【特集2】水素燃焼試験サービスを開始 サプライチェーン構築も推進

【東邦ガス】

企業のカーボンニュートラル(CN)への取り組みが活発になってきた。特に製造業では工場のCN化を求められる可能性が高く、対応策を検討する企業が増えている。こうした中、エネルギー事業者にもCNに対応するサービスや製品の展開が求められるようになってきた。


24年に水素供給を開始 知多緑浜工場を一大拠点に


東邦ガスは昨年3月に中期経営計画を発表、この中でCNの推進を掲げた。具体的な施策として、水素をガス・電気と並ぶエネルギーの軸として位置付け、サプライチェーン構築に向けた需要創出と供給体制整備の両面から取り組みを展開し、早期に水素サプライヤーとしての地位を確立するとしている。

水素サプライチェーンのイメージ図


供給面では、同社の知多緑浜工場内に2024年までに日産1・7tの能力を有するプラントを建設し、水素供給を開始する。その後、同地域の水素需要の拡大に合わせてプラントの規模を同5t程度まで拡充していく計画だ。水素製造時に発生するCO2は、当面はクレジットの活用により相殺しつつ、分離回収・利用することも計画している。
さらに、水素の輸送・供給や消費の分野で知見・ノウハウを持つ企業とのアライアンスを進め、水素の普及拡大に向けた基盤を構築し、将来的には、知多緑浜工場を海外輸入水素の受入拠点とすることを目指す。
需要創出では、21年4月に自動車や機械などの金属部品製造の熱処理工程で利用される都市ガス用シングルエンドラジアントチューブバーナーの水素燃焼技術を開発した。
水素燃焼は都市ガスに比べて火炎温度が高いことから、NOX(窒素酸化物)排出量の増加やバーナー部品の劣化が課題となっている。同製品は水素燃焼時の排ガスを再循環させることで、都市ガス燃焼時と同等のNOX排出量と耐久性を実現した。
さらに、循環する機構とバーナー本体部と脱着交換できる仕様になっており、都市ガスから水素に移行する際に、バーナー一式を交換するよりも手間やコストを抑えることができる。部品コストは同社の標準的なバーナー本体部の10分の1程度で済むとのことだ。

既存設備を有効利用 特性に合わせた運用法探る


製品開発に加え、21年10月からは水素燃焼試験サービスを開始した。同社技術研究所に顧客が生産現場で使用するバーナーや炉を持ち込んでもらい、水素燃焼試験を行うものだ。
「CNに向けて顧客の関心は高まっているものの、水素試験を自前で行うには、供給施設を新設するなどコストがかかる。従来と異なる火炎のコントロール、安全面への配慮なども必要になるため、これまで水素を取り扱っていない事業者にとってはハードルが高い。そこで、このサービスを利用すれば大きな費用負担なく、水素燃焼試験を実施できる」。産業エネルギー営業部営業推進グループの柘植紀慶係長は同サービスの特長をこう説明する。
試験には燃焼に関するノウハウを持った技術員が立ち会い、使用する供給設備などは水素の特性を考慮した安全対策が実施してある。
試験はまず顧客が持ち込んだバーナーが水素燃焼への対応が可能か不可能か、不明の場合は確認する。そして、①燃焼安定性、②火炎長・火炎温度、③ノズル・ボディ温度、④燃焼前後の外観、⑤排気組成―などを計測・確認していく。

水素を燃焼したサーモグラフィー写真
都市ガスを燃焼したサーモグラフィー写真


水素は燃焼速度が速く、火炎温度が高いという特徴がある。都市ガスバーナーで燃焼温度が12
00℃の場合、水素では1400℃に相当し、NOX排出量が増えてしまう。また、温度が高い分、バーナーの部品が劣化しやすい。さらに燃焼速度が早いため逆火が発生する恐れもある。
サーモグラフィーの写真(図1)は試験時の火炎の様子だ。都市ガスと比較して水素の火炎は中央部が薄い赤色をしている。これは水素が高温で燃焼していることを示す。NOX対策では、空気比(燃焼用の空気の割合)や出力を調整することで最適化を図っていく。
水素の火炎は都市ガスのように目視で確認できない(図2)。都市ガスでは炎を見て燃焼状態の調整が可能だが、水素ではそれができないため、排ガスの酸素濃度などを確認しながら調整する必要があるなど、運用面でも違いが出てくるとのことだ。

水素の火炎。目視で確認できない
都市ガスの火炎


長谷川順一マネジャーは「製造業を中心に10社以上が同サービスを利用している。水素への関心が高い顧客は、製造現場での検証に着手している。新規の問い合わせも増えてきた。今後さらに増えていきそうだ」と、手応えを感じている。
同サービスによって得た結果から、企業は水素導入に向けた具体的なシナリオを描くことができる。こうしたCNに向けたサービスは、一段と関心が高まりそうだ。

産業エネルギー営業部の長谷川氏(左)、柘植氏

【特集2】自治体が推進する水素活用 グリーンP2Gに引き合い多数

【山梨県】

水素への取り組みは企業ばかりではなく、自治体主導で進めているものもある。山梨県のグリーン水素製造の取り組みには国内企業からの引き合いが相次いでいる。

山梨県と東京電力ホールディングス、東レの3者は昨年2月、共同開発を行ってきた再生可能エネルギー由来の水素を製造するパワーtoガス(P2G)システムを扱う事業会社「やまなしハイドロジェンカンパニー(YHC)」を設立した。同システムは再生可能エネルギーを用いて水素を製造することが可能。カーボンニュートラル(CN)を目指す企業を中心に導入の決定が相次いでいる。

米倉山電力貯蔵技術研究サイト


その動きに国も注目。岸田文雄首相、菅義偉元首相、西村康稔経済産業相など、この1年で新旧5人の閣僚が実証拠点である米倉山電力貯蔵技術研究サイト(甲府市)を訪れたという。同地を見学した岸田首相は「国産水素の大規模な供給拠点の整備は我が国にとって重要。政府としても後押しする」とコメントしている。

国内最大規模のP2G サントリー白州工場に導入


昨年9月には、山梨県とサントリーホールディングスがサントリー白州蒸留所と南アルプスの天然水白州工場の脱炭素化に向けて、大容量・モジュール連結式のP2Gシステムを導入する発表した。国内最大級となる1万6000kW規模のシステムを構築し、年間で2200tの水素を製造、これを燃料として利用することで、1万6000tのCO2削減を図るとのことだ。
「海外でも水素実証が進んでいる。2万kWクラスの水素製造設備を入れて実証を進めている拠点が5カ所程度ある。だが、水電解装置に使う膜が異なる。YHCが利用する東レが開発した固体高分子(PEM)型電解質装置の電解質膜は海外製より約2倍の水素を取り出せる。サントリーに導入するシステムの水素製造能力は世界最大になるだろう」。山梨県企業局電気課新エネルギーシステム推進室の宮崎和也室長はこう胸を張る。

P2Gシステムを導入するサントリー白州工場


海外展開も視野に入っている。スズキと新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の国際実証事業として、インドの工場へのP2Gシステム導入に向け、水素需要やコストなど調査し導入検討に入った。このほか、スコットランドでも導入に向け検討に入っている。

大規模な研究開発施設が稼働 米倉山を水素開発拠点に


今年4月には、P2Gの拠点である米倉山に建設した「次世代エネルギーシステム研究開発ビレッジ」が稼働を開始する。YHCのほか七つの企業や団体が入居し、水素・燃料電池の研究を行う。東京から技術研究組合のFC―Cubicも移転して研究を進める。P2Gシステムからパイプラインを引き、同施設に送りグリーン水素を用いてさまざまな研究が行われる予定だ。
水素利用の面でも注目を集めている。半導体装置のコンポーネント製造や食品加工の分野でもCN達成を見据え、導入検討が進んでいる。昨年3月には、自動車レース「スーパー耐久シリーズ」に参戦するトヨタ自動車の水素エンジンカローラの燃料として、YHCで製造したグリーン水素を提供した。「水素提供はエネルギー関係者以外から反響が大きく、YHCを知ってもらう良い機会になった」(宮崎氏)。

紹介した事例はこの1年にあった出来事で、話題を呼ぶ内容が目白押しだ。同社の快進撃がうかがえる。今後は、P2Gシステムの導入企業を増やしていくのと並行して、導入が決まったプロジェクトを着実に立ち上げて成果を上げていくことに注力していく方針だ。

自動車レースに参加し水素供給を行った

【特集2】大型車両への大流量充填 技術センター新設で開発加速

【トキコシステムソリューションズ】

国内での水素利用は、トヨタ自動車の燃料電池車(FCV)「MIRAI」をはじめとした乗用車がけん引役となって始まり、水素ステーションなど関連施設の整備も進められた。現在、そうした動きに加え、トラックやトレーラーなど大型車両分野の開発・普及に向けた目標が設定されつつある。水素ディスペンサーにおいても、大型車両に合わせた高圧・大流量品の開発が始まっている。


こうした次世代品の開発を加速させるため、トキコシステムソリューションズは昨年9月、水素先端技術センターを開設した。設備には従来比5・5倍の吐出能力を有する圧縮機、同2・4倍の蓄圧器、同5・5倍の模擬充填タンクなどを導入。これにより、従来比3倍以上の大流量充填が実現し、乗用車など小型FCVでは3分程度、大型トラックでは10分程度で済ませる時間短縮技術や、1台のディスペンサーで乗用車とトラックなど異なるサイズの2台の車両に同時に水素を供給する充填技術、圧縮機や蓄圧器などのステーション機器の効率的な運転制御技術などの開発を手掛けている。さらに、出荷前試験の能力も従来の1カ月当たり最大6台から同20台へ引き上げた。
開発テーマのうち、FCVへの2台同時充填は、蓄圧器にためた水素をFCVタンクとの差圧を利用する。従来設備のまま2台同時に充填すると、タンクの圧力が低いFCVの方に水素が流れていき、先に充填しているFCVは待たされてしまう。設計開発本部の榧根尚之担当本部長は「圧縮機、蓄圧器の台数を増やせば解決するが、コスト増を最小限に抑えることが求められる。その解を見つけていく」と話す。


福島県で実施のNEDO事業 大流量ディスペンサー開発

このほか、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「超高圧水素インフラ本格普及技術研究開発事業」にも参画する。昨年度、整備された「福島水素充填技術研究センター」(福島県浪江町)で、大型車両への大流量水素充填技術や計量技術の開発・実証を行っている。ここでも、大型車両への充填時間を短縮することを目指している。
「従来のトラックなどが軽油を給油するのにかかる時間と同等の所要時間がターゲットだ。大型車両向けでは、1台のディスペンサーから2本のノズルで同時充填する開発を進めている。これは従来のトラックが軽油を2本のノズルで給油しているのと同様の考えだ」(榧根氏)
大流量に向けては配管など周辺技術の開発も進める。エンジニアリングも手掛けるトキコならではの取り組みだ。FCVの普及には水素供給を支える設備側の取り組みも不可欠であり、同社から目が離せない。

【特集2】ポイント交換で顧客満足度を向上 ガス機器の購入機会の創出も

【広島ガス】

広島ガスは、ウェブ会員サービス「MY HIROSHIMA GAS(マイ広島ガス)」を展開している。毎月のガス使用量と料金の確認ができるほか、家庭用の需要家には「広ガスポイント」が貯まる。

広島県の特産品と交換 イベントへの抽選応募も

広ガスポイントのサービスは、ガスの使用料金や警報器のリース料金など税込み100円の支払いで1ポイントがたまる仕組みだ。このほか、アンケートへの回答や購入したガス機器の種類に応じてポイントを付与。また、中国電力の電気と広島ガスのガスをセットで契約すると、中国電力の「エネルギアポイント」と広ガスポイントが年間最大で各500ポイント付与される。

たまったポイントは、商品との交換や抽選企画への応募に使うことができる。ほかに、スーパーや飲食店など180を超える加盟店で利用できる「広ガスクーポン」、エネルギアポイントや「広島広域都市圏ポイント(としポ)」への交換も可能だ。

地産地消をテーマに、ポイント交換商品は広島県の特産品50点ほどをそろえている。抽選企画では、広島東洋カープやひろしま美術館などのチケット、ABCクッキングスタジオでの料理教室への参加券などが当たる。料理教室は同社のガスを契約しているスタジオで行われ、この企画をきっかけにスタジオを利用し始めた人もいるという。

マイ広島ガスは2016年10月、広ガスポイントは17年4月にスタートした。昨年末には、サービス開始以来初の交換商品の大きな入れ替えを実施。交換しやすいポイント数の商品を充実させるなど、会員の目線を意識したという。また、ガス機器を販売する「広島ガスWEBモール」の利用者にはマイ広島ガス会員が多いこともあり、会員限定のシークレットセールの開催や、メールでセールを通知し商品購入につなげるなど、新たなアプローチを模索中だ。

昨年末にトップページもリニューアル

「ガス機器の買い替えスパンは長い。ウェブ会員サービスは、その間の顧客満足度を保つ手段でもある。しかし現状、サービスの周知ができていないこともあるので、ガス機器の販売施策とウェブ会員サービス全体の親和性を高めると同時に、お客さまとの接点機会での周知を徹底していきたい」と、エネルギー事業部販売推進部プロモーショングループの宮堂太朗マネジャーは意気込む。

広島ガスでは23年2月に、約3年振りとなる実会場でのイベントを開催。ガス機器の購入者はもちろん、来場者に対しマイ広島ガスや広ガスポイントサービスを広く案内していく。

【特集2】COセンサーで早期に発報 住宅火災の死者減少を目指す

新コスモス電機は一酸化炭素(CO)検知機能付火災警報器「PLUSCO(プラシオ)」を開発した。

COは毒性が強い気体だ。その上、無色無臭で、煙よりも先に発生することもあるという。人間の五感では気付かず、吸い込むと頭痛やめまいなどの症状を引き起こす。これにより避難が遅れ、死に至ることも少なくない。実際、CO中毒は火災の死因の約4割に上る。

火災による死者数の増加から、全ての住宅への警報器設置が義務化されたのは、2006年のことだ。同年、新コスモス電機は国内初となる電池式のCO検知機能付火災警報器を開発。「火災による犠牲者を一人でも減らしたい」という思いのもと、改良を経て誕生したのがプラシオだ。

COセンサー付火災警報器PLUSCO

プラシオは従来の煙センサーに加え、COセンサーも搭載し、火災の発生を早期に知らせる。COがない通常時は、煙濃度5~15%/mで火災警報を発報。100ppmのCOを検知した場合は、煙センサーの感度が約2倍に上昇し、煙濃度2.5~7.5%/mで警報を発する。この機能は住宅用防災警報器に関する基準に基づき、光電式住宅用防災警報器(CO反応式)として、総務大臣からの認証を受けている。

また、より多くの設置を目指して、現代の住宅に馴染むよう設計。警報器としては斬新なキューブ型を採用しつつ、シンプルなデザインとなっている。新コスモス電機は、プラシオの設置拡大により火災での死者数減少を目指していく。

【特集2】エネルギー危機への対応急ぐ欧州 変貌する家庭用市場の最新事情

欧州では昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、エネルギー情勢が激変している。これを受けて、家庭用市場も新たな動きが出てきた。国内でも参考となる事例を専門家が解説する。

2022年2月、ロシアによるウクライナへの侵攻で欧州のエネルギー情勢は激変しエネルギー危機をもたらした。ロシアへの制裁措置としての天然ガス調達削減は欧州全体にエネルギー価格高騰による経済的な影響を与えるだけでなく、エネルギー供給途絶に対する心理的不安も与えた。
その後、欧州委員会は同年5月に「省エネ」「エネルギー調達先の多様化」「再エネ移行の加速」の三つを主要施策とするREPowerEU計画を提案。27年に向けてロシア産ガスの依存をゼロにするとともに、50年までに温室効果ガス排出が実質ゼロとなる「クライメイト・ニュートラル」実現に向けコミットメントを強化している。
その結果、欧州のエネルギー市場においてはさまざまな動きが起きているが、今回家庭用市場にフォーカスし、新たな三つのトレンドと今後の日本市場への示唆について解説していく。

一つ目のトレンドは家庭用市場におけるヒートポンプ(HP)の普及拡大である。欧州の家庭用暖房システムはガスボイラーによる温水循環方式が一般的であり、温室効果ガス削減のためには、本領域における経済性の高い対策実施が重要となっている。従来ガスボイラーから温水循環型HPへの入れ替えは、初期投資およびランニングともにコスト上昇となり経済性が成立しなかった。しかしながら、天然ガス価格の高騰でランニングコスト差が相対的に減少したことにより、HP方式への転換による投資採算性が改善した。
その結果、21年の欧州におけるHPの販売台数は前年比30〜50%以上で急拡大している。今後のHP普及拡大に向けては初期投資コスト低減、工事施工作業者の育成、機器生産能力の確保など課題はあるが、REPowerEU計画においてロシアからのガス依存脱却に向けHPの普及は重要な施策と位置付けられているため、今後HPの普及はさらに拡大が予想される。
二つ目のトレンドはHEM(ホームエネルギーマネジメント)普及拡大だ。「クライメイト・ニュートラル」実現に向け家庭用市場においては、太陽光発電と蓄電池による自家消費比率の拡大、暖房・給湯領域の電化、EV充電設備の導入などが拡大しているが、これらの設備の導入に伴いHEMシステムの導入も拡大している。英国LCP Delta社の分析では、20年にはHEMシステムは欧州全体で年間22万件に導入されていたが、今後30年までに累計1000万件以上が導入されると予想している。
欧州でのHEMとは、家庭内でのエネルギーフロー全体のタイミング、使用量、組み合わせを自律的(自動的)に監視、制御、最適化する仕組みであり、快適性やCO2削減などの需要家の意向を最適化するだけでなく、外部からのエネルギー価格情報との連携により、需要家の経済メリット最大化を同時に実現するシステムである点が最大の特徴である。
また需要家の経済メリットでは、家庭内における自家消費の最大化、TOU(時間帯別料金)に基づく負荷シフトなどにより電力コストを最小化するだけでなく、電力システム(系統)側に需要家アセットを活用したDSF(デマンドサイドフレキシビリティ)を提供することで、TSO(送電管理・系統運用者)におけるアンシラリーサービス、小売り事業者やVPPにおけるインバランス抑制として活用し創出される金銭的価値の一部を需要家が共有することも含まれている点が重要なポイントだ。


欧州におけるHEMシステム全体像イメージ  出典:LCP Delta社資料より抜粋

ヒートポンプ需要拡大 HEMシステム導入進む

三つ目のトレンドは、需要家におけるリスク低減ニーズの拡大である。今回の欧州エネルギー危機の結果、欧州の家庭用需要家においては温室効果ガス排出量やコスト削減のニーズに加え、エネルギー価格高騰におけるリスク回避ニーズも拡大している。その結果、家庭用需要家の初期投資コストと運用コストの両方のリスクをサービス提供事業者が担保するEaaS(Energy as a Service)も新たに誕生している。例えば、オランダe-conic社などでは太陽光発電、HP、蓄電池、EV充電器などを初期投資不要で毎月定額で提供する家庭用向けのEaaSがスタートしている。これまで家庭用におけるEaaSの事例が少なかったが、今回のエネルギー危機で今後同様のモデルは拡大していくと予測されている。
欧州エネルギー危機による家庭用市場における新たな三つのトレンドについて紹介したが、国内市場においても同様なニーズが拡大すると想定される。
つまり家庭用エネルギー消費構造が太陽光発電や蓄電池、HP給湯機、EV充電の普及拡大に伴い電力消費比率が高くなる一方、今後も化石燃料の価格高騰リスクも継続すると想定されるため、欧州同様に家庭用需要家におけるエネルギーリスクへの不安は拡大すると想定される。
そのため、今後の国内家庭用市場でも欧州と同様に需要家宅内の快適性だけでなく、経済メリットを同時に最大化するHEMサービスや、初期投資コスト不要で太陽光発電や蓄電池、HP給湯機などを導入し月額定額で提供する家庭用EaaSビジネスのニーズは拡大すると予測される。
今後の市場環境の変化により、これ以外にもさまざまな新たなニーズが生まれるだろう。継続的な欧州市場の分析に基づく国内市場への事業検討は、今後さらに重要になっていくと見ている。

やまもと・ひでお 大手都市ガス会社を経て、2001年入社。エネルギー需要家に対するエネルギー・カーボンマネジメント構築支援や新規エネルギー事業立ち上げ支援などを担当。現在、英国企業と連携し、欧州の海外先進事例に基づき「デジタル」「フレキリビシティ」を活用した新規ビジネスモデル構築に関する支援に携わる。

【特集2】豪雪地帯への太陽光導入 蓄電池併用し光熱費を大幅減

【デルタ電子】

豪雪地帯への太陽光発電導入は設置が難しくなかなか進んでいない状況だ。デルタ電子は独自の設置方法を開発。長野県野沢温泉村の店舗に太陽光と蓄電池を導入した。

長野県野沢温泉村は冬季の積雪が4mにおよぶ豪雪地帯だ。パウダースノーが楽しめる屈指のスキー場として世界的にも有名で、毎年多くのスキーヤーが訪れる。しかし近年は、「年々気温が上昇し、数十年前に6カ月あったスキーシーズンが徐々に短くなっている。名物の雪質にも影響が出始めている。観光が主産業の村には大きな打撃だ」。そう語るのは元プロスキーヤーで、現在は同村議員を務める上野雄大氏だ。

上野氏が運営する店舗と太陽光パネル


そんな状況に対して、上野氏は温暖化緩和に個人で少しでも貢献し、さらに太陽光発電などの再生可能エネルギーで村を活性化できないかと考えた。そこで昨年9月、デルタ電子に依頼して自らが運営するスキー用品などを扱う店舗に、太陽光発電と蓄電池を導入した。
豪雪地帯に太陽光パネルを設置するには工夫が必要となる。屋根に設置すると積雪の重みに耐えられないため、日光が当たる壁面に設置することになる。デルタ電子では金具メーカーのスワロー工業と共同で壁面設置用の架台を開発し実現した。壁面は屋根より設置するパネルが限られるが、悪いことばかりではない。雪が残る地面からの反射光がパネルに当たり発電出力を稼ぐことができるのだ。
デルタ電子エナジーインフラ営業本部の高嶋健マネージャーは「設置設備の定格出力は3・4kWだが、12月に降雪した地面からの反射光で1・2倍の4kWに達した。長年太陽光発電を手掛けているが、ここまでの高い出力は見たことがない」と驚いている。

小売り事業者を切り替え 電気料金を約3分の1に


蓄電池の活用においては、電力プランを中部電力ミライズのスマートライフプランに切り替えた。同プランは平日昼間が1kW時当たり38・71円、深夜が同16・3円。格安な深夜帯の電気を蓄電池にフル充電して、太陽光だけでは不足する午前中と夕方の電力消費を補う。これにより、使用電力の90%以上を太陽光と深夜電力で賄い、電気料金を設備導入前から約3分の1に削減した。
「再エネにより年間通して光熱費を削減できそうだ。メリットが確認できたら、村内での普及を目指したい」。上野氏はそう将来を展望する。
日本の国土面積のうち豪雪地帯が占める割合は51%、居住する人口も15%と占める割合は意外と大きい。再エネ未開の地をどのように開拓していくか―。今回の取り組みはその一歩になっていくに違いない。

【特集2】圧倒的な省エネ性能の給湯器 ZEH住宅への採用進む

【リンナイ】

電気とガスの両方を使うハイブリッド給湯器「ECO ONE」が好調だ。エネルギー価格の高騰やカーボンニュートラルなども追い風となっている。

エネルギー価格の高騰が家計に打撃を与えるといったニュースが毎日のように飛び交っている。そんな中、リンナイの家庭用給湯・暖房システム「ECO ONE」が省エネ性能によって注目を集めている。同製品は給湯に電気とガスの二つを利用し、単一のエネルギーに依存しないのが大きな特長だ。

「ECO ONE X5」集合住宅専用モデル


2011年の東日本大震災が発生する以前は、原子力発電が多く稼働し、深夜電力が有効活用できるエコキュートが急速に普及した。震災後はBCPの観点からエネルギー源を複数確保するため、ガスの利用が見直された。その後、電力とガスの小売り全面自由化や、国の50年脱炭素宣言など、エネルギーを巡る動向は日々刻々と変化している。「そうした制度面や社会の変化によって、省エネ強化の流れが加速した。住宅メーカーは脱炭素化への意識が高く、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準の家づくりを推進している。ZEHの省エネ基準は数値化されており、省エネに寄与するならば設備採用を検討する。これがECO ONE販売の追い風となっている」。営業本部ハイブリッド営業室の柴田毅課長はこう話す。
最新機種「ECO ONE X5」では、貯湯タンクを70ℓと小型化したモデルをラインアップに加えた。都市部の住宅は貯湯タンクを設置するスペースが確保されておらず、これに対応するためだ。単にタンクを小型化すると省エネ効率は下がる。そこで新制御「ターボヒーティング」を採用した。風呂の湯はりなど、使用量が多い時間帯にヒートポンプの沸き上げ能力を通常の2.3kWから3.9kWに上昇させて運転。これにより、少ないタンク容量でも既存のECO ONEの100ℓタイプと同等の省エネ性能を実現した。エネルギー消費量は、従来のガス給湯暖房器より約39%削減している。
さらに、集合住宅専用モデルの販売を9月から開始する。集合住宅特有の設置環境に対応した省スペース設計で、メンテナンス性にも配慮したものとなる。これにより、マンションのZEHの標準化にも寄与していく構えだ。

電気とガスの利点生かし 負荷平準化・安定供給に貢献

同社では、ECO ONEの電気とガスの両方を利用する特長が、電力需要の平準化に利用できるのではないかと考えている。多くの原発が停止する中、エコキュートの販売台数は800万台を突破し深夜電力の使用量は増えている。一方、昼間は再エネの導入拡大が進み晴天時の供給量は増加傾向だ。「ECO ONEは電力供給量が過多のときは、ヒートポンプでお湯を沸き上げ、ひっ迫時はガスを利用することが可能で、時間とエネルギーの両方をシフトできる。この機能を活用し電力の平準化、安定供給に活用できるのではないか」と、柴田課長は話す。
ECO ONEのDR(デマンドレスポンス)活用――。そのためには一定の台数の普及が必要となる。同社では30年までに30万台の販売を目標に掲げる。この台数達成時にはDR活用が本格化しているだろう。

【特集2】楽しく続けられる節電を提供 顧客データとAIで営業一新

【西部ガス】

西部ガスは2022年12月から、同社の電気を利用する顧客を対象に国の節電プログラムを活用した節電キャンペーンを実施している。「節電は多くのお客さまの協力が不可欠。キャンペーンの参加ハードルが低く利便性が高いこと、節電に取り組む意欲を保てることが大事」と、西部ガスホールディングス・デジタル戦略部の友池真祐子さんは説明する。

西部ガスが展開する節電キャンペーンのツールは独自性が高い。大きな特徴は、LINEの活用だ。新たにアプリをダウンロードする必要がなく、LINE上で簡単に参加登録ができる。

節電に取り組んでほしい時間帯(節電タイム)を、前日夕方~当日にLINEメッセージで通知。節電タイムに節電を行うことで、節電量0・01‌kW時につき1節電ポイントが付与される。累計ポイントに応じてステージ特典を付与したり、節電した時間数でランキング付けを行ったりするなどゲーム性を高め、楽しく節電に取り組めるよう工夫している。

ツールは、福岡県内のIT系企業と協力し、一から開発した。いかにモチベーションを保ちながら節電に取り組めるかを重視し、理想のツールを2カ月で完成させた。LINEメッセージ機能を活用して、節電のコツや、お役立ち情報なども適宜配信している。

達成度合いもLINEで確認できる

紙媒体を活用したPRも行い、旅行ガイドブックのるるぶとコラボ。節電に関する情報やキャンペーンへの参加方法と併せて、節電タイムに気軽にお出かけできる各地のスポットを掲載した冊子を作成した。こうした取り組みの結果、1月初旬時点で、西部ガス電気の利用者の約15%がキャンペーンに参加している。

今後、ツールの効果検証を行い、将来的には外販を目指す。リーズナブルな価格で全国の新電力事業者などに提供し、社会問題の解決に貢献したいとしている。

営業部門主体のDX 潜在ニーズを掘り起こす

また、営業部門が主体となって、デジタルマーケティングにも取り組んでいる。対面営業や経験に基づく従来の営業方法を一新し、デジタル技術を活用した潜在ニーズの掘り起こしを狙っている。社内のさまざまなシステムに分散しているデータベースを集約し、AIを使って、訴求効果のある顧客を抽出する実証試験を行った。

新しいコンロを案内する顧客を、従来の方法とAIによる方法で抽出し、DMを送付。購入率を比較した結果、AIの方が従来の3倍高い結果となった。訴求チャネルにLINEやSMSを活用したファンヒーターの場合には、受注率は6倍になった。こうした手法をより効果的に展開するために、現在はCDP(顧客データプラットフォーム)の構築を進めている。

CDPを導入するほかのガス事業者と結果を共有しながら活用を拡大し、業界全体の活性化につなげたい考えだ。

西部ガス営業計画部の松元亮さんは「CDPの活用でお客さまの潜在的なニーズを効果的に掘り起こし、より最適なタイミングで商品やサービスを提供していきたい」と話している。

【特集2】VPPリソースとして期待 エネファームの最新動向

【日本ガス協会】

都市ガスやLPガスから取り出した水素を空気中の酸素と化学反応させて水を作り、この過程で発生する電気や熱を利用するエネファーム。販売台数は45万台を突破した。小型化し、設置性も向上している。

エネファームの特徴は発電効率とレジリエンス性だ。発電効率は40~55%だが、発電時の排熱でお湯をつくれるため、総合エネルギー効率は80~97%になる。火力発電の場合、家庭に電気を届けるまでの送電ロスを含めると、エネルギー効率は41%程度。エネファームは省エネにつながり、個人が取り組めるカーボンニュートラル(CN)になる。レジリエンス性については、万一停電が起こってもガスの供給があれば、エネファームが電気と熱を供給。水道も使えれば暖かいシャワーを浴びることができる。 

現在は、電力の安定供給のリソースとしても注目を浴びる。太陽光発電や蓄電池といった分散するエネルギーリソースの一つとして遠隔でコントロールする、VPP(仮想発電所)での活用が検討されている。将来的には、電力がひっ迫している際にはエネファームの発電量を増やし、余っている際には発電量を減らして系統からの電力を使うといった制御を行う。家庭でエネルギーを効率的に使えるだけでなく、需給バランスの調整で活用されるわけだ。

2022年度の補正予算でエネ庁からの補助金も決定した。日本ガス協会は「CNに貢献する機器。補助を最大限に活用し、普及につなげたい」としている。

集合住宅にも設置できるようになった

【特集2】初期費用ゼロの太陽光発電 定額料金サービスで導入加速

【東京ガス】

2030年までにGHG(温室効果ガス)の排出量を20年比で半減させる〝カーボンハーフ〟を推進し、脱炭素化に取り組む東京都。25年4月から大手住宅メーカーが都内に新築する一戸建て住宅には、太陽光発電システムの設置が義務付けられている。

「この義務化の影響で、提供するサービスの引き合いが増えている」と話すのは、エネルギーサービス事業推進グループの小田明翔主任だ。

東京ガスは22年4月、新築住宅向けに「ずっともソーラー フラットプラン」(フラットプラン)のサービスを開始した。19年から提供してきた「ずっともソーラー」をブラッシュアップし、新築一戸建て住宅の太陽光発電導入に貢献。設備材料費などを東京ガスが負担し、顧客は月々の定額料金で太陽光発電を利用する。

フラットプランの主な特徴は、①初期費用ゼロで太陽光発電を導入、②割安な定額料金で自家消費を使い放題、③サービス期間終了後は全ての太陽光を自由に利用できる―の三つだ。

初期費用をゼロにすることで、顧客は建築費を抑えられる。電力会社への余剰電力の売電債権(売電収入)は顧客から東京ガスに譲渡する仕組みで、東京ガスはあらかじめ費用の総額から想定する売電分を差し引く。顧客は残りの費用を10年の契約年数で計算した月々の定額料金として支払う。

一般的なリース契約と比較すると、あらかじめ想定する売電分を差し引いている分、毎月の支出が減るため、導入のハードルが下がる。さらに面倒な書類審査が不要。利用可能なクレジットカードを保有していれば導入できる。住宅ローンに影響することなく、顧客は住まいのアップグレードに予算を充てられるのだ。

一例として、フラットプランの10年契約で初期費用ゼロの場合、月々の定額料金は6500円。初期費用として工事費を負担すれば、月々の料金を半額近くに減らすことも可能だ。

ずっともソーラー フラットプランの仕組み

調達・施工は東京ガス 十数社との提携進む

21年ごろまでは、太陽光発電を導入する住宅メーカーは大手が中心で、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及が目的だった。昨今は都の太陽光設置の義務化や電気代高騰で、顧客からの問い合わせが増加している。フラットプランでは、これまで太陽光設備を取り扱ってこなかった住宅メーカーに対し、設備の調達から施工まで全て東京ガスが請け負うことも可能だ。都の住宅事情に合わせ、2kW台の低用量帯から対応する。

首都圏で狭小な住宅を得意とするメーカー、オープンハウス・ディベロップメントでは、フラットプランをいち早く採用している。割安な定額料金で導入できるというシンプルなプランも相まって、顧客からも好評とのこと。

「わかりやすいサービスなので住宅メーカーにも顧客にもプラスに働いている」と同グループの中野亮課長は胸を張り、こう続ける。「分譲系やオール電化の住宅メーカーなど数十社と提携が進み、19年の『ずっともソーラー』スタートからわずか3年でターゲットが広がった」

さらに東京ガスは、電気代の高騰で自家消費として太陽光発電のニーズが高まっていることに注目。22年11月からオプションの提供を始めた。

セットプランも用意 全国の一戸建住宅に拡大

太陽光をより有効利用できるよう、蓄電池のセットプランを用意。一例として、5kW時の蓄電池を初期費用ゼロ、月々1万3000円の定額料金で追加できる。また、太陽光発電と親和性の高いハイブリッド給湯器やエコキュートを組み合わせるセットプランも用意した。東京ガスの電気で、これらのオプション設備を利用する場合は系統からの電気料金を3%、利用しない場合は2%割引きする。

サービスの導入で光熱費削減効果も見込める

フラットプランは全国で導入可能だ。小田主任は「脱炭素社会に貢献することが私たちの使命。その促進に向け、各地の住宅メーカーが抱える課題を解決し、顧客のニーズに応えることで、より選んでもらえる仕組みやサービスを拡充していきたい」と展望を語る。今後は既築住宅への展開も視野に入れていく。

ニーズに応えたいと話す中野課長(左)と小田主任

【特集2】石狩湾新港で洋上風力 23年末の運開へ建設進む

【グリーンパワーインベストメント】

グリーンパワーインベストメント(GPI)は特別目的会社(SPC)の合同会社グリーンパワー石狩を通じて、石狩湾新港洋上風力発電事業の2023年12月の運開に向けて建設工事を進めている。出力8000kWの着床式風車を14基据え付け、合計で11万2000kW規模の風力発電所を立ち上げる計画だ。
同社が石狩湾新港での開発に着手したのは07年。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)が開始となる5年前のことだ。「風力発電に本格的に取り組み始めたのは、商社マンとして1994年からの米国駐在時代です。当時から日本のエネルギー自給率の低さを懸念しており、風力発電を建設すれば、純国産エネルギーが確保できると考えました。さらに、電源として価値を持つには大規模な風力発電所が必要になる。そうした時代がやってくると長年開発を続けてきました」。GPIの創業から携わる幸村展人副社長はそう振り返る。
大規模風力発電所を建設するに当たっては、日本の国土事情を考えると、洋上を活用すべきと当時から考えていた。そこで、当時法理的に使用権が確定し得る港湾に目を付け、国内の港湾をしらみつぶしに調査を実施。風況や電力インフラを構築する上での条件に加え、将来拡張できる可能性があるかどうかなどを検討した。そうした条件から、需要地である札幌市から近く、将来性のある地点として石狩湾新港に建設する照準を定めた。
だが、開発当初に関連行政機関などに洋上風力の話をしても、「洋上風力は港湾の目的外構造物」と言われるなど、建設を受け入れる体制もなかったとのことだ。
電源開発では、地元住民との対話が欠かせない。洋上風力の場合、漁業に携わる人々への説明も時間をかけて行う必要があるといわれている。これに対しては「当社がなぜ石狩湾新港沖で風力発電を手掛けたいのか、なぜ日本にとって風力発電が必要なのか、長い年月をかけて説明しました。必要性を訴えることで地元の方々にも理解していただくよう心掛けてきました」と幸村副社長は話す。
風力発電設備の工事は、陸上部を鹿島建設、洋上部を清水建設と日鉄エンジニアリングが手掛ける。8000kW級の洋上専用の大型風車の設置は国内初となり、このビッグチャレンジの建設作業にオールジャパン体制で挑む。

石狩湾新港洋上風力発電事業のイメージ図


大型蓄電池設備を併設 エネ循環の構築に活用


同発電所では、北海道の再エネ発電設備に対し、実質的に義務付けられていた蓄電池設備を併設する。約2haの敷地にリチウムイオン電池を収納するコンテナを42台設置した。これについては「将来を見越した上で、エネマネへの取り組みは避けて通れません。蓄電池活用のノウハウを蓄積して将来の開発や地産地消を含む再エネのエネルギー循環の構築に活用していきます」と幸村副社長。
GPIは風力発電を中心とした再エネがエネルギー資源の少ない日本にとって非常に重要であることと、自然エネルギーの活用がその地域に裨益することを広く訴えることで、今後も普及拡大を目指していく。

【特集2】中小型太陽光開発を拡大 系統用蓄電池も本格的に開始

【大阪ガス】

大阪ガスはグループ全体で2030年度までに自社開発や保有する設備と、他社からの調達を含めて、国内外で500万kWの再生可能エネルギー普及貢献を目指している。その中で、注力するのが中小型太陽光だ。高圧から低圧の中小型案件の開発を増やしており、揚鋼一郎再生可能エネルギー開発部長は「脱炭素化に向け、再エネ電気を長期にわたって調達する顧客ニーズがこの1年で急激に高まっています。メガソーラーの開発適地が減少する中、中小型太陽光を多拠点で開発し、顧客に複数地点の発電所由来の電気を供給するオフサイトPPA(電力購入契約)モデルが増えています」と話す。
中小型は大掛かりな造成工事が必要ない土地に建設するケースが多く、系統容量の確保も大規模案件と比べると比較的容易にできる。このため、建設工期が非常に短く、着工から1カ月程度で完成するという。また、同社では大規模電源で得た資金調達の知見を応用して、従来組成が難しいとされたオフサイトPPAによる中小型太陽光向けのプロジェクトファイナンスの組成にも取り組んでおり、効率的な資金調達と、迅速な開発という中小型太陽光ならではの事業展開を目指している。同事業では複数のデベロッパーと協業し、開発を進めている。「太陽光は他電源種に比べ圧倒的に開発が容易であり、分散・多拠点化によりまだまだ伸び代はある」と揚部長は期待する。


系統用蓄電池への取り組み 将来に向けてリユース目指す


同社は再エネの普及に伴い社会的に必要となる系統用蓄電池にも着手する。まずは1万kW規模の系統用蓄電池の開発を進める。将来的にはモビリティー由来のリユース蓄電池を活用すべく、劣化のバラツキがある電池制御技術を保有するNExT-e Solutionsと提携し、23年度から実証を開始する。
大ガスでは、これまでエネルギー事業で培ったノウハウを再エネや蓄電池の開発運用に応用し、さらなる成長を目指していく構えだ。

共同開発中の蓄電池イメージ

【特集2】出荷前のバイオマス燃料を分析 品質保証で発電事業者の信頼得る

【岩谷産業】

岩谷産業はバイオマス燃料のPKSを輸入販売する。PKSを品質確認して出荷する仕組みが顧客から評価されている。

岩谷産業はバイオマス発電燃料として、パーム油を搾った後のアブラヤシ殻であるPKSを国内事業者向けに販売している。同社のPKS販売の特徴は、インドネシアなど原産国から受け入れたPKSを同社中央研究所(兵庫県尼崎市)で分析し、品質確認を行っている点だ。
PKSは発熱量や水分など発電に直接影響する品質の確保と、塩素やナトリウム、カリウム、硫黄など、発電設備を傷める恐れがある物質の含有量が少ないことが求められる。そこで同社の分析では、水分や灰分、揮発分、発熱量、元素分析など、JIS規格などに準じた10項目の分析を行い、確認を行っている。

輸入したPKSの品質を確認


「原産国と中央研究所のダブルチェックで検査を行い、PKSの品質を保証していることが付加価値となっています。これにより発電事業者から高い信頼を得ています」。小池国彦中央研究所長はそうアピールする。
PKSは発電所に野積みで保管されていることが多い。すると、PKSが堆積した下部では発酵が始まり、臭気を発することがある。これに対し、PKS発電事業者大手のイーレックスと協力して、周辺地区に臭いが漂うのを防ぐため、悪臭成分のイソ酪酸、n―酪酸、イソ吉草酸が水酸化カルシウムを主成分とするアルカリ剤を処理することで減少することを突き止めた。
さらに消石灰で処理できない臭気に香料やマスキング剤を添加して付臭する技術や、夏場に発生する虫を除去する殺虫剤など、PKS供給の高付加価値化に寄与する技術開発も進めている。


バイオマス向け25年がピーク 石炭からの切り替え目指す


再エネの固定価格買い取り制度(FIT)によってバイオマス市場は拡大してきた。岩谷産業も2015年にPKS販売を開始して以来、順調に出荷数量を伸ばしており、21年は年間31万tに上った。ただし、FIT認定を受けたバイオマス発電所の建設が25年にピークを迎える見込みで、それ以降は新規市場の開拓が必要となる。
そこで今後、ターゲットに位置付けているのが、石炭火力発電設備を抱える企業だ。低炭素化に向け、バイオマスへの切り替えを検討し始めているのだ。PKSの営業を担当する資源・新素材部では「石炭使用量減少の目標を立てる企業を中心に、この一年で引き合いが増えました。そうした企業にPKSの品質と安定供給体制を訴求していきたい」とアピールする。国内を中心に新たな用途向けでの事業拡大を目指す構えだ。

【特集2】系統用蓄電池を大規模実証 費用共同負担で風力向け募集

【北海道電力ネットワーク】

北海道電力は再生可能エネルギーの導入拡大に向け蓄電池実証を実施。その成果から、蓄電池に関わる費用を共同負担する風力設備を募集した。

新設したレドックスフロー蓄電池設備

電力系統が小さい北海道において、風力・太陽光発電など再生可能エネルギーの連系量を増やすには、周波数変動(短周期・長周期)、需給調整での制約があり、解決する必要がある。
こうした中、北海道電力と住友電気工業は、基幹系統の南早来変電所(北海道安平町)にレドックスフロー電池設備(定格出力1.5万kW、設備容量6万kW時)を設置し、新たな調整力としての性能実証と、最適な制御技術の確立のため、2015年~19年1月まで実証試験を行った。
実証では蓄電池を用いた短期・長期単位周期変動抑制などの再エネ制御手法を確立。蓄電池が電力系統の周波数調整や需給調整対策として十分な能力があること、北海道の電力系統での周波数調整には、再エネの導入量に応じた制御方式の使い分けが効果的であることを確認した。
この結果を受けて、北海道電力は系統側にレドックスフロー蓄電池(設備容量5.1万kW時)を新設し、費用を共同負担することを前提とした「系統側蓄電池による風力発電募集プロセス(Ⅰ期)」を実施。22年4月から運用を開始した。募集によってすでに優先系統連系事業者15件、16・2万kWが決定。これらの連系のために必要となる系統側対策として同蓄電池設備を利用する。