【特集2】豪雪地帯への太陽光導入 蓄電池併用し光熱費を大幅減

【デルタ電子】

豪雪地帯への太陽光発電導入は設置が難しくなかなか進んでいない状況だ。デルタ電子は独自の設置方法を開発。長野県野沢温泉村の店舗に太陽光と蓄電池を導入した。

長野県野沢温泉村は冬季の積雪が4mにおよぶ豪雪地帯だ。パウダースノーが楽しめる屈指のスキー場として世界的にも有名で、毎年多くのスキーヤーが訪れる。しかし近年は、「年々気温が上昇し、数十年前に6カ月あったスキーシーズンが徐々に短くなっている。名物の雪質にも影響が出始めている。観光が主産業の村には大きな打撃だ」。そう語るのは元プロスキーヤーで、現在は同村議員を務める上野雄大氏だ。

上野氏が運営する店舗と太陽光パネル


そんな状況に対して、上野氏は温暖化緩和に個人で少しでも貢献し、さらに太陽光発電などの再生可能エネルギーで村を活性化できないかと考えた。そこで昨年9月、デルタ電子に依頼して自らが運営するスキー用品などを扱う店舗に、太陽光発電と蓄電池を導入した。
豪雪地帯に太陽光パネルを設置するには工夫が必要となる。屋根に設置すると積雪の重みに耐えられないため、日光が当たる壁面に設置することになる。デルタ電子では金具メーカーのスワロー工業と共同で壁面設置用の架台を開発し実現した。壁面は屋根より設置するパネルが限られるが、悪いことばかりではない。雪が残る地面からの反射光がパネルに当たり発電出力を稼ぐことができるのだ。
デルタ電子エナジーインフラ営業本部の高嶋健マネージャーは「設置設備の定格出力は3・4kWだが、12月に降雪した地面からの反射光で1・2倍の4kWに達した。長年太陽光発電を手掛けているが、ここまでの高い出力は見たことがない」と驚いている。

小売り事業者を切り替え 電気料金を約3分の1に


蓄電池の活用においては、電力プランを中部電力ミライズのスマートライフプランに切り替えた。同プランは平日昼間が1kW時当たり38・71円、深夜が同16・3円。格安な深夜帯の電気を蓄電池にフル充電して、太陽光だけでは不足する午前中と夕方の電力消費を補う。これにより、使用電力の90%以上を太陽光と深夜電力で賄い、電気料金を設備導入前から約3分の1に削減した。
「再エネにより年間通して光熱費を削減できそうだ。メリットが確認できたら、村内での普及を目指したい」。上野氏はそう将来を展望する。
日本の国土面積のうち豪雪地帯が占める割合は51%、居住する人口も15%と占める割合は意外と大きい。再エネ未開の地をどのように開拓していくか―。今回の取り組みはその一歩になっていくに違いない。

【特集2】圧倒的な省エネ性能の給湯器 ZEH住宅への採用進む

【リンナイ】

電気とガスの両方を使うハイブリッド給湯器「ECO ONE」が好調だ。エネルギー価格の高騰やカーボンニュートラルなども追い風となっている。

エネルギー価格の高騰が家計に打撃を与えるといったニュースが毎日のように飛び交っている。そんな中、リンナイの家庭用給湯・暖房システム「ECO ONE」が省エネ性能によって注目を集めている。同製品は給湯に電気とガスの二つを利用し、単一のエネルギーに依存しないのが大きな特長だ。

「ECO ONE X5」集合住宅専用モデル


2011年の東日本大震災が発生する以前は、原子力発電が多く稼働し、深夜電力が有効活用できるエコキュートが急速に普及した。震災後はBCPの観点からエネルギー源を複数確保するため、ガスの利用が見直された。その後、電力とガスの小売り全面自由化や、国の50年脱炭素宣言など、エネルギーを巡る動向は日々刻々と変化している。「そうした制度面や社会の変化によって、省エネ強化の流れが加速した。住宅メーカーは脱炭素化への意識が高く、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準の家づくりを推進している。ZEHの省エネ基準は数値化されており、省エネに寄与するならば設備採用を検討する。これがECO ONE販売の追い風となっている」。営業本部ハイブリッド営業室の柴田毅課長はこう話す。
最新機種「ECO ONE X5」では、貯湯タンクを70ℓと小型化したモデルをラインアップに加えた。都市部の住宅は貯湯タンクを設置するスペースが確保されておらず、これに対応するためだ。単にタンクを小型化すると省エネ効率は下がる。そこで新制御「ターボヒーティング」を採用した。風呂の湯はりなど、使用量が多い時間帯にヒートポンプの沸き上げ能力を通常の2.3kWから3.9kWに上昇させて運転。これにより、少ないタンク容量でも既存のECO ONEの100ℓタイプと同等の省エネ性能を実現した。エネルギー消費量は、従来のガス給湯暖房器より約39%削減している。
さらに、集合住宅専用モデルの販売を9月から開始する。集合住宅特有の設置環境に対応した省スペース設計で、メンテナンス性にも配慮したものとなる。これにより、マンションのZEHの標準化にも寄与していく構えだ。

電気とガスの利点生かし 負荷平準化・安定供給に貢献

同社では、ECO ONEの電気とガスの両方を利用する特長が、電力需要の平準化に利用できるのではないかと考えている。多くの原発が停止する中、エコキュートの販売台数は800万台を突破し深夜電力の使用量は増えている。一方、昼間は再エネの導入拡大が進み晴天時の供給量は増加傾向だ。「ECO ONEは電力供給量が過多のときは、ヒートポンプでお湯を沸き上げ、ひっ迫時はガスを利用することが可能で、時間とエネルギーの両方をシフトできる。この機能を活用し電力の平準化、安定供給に活用できるのではないか」と、柴田課長は話す。
ECO ONEのDR(デマンドレスポンス)活用――。そのためには一定の台数の普及が必要となる。同社では30年までに30万台の販売を目標に掲げる。この台数達成時にはDR活用が本格化しているだろう。

【特集2】初期費用ゼロの太陽光発電 定額料金サービスで導入加速

【東京ガス】

2030年までにGHG(温室効果ガス)の排出量を20年比で半減させる〝カーボンハーフ〟を推進し、脱炭素化に取り組む東京都。25年4月から大手住宅メーカーが都内に新築する一戸建て住宅には、太陽光発電システムの設置が義務付けられている。

「この義務化の影響で、提供するサービスの引き合いが増えている」と話すのは、エネルギーサービス事業推進グループの小田明翔主任だ。

東京ガスは22年4月、新築住宅向けに「ずっともソーラー フラットプラン」(フラットプラン)のサービスを開始した。19年から提供してきた「ずっともソーラー」をブラッシュアップし、新築一戸建て住宅の太陽光発電導入に貢献。設備材料費などを東京ガスが負担し、顧客は月々の定額料金で太陽光発電を利用する。

フラットプランの主な特徴は、①初期費用ゼロで太陽光発電を導入、②割安な定額料金で自家消費を使い放題、③サービス期間終了後は全ての太陽光を自由に利用できる―の三つだ。

初期費用をゼロにすることで、顧客は建築費を抑えられる。電力会社への余剰電力の売電債権(売電収入)は顧客から東京ガスに譲渡する仕組みで、東京ガスはあらかじめ費用の総額から想定する売電分を差し引く。顧客は残りの費用を10年の契約年数で計算した月々の定額料金として支払う。

一般的なリース契約と比較すると、あらかじめ想定する売電分を差し引いている分、毎月の支出が減るため、導入のハードルが下がる。さらに面倒な書類審査が不要。利用可能なクレジットカードを保有していれば導入できる。住宅ローンに影響することなく、顧客は住まいのアップグレードに予算を充てられるのだ。

一例として、フラットプランの10年契約で初期費用ゼロの場合、月々の定額料金は6500円。初期費用として工事費を負担すれば、月々の料金を半額近くに減らすことも可能だ。

ずっともソーラー フラットプランの仕組み

調達・施工は東京ガス 十数社との提携進む

21年ごろまでは、太陽光発電を導入する住宅メーカーは大手が中心で、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及が目的だった。昨今は都の太陽光設置の義務化や電気代高騰で、顧客からの問い合わせが増加している。フラットプランでは、これまで太陽光設備を取り扱ってこなかった住宅メーカーに対し、設備の調達から施工まで全て東京ガスが請け負うことも可能だ。都の住宅事情に合わせ、2kW台の低用量帯から対応する。

首都圏で狭小な住宅を得意とするメーカー、オープンハウス・ディベロップメントでは、フラットプランをいち早く採用している。割安な定額料金で導入できるというシンプルなプランも相まって、顧客からも好評とのこと。

「わかりやすいサービスなので住宅メーカーにも顧客にもプラスに働いている」と同グループの中野亮課長は胸を張り、こう続ける。「分譲系やオール電化の住宅メーカーなど数十社と提携が進み、19年の『ずっともソーラー』スタートからわずか3年でターゲットが広がった」

さらに東京ガスは、電気代の高騰で自家消費として太陽光発電のニーズが高まっていることに注目。22年11月からオプションの提供を始めた。

セットプランも用意 全国の一戸建住宅に拡大

太陽光をより有効利用できるよう、蓄電池のセットプランを用意。一例として、5kW時の蓄電池を初期費用ゼロ、月々1万3000円の定額料金で追加できる。また、太陽光発電と親和性の高いハイブリッド給湯器やエコキュートを組み合わせるセットプランも用意した。東京ガスの電気で、これらのオプション設備を利用する場合は系統からの電気料金を3%、利用しない場合は2%割引きする。

サービスの導入で光熱費削減効果も見込める

フラットプランは全国で導入可能だ。小田主任は「脱炭素社会に貢献することが私たちの使命。その促進に向け、各地の住宅メーカーが抱える課題を解決し、顧客のニーズに応えることで、より選んでもらえる仕組みやサービスを拡充していきたい」と展望を語る。今後は既築住宅への展開も視野に入れていく。

ニーズに応えたいと話す中野課長(左)と小田主任

【特集2】楽しく続けられる節電を提供 顧客データとAIで営業一新

【西部ガス】

西部ガスは2022年12月から、同社の電気を利用する顧客を対象に国の節電プログラムを活用した節電キャンペーンを実施している。「節電は多くのお客さまの協力が不可欠。キャンペーンの参加ハードルが低く利便性が高いこと、節電に取り組む意欲を保てることが大事」と、西部ガスホールディングス・デジタル戦略部の友池真祐子さんは説明する。

西部ガスが展開する節電キャンペーンのツールは独自性が高い。大きな特徴は、LINEの活用だ。新たにアプリをダウンロードする必要がなく、LINE上で簡単に参加登録ができる。

節電に取り組んでほしい時間帯(節電タイム)を、前日夕方~当日にLINEメッセージで通知。節電タイムに節電を行うことで、節電量0・01‌kW時につき1節電ポイントが付与される。累計ポイントに応じてステージ特典を付与したり、節電した時間数でランキング付けを行ったりするなどゲーム性を高め、楽しく節電に取り組めるよう工夫している。

ツールは、福岡県内のIT系企業と協力し、一から開発した。いかにモチベーションを保ちながら節電に取り組めるかを重視し、理想のツールを2カ月で完成させた。LINEメッセージ機能を活用して、節電のコツや、お役立ち情報なども適宜配信している。

達成度合いもLINEで確認できる

紙媒体を活用したPRも行い、旅行ガイドブックのるるぶとコラボ。節電に関する情報やキャンペーンへの参加方法と併せて、節電タイムに気軽にお出かけできる各地のスポットを掲載した冊子を作成した。こうした取り組みの結果、1月初旬時点で、西部ガス電気の利用者の約15%がキャンペーンに参加している。

今後、ツールの効果検証を行い、将来的には外販を目指す。リーズナブルな価格で全国の新電力事業者などに提供し、社会問題の解決に貢献したいとしている。

営業部門主体のDX 潜在ニーズを掘り起こす

また、営業部門が主体となって、デジタルマーケティングにも取り組んでいる。対面営業や経験に基づく従来の営業方法を一新し、デジタル技術を活用した潜在ニーズの掘り起こしを狙っている。社内のさまざまなシステムに分散しているデータベースを集約し、AIを使って、訴求効果のある顧客を抽出する実証試験を行った。

新しいコンロを案内する顧客を、従来の方法とAIによる方法で抽出し、DMを送付。購入率を比較した結果、AIの方が従来の3倍高い結果となった。訴求チャネルにLINEやSMSを活用したファンヒーターの場合には、受注率は6倍になった。こうした手法をより効果的に展開するために、現在はCDP(顧客データプラットフォーム)の構築を進めている。

CDPを導入するほかのガス事業者と結果を共有しながら活用を拡大し、業界全体の活性化につなげたい考えだ。

西部ガス営業計画部の松元亮さんは「CDPの活用でお客さまの潜在的なニーズを効果的に掘り起こし、より最適なタイミングで商品やサービスを提供していきたい」と話している。

【特集2】VPPリソースとして期待 エネファームの最新動向

【日本ガス協会】

都市ガスやLPガスから取り出した水素を空気中の酸素と化学反応させて水を作り、この過程で発生する電気や熱を利用するエネファーム。販売台数は45万台を突破した。小型化し、設置性も向上している。

エネファームの特徴は発電効率とレジリエンス性だ。発電効率は40~55%だが、発電時の排熱でお湯をつくれるため、総合エネルギー効率は80~97%になる。火力発電の場合、家庭に電気を届けるまでの送電ロスを含めると、エネルギー効率は41%程度。エネファームは省エネにつながり、個人が取り組めるカーボンニュートラル(CN)になる。レジリエンス性については、万一停電が起こってもガスの供給があれば、エネファームが電気と熱を供給。水道も使えれば暖かいシャワーを浴びることができる。 

現在は、電力の安定供給のリソースとしても注目を浴びる。太陽光発電や蓄電池といった分散するエネルギーリソースの一つとして遠隔でコントロールする、VPP(仮想発電所)での活用が検討されている。将来的には、電力がひっ迫している際にはエネファームの発電量を増やし、余っている際には発電量を減らして系統からの電力を使うといった制御を行う。家庭でエネルギーを効率的に使えるだけでなく、需給バランスの調整で活用されるわけだ。

2022年度の補正予算でエネ庁からの補助金も決定した。日本ガス協会は「CNに貢献する機器。補助を最大限に活用し、普及につなげたい」としている。

集合住宅にも設置できるようになった

【特集2】地質調査をワンストップで提供 風車設計や認証取得に寄与

【基礎地盤コンサルタンツ】

今年創業70周年を迎える「基礎地盤コンサルタンツ」。長年にわたり培った技術と知見で、洋上風力発電の地質調査も手掛ける。

地質調査には、広域を探る探査や船を用いた調査、海底を掘るボーリングなどの手法がある。同社は各分野で技術力を有する企業とアライアンスを結び、地質調査をワンストップで提供。また、ノルウェー地盤工学研究所(NGI)とは互いのノウハウを交換し合う相互協力の関係。海底地質リスク評価会には海底で起こる地滑りやガス噴出などのリスク提言も行う。

3カ所全ての認証に貢献 日本特有のリスクを解明

洋上風力の開発は①デスクトップスタディー、②気象・海象調査、③第一次地盤調査(概略調査)、④風車基礎やレイアウトの検討、⑤基本設計、⑥第二次地盤調査(全数調査)、⑦EPC(設計・調達・建設)選定、⑧実施設計、⑨ウインドファーム認証委員会の承認、⑩拠点・基地港の整備、⑪建設工事、⑫メンテナンス―で進む。加えて環境影響評価も行う。

地質調査は主に③と⑥、⑨に関わる。③は風車の設計やレイアウトの検討材料となる。音波探査やボーリングなど、複数の手法を組み合わせ、地盤全体を把握する。レイアウトの決定後、風車が建つ地点を原則ジャストポイントで調査する。これが⑥だ。時間がかかるボーリングは代表的な地点のみ、ほかはセンサーを搭載したコーンを地盤に貫入させるCPT調査を行う。⑨の認証は地盤と設計の両方で受けるため、適切な調査データが必要となる。

洋上風力発電施設と海底ジオハザードの関係

同社は、現在認証を受けているプロジェクト3カ所全てに携わっている。3カ所とも港湾区域だが、今は沖合での開発が進んでいる。日本はアクティブマージンという、プレートがせめぎ合う場所にある。ゆえに、地盤が安定しているヨーロッパにはない問題が潜んでいる。

野村英雄営業本部長は「日本国内で安全に洋上風力を進めるには、こうした問題は避けて通れない。日本の洋上風力の発展に協力していきたい」と意気込みを語った。

【特集2】水深40m以上でも調査可能 着床式基礎に対応できる調査方法

【中央開発】

中央開発(東京都新宿区、田中誠社長)は、1946年の創立以来、77年にわたり「人と土と水」をテーマに、多くのインフラ整備に貢献してきた建設総合コンサルタントである。創業初期には、標準貫入試験(SPT)、ウェルポイント工法、シンウォールサンプラーを日本で初めて実用化するなど、地盤コンサルタントとしてパイオニア的存在である。また、同社は水深50mまでの大水深域に対応できるボーリング工法「傾動自在型試錐工法」を保有しており、東京湾アクアライン、下田港沖防波堤などに代表される大水深の海域における地盤調査の実績も数多く有している。

洋上風力発電プロジェクトでは、事業想定海域における地質構造や工学的性質を把握し、地盤・基礎に関するリスクを適切に評価し事業に反映していく必要がある。日本列島沿岸部の地盤は数万年前からの海面変動や浸食などにより形成されたと考えられており、現在の海底面から深さ100m程度までは複雑な層相を呈する場所も多く存在すると考えられる。このため、わが国における地盤調査にはボーリング調査は必須であり、特にコスト的に有利な着床式基礎の限界水深50~60m程度までに対応したボーリング調査が必要とされる。しかし、洋上地盤調査において一般的な鋼製やぐらの適用水深は最大でも35m程度であり、現時点において水深40mを超える海域では地盤調査の空白域となっていると言っても過言ではない。

同社が保有する傾動自在型試錐工法は、このような空白域に対応できる数少ないボーリング手法である。

傾動自在型試錐工法は水深約50mまで対応できる

掘直しのタイムロスを回避 効率的で安全な調査に貢献

また、鋼製やぐらに代表される一般的な海上足場を用いたボーリング調査では、荒天時に退避を余儀なくされ再度堀直しになるが、同工法では、足場ではなく独立式ガイドパイプを用いる構造的特徴から、堀直しによるタイムロスを避けることが可能という利点がある。洋上風力事業における傾動自在型試錐工法の実績は確実に増えてきており、この経験を生かしつつ改良を進め、より効率的かつ安全な海上地盤調査に対応していく予定である。さらに、同社は川崎地質と業務提携しており、両社の得意分野を生かして洋上風力発電プロジェクトの地盤調査に最適なソリューションを提供していく方針である。

【特集2】複数拠点間での再エネ融通を最適化 環境価値の調達コストも削減可能

【三菱電機】

三菱電機は、再エネ設備の導入で脱炭素化を図る企業をサポートする。将来的には、自拠点間にとどまらない環境価値融通の場の創出を目指す。

横浜にオフィスを構える三菱電機の電力システム製作所電力ICTセンターには、同社が誇る電力・情報・通信技術を担うエンジニアが集結。先進的なソリューション創出のための開発を行っている。

電力ICTセンターはこのほど「マルチリージョン型デジタル電力最適化技術」を開発した。工場など複数拠点間における再エネ由来電力の融通を最適化し、企業の脱炭素化目標の達成を支援する。今後、同社の電力市場向けソフトウェア製品「BLEnDer」シリーズとして展開中の「再エネ発電・需要の予測」や「電力計画の作成・提出」といった機能と組み合わせた検証を行う。2023年4月には、クラウドサービス型ソリューション「マルチリージョンEMS」として提供を開始する予定だ。

30分単位で環境価値を管理 脱炭素化目標の達成を支援

近年、脱炭素社会の実現に向けて、サプライチェーンにおける再エネ導入が進められている。実際に欧米では、カーボンフリー電気で製造した製品でないと購入されないケースもあるという。こうした流れの中で、再エネを導入する企業は増加傾向にある一方、設備の設置スペースや電力の安定的な確保といった課題を抱える企業も少なくない。

これらの課題に対し、マルチリージョンEMSは電力融通と蓄電池運用で脱炭素化目標を達成する計画を策定。再エネ・需要予測や環境価値証書の価格などから、再エネ電力の自拠点内での消費、蓄電池への充電、自己託送制度を利用した別拠点への融通などの組み合わせを最適化する。環境価値調達のコスト削減も可能となる。

同システムの環境価値の管理業務は主に①脱炭素目標の設定、②需給計画の作成、③目標達成計画の表示、④目標達成計画の監視、⑤30分値の可視化、⑥最終結果の確認とレポート出力――の六つのステップで構成される。特にポイントとなるのは、⑤30分値の可視化だ。一般的には、カーボンフリー化のための環境価値は年間で管理し、月間の電力消費量に見合った分を購入する。一方、同システムでは30分単位で環境価値を管理。再エネで発電した電気と環境価値でカーボンフリー化した電気を区別することができる。拠点ごとに求める再エネ由来電力の条件が異なる場合や、設備導入の戦略検討などにも有効だ。

電力デジタルエナジーシステム開発部の塚本幸辰部長は「クラウドサービスなので、国内外問わず利用できる。参加企業が増えると、自社の拠点間だけでなく企業間での環境価値のやりとりも可能になる。そうした場として提供することで、環境価値の管理が普及していく」と今後の展望を語る。企業の脱炭素化と環境価値市場の成熟に資する同システムの実装に期待が高まる。

【特集2】燃料高騰で再エネニーズ急拡大 新ビジネスで開発案件が増加

再生可能エネルギーの需要はこれまでにも増して高まっている。大規模開発には厳しい目が向けられつつも新たなビジネスモデルが続々登場している。

「2021年7月に静岡県熱海市で発生した土石流。以降、世の中の再生可能エネルギーに対する印象が大きく変わった」。開発事業者の幹部がそう語るように、この数年で太陽光や風力に良いイメージを持つ人の割合が大きく減った。代わりに、発電所を建設するための盛り土への懸念、山を切り開く自然破壊、風車が風を切る音の被害など、問題が一気に噴出してきた。制度面ではFIT(固定価格買い取り制度)からFIP(市場連動価格買い取り制度)に移行し市場に統合されることによって、投資インセンティブの確保が難しくなるなど、事業の採算性が厳しくなったともいわれている。

PPAモデルが活況 中小型太陽光の開発進む

そうしたマイナス要因がありつつも、再エネビジネスは50年の脱炭素化に向けて長期にわたり再エネ電気を求めるニーズがこの1年で顕在化しているほか、ウクライナ侵攻によってエネルギー価格が高騰している影響で、需要家側から見て、従来のエネルギーコストと比較しても見合うサービスが登場。導入を前向きに検討する動きが活発になってきている。
太陽光では、PPA(電力購入契約)による自家消費モデルの導入が増えてきた。工場など電力需要の多い企業では屋根を利用して自家消費するオンサイトPPAを採用する。コージェネや自家発電設備を所有する需要家には、再エネの出力変動を吸収しながら安定的に電力を供給するスキームをエネルギーサービス会社が扱う。
都市部など設置スペースがない需要家向けには、遠隔地の中小型太陽光を複数地点まとめて所有し、供給を受けるオフサイトPPAが活況だ。中小型太陽光は低圧から高圧の設備が主流で、系統接続の障壁もメガソーラーに比べると低い。短工期で建設できるため事業者の負担も軽く、需要家もすぐに手に入る。その手軽さが評判だ。

太陽光は中小型の開発が盛んだ


風力では洋上風力への期待が高い。一般海域に設置するための再エネ海域利用法が制定され、事業者の「占用公募制度」が創設された。国が一定の条件を満たした海域を洋上風力の「促進区域」に指定し、その区域であれば、事業者は最大30年間独占して事業ができる。23年度に実施する着床式洋上風力発電事業の入札「ラウンド2」では、秋田県沖など合計4カ所が対象となる。この動向に注目が集まっている。
開発に厳しい目が向けられつつも、再エネニーズはこれまで以上に高まってくるだろう。その要求に応えるように、新規ビジネスが今後さらに登場すると見られる。

【特集2】エネルギービジネスの主流に 系統用蓄電池の未来を占う

【系統用蓄電池編】再生可能エネルギーが普及する中、系統用蓄電池の発展は必然だろう。だが課題も多く、普及拡大にはまず価格の低下が必須になる。

系統用蓄電池が、エネルギービジネスのメインストリームの一つなりつつある。国が今後の「主力電源」と位置付ける再生可能エネルギーには、出力を一定状態に保てないという欠点がある。その欠点を補い再エネの持つ力をフルに活用するには、系統に接続し、必要に応じて充放電を行う蓄電池の存在が不可欠。今後、太陽光発電、風力発電などの普及に拍車が掛かる中、系統用蓄電池ビジネスが大きく進展していくのは必然といえるのだ。
系統用蓄電池に期待されるのは、まず調整力の役割だ。再エネ電源が増えれば、周波数の乱れなどが生じやすくなる。必要に応じて放電することで、周波数を整え系統を安定化させることができる。
限界費用がゼロに近い再エネの電気を使い切り、夏冬のピーク需要時の電力不足を補うためにも欠かせない。需要を超える発電量の時は、その電気を一時的にため、電気が足りない時に放電する。
では、どう具体的にマネーを生み出すのか。系統用蓄電池が参入し、価値を発揮できるのは次の市場だ。①日本卸電力取引所(JEPX)におけるkW時(電力量)、②容量市場におけるkW時(供給力)、③需給調整市場における⊿kW(調整力)―。
系統用蓄電池の市場には、既に大手電力だけでなく、住友商事、ENEOS、オリックス、NTTアノードエナジーなどが参入を表明している。これらの市場でどうビジネスを拡大させていくか、各社は知恵を絞っている。


北海道で申し込みが殺到 系統安定化に貢献せず


とはいえ、まだ課題も多い。今各社が最も力を入れているのは北海道エリアだ。調整力が足らず、需給調整市場で、再エネの出力変動を調整する「三次調整力②」に他エリアよりも高い値段がつくためだ。その弊害が露呈し問題化している。北海道電力ネットワークに対し、各社による系統用蓄電池の接続検討申し込みが殺到。2022年7月時点で61件・160万kWと、エリアの平均需要(約350万kW)の半分近くに達してしまったのである。
また、確実に系統につながり送電できるファーム型接続に申し込みが集中。「系統用蓄電池にはノンファーム型接続により混雑を解消することが期待されていたはず。系統混雑を増やしては本末転倒」(岩船由美子・東京大学特任教授)と批判を浴びている。
経済産業省の審議会はこれらの課題について検討中。いずれ解消されるだろう。だが、最大の課題が残っている。蓄電池が高価であることだ。
「系統用蓄電池の普及拡大を左右するのは、事業者の接続負担金を含めた導入コスト」。ある関係者はこう断言する。メーカー各社は価格を引き下げに努力を重ねているが、まだまだ値段は高い。蓄電池の特性を最大に生かすルール策定と価格の低下―。この二つが系統用蓄電池ビジネスの浮沈のカギを握っている。

【特集2】石狩湾新港で洋上風力 23年末の運開へ建設進む

【グリーンパワーインベストメント】

グリーンパワーインベストメント(GPI)は特別目的会社(SPC)の合同会社グリーンパワー石狩を通じて、石狩湾新港洋上風力発電事業の2023年12月の運開に向けて建設工事を進めている。出力8000kWの着床式風車を14基据え付け、合計で11万2000kW規模の風力発電所を立ち上げる計画だ。
同社が石狩湾新港での開発に着手したのは07年。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)が開始となる5年前のことだ。「風力発電に本格的に取り組み始めたのは、商社マンとして1994年からの米国駐在時代です。当時から日本のエネルギー自給率の低さを懸念しており、風力発電を建設すれば、純国産エネルギーが確保できると考えました。さらに、電源として価値を持つには大規模な風力発電所が必要になる。そうした時代がやってくると長年開発を続けてきました」。GPIの創業から携わる幸村展人副社長はそう振り返る。
大規模風力発電所を建設するに当たっては、日本の国土事情を考えると、洋上を活用すべきと当時から考えていた。そこで、当時法理的に使用権が確定し得る港湾に目を付け、国内の港湾をしらみつぶしに調査を実施。風況や電力インフラを構築する上での条件に加え、将来拡張できる可能性があるかどうかなどを検討した。そうした条件から、需要地である札幌市から近く、将来性のある地点として石狩湾新港に建設する照準を定めた。
だが、開発当初に関連行政機関などに洋上風力の話をしても、「洋上風力は港湾の目的外構造物」と言われるなど、建設を受け入れる体制もなかったとのことだ。
電源開発では、地元住民との対話が欠かせない。洋上風力の場合、漁業に携わる人々への説明も時間をかけて行う必要があるといわれている。これに対しては「当社がなぜ石狩湾新港沖で風力発電を手掛けたいのか、なぜ日本にとって風力発電が必要なのか、長い年月をかけて説明しました。必要性を訴えることで地元の方々にも理解していただくよう心掛けてきました」と幸村副社長は話す。
風力発電設備の工事は、陸上部を鹿島建設、洋上部を清水建設と日鉄エンジニアリングが手掛ける。8000kW級の洋上専用の大型風車の設置は国内初となり、このビッグチャレンジの建設作業にオールジャパン体制で挑む。

石狩湾新港洋上風力発電事業のイメージ図


大型蓄電池設備を併設 エネ循環の構築に活用


同発電所では、北海道の再エネ発電設備に対し、実質的に義務付けられていた蓄電池設備を併設する。約2haの敷地にリチウムイオン電池を収納するコンテナを42台設置した。これについては「将来を見越した上で、エネマネへの取り組みは避けて通れません。蓄電池活用のノウハウを蓄積して将来の開発や地産地消を含む再エネのエネルギー循環の構築に活用していきます」と幸村副社長。
GPIは風力発電を中心とした再エネがエネルギー資源の少ない日本にとって非常に重要であることと、自然エネルギーの活用がその地域に裨益することを広く訴えることで、今後も普及拡大を目指していく。

【特集2】大規模案件を次々実現 オンサイトPPA事業を拡大

【テス・エンジニアリング】

テス・エンジニアリングは、事業の新たな柱として太陽光発電のオンサイトPPA(電力購入契約)事業に注力している。2022年2月のウクライナ侵攻によって、エネルギーを取り巻く状況は一変している。電気、ガス、石油などのエネルギー価格が総じて上昇し、製造業を中心に経営を圧迫する材料となっている。一方で、50年カーボンニュートラル達成に向けた取り組みも待ったなしで求められている。
そうした中にあって、「導入コストを最小限に抑えて再生可能エネルギーを導入できるPPAモデルは、事業採算性の合うスキームとして従来にも増して注目されています」と髙崎敏宏社長は現状を説明する。
同社では、エネルギーサービスや燃料転換などの事業でエネルギー多消費産業の顧客を多く抱えている。その強みを生かし、オンサイトPPAの導入を提案、工場の屋根などに太陽光を設置してエネルギーの自家消費を促している。
22年5月には、調味料や食品エキス製造を行うアリアケジャパンの九州第1工場(長崎県佐世保市)、第2工場(同北松浦郡)では、第1工場に667・5kW、第2工場に1421・8kWの太陽光発電を導入した。工場の屋根だけでなく、工場の駐車場にカーポートを新設し、その上に太陽光パネルを設置することで発電量を増やしている。

アリアケジャパンの九州工場


23年2月には、DMG森精機の最大拠点である伊賀事業所に1万3400kWが稼働を開始する。第1期工事で5400kW分が開始となり、25年2月に完了予定の第2期で約8000kWが発電開始となる。電力の全量を同事業所に供給することで、同事業所の年間電力需要量の約30%を賄う。また、CO2排出量は年間約5300tを削減できる見込みとのことだ。
PPAでは、工場への設置以外にも物流倉庫への設置も進めている。工場は電力を消費する需要があるが、物流倉庫の場合は屋根に設置した設備分の発電量を消費するほど需要がないケースもある。そこで、自社の小売り電気事業などで培ったノウハウを応用し、需給管理サービスとして自家消費だけでなく、余剰電力を他の倉庫へ供給したり、市場への売電や環境価値の有効活用などもサポートする。


本番はFIT終了後 100%再エネ電気供給

FIT認定の太陽光発電所については、現在も新規建設を進めるほか、セカンダリ案件の取得にも注力している。これらの発電所は20年のFIT期間終了後も活用していく方針だ。「再エネ事業が本番を迎えるのは、FIT期間が終了した後だと考えています。FITが切れた太陽光発電所の系統接続権を生かし、エンドユーザーに100%再エネの電気を供給していく方針です」。髙崎社長はそう意気込む。
今後もエネルギーコスト低減や脱炭素化といった顧客ニーズをキャッチアップしていく構えだ。

【特集2】蓄電事業で地域づくりに貢献 持続可能なビジネスを育成する

【住友商事】インタビュー
藤田康弘ゼロエミッション・ソリューション事業部 部長

2015年から蓄電池実証を実施してきた住友商事。容量市場や需給調整市場など複合的に取引を行い収益化を目指す。

―蓄電ビジネスにどのように取り組んでいますか。
藤田 当社は2010年から10年以上にわたって蓄電事業に携わってきました。20年には、営業組織としてゼロエミッション事業部(21年にゼロエミッション・ソリューション事業部に改称)を発足させ、日産自動車と合弁で立ち上げたEVバッテリーをリユースする事業を手掛ける「フォーアールエナジー」の主管業務に加え、20人体制で系統に接続する大型蓄電の事業化を目指して取り組んでいます。

住友商事が甑島に導入した蓄電システム


―なぜ系統用蓄電事業に着目したのでしょうか。
藤田 これまで、夢洲(大阪市)、甑島(鹿児島県薩摩川内市)などで蓄電システムの実証事業を重ねてきました。中でも15年に開始した甑島のプロジェクトは、送配電網に蓄電システムを直接接続し電力の安定化に寄与した国内初の取り組みです。22年5月の電気事業法改正により蓄電所も発電所の一つと位置付けられ、電力需給調整や系統の安定化に資する事業ができるようになりました。この甑島プロジェクトが法改正の大きなきっかけとなったことは間違いありません。アメリカやイギリスでも蓄電池で系統電力の品質を維持するアンシラリー事業が立ち上がっていたこともあり、当社の考えは決して間違いではないという確信を持っていました。


蓄電池が生かせる 最適化した市場が必要


―収益化の手段については。
藤田 容量市場や需給調整市場、JEPX(日本卸電力取引所)と、複合的に取引を行うことで収益を最大化しようとしています。とはいえ、現行の市場は必ずしも蓄電事業に最適化されたものではありません。将来は、蓄電池の特性を生かせるマーケットを作る必要があります。瞬動性と応動性において、蓄電池は火力発電に比べて圧倒的に優れています。系統運用者にとっても、指令に対して確実かつ瞬時に調整力を提供できる蓄電池を活用することで、効率的・安定的に系統を運用できるようになります。蓄電事業者、系統運用者の双方にとってウィンウィンの関係を作るためにも、政策的なかじ取りが重要です。
―課題はありますか。
藤田 蓄電システムを系統に接続しやすくするための環境整備、循環型の地域づくり、蓄電池産業を日本に呼び戻すなど、関連の政策を並行して進めなければ、社会実装が進まないといった結果に至ります。当社の蓄電システムはEV用のバッテリーを再利用しますが、それを再資源化しEVのバッテリー製造に生かす仕組みを作るなど、資源の循環に配慮をしながら持続可能な事業に育成していきます。

ふじた・やすひろ 1992年東京大学大学院卒、住友商事入社。
化学品のトレードや台湾駐在などを経て、
2007年より一貫して蓄電池に携わる。20年4月から現職。


【特集2】出荷前のバイオマス燃料を分析 品質保証で発電事業者の信頼得る

【岩谷産業】

岩谷産業はバイオマス燃料のPKSを輸入販売する。PKSを品質確認して出荷する仕組みが顧客から評価されている。

岩谷産業はバイオマス発電燃料として、パーム油を搾った後のアブラヤシ殻であるPKSを国内事業者向けに販売している。同社のPKS販売の特徴は、インドネシアなど原産国から受け入れたPKSを同社中央研究所(兵庫県尼崎市)で分析し、品質確認を行っている点だ。
PKSは発熱量や水分など発電に直接影響する品質の確保と、塩素やナトリウム、カリウム、硫黄など、発電設備を傷める恐れがある物質の含有量が少ないことが求められる。そこで同社の分析では、水分や灰分、揮発分、発熱量、元素分析など、JIS規格などに準じた10項目の分析を行い、確認を行っている。

輸入したPKSの品質を確認


「原産国と中央研究所のダブルチェックで検査を行い、PKSの品質を保証していることが付加価値となっています。これにより発電事業者から高い信頼を得ています」。小池国彦中央研究所長はそうアピールする。
PKSは発電所に野積みで保管されていることが多い。すると、PKSが堆積した下部では発酵が始まり、臭気を発することがある。これに対し、PKS発電事業者大手のイーレックスと協力して、周辺地区に臭いが漂うのを防ぐため、悪臭成分のイソ酪酸、n―酪酸、イソ吉草酸が水酸化カルシウムを主成分とするアルカリ剤を処理することで減少することを突き止めた。
さらに消石灰で処理できない臭気に香料やマスキング剤を添加して付臭する技術や、夏場に発生する虫を除去する殺虫剤など、PKS供給の高付加価値化に寄与する技術開発も進めている。


バイオマス向け25年がピーク 石炭からの切り替え目指す


再エネの固定価格買い取り制度(FIT)によってバイオマス市場は拡大してきた。岩谷産業も2015年にPKS販売を開始して以来、順調に出荷数量を伸ばしており、21年は年間31万tに上った。ただし、FIT認定を受けたバイオマス発電所の建設が25年にピークを迎える見込みで、それ以降は新規市場の開拓が必要となる。
そこで今後、ターゲットに位置付けているのが、石炭火力発電設備を抱える企業だ。低炭素化に向け、バイオマスへの切り替えを検討し始めているのだ。PKSの営業を担当する資源・新素材部では「石炭使用量減少の目標を立てる企業を中心に、この一年で引き合いが増えました。そうした企業にPKSの品質と安定供給体制を訴求していきたい」とアピールする。国内を中心に新たな用途向けでの事業拡大を目指す構えだ。

【特集2】中小型太陽光開発を拡大 系統用蓄電池も本格的に開始

【大阪ガス】

大阪ガスはグループ全体で2030年度までに自社開発や保有する設備と、他社からの調達を含めて、国内外で500万kWの再生可能エネルギー普及貢献を目指している。その中で、注力するのが中小型太陽光だ。高圧から低圧の中小型案件の開発を増やしており、揚鋼一郎再生可能エネルギー開発部長は「脱炭素化に向け、再エネ電気を長期にわたって調達する顧客ニーズがこの1年で急激に高まっています。メガソーラーの開発適地が減少する中、中小型太陽光を多拠点で開発し、顧客に複数地点の発電所由来の電気を供給するオフサイトPPA(電力購入契約)モデルが増えています」と話す。
中小型は大掛かりな造成工事が必要ない土地に建設するケースが多く、系統容量の確保も大規模案件と比べると比較的容易にできる。このため、建設工期が非常に短く、着工から1カ月程度で完成するという。また、同社では大規模電源で得た資金調達の知見を応用して、従来組成が難しいとされたオフサイトPPAによる中小型太陽光向けのプロジェクトファイナンスの組成にも取り組んでおり、効率的な資金調達と、迅速な開発という中小型太陽光ならではの事業展開を目指している。同事業では複数のデベロッパーと協業し、開発を進めている。「太陽光は他電源種に比べ圧倒的に開発が容易であり、分散・多拠点化によりまだまだ伸び代はある」と揚部長は期待する。


系統用蓄電池への取り組み 将来に向けてリユース目指す


同社は再エネの普及に伴い社会的に必要となる系統用蓄電池にも着手する。まずは1万kW規模の系統用蓄電池の開発を進める。将来的にはモビリティー由来のリユース蓄電池を活用すべく、劣化のバラツキがある電池制御技術を保有するNExT-e Solutionsと提携し、23年度から実証を開始する。
大ガスでは、これまでエネルギー事業で培ったノウハウを再エネや蓄電池の開発運用に応用し、さらなる成長を目指していく構えだ。

共同開発中の蓄電池イメージ