推進協議会で製造技術の研究が進行中だ。また22年6月には経済産業省、ジクシスなどのLPガス関連企業、大学が社会実装に向けて協議を行うグリーンLPガス推進官民検討会も設立された。

燃料アンモニアは燃焼時にCO2を排出しないことから、脱炭素社会実現に資するとして注目されている。石炭火力への混焼や船舶の燃料としての利用に向けた動きがある中で、アンモニアはLPガスと特性が似ていることから、LPガス事業者は貯蔵や輸送などの担い手としての可能性を持っている。

2050年に向けた五つの取り組み

「グリーンLPガスの社会実装は大きな命題。燃料アンモニアの事業化の検討も進めていきたい。どちらも難易度が高いチャレンジになるが、今あるLPガスビジネスのインフラや経営資源を活用するとともに、他社や株主とのアライアンスの機会も模索していく」と、田中保経営企画部次長兼グリーン戦略室長は話す。

LPガス業界において、脱炭素への方向性をいち早く示したジクシスの今後に期待が高まる。

【特集2】分散型の特性生かす展開 新商材などで評価高まる

LPガス自体の特性や独自のサプライチェーンを生かした新ビジネスが生まれてきた。カーボンニュートラルLPガスや新商材の普及などが注目されている。

2050年カーボンニュートラル(CN)に向けて、LPガス業界でも、さまざまな取り組みが進んでいる。これまで、ガスの普及拡大の取り組みを巡っては、元売りがサプライチェーン全域に関わっていくことで、供給者としての責任を果たしてきた。この手法は現在にも引き継がれ、CNLPガスの利用拡大、燃料転換、省エネ活動などに生かされている。

CNLPガス自治体で採用 元売りと特約店が連携

アストモスエネルギーは、CNLPガス普及のため特設ウェブサイトを開設したり、ウェビナーを開催したりするなど、広報活動を積極展開している。こうした活動と地元特約店の働きかけが功を奏し、昨年9月には山口県周防大島町にCNLPガス供給を開始した。このように、次世代に向けた取り組みにおいても、元売りと販売店、需要家が連携していく手法をとっていく。

LPガスの用途拡大に向けては、新たなアプリケーションの創出が欠かせない。11年の東日本大震災以降は、国からの補助金供出の効果も相まって、病院や特別養護老人ホームなどに災害対応型バルクと発電機、ガスヒートポンプ(GHP)をセットで導入する事例が相いでいる。また、学校や体育館にもバルクや空調を設置する動きも加速しており、防災兼用エネルギーとしてLPガスを選択するケースも出てきている。

質量販売で使われるパラソルヒーター

一般消費者向けでは、近年のアウトドアブームによって、キャンピングカーやバーベーキューコンロ、パラソルヒーターなどが人気でLPガスを利用したいという需要が高まっている。これらの製品は移動して利用するケースが多く、保安業務を担うLPガス販売事業者が30分以内で駆けつけられない事態が想定される。ゆえに、販売事業者は積極的に販売対応してこなかった。

これに対し、経産省は昨年7月、質量販売において法律を見直し、「質量販売緊急時対応講習」を受講すれば、需要家が緊急時に必要な措置を自ら実施できるようにした。これにより、前述のアウドドア製品のような今までになかった需要の創出など、新たな動きが出てくると見られる。利用者に魅力あるエネルギーとして、LPガスが改めて脚光を浴びそうだ。

【特集2】半導体工場の標準ガス検知器 機能集約を図り使用部材を低減

【理研計器】

理研計器のガス検知器「GD-84D」シリーズが省エネ大賞製品・ビジネスモデル部門を受賞した。半導体市場向けの同製品は業界のスタンダード機として普及している。その要因に迫った。

日本国内に大型工場の建設が計画されるなど、盛り上がりを見せる半導体業界。その工場内では、200種類を超えるガスや薬液、金属材料などが大量に使われている。中には、毒性が強く、人体に悪影響を及ぼすものもあり、万が一の漏洩時には迅速で正確な検知が求められている。

理研計器が手掛ける半導体市場向けスマートタイプマルチガス検知器「GD-84D」シリーズは、大気中の可燃性ガスや毒性ガスの漏洩や酸欠を検知することで警報を発する製品だ。業界のスタンダード機として国内外の工場で多く採用されている。

省エネ大賞で製品・ビジネスモデル部門を受賞した「GD-84D」

半導体工場ではガス検知器の点数削減、ガス検知器のコスト削減を含むイニシャルコストの削減が継続的に求められている。そこで、GD-84Dの開発では、従来機から大幅な性能向上を図るため、①自己診断機能を強化した高性能ガスセンサー、②複数のガス検知器を1台に集約すること、③環境負担軽減への配慮―を目指した。

この結果、従来はガス種ごとに必要だったガス検知器について1台で4種のセンサーを搭載できる製品を開発。これに合わせてガスセンサーも新たに開発した。新しいガスセンサーは体積を従来から91%減まで小型化し、寿命では2年の延長を実現した。さらに、ガス検知器内にガスを引き込むポンプも1セットで4種のガスに対応するものを開発したことで、一つの検知器に4台分を集約することが可能となった。これにより、従来機の6割以上の消費電力削減を図った。さらに、電気通信配線やガスのサンプリング配管など周辺部材の導入点数も最大4分の1に削減できるようになった。

導入コスト全体を最適化 省エネや省資源に貢献

このように前機種から大幅に機能集約を実現したことが評価され、GD-84Dは省エネルギーセンター主催の「2022年度省エネ大賞」の製品・ビジネスモデル部門エネルギーセンター会長賞を受賞した。

「1台のガス検知器で4種のガスに対応したのに加えて、サンプリング配管や電力通信配線など周辺部材を大幅に削減したことも評価されたと考えている。サンプリング配管はとても高価だ。従来は使用するガス種ごとにこれを数十m程度導入するため、顧客の費用負担が大きかった。そうした導入コスト全体の削減、省エネ、省資源などが、脱炭素やSDGsの観点から全体的に評価されたのではないか」。営業技術部の森阪秀一部長は、受賞についてこう話す。

現在、検知器は一度設置されたら10年は使用する製品だという。それだけに信頼性が求められる。顧客の要望に応えながらの製品開発は困難を伴うが、今回のような性能向上の実現は産業発展につながる。理研計器はそうした開発に今後も邁進する構えだ。

【特集2】家庭のガス消費量削減に効果発揮 床暖房省エネリモコンを発売

【パーパス】

パーパスは、一次エネルギーの消費を抑える温水床暖房リモコンを発売した。 高効率給湯器のパイオニアとして、省エネ住宅向けの製品で快適な暮らしを提供する。

国土交通省が公布した「改正建築物省エネ法」により、2024年度以降、建築物の省エネ基準が引き上げられ、適合義務が拡大する。現在は、延べ床面積300㎡以上の中規模・大規模非住宅建築物が対象だが、25年度以降は全ての新築住宅・非住宅に適合が求められる。

新築住宅では、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)水準を20%削減へと、より高い省エネ性能への誘導が強化され、遅くとも30年度には省エネ基準をZEHレベルに引き上げて、適合が義務化される予定だ。

こうした改正により、新築住宅では長期優良住宅やZEH水準住宅、低炭素住宅のニーズが高まり、ゼネコンやデベロッパーは建築部材や商材、設備などで省エネを図る。一次エネルギーであるガスも省エネが必要だ。

ガス給湯器は、①給湯器、②風呂給湯器、③給湯暖房用熱源機―と、大きく三つに分かれる。

③は温水式床暖房に対応し、床暖房用の温水を送水するためのガスが必要になるのでガスの消費量が増える。総合的な一次エネルギー消費量基準(BEI)が高くなり省エネ達成基準を満たさなくなるため、敬遠されがちだ。そこで、「床暖房を設置してもBEIの数値に貢献し、省エネ住宅に対応できる商品を」との業界の声を受け誕生したのが、パーパスの温水式床暖房リモコン「FHR‐200」シリーズ、通称「省エネ床コン」だ。

室温センサーを搭載 2系統操作ができるリモコン

省エネ床コンはセーブモード機能を搭載。エアコンとの併用により、暖房に使う総合的な一次エネルギー消費を下げる。室内の空気はエアコンで、床はセーブモードの床暖房で暖めることで、快適性と省エネ性を両立できる。

住宅の省エネ性能を評価するウェブプログラムでは、省エネ床コンとエアコンの併用で、BEIを約0.03下げる効果が見込まれる。

セーブモードでは、9段階の温度設定を、レベル1~4の4段階に絞っている。レベル4では、約40℃の温水をつくり、床面付近の温度が25℃程度になるよう循環させる。温度センサーを搭載し、床面が設定レベルに達すると、自動でオン・オフする。一つのリモコンで2カ所の操作が可能な2系統制御タイプもある。既に床暖房を導入済みの住宅でも、省エネ床コンに交換できる。

2系統制御タイプリモコン「FHR-200シリーズ」

高効率給湯器のパイオニアであるパーパス。今後の展開について、鈴木孝之営業企画部長は「いかに高効率の給湯器を提供していくか、さらなる開発を進める中で、省エネを始め、プラスアルファの付加価値を提供する機器に取り組んでいきたい」と話している。省エネ床コンで、床暖房を使った快適な省エネ住宅が実現する。

セーブモードの温度設定は4段階まで

【特集2】空気循環で屋内温度差を緩和 健康性と快適性を追求するZEH

【ヤマト住建】

ヤマト住建の「エネージュAF」は、2021年度の省エネ大賞を受賞した。V2Hの採用など、カーボンニュートラルを実現する住宅の普及を目指す。

ヤマト住建の「エネージュAF」は2021年度「省エネ大賞」製品・ビジネスモデル部門で、最高賞の経済産業大臣賞を受賞した。

エネージュAFは同社の高断熱高気密住宅「エネージュ」シリーズに、5kWの太陽光発電と冷暖房を循環させる「Airフローシステム(AF)」を採用したもので、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の性能を満たしている。

ZEHは高断熱高気密が必須だが、ヤマト住建はZEHの条件だけでなく、居住者の健康性と快適性を重視。冷暖房の効いた部屋と、洗面所や脱衣所など冷暖房のない空間で生じる温度差をなくし、ヒートショックを防止する住環境を提供したいとAFの開発に取り組んだ。

まず、高断熱高気密性をさらに追求。国が定めるZEH断熱基準を大きく上回る、HEAT20のG3相当の断熱仕様を実現した。外壁や屋根、基礎の立ち上がり部分から断熱性能を強化し、樹脂製サッシと低放射三層複層ガラスを採用。断熱性能を表すUA値はZEH基準0.4~0.6のところ、倍以上の性能を意味する0.26を達成した。気密性を表すC値も0.5以下と業界トップクラスになった。

冷暖房を循環させるZEH 省エネと健康が主眼の住宅

こうして高断熱高気密性を高めた魔法瓶のような住宅にAFを組み合わせる。1階リビングと2階ホールに、適切な性能のエアコンを1台ずつ設置。エアコン近くの天井に設けた吸い込み口から調温された空気を吸い上げ、循環ファンでダクトと分岐チャンバーを介し、各部屋や水回り、玄関、廊下などに送風する。送られた空気は各部屋のドアに取り付けたグリルなどから吸い込み口に戻る。空気を循環させ、住宅全体を均一な温度に保つ仕組みだ。

Airフローシステムの概要図

通常、ZEHでの全館空調は難しいと言われる。例えば冬季に24℃程度にするためには、35~40℃まで暖めた空気を強制的に送り出し室内を暖める。ファンやエアコンの動力エネルギーが大きくなり、ZEHを満たさなくなることがあるのだ。一方AFは、エアコンからの22~24℃程度の空気を循環させる設計でファンの動力を抑える上、魔法瓶のような住宅構造なので外気温の影響を受けづらく、エアコンの動力も抑えられる。

技術開発部の入口恭尚本部長は、「いかに効率的に風量をつくり循環させるかが重要。ファンやエアコンの選定から、各部屋のダクトの配置や長さまで考えながら設計した」と開発当時を振り返り、省エネと健康を主眼にしたZEHに今後も取り組みたいと意気込む。同社の22年の受注はZEHが88%を占めており、EVを活用するV2H(ビークルtoホーム)や、蓄電池などの併用も普及させていく。「電気を自給自足できる生活を提案したい。VPP(仮想発電所)を視野にカーボンニュートラルの実現が可能な住宅を適正価格で提供していく」と展望を語った。

エネージュは「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー」を13期連続受賞

【特集2】省エネ強化へ制度整備が進展 短中期の脱炭素対策の柱に

脱炭素やエネルギー価格上昇をきっかけに企業や家庭での省エネ対策への意識が高まりつつある。省エネ法や建築物省エネ法の改正など制度整備が進む中、ビジネス機会も大きく広がってきた。

2050年カーボンニュートラル(CN)社会の実現に向け、日本のエネルギー需給構造の転換と安定的なエネルギー供給を確保するための法制度整備として、今年4月に改正省エネルギー法が施行された。

具体的には、①非化石エネを含めたエネルギー全体の使用を合理化、②工場などで使用するエネルギーを非化石エネに転換促進、③ デマンドレスポンス(DR)など電気需要の最適化―などを掲げている。そうした中にあって、今後10〜20年後を見据えた期間においては、省エネや低炭素化に資する取り組みが欠かせない。

東京ガスエンジニアリングソリューションズは、鹿児島県初となるエネルギーの面的供給のプロジェクトを手掛けた。病院やホテルに電気と熱を供給。エネルギー効率の高い設備を導入しながら、供給安定性とBCP(事業継続計画)の機能を高めている。

東京製鐵は九州工場で、九州電力管内で発生した余剰電力を消費する「上げDR」に取り組んでいる。九電管内では、需要閑散期の春や秋に太陽光発電の余剰電力が多く発生し、出力制御を行っている。この余剰を解消するため、昼間に割安な料金メニューを設定してもらい、工場を積極的に稼働させている。

ストック平均でネットゼロ 高い目標にどう対応するか

建築物の省エネにおいては、昨年6月に施行した改正建築物省エネ法で、50年に住宅・建築物のストック平均でZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)基準水準の省エネ性能を確保することを目指す方針を打ち出している。

省エネ基準適合義務の対象外の住宅、小規模建築物の省エネ基準への適合を25年度までに義務化するとともに、30年度以降に新築される住宅・建築物はZEH・ZEB基準の省エネ性能の確保を目標に掲げている。

ZEB化工事を実施した大成建設のオフィス

この目標達成に向け、大成建設は既築ビルをZEB化する「グリーン・リニューアルZEB化工事」を展開。同工事は、既存建築物の特性を考慮して最適な省エネ、創エネ技術を導入し、事務所を稼働させながら、改修工事を行うことが可能。同工事を実施した同社関西支店では、BEI(省エネルギー性能指標)0・37を達成し、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)において「ZEB Ready」を取得した。

こうした産業や建築向け省エネ施策の最新動向を取り上げる。

【特集2】ZEB化に向けた新たな手段 業務を止めずにリニューアル工事

【大成建設】

大成建設はこのほど、既築ビルをZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化する「グリーン・リニューアルZEB化工事」を自社の関西支店で実施した。同工事は、既存建築物の特性を考慮して最適な省エネ、創エネ技術を導入し、事務所を稼働させながら、改修工事を行うもの。これにより、関西支店はBEI(省エネルギー性能指標)0・37を達成し、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)において「ZEB Ready」を取得している。

同社が考える建物のZEB化では、①パッシブ技術で必要なエネルギーを減らす、②アクティブ技術でエネルギーを効率的に利用する、③再生可能エネルギーを利用する―の大きく三つだ。①のパッシブ技術は高断熱化、自然換気、日射遮蔽、植栽・緑化、昼光利用などが該当する。

庇や植栽などを取り付けた同社関西支店

改装したビルでまず目を引くのがその外観だ。各階の窓の外にはルーバーと庇が新たに設けられ、植栽がされている。これが、日射遮蔽や緑化に寄与し快適性を向上している。

建物の改修では新たな仕組みを多数取り入れている。独自の自然採光ブラインド「T-Light Blind」は、ブラインドを上下二段構成にして二つの異なる種類のスラットを採用。下部のブラインドでは室内窓際に直接日光が入らないように遮光し、上部のブラインドでは太陽光を反射させて、オフィス室奥の天井面に光を取り入れる。これにより、室内窓際に入る直射日光を避けながら明るい環境を実現し、エネルギー消費量も削減できるようにした。

②のアクティブ技術では、高効率照明や空調、それらの制御システムの導入、空調設備のダウンサイジング化を図る。照明と空調を制御する人検知省エネ自動環境制御システム「T-Zone Saver」ではLED照明の制御に独自の人検知センサーを採用し、従来の4灯単位から1灯単位で制御することで照明に使われるエネルギーを最小化する。

さらに、同システムでは空調も制御、在籍人数に応じた適正な換気量に調節することで外気ロスを低減する。

太陽光パネルを独自開発 オフィスの一部をテラス化

③再エネ関連では、窓建材に太陽光発電セルを組み込んだシースルー対応の太陽光発電パネルや、ビル外観に配慮したカラー太陽光パネルなど独自製品も採用する。このほか、オフィスの一部をテラス化したり、インナーバルコニーを設置するなど、オフィスの快適性を重視した改修も行った。これらにより、CO2削減量は年間365t、光熱費は同1760万円の削減につながるとのことだ。

現在、同社はグリーン・リニューアルZEBを検討する顧客などを対象に見学を受け入れている。リニューアル推進部の須田健二部長は「今回の改修工事の知見を生かし、顧客への展開を目指していく」と意気込む。既築ビルのZEB化は多くのビル所有者などの課題となっている。今回のようなリニューアルの取り組みが突破口となり、脱炭素化をさらに加速させていくだろう。

【特集2】沖縄県最大級の商業施設 脱炭素目指すエネサービス提供

【リライアンスエナジー沖縄】

那覇市と宜野湾市をつなぐ「西海岸道路」沿いに、「サンエー浦添西海岸パルコシティ」がある。米軍浦添補給基地「キャンプ・キンザ―」西側の埋め立て地を利用した沖縄最大級の大型商業施設で、約7万5000㎡の敷地に、地上6階建てのパルコシティと駐車場棟などが建つ。目の前にはサンゴ礁の浅瀬が広がる、地元の人気スポットだ。

パルコシティは2019年にオープン。沖縄電力グループのリライアンスエナジー沖縄(REO)がエネルギーサービスを手掛けた。県内最大手の小売り事業者サンエー、竹中工務店と共同で省エネ・省CO2の先進的な取り組みを進め、22年度「省エネ大賞」の省エネ事例部門・業務分野で、最高位の経済産業大臣賞を受賞した。

沖縄は、人口増加やインバウンドを見込んだホテルや商業施設の新増設、米軍基地返還跡地の大規模再開発といった成長の可能性がある半面、カーボンニュートラル実現への高いハードルがある。そのような中で、パルコシティもまずは省エネ・省CO2の徹底が重要だと考え、取り組みを開始した。

自然を生かしたエネマネ 店舗も協力し削減率向上

建物のオーナーからは「快適性の確保」「運用面で手間のかからない設備」の二つの要望を受けた。

建物側では、BEMS(ビルエネルギー管理システム)で管理する日射連動の照明制御や、人感センサー制御など照明の省エネを図った。また、自然採光のスカイライトシステムを導入。照明制御と組み合わせることで、年間の消費電力をさらに11%削減した。

空調面においては、通年で冷房需要のある沖縄の気候に合わせたシステムを導入。超大温度差ターボ冷凍機に加え、自己再熱型外調機とファンコイルユニットのカスケード利用でターボ冷凍機のCOPを最大限生かした。また、外気を活用する冷房システムの導入・運用で、冷水の製造エネルギーを抑制し冬季の消費電力を大きく抑えた。夏季には年間を通して温度が一定の地下水を使って外気を冷やす「地中熱利用外調機プレクール省エネシステム」を導入し、熱源製造熱量を抑制した。

こうした照明・空調・再エネ活用で、一般的な商業施設と比較して一次エネルギー消費量を37%削減することを目標にしていたが、年々省エネが進み、21年度は40%削減に成功。年間のCO2排出量も基準比で43%削減になった。

デマンドの抑制も削減率向上に貢献した。商業施設はオープン時刻に合わせ一斉に空調を入れ、デマンドが立ちやすかった。REOでは運用実績の分析などエネルギーの見える化を行い、店舗の協力を得ながらエリアごとに空調の始動時間をずらすなど、試行錯誤を繰り返した。設計値で1万4000kWだったデマンドを、今では快適性を損なわず、7000kW以下に抑えている。

REOは今後、病院や大学などの新設・更新案件においても同様の高効率機器の導入とエネルギーマネジメントをセットにしたサービスを展開していく。似通った気候のアジア地域での普及も期待できそうだ。

パルコシティはREOのエネルギーサービス採用第1号

【特集2】カーボンマイナスを目指すオフィス 自然との共生で室内環境も快適に

【戸田建設】

戸田建設が茨城県つくば市に構える筑波技術研究所のグリーンオフィス棟では、「カーボンマイナス」の取り組みが進行中だ。年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスの『ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)』を達成した上で、施工から運用・解体までのCO2排出量の実質マイナスと、働きやすい室内環境づくりを目指している。

登はん・下垂植物を組み合わせて、上下に生育するよう植栽

2017年5月、ZEB建築の要素技術を実証する環境技術実証棟が完成した。その設計段階で技術実証の終了後、21年にZEBとして改修される計画だった。当時ZEBが普及しつつある中で、その先を行くカーボンマイナスの構想が浮かび上がってきた。この構想は政府がカーボンニュートラルを宣言した20年よりも早い、15年から始まっていたという。「消費エネルギーは設計時の想定より約26%低く、太陽光も多めに発電できている。ZEB計算の対象とならないコンセントなどの電力も含め、カーボンマイナスの達成を目指している。建物のライフサイクルを70年と捉え、38年ほどでエネルギー収支が逆転する計算だ」と村江行忠技術研究所長は話す。グリーンオフィス棟へと生まれ変わった現在は執務スペースとして活用され、研究所員の働きやすさの満足度も高い。

省エネと快適性を両立 壁面緑化と地中熱利用

同施設には建築をはじめとする多くの技術要素が取り入れられている。その一つに、壁面緑化ユニットがある。日光や雨風を遮るルーバーとつる植物を組み合わせ、CO2の吸収と日射熱の抑制を実現。このルーバーに使用される木材は、施設建設時に伐採した樹木を原料とした再生木だ。壁面で生育されるつる植物は、自然の要素を取り入れ生産性の向上などを促す「バイオフィリックデザイン」となるほか、紅葉など季節ごとに外観の変化をもたらす珍しい建築となっている。

ルーバーは内側からも緑が覗く

室内を快適に保つ設備としては、タスクアンビエント空調がある。個人と空間全体を効率的に空調するため、在・不在と温冷感を画像AIで解析する制御を組み込んでいる。冷暖房には熱回収効率が高いオープンループ方式で採熱した地中熱を活用している。

こうした高いデザイン性と環境性が評価され、第1回SDGs建築賞国土交通大臣賞と22年度のグッドデザイン賞を受賞した。既存の取引先を中心に、見学の問い合わせが多数寄せられている。戸田建設は、顧客に提供する施設への技術展開を通じて、脱炭素社会の実現に貢献していく方針だ。

【特集2】製造効率の向上と脱炭素化 「上げDR」で一挙両得

【東京製鐵】

太陽光発電が普及する中で発生してしまう余剰電力を、有効に活用する試みが進められている。それは、特定の時間帯に電力需要を引き上げる「上げDR(デマンドレスポンス)」だ。

東京製鐵の九州工場で取り組む上げDRは、電力単価が高いとされている昼間にあえて工場を稼働し、電力需要を創出するというものだ。この取り組みが始まったのは、2017年のこと。九州電力管内では冷暖房の需要が少ない春と秋を中心に、太陽光を出力制御せざるを得ない状況が続いていた。そこで九州電力から東京製鐵に対し、昼間の余剰電力を割安な夜間と同等の価格で使用しないか、という提案があった。上げDRの対象日は火・水・金曜の週三日で、実施した場合、約5万3000kWの電力需要を創出する。

再エネと電炉は好相性 蓄電池代わりの上げDR

鉄鋼製品の製造法は主に2種類ある。鉄鉱石や石炭などを原料とする高炉法と、鉄スクラップを溶かす電炉法だ。東京製鐵が上げDRに応じられた大きな理由として、電炉法の採用がある。電炉には投入電力の上げ下げや、1分程度であれば投入電力をゼロにできるといった操業の柔軟性があるからだ。

国内の鉄の蓄積量は約14億tと言われている

電炉で鉄スクラップを溶かした後は、連続鋳造機で固めて半製品にする「製鋼」と、半製品に圧力をかけて加工する「圧延」を行う。一般的な一週間単位の操業パターンでは、製鋼は電力単価が安価な平日夜間と土日終日、圧延は金曜の夜から火曜の夜までに行われる。上げDR実施時の操業パターンでは、平日の昼間と夜間の電気料金が切り替わる午前10時と午後10時に製鋼の操業を停止。上げDRの要請があり、かつ圧延の操業がある火曜の昼間にまとめて稼働することで、製造工程の脱炭素化とコスト削減を実現した。

さらに、生産効率も改善したという。製鋼と圧延を同時に操業する時間の比率をシンクロ率といい、製鋼後の半製品を熱いまま圧延工程に受け渡す比率をホット率という。この二つがそれぞれ10%ほど向上した。製鋼と圧延の間が空くと、半製品が冷めてしまうため、再加熱しなければならない。上げDR実施すると、製鋼後の熱いままで圧延工程に移ることができ、再加熱が不要となる。これにより、加熱炉で使用する都市ガスの削減につながっている。

「高炉と比べてCO2排出量が少ない電炉と再生可能エネルギーを組み合わせ、蓄電池代わりに使ってもらう。われわれの柔軟な調整力を生かして、余剰な再エネを貯めるのではなく、使い切る形で協力していきたい」。中上正博九州工場長は展望をこう語る。

東京製鐵は現在、九州以外のエリアでも実証を進めているという。同社の上げDRの展開に期待が高まる。

【特集2】再開発で高効率のエネルギー供給 寒冷地ならではの取り組みも

【北海道ガス】

北海道ガスは経営計画「Challenge 2030」を掲げ、省エネを基盤として、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを展開している。「46エネルギーセンター」(札幌市)による再開発エリアへのエネルギー供給も、その一つだ。

同センターは、北海道ガスの都市ガス製造工場跡地を活用する「北4東6周辺地区第一種市街地再開発事業」の一貫として設置された。再開発エリアは三つの地区で構成され、札幌市の中央体育館であり指定避難所でもある「北ガスアリーナ札幌46」、全2棟・275戸のマンション、202戸のシニア向けマンション、フィットネスクラブがある。これらの施設への効率的なエネルギー供給が評価され、「コージェネ大賞2022」民生部門の最高位である理事長賞を受賞した。

4種のエネルギーを供給 地域全体でのエネマネ

再開発には①積雪寒冷地での省エネ、②都心地区の低炭素化、③地区全体の強じん化(レジリエンス強化)―の三つの課題があった。これらを解決するため、46エネルギーセンターは設置された。

供給するエネルギーは電力、温水、冷水、融雪温水の4種類で、主な設備はコージェネや地中熱ヒートポンプだ。電力は系統電力とセンター内で発電し、エリア内全ての施設に供給。温水と冷水はそれぞれ80℃と7℃ほどで、暖房・給湯と冷房に使用される。

寒冷地特有のエネルギーとして、融雪温水も供給する。40℃ほどの低温の排温水の活用で、ロードヒーティング専用のボイラーや電熱線が不要となる。また、太陽光の利用方法にも特色がある。太陽光発電ではなく、太陽光集熱器により熱として回収。太陽光の電力への変換効率は20%ほどだが、熱としては約50%で回収でき、通年ある温水需要に対応可能だ。

街区のエネルギー使用・発生の状況やCO2削減量を一元化

コージェネの活用により、災害時に外部からの電力供給が途絶えても、エネルギー供給が可能だ。複雑な制御のため、CEMS(コミュニティーエネルギーマネジメントシステム)を北海道で初導入。地域全体の需要を予測し、機能的で効率的な省エネを実現した。加えて、省人化や住民へのDR(デマンドレスポンス)要請などにも役立っているという。 エネルギーシステムグループの奥山憲司副課長は「多くの事例の中から理事長賞を受賞できたのは、寒冷地という地域条件や小規模な取り組みゆえに他地域への展開が可能な点が評価されたから。脱炭素には需要と供給双方の省エネが第一歩。道内はもちろん、他のエリアへの展開にも貢献していきたい」と意気込みを見せた。

【特集2】コージェネ利用で災害対策と省エネ 工場の操業に合わせて稼働を制御

【広島ガス】

広島ガスは企業のカーボンニュートラル(CN)に向けた取り組みや省エネ、災害発生時のBCP(事業継続計画)対策の切り札としてコージェネレーションを中心に据えたエネルギーサービスの提供に注力している。2050年CN達成に向け、転換期においては低炭素化が不可欠だ。そこで同社では設備更新による省エネと合わせて天然ガスとLPガスの導入を顧客に促していく。

また、広島県は18年の西日本豪雨で大きな被害を受けた。その教訓から、県全体でBCP対策への意識が高まっており、対策として災害に強いガスインフラの利用を提案している。

そうした提案が奏功し、エネルギーサービスを展開した案件がある。同県を中心とするスーパーチェーン「フレスタ」への停電対応型コージェネの導入事例だ。フレスタは、これまで県内に点在していた惣菜や精肉加工の工場と本社機能を集約した拠点を新設。これに合わせて、停電対応型コージェネをエネルギーサービス方式で導入した。

フレスタが導入した停電対応型コージェネ

コージェネは平時に工場や本社の空調などに使用する電気の3分の1を供給。災害発生時は事務所の照明や通信機器に給電し本社機能を維持するようにした。

2グループに分けて運用 電力と熱の負荷に応じて運転

一方で、フレスタは広島市と災害時の物資協定を締結。加えて、工場新設時には災害時の協定を締結し「浸水時緊急退避施設」に認定された。これにより、新工場の4階以上の共用部分に2000人の地域住民を受け入れられるようにした。この避難エリアでもコージェネから給電し、照明やスマートフォンへの充電などに利用できるようにしている。

省エネに関しては、コージェネからの排熱利用とデマンド抑制を効果的に実施するため、6台設置した停電対応型コージェネ(35 kW)の制御を3台×2グループに分けて管理を行っている。一つのグループは工場の熱需要に合わせてベースロードで、もう一方は工場の電力や熱の需要が高い時間帯に運転する。二つに分けたことで、電力と熱の負荷に応じた運転が可能となり、省エネ・省CO2に寄与する。排熱については5台分を貯湯槽用、1台分をボイラーで利用している。

「工場は24時間操業で、深夜もエネルギー需要があるため、ベースロード運転は必須だ。並行して、省エネのため季節変動を考慮する必要がある。夏場は空調を利用するため、フル稼働だが、春や秋は運転を制御することで、省エネ効果を上げている」。産業用エネルギー営業部開発グループの森本瑛梨子主任は効率的な運用について説明する。

同社ではフレスタと同様に、食品工場を中心に省エネやBCPなどをアピールしコージェネを中心としたエネルギーサービスの普及に努めていく。

【特集2まとめ】省エネビジネスの活況 最先端の取り組みを一挙紹介

2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みや
BCP対策への対応に頭を悩ます企業が急速に増えてきた。
そうした中で活況を呈しているのが省エネビジネスだ。
「乾いた雑巾」とも言われている省エネ対策だが、
熱分野や建物分野をはじめ、改善の余地はまだまだ残る。
省エネを巡る最先端の取り組みを紹介する。

【アウトライン】省エネ強化へ制度整備が進展 短中期の脱炭素対策の柱に

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【トピックス】半導体工場の標準ガス検知器 機能集約を図り使用部材を低減

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【トピックス】家庭のガス消費量削減に効果発揮 床暖房省エネリモコンを発売

【特集1まとめ】広域送電網の期待と死角 「マスタープラン」を徹底検証

日本国内に新たな広域送電網を整備する青写真が示された。
電力広域的運営推進機関がまとめた広域連系系統のマスタープランだ。
総額7兆円規模の資金を投じ、洋上風力など再エネ電気の融通を強化する。
とりわけ主軸の海底直流送電では、事業化への期待が高まっている。
一方で事業主体や費用回収スキームをどうするかなど、課題も山積みだ。
関係者の話からは、事業の実現可能性を巡る死角が浮き彫りに。
果たして、広域送電網の整備は日本の国益につながるのか。
構想の先にはカーボンニュートラル社会実現への難題が横たわる。

【アウトライン】脱炭素と電力安定供給の両立へ 50年に向けた広域送電網の絵姿

【レポート】新技術実現と事業環境整備が不可欠 実効性高めるポイントを解説

【インタビュー】50年の広域連系のあるべき姿を提示 具体化には継続的な検証が重要

【座談会】避けて通れない国民負担の話 GXに必要な全体最適の視座

【インタビュー】海底調査後に具体的検討へ デジタルとの一体整備が重要に