【特集2】各地域との包括連携協定を展開 ソリューション提案で課題解決へ

東京ガスは、近隣15の自治体や地域都市ガス事業者と包括連携協定を結んでいる。都市ガス事業者として何を目指し、何を提供していくのか。その狙いを聞いた。

【インタビュー】馬場 敏/東京ガス 広域エネルギー事業部長

―2021年11月に秦野市と「カーボンニュートラルのまちづくりに向けた包括連携協定」を結んだのを皮切りに、自治体や地域都市ガス事業者などとの協定締結を進めていますね。

馬場 今年4月に改正地球温暖化対策推進法が施行され、地方自治体には脱炭素社会の実現に向けて主導的に取り組むことが求められるようになりました。自治体が脱炭素の目標を達成するには、地元企業や住民を巻き込んだ街全体での取り組みが必要で、民間企業との連携がこれまで以上に重要になります。このような社会的ニーズに応えるため、当社は自治体と連携協定を結び、東京ガスグループがこれまで培ってきた環境やエネルギーに関するノウハウやサービスを提供したいと考えています。その際に、長年地元に根差し街の発展やライフラインを支えてきた地域都市ガス事業者さまとも連携して共働することで、きめ細かい対応ができるようになります。

―協定を提案するのは3者どちらからですか。

馬場 当社からです。地域都市ガス事業者さまとはガスの卸供給を通じて、長年ビジネスパートナーとして築き上げた信頼関係があります。地域都市ガス事業者さまは地元に密着し、街の発展やライフラインを支えてきています。それが評価されて信頼を得ているからこそ、自治体も包括連携協定を3者で締結し、長期的な視点で一緒に取り組もうとしてくれるのです。提案時には協定締結後の実行力を高めるために、打ち合わせを重ね、丁寧にコミュニケーションを取り、協定の目的を理解し共通認識を持つよう努めています。レジリエンス向上や地域共創といった視点でも課題を洗い出しています。

担当領域を超えて協力 EV充電マネジメントも提供

―自治体からはどのような要望が多いのでしょうか。

馬場 相談が多いのは、太陽光発電の導入や更新、電気自動車(EV)の導入といったハード面のニーズのほか、住民の行動変容につながる環境教育などのソフト面です。環境教育については、これまでの当社グループの知見を生かし、環境省の推奨もあるナッジを活用した効果定量型の脱炭素へ向けた環境教育や、省エネ、カーボンニュートラル(CN)に関する学校授業を提供しています。

―東京ガスのどのようなノウハウや技術力を生かすのですか。

馬場 これまでの事業で培った省エネ診断や各種設備の設置施工、メンテナンスなどの知見を活用します。そのほか、太陽光オンサイトPPA(電力購入契約)で獲得した知見や経験も活用します。EVについては、今年9月に秦野市、秦野ガス、日本カーソリューションズと4者でEV導入とEV充電マネジメントの共同検証に関する基本合意書を締結しました。当社にとって初となる公用車のEV化に向けた取り組みです。当社は以前から充電タイミングを制御するEV充電マネジメントの研究を行ってきました。協定締結を機に、積極的に社外に展開していきたいと考えています。グループ経営ビジョン「Compass2030」の下、各部署やカンパニーがそれぞれ取り組んできた技術を結び付け、各部の担当領域を超えて相互協力できるようになってきています。今後も再エネの開発やメタネーションを含めた水素カーボンマネジメントなど、開発する新たな技術や知見をタイムリーに活用していきます。

東京ガス・地方自治体・地域都市ガス事業者との包括連携協定(2022年10月末現在)

ニーズに合わせた提案 地域課題を解決する企業に

―相談が多い再エネ導入は、CNの街づくりに欠かせないですか。

馬場 CNの実現にはさまざまな手段がありますが、再エネの普及拡大は最も効果的な取り組みの一つでしょう。特に当社が包括連携協定を締結している自治体は、都市部に比べて再エネ導入のポテンシャルが高いエリアもあります。各自治体の状況や、地産地消などのニーズに合わせながら提案していくことになります。

―最初の包括連携協定を結んでから約1年。振り返ってどのように感じますか。

馬場 世界のエネルギー事情が大きく変動していることや、近年の気候変動の問題もあり、CNへの関心は高まっていると感じます。都市ガス会社が必要とされ続けるために、私たちは次のフェーズにつなげていく分岐点にいると思います。一緒に街をつくり、地域課題に共に取り組むソリューション提供ができる仲間になりたいと思います。Compass2030では「地域課題解決型ソリューション企業への変革」を掲げています。CNシティー推進の取り組みは、この全社方針を具現化するものです。エネルギートランジションの実現と都市ガス業界のさらなる発展に向け、地域都市ガス事業者さまと二人三脚で取り組んでいきます。こうした取り組みに注力することで、脱炭素社会における都市ガス会社の社会的位置付けの向上に寄与すると確信しています。

ばば・さとし 1992年東京工業大学修士課程を修了後、東京ガス入社。原料部、東京ガスオーストラリア社、産業エネルギー事業部、TGES営業副本部長、再生可能エネルギー事業部長などを歴任。2022年度から現職。

【特集2】グリーン水素・CN都市ガスを導入 地域が主体の街づくりを支える

【西部ガス】

西部ガスグループはカーボンニュートラル(CN)の実現に向けて、「西部ガスグループ カーボンニュートラル2050」を2021年9月に策定。50年には、脱炭素化したガスや水素、再生可能エネルギーなどを適材適所に使い分けながらCNを実現すると宣言している。今年8月、西部ガスは福岡市と「地球温暖化対策に関する連携協定」を結んだ。続けて、同じ福岡県内の宗像市、北九州市とも協定を結び、地域の脱炭素化に向けた取り組みを進める。

福岡市でグリーン水素供給 宗像市では住民が主役のCN

西部ガスが自治体と地球温暖化対策に関する連携協定を結ぶのは、福岡市が初めてだ。福岡市は「2040年度温室効果ガス排出量実質ゼロ」を目指し、所有する施設の脱炭素化にいち早く取り組んでいる。新築のビルは全てZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化。協定締結後は、既存のビルのZEB化を加速する。

注目すべきは、福岡市水素ステーション(ST)の運営だ。福岡市は「水素リーダー都市」を掲げ、14年度から、国土交通省が実施する「下水道革新的技術実証事業(B―DASHプロジェクト)」に産学官で取り組んできた。生活排水などの下水を処理する過程で発生するバイオガスから水素をつくり、FCV(燃料電池自動車)に供給する世界初の水素STを運営してきた。研究は21年度末に終了したが、引き続きCNの実現に向けた水素の普及促進を目指すため、今年8月、福岡市と西部ガスなどが共同体を設立。9月に水素STの運営を再開した。下水バイオガス由来のグリーン水素の商用供給が始まっている。充填(じゅうてん)可能なグリーン水素は、1日当たり約290㎏(FCV約60台分)。都市リビング開発部の田中諭マネジャーは、「水素の活用は中長期的な目標であるものの、グリーン水素に価値を見出すユーザーが増えている。水素STを運営することでグリーン水素製造の知見を得て、FCVへの充填のほか、容器で供給するなど今後の普及促進を検討したい」と話す。水素リーダー都市、福岡市を力強く支援する構えだ。

世界初の下水由来の水素を供給(福岡市水素ST)

宗像市とも、西部ガス、東邦レオの3者で「『ゼロカーボンシティ』の実現に向けた連携協定」を結ぶ。西部ガスは20年から東邦レオやハウスメーカーなどと、日の里地区の団地再生事業に取り組んでおり、そこに脱炭素の視点を加えた協定になった。目指すのは地域の人が主役となる持続可能な街づくり。都市リビング開発部の今長谷大助マネジャーは、「CNという言葉から始めるのではなく、楽しみながら参加していたらCNにつながったという姿を目指している」と語る。コンポストを設置して、日の里団地の管理棟で作る地ビールの廃棄麦芽や、カフェの残飯などを堆肥化。団地の裏にファームをつくり、地域の人と一緒に野菜の苗を育てる。野菜は自由に収穫できる代わりに、ファームに生えている雑草を1本抜いて帰るのがルール。育てた野菜は団地内のカフェメニューにも登場する。域内の廃棄物で野菜を育て、地域の人が主体的に関わり、域内で消費するサイクルを作る。

「自治会や街づくりのNPOなど、地域のために頑張りたいと思っている人たちをつなげるのが企業の役割。生活に近いところでCNに取り組めるよう、一つひとつ丁寧にコミュニケーションを取りながら進めていきたい」(今長谷マネジャー)。住民や自治体、他業種とのつながりで、これまで見えなかった新たな領域が見えてくるという。ゼロカーボンシティの可能性が広がっている。

北九州市でCN都市ガスを提案 メタネーションでも協力体制

北九州市との「カーボンニュートラル実現に向けた連携協定」は、産業都市である地域性が現れた内容だ。工業地帯が広がる北九州市は、古くから環境への取り組みに注力してきた。「脱炭素先行地域」にも選定され、脱炭素化を加速させている。工業用途には電化が難しい高熱利用の需要があるため、ガスの採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する温室効果ガスをCO2クレジットで相殺したCN都市ガスの導入を提案する。設備を更新することなく脱炭素化を実現できるのがメリット。「CN都市ガスはまだ認知度が低く、北九州市と協定を結ぶことで広くPRしていただける」とカーボンニュートラル推進部の石井直也マネジャーは話す。

同市若松区にある西部ガスグループのひびきLNG基地では、水素とCO2から都市ガス原料の主成分であるメタンを合成するメタネーションの実証に向けた検討も行っている。このため、北九州市との連携は一層心強い。「自治体は地元企業とつながりがあるので、メタネーションの原料となるCO2排出量が多い事業者や、CN都市ガスの利用に興味のある地元企業などをご紹介いただける。脱炭素化をより具体的に推進できる」(石井マネジャー)

西部ガスグループは、これまでのガス事業で培ったさまざまな技術やノウハウを結集し、顧客や行政、学術機関などと積極的に連携を図りながら、50年のCN実現に向けて取り組みを進めている。

ひびきLNG基地ではメタネーション実証を検討

【特集2】持続可能なメタネーションを開発 エネルギー循環のソリューション提供

IHIは合成メタン生成時に必要な、劣化に強い触媒の技術を開発した。メタネーション装置とCO2回収技術を合わせて提案する。

【IHI】

「工場などはCO2削減のための省エネに取り組んでいるが、それだけでは足りない。現在はCO2の回収と活用が課題だ」と話すのは、カーボンリサイクルグループの野々村敦グループ長。ガスユーザーがコストをかけずにカーボンニュートラル(CN)を実現するには、同じガス設備を使い続けられる合成メタンの利用が有効だと続ける。

合成メタンはCO2と水素からつくる。IHIはCO2を活用するカーボンリサイクル技術に取り組んでいる。CO2を回収し水素を反応させ、メタンやプラスチックの原料となるオレフィン、航空燃料などをつくる技術だ。IHIは比較的小規模な工場や事業所向けに、コンテナ型のオンサイトメタネーション装置を開発した。年内の商用化が実現する。オンサイトメタネーションでは、工業炉やボイラーの排ガスからCO2を回収。再エネ由来の電力などで水を電気分解して水素をつくる。これらを原料に製造した合成メタンは自家消費するほか、導管に供給することも可能だ。

メタネーション標準機。合成メタンの製造量は、12.5Nm3時

合成メタンの実用化へ コミュニティーバスに供給

IHIのメタネーション技術の大きな特長は触媒。メタネーションでは多量の反応熱が出るが、一般的な担持型触媒は熱や硫黄成分で劣化しやすい。触媒が長持ちすることが事業の持続性に重要だとし、熱と硫黄成分に強いコアシェル型触媒を独自開発した。さらにこの反応熱を、CO2の回収に利用する熱エネルギーマネジメントを提案する。排ガスからCO2回収の過程で化学物質アミンに吸着させる。CO2と結合したアミンに熱を加えると、CO2だけが濃度99%以上で分離される。その熱にメタネーションの反応熱を循環させる方法だ。外部から熱エネルギーの導入が不要で、ランニングコストが削減できる。

福島県相馬市の「そうまIHIグリーンエネルギーセンター」(SIGC)は、IHIと相馬市のスマートコミュニティー事業だ。約5万4000㎡の敷地には、出力1600kWの太陽光発電(PV)、水電解装置、合計5500kW時の大型蓄電池システム6台などが立ち並ぶ。敷地内の電力は PVで賄い、隣接する下水処理場にも自営線で送電。余った電力は水素に変えタンクに貯蔵し、非常時には発電にも使う。年内には、オンサイトメタネーション装置を設置する。製造した合成メタンは、相馬市のコミュニティーバス(CNGバス)に供給する予定だ。

SIGCでは水電解で発生する副生酸素を活用する実証も行っている。敷地内の陸上養殖水槽に供給し、ニジマスなどの成長を促す。水耕栽培を組み合わせ、魚の糞尿はグリーンリーフ栽培の肥料に活用する。

野々村グループ長は「メタネーション技術だけでなく、周辺を含めお客さまのニーズに応じたトータルソリューションとして提案できるのが強み」と自信を見せる。エネルギーを無駄にすることなく全て有効に使う。持続可能な社会のためにIHIの研究は続く。

【特集2】食品工場にLNG冷熱を供給 省エネとCO2削減を実現

【広島ガス】

広島ガスは2月から、豆腐など大豆を主原料とした食品を製造するやまみと共同で、「連携省エネルギー事業」を開始した。この事業は、三原西部工業団地に位置する広島ガスの備後工場から、隣接地にあるやまみ本社工場に、都市ガス製造の過程で抜き出したLNG冷熱を供給するというものだ。

両社は、連携事業のために新たな設備を導入している。広島ガス備後工場では、都市ガス製造で使用する気化器のシステムを、温水式の気化器からブライン式を中心としたシステムに変更した。やまみでは、主に豆腐を製造する過程で必要となる大量の冷水を生成していた冷凍機24台を、LNG冷熱の受け入れに対応した高効率ターボ冷凍機3台に入れ替えた。これにより、備後工場では加熱燃料、やまみでは電力使用量の大幅な削減に成功した。

省エネ・CO2削減は順調 冷熱利用の最適化が課題

連携事業の実現は、省エネなどの利益の一致はもちろんだが、広島ガスの確かな営業力と技術力の結晶だ。同社にとってやまみは都市ガスの供給先でもある。以前から両社間では、LNG冷熱を取り出し、やまみ本社工場で利用するアイデアを共有していた。

2017年に国の補助金を用いて、事業化に向けた調査を開始した。当初は三原市や工業団地内の他企業の協力も得つつ、工業団地全体での共同受電といったLNG冷熱利用にとどまらない、より大きな範囲での事業化を検討していた。最終的には投資効果の高いLNG冷熱の利用に的を絞った。20年度に、経産省が実施する「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金事業」に採択され、事業化に至った。

広島ガス備後工場の全景

連携事業を開始して約半年、省エネやCO2排出量の削減は順調に進んでいる。当初想定されていた目標値は、原油換算での省エネルギー量は年間1465㎘(広島ガス392㎘、やまみ1073㎘)、CO2削減量は年間2813t(広島ガス901t、やまみ1912t)となっている。「事業開始時に算出した目標値の達成に向け、毎月実績を管理しています。通年での成果の取りまとめはこれからですが、このまま安定的な運用を継続できるよう、努めていきます」と、エネルギー事業部産業用エネルギー営業部技術グループ服部大資主任は意気込みを見せる。

事業開始後の課題としては、冷熱の需要と供給の最適化がある。季節や1日の中の時間帯によって需要量も供給量も異なるため、無駄が出ないようデータを分析し、両社で検討する機会を月に1回設けている。効率的な設備運用のため、定期点検などの情報共有なども行う。また、備後工場ではガスの安定供給のため、ブライン式気化器の不具合を想定した訓練を充実させていくことも検討中だ。

広島ガスでは、「このまち思いエネルギー」という企業スローガンの下、エネルギーの地産地消や隣接地との関わり方、異業種間での連携などのノウハウを、次なる事業へ展開することも見据えている。実際に、広島県に拠点を持つ企業や自治体からの問い合わせが多数寄せられているという。同社の地域に根差した取り組みに今後も注目だ。

【特集2】ZEBに対応した新本社ビル 環境性と防災性・職場環境が向上

【岡山ガス】

5月20日、岡山ガスの新本社ビルが完成した。同ビルは、快適な室内環境と建物のエネルギー使用量の収支ゼロを目指すZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の4分野のうち、外皮の断熱化や高効率な省エネ設備を備えた建物を評価する「ZEB Ready(ゼブレディ)」を取得。また、温室効果ガス排出ゼロを目指すオーナーが加盟する「ZEBリーディングオーナー」にも登録している。

旧本社ビルは1973年に建築され、耐震化を検討していた。その中で、BCP対策と省エネの両立が可能なZEB対応の新本社建設を立案。設計会社の丸川設計事務所、ZEBプランナーのパナソニック、コンサルタントの備前グリーンエネルギーに協力を仰いだ。

検討開始は2019年で、設計会社は複数社の企画案から適したものを採用するプロポーザル方式で選出。同時期にZEBリーディングオーナーの登録を準備し、設計案ができあがった20年8月に登録を完了した。21年1月にゼブレディを取得、2月に着工、22年5月末から業務を開始している。

ガス設備メインのZEB 働きやすさも重視

新本社ビルでは、ガスコージェネレーションシステムや廃熱回収型吸収式冷凍機、高効率GHP、太陽光発電、蓄電池などを運用している。加えてBEMSの導入で、エネルギー使用量を「見える化」した。計測した発電量は、外気温や室温などと併せて入口のサイネージに表示される仕組みだ。

一般的にZEBといえば電気を用いた建物が多い中、同ビルはガス設備を軸にZEBを構築。外壁断熱やLow―Eガラスなどで外皮性能を向上させ、コージェネなど空調設備の負荷設計を、建物の規模に対して従来設計で必要とされていたエネルギーの7割程度に抑えている。また、通常時はコージェネ1台と太陽光発電を中心に給電し、停電時には2台を追起動し、計3台で給電する。コージェネが起動しないことも想定し、非常用のディーゼル発電機も備え、さらなるレジリエンス向上も図る。

屋上にはGHPやコージェネなどが置かれている

ゼブレディの基準を達成する設計は難航した。岡山ガスでは防災性・環境性に加え、働きやすさも重視。窓をつくると断熱性が落ちるなどの課題があった。総務部総務グループの宮脇雄一グループ長は「省エネに特化すれば基準はクリアできるが、快適とは言い難い。ゆくゆくはCASBEE(建築環境総合性能評価システム)ウェルネスオフィスの認証取得を目指しているので、働きやすさは欠かせない」と話す。また、一級河川の旭川と世界かんがい施設遺産の倉安川水系に隣接。建設工事には多くの制約があったが、旭川の景観と用水沿いの桜並木は社員に癒しを与えてくれているという。

現在、岡山ガスは新本社ビル見学の対応に追われている。ガス設備メインのZEB構築を手本としたい県や市などの自治体や、同業他社などから、多数の声が寄せられているのだ。エネルギー開発部環境エネルギーグループの山本雅生グループ長は「電気だけでなくガスでもZEBが構築できることをアピールしていきたい」と意気込みを見せる。今後、新本社ビル横の第2ビルにも、ZEB化の改修を行う予定。防災性、環境性、働きやすさの向上を追求していく。

【特集2】都市ガスと電気をバックアップ 公立校の体育館や給食施設へ導入

【I・T・O】

I・T・Oは防災減災システム「BOGETS」の導入拡大を目指している。自治体の災害時におけるエネルギーのニーズに応える。

今、非常用発電機の需要が高まっている。停電が全国的に頻発しており、支障が大きい施設や事業者のニーズが増加しているのだ。

非常用発電機には2種類ある。法律で設置が義務付けられた防災用発電機と、任意で設置する保安用発電機だ。防災用の稼働時間は2時間ほどで、避難誘導での使用が前提。保安用は燃料備蓄により約72時間稼働し、エアコンや給水ポンプ、照明などが利用できる。

空調や調理機能を維持 自治体のニーズに応える

I・T・Oは防災減災システム「BOGETS」の自治体への導入を進めている。BOGETSは、LPガスから都市ガスと電気をつくるシステムだ。ガス変換器の「NEW PA」でLPガスと空気を混ぜ、都市ガスと同様の燃焼特性を持つガスを生成。停電対応型GHPや発電機に投入し、発電する。BOGETSに組み込まれる発電機は、保安用にあたる。

自治体での導入事例として、足立区立の小中学校91校、稲城市立学校給食共同調理場第一調理場、寝屋川市立の中学校11校の三つがある。足立区と寝屋川市の事例では、NEW PAと停電対応型GHPを組み合わせて運用。災害時に避難所となる体育館の照明やコンセントでの使用、空調設備の運転などを目的としている。稲城市の事例では、NEW PAを導入。同施設は市の防災計画上、災害時に炊き出しを提供する。回転釜や連続炊飯器など厨房機能に不可欠なガスをバックアップする。

導入に当たっては、補助事業制度を活用した。足立区では「東京都効率学校屋内体育施設空調設置支援事業(リース補助)」、寝屋川市では「緊急防災・減災事業債」を利用。寝屋川市のケースでは、実質3割程度の負担での導入となったという。

稲城市の給食調理施設に設置されたNEW PA

自治体には三つのニーズがある。①避難所へのエネルギー供給、②炊き出しの調理、③災害対策本部の運営―のバックアップが求められている。①で特に重要なのは空調設備だ。災害から助かったとしても、避難中の暑さや寒さによる体調の悪化で亡くなることもある。これに応えたのが足立区や寝屋川市の事例だ。また、稲城市の給食調理施設の事例は②に該当する。

③災害対策本部運営のバックアップについて、営業開発部の野口恭夫防災担当部長は「災害対策本部となる庁舎に防災用発電機はあっても、それは避難を促すための設備。その場にとどまらなければならない災害対策本部の用途とは異なる」と話す。実際、庁舎などの保安用発電機の普及率は54%程度にとどまっている。導入コストなどの課題はあるが、まだまだ普及促進の余地がある。I・T・Oはこれらのニーズに応えるため、BOGETSのさらなる導入拡大を目指す構えだ。

【特集2】脱炭素に挑むガス体エネルギー e-メタンなど次世代技術が加速

脱炭素化に向けて新たなエネルギー技術が取り上げられるようになってきた。実用化に向けてのルールづくりも重要なポイントなってくる。

2050年カーボンニュートラルに向けて、ガス体エネルギーの次世代技術がこの1年で数多く発表され、従来にも増して開発や取り組みが加速している。
日本ガス協会は昨年6月、「カーボンニュートラルチャレンジ 2050」アクションプランの中で「メタネーション実装への挑戦」を打ち出し、業界を上げての取り組みを本格化させた。メタネーションはCO2と水素(4H2)を反応させて都市ガスの主成分である「メタン(CH4)と水(2H2O)」を生成する。こうして合成されたメタンを総称で「e-methane (e-メタン)」と呼ぶ。e-メタンの代表的な合成法はサバティエ反応を利用した方式で、触媒を介してH2とCO2を反応させてCH4を生成する。
INPEXと大阪ガスが24年度に開始する実証においても同方式が採用されている。INPEXの長岡鉱場内から回収したCO2を用いてe-メタンを製造し、同社の都市ガス導管に注入する予定だ。e-メタンの製造能力は1時間当たり400N㎥と世界最大規模となる。実証では、①触媒によるメタネーション反応の挙動把握を目的とした反応シミュレーションの技術開発、②プロセスの基本性能や触媒の長期耐久性などの評価・確立を目的とした大規模メタネーション反応プロセス技術開発、③商用スケールへの大型化、適用性や経済性などの評価を目的とした、反応システムのスケールアップの適用性―を検証する。

メタネーションの事業イメージ 出所:INPEX


エネ変換効率向上を目指す 新たなメタネーション技術

メタネーションでは高効率化や低コスト化を目指し、次世代技術の開発も進行中だ。東京ガスの「ハイブリッドサバティエ」や「PEMCO2還元」、大阪ガスの「SOECメタネーション」、「バイオメタネーション」などがその代表的な技術となる。
東京ガスが取り組むハイブリッドサバティエは、サバティエ反応を220℃以下と従来よりも低温で行う。これにより、発生する熱を水素発生の水電解に活用。投入する電力量を抑制して、80%以上の高効率なメタネーションを目指して開発を進めている。
PEMCO2還元は独自に開発する水電解セルスタックと親和性の高い電気化学還元デバイスを使用して、水とCO2から直接メタンを生成する。メタン合成装置が不要のため、設備を簡素化して設備コストの低減が期待できる。また固体高分子型のため反応温度が100℃以下と低く、大型化における配熱処理の課題がないことも特徴だ。
大阪ガスのSOECメタネーション技術(高温電解ガス合成技術)は、水素の供給が不要で、電力からメタンへのエネルギー変換効率が85~90%と非常に高い。従来のメタネーションでは水の電気分解やメタン合成反応で発生する熱を有効利用できず同55~60%にとどまっている。SOECメタネーションはエネルギー損失が少なく前述のような高い効率が実現でき、電力使用量を従来に約3分の2まで削減できる可能性があるという。
メタネーションの実用化に向けて、制度面での取り組みも進められている。CO2を排出する側とメタネーションなどに利用する側のどちらでCO2をカウントするかというルール決めが行われているのだ。国内におけるカウントルールは、メタネーション推進官民協議会傘下の今年3月に開かれた「CO2カウントに関するタスクフォース」で、工場や発電所などの排出者側にCO2排出を計上し、メタネーションでe-メタンを生産する都市ガス事業者など利用側はゼロと整理された。
ただ、排出者側にとって利用側にCO2を引き渡すメリットがなければ、そうした取り組みが浸透しない。このため、補完的な仕組みの制度設計が必要とされている。
30年には、海外でグリーン水素を調達し毎時数千~数万N㎡の大規模実証を行い、現地からe-メタンを輸入する計画だ。これにより、30年までに都市ガス全体のうち1%のe-メタン導入を目指す。この1%を都市ガス量に換算すると、4億㎡に相当する大規模なものとなる。
24年度に始まるINPEXと大阪ガスの実証や、海外での大規模生産計画のためにも、早期の環境価値取引ルールづくりが求められている。


グリーン水素登場を見越し 利用機器の実証始まる

次世代エネルギーでは水素関連の取り組みも活発だ。パナソニックは純水素型燃料電池や太陽光発電、蓄電池を自社工場敷地内に設置して、工場で利用するエネルギーを賄う実証を行っている。将来、再エネ由来のグリーン水素が供給されることを見越した先進的な実証だ。リンナイは、水素100%燃焼給湯器を開発。水素の燃焼特性に合わせたバーナー技術によって実現した。11月からはオーストラリアで実証をスタートさせる。同社はトヨタ自動車が静岡県裾野市に建設する「ウーブン・シティ」において、水素を燃焼させて行う調理において共同開発も開始した。このように、水素利用機器側での取り組みが今年に入って活発となっており、今後さらに加速していくものと見られる。
産業ガス大手のエア・ウォーターは北海道十勝地方で、家畜糞尿由来のバイオガスに含まれるメタンを液化バイオメタン(LBM)化し、活用するまでのサプライチェーン構築の実証を行っている。LBMはメタン純度が99・99%と高い。ロケットやLNGトラックなどその性能が生かせる用途をターゲットにしている。
次世代に向けてさまざまな開発や取り組みが進む中、環境価値についてのルールが話題に上るようになってきた。ただ、水素もLBMも再エネからつくり出したとしても、環境価値が認められる仕組みには現在のところなっていない。こうした手つかずの部分の整備が今後一層求められてくるだろう。

【特集2】液化バイオメタンの実証開始 高純度ガスを多彩な用途へ

【エア・ウォーター】

エア・ウォーターは、家畜のふん尿からつくる液化バイオメタンの実証を開始した。LNG代替に加え、高純度なガス質を生かしロケット燃料などの利用を目指す。

北海道十勝地方で、牛などの家畜から排出されるふん尿を利用して液化バイオメタン(LBM)を生成し、需要家に供給する実証が今年度から本格的に開始となった。
同実証は、環境省が推進する「令和3・4年度地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」において優先テーマとして採択されたもの。エア・ウォーターが中心となり、家畜ふん尿由来のバイオガスに含まれるメタンをLBMに加工。液化天然ガス(LNG)の代替燃料として利用することを目的として、LBM生成から需要家での活用までを実証する。サプライチェーン全体でのCO2排出量、温室効果ガスの削減とともに、家畜ふん尿に起因する臭気の減少にもつながることが期待されている。

電力での利用が困難 ふん尿の扱いに苦戦続く

酪農が盛んに行われている十勝地方は家畜から大量に排出されるふん尿の扱いが課題となっている。春や秋に畑の肥料として散布するが、この臭いが十勝地方の中心部である帯広の街中でも立ち込めることがある。これがイメージダウンにつながり、インバウンド需要に影響すると懸念する声もあるほどだ。一方で、エネルギーとして再利用することに関心のある酪農家は、固定価格買い取り制度(FIT)を活用し、ふん尿をバイオガス化して発電することを模索したが、送電網などインフラに関わる制約から活用は限定的で、長年解決策を見いだせずにいた。
このように、ふん尿をそのまま田畑に散布せず、新たな方策を見いだす機運が高まっていた。
そうした中、バイオガスをエネルギーに有効利用する手段として、エア・ウォーターが産業用ガス事業で培った極低温技術などを応用して同実証のスキームを考案。酪農家や乳業メーカー、同社グループ会社などの参画を受けて実証を行う運びとなった。
実証では、①酪農家の敷地内に設置したバイオガス捕集システムで家畜ふん尿由来のバイオガスを回収し圧縮や前処理を行い、ガスを貯めた吸蔵容器をセンター工場に輸送する、②センター工場で捕集したバイオガスを前処理した後、マイナス162℃まで冷やしメタンガスを液化する、③これを需要家に持ち込みボイラーなどで利用する―ところまで行う。
①バイオガス捕集システムは、今年5月に完成し試運転を実施してきた。酪農家に設置し無人で稼働するため、ガスを1MPa未満で捕集する。高圧ガスの複雑な保安体制を必要としない仕組みにした。ガス吸着剤に関わる知見を活用し、ガスが低圧状態でも容積の約20~30倍のガスを輸送できるものを開発した。装置は酪農家でも運用できるよう簡単な点検を1日1回行うだけで済むようにした。
②センター工場は1日当たり1tのLBMを製造する能力を有する。実証では30~50%程度で稼働させている。1日2台持ち込まれる吸蔵容器から抽出したバイオガスを圧縮した後、膜分離装置などでメタンからCO2、大気を除去。さらに深冷分離装置で液体窒素を用いて熱交換を行い、メタンを液化する。同工場は8月8日完成し試運転が開始となった。9月4日からは純度99%以上のメタンが製造可能に。10月13日には同センター工場からLBMが初出荷された。

LBM製造プラント


③出荷されたLBMは、需要家であるよつ葉乳業でLNGと混合してボイラーで燃焼試験を実施している。11月からは、同社と三菱商事が共同で実証しているLNGトラック向け充填所にも出荷していく予定だ。
地球環境システム開発センターの田中真子部長は「燃料としてのLBMはメタン純度が99・99%(フォーナイン)と非常に高いのが特徴です。そうした品質が求められる用途向けにも展開していきたいです。LNGトラックには重質分が含まれていないことから火炎温度が上がらず適しているとされています。また十勝地方の大樹町には堀江貴文氏が設立者に名を連ねる宇宙ベンチャーの『インターステラテクノロジズ』があります。このロケット向け燃料として、高純度なメタン燃料であるLBMは非常に有望です。高付加価値向けにも訴求したい」と強調する。

LBM 実証のスキーム図

LBMの都市ガス利用も 道内の複数地域に展開

地元の都市ガス事業者でも、LBMの導入を検討する動きがある。都市ガス大手3社に限定されているが、エネルギー供給構造高度化法で、条件を満たす余剰バイオガスについては80%以上を利用することが目標と位置付けられているのだ。
今後、こうした法律が地方ガス事業者にも適用される可能性がある。このため、LBMの取り組みに注目をしているとのことだ。
エア・ウォーターでは、道内の他の地域でもLBMサプライチェーンの展開を模索している。北海道産の新たな地産地消エネルギーとして、今後さらに注目を集めていきそうだ。

【特集2】CNに向けた取り組みをサポート 業務用顧客向けコンサルサービス開始

【東邦ガス】

2050年カーボンニュートラル(CN)の実現に向けて、日本国内の企業はCO2削減を推進するさまざまな施策を検討している。しかし、「そうはいっても、具体的に何から着手したらよいのかわからない」―。そうした企業が大半だという。
業務用顧客のこのような状況を受けて、東邦ガスは都市ガスや電力、エンジニアリングのノウハウを活用した新サービス「CN×P」を立ち上げた。これまでのガス会社の営業というと「ガスや設備導入はいかがですか」と提案してきた。これに対し、CN×Pでは、「まずはCO2削減、その先にあるCN化に向けてこのような手順で進めたらどうですか」「現状の把握から一緒に取り組んでいきましょう」とCNに資する取り組みを一から具体的にアドバイスして顧客とともに取り組む。


現状把握が重要 ロードマップを策定


国のCN宣言以前は、省エネ関連のサービスが主体だった。顧客には燃料転換に伴う都市ガスや設備の導入を提案しCO2削減を進めていった。その中で顧客が最も重要視するのは費用対効果だ。エネルギー関連で新たな設備導入や取り組みを行う際には必ず採算性が求められたという。
CN宣言以降はこの状況が一変した。CO2排出量削減に取り組むという点では同じだが、コストを負担してでも推進しなければならない課題となったのだ。
「従来の投資回収基準に加え、取引先や国、社会からの要請など、CNへの取り組みは判断軸が増えて複雑化しています。いつまでに、どれだけのコストを割いて注力するのか、企業の方針によっても異なります。そこで現状を把握しお客さまの要望を聞きながら、ロードマップ策定やデータの見える化、エンジニアリングを提供し、CN化をサポートするのがこのCN×Pです」。エネルギー計画部ビジネス開発グループの富田達也マネジャーは、こう話す。
CN×Pでは、①顧客のCO2排出量を把握しCNに向けた課題を明確化する、②運用改善、省エネ、再生可能エネルギーや高効率設備の導入などのエンジニアリングサービスの提供によりCO2を削減する、③工場などの現場のCO2排出量のモニタリング、現場社員向けの技能講習会の開催、設備チューニングの支援など良好な削減環境の維持する―という三つのサイクルを回していくことを掲げている。
このうち、①のCNに向けた正しい状況把握の部分が新たなに提供するサービスであり、ロードマップ支援サービスとデータの見える化支援サービスなどを展開する。ロードマップ支援サービスは、顧客の事情に合わせて、CN達成への取り組みを排出量の削減効果と費用対効果でグラフ化し、中長期的な指標となる「CNカーブ」を作成する。図のようにグラフは横軸がCO2削減量、縦軸が施策を行うことによる追加コスト影響を表している。色付きの長方形はCO2削減のそれぞれの施策を表している。施策の長方形が中央線のゼロより下にあるものは投資回収可能なもの、上にあるものは投資回収できないがCO2削減に寄与するものとなっている。このグラフの横軸に目標年度を記入することでそれぞれの顧客に合った排出削減ロードマップが策定できるというわけだ。

「CN実現に向けたロードマップの策定」支援のアウトプットイメージ


例えば、製造業では、古い設備をそのまま用いて効率の悪い蒸気の使い方をしていたり、設備過剰で無駄に電力やガスを消費しているケースがある。こうした際に、「ガス設備の導入はもちろんですが、場合によってはヒートポンプの導入や既存設備の廃止を提案することもあります。電力もグリーン証書付き電力の購入よりオンサイトPPA(電力購入契約)による太陽光発電の設置の方がCN化に有効であれば導入を推薦します。あくまで優先すべきは顧客のCN化です」と、富田マネジャーは強調する。
データの見える化支援サービスでは、各種データの蓄積により、現場の管理工数低減やCO2削減進捗管理・フォローを行う。多くの事業所では工場単位、建屋単位でのエネルギー消費などのデータを蓄積しているが、製造ラインごとでは取得していないことが多い。
しかし、そうした取り組みがさまざまな企業に求められる時代がやってくるのは確実だ。そこで東邦ガスでは、「まず優先度の高い製造ラインから各データを測定していこう」と提案している。
また、データの見える化支援サービスでは事業所全体のエネルギーを見渡すマクロの視点から製造工程の細かな箇所確認するミクロの視点まで、いろいろな角度から見ることで問題点を見つけ出すことが鍵となる。「こうしたコンサルティングができるのは、エンジニアリングの知見を有し、お客さまの現場に深く入り込んできた当社ならではと自負しています」と、比嘉盛嗣チーフはアピールする。
これらのコンサルティングサービスを実施した後は、強みであるエンジニアリングサービスの提供によりCO2削減を行っていく。その後、現場の状況診断、CO2排出量のモニタリングなど削減環境の維持を図る。


CN黎明期にアピール 専用ホームページ開設


コンサルティングの内容は業種や規模が変われば取り組む内容も千差万別だという。それぞれカスタマイズした形で提供していくとのことだ。「同サービスは自信を持ってオススメできる費用感とアウトプットになっています。ただ、今はまだCN黎明期と捉えています。普及は当社がどうアピールしていくかにかかっています」と、富田マネジャー。
東邦ガスでは、専用ホームページを立ち上げるなど、CN×Pにかける意気込みが伝わってくる。同社の事業の新たな柱に育てていく構えだ。

同サービス普及を目指す富田マネジャーと比嘉チーフ

【特集2】道内初の天然ガス主体ZEB物件 エネやBCPの知見を投入

【北海道ガス】

北海道ガスはZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の普及推進に注力する。ZEBとは、建物の高断熱化や設備の高効率化、消費エネルギーを削減すると同時に、太陽光発電や地中熱利用などの創エネで年間の一次エネルギー消費の収支ゼロ以下を目指す建物のことを指す。
政府が昨年11月に発表した第6次エネルギー基本計画では、2030年度以降に新築される建築物についてZEB基準の省エネ性能の確保を目指すと明記され、その重要性が高まっている。
そうした背景から、同社は21年4月、環境共創イニシアチブの「ZEBプランナー」に登録した。顧客向けにシステム提案から補助金申請のサポート、稼働後のビル運用のサポートまで、一貫したZEBコンサルティングサービスを展開している。
今年11月には、地上三階、延床面積856㎡のZEB第一号物件が完成する。高断熱化と高性能ガラス、高効率設備の導入でエネルギー消費量を56%削減。建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)の最高ランクである5つ星を獲得した。

北ガスが手掛けたZEB物件


第一号物件をモデルケースに 道内全域にZEBを展開

同社が手掛けるZEB物件は他にはない独自の特徴がある。災害に強い都市ガスインフラによりガスを供給し、空調に電源自立型ガスヒートポンプ(GHP)を導入することで、レジリエンスを強化している点だ。電源自立型GHPなら仮に停電が発生しても、冷暖房の稼働はもちろんのこと、照明の利用やスマートフォンなど電子機器の充電など、必要最低限の電源が確保できる。
「18年9月に発生した北海道胆振東部地震によって、道内のお客さまはBCPへの意識が高まっています。そうしたニーズにも応えながら、ZEB化を実現することができます」。第一営業部都市エネルギーグループの渡邊翔氏はそう説明する。
さらに、同ビルにはカーボンニュートラル(CN)天然ガスや実質再生可能エネルギー100%電気を供給することで、建物全体のCO2排出量が実質ゼロの「CNビル」を実現した。
同グループの鈴木崚太氏は「CO2排出量を徹底した省エネによるZEB Ready化で40t削減し、さらにCO2排出量実質ゼロの電気と天然ガスの供給によって36t削減し、実質ゼロとしました。脱炭素化の実現には、需要側と供給側の双方からのアプローチが求められてくるでしょう」とZEBへの取り組みについて話す。
今年に入り、エネルギー価格の高騰や、4月に「官庁施設の環境保全性基準」が改定されたことなどを受けて、ZEBの需要がさらに高まっている。6月に同ビルの建設が明らかになってからは、北ガスに対して同じ規模のZEB物件建設に関する相談が増えたとのことだ。
北ガスでは中小規模の建物については、今回の第1号案件をモデルケースとして、省エネとレジリエンス強化を両立するZEBを道内全域に展開していく。また、CNにつながるエネルギーサービスの提供を通じて、北海道の脱炭素化、地域発展に貢献していく。

【特集2】多種多様な業界が注目 燃料電池による水素活用

【パナソニック】

純水素型燃料電池を用いた「H2 KIBOU FIELD」実証。再エネや蓄電池を組み合わせた試みが話題を呼んでいる。

パナソニックは今年4月、RE100実現と分散型エネルギー社会構築に向け、5kW純水素型燃料電池「H2 KIBOU」と太陽光発電、リチウムイオン電池を組み合わせた実証施設「H2 KIBOU FIELD」を同社草津工場内に設置して実証実験を開始した。

同社草津工場に隣接する実証施設「H2 KIBOU FIELD」


実証施設ではH2 KIBOUを99台(495kW)並べて、昼間は燃料電池と太陽電池、夜間は燃料電池を稼働させる。燃料電池工場の電力需要は、24時間稼働する装置があるため一日中電力使用があり、ピーク電力は夏場に約680kW使用する。年間通して、工場の電力需要を太陽電池、燃料電池、蓄電池の三電池で賄う。液化水素の供給は岩谷産業が担当。年間で120tの水素を使用することが想定され、270万kW時の電力需要に対応する。
実証施設は稼働から半年が経過した。今もメーカーやゼネコン、地方自治体など、多種多様の業種の担当者が見学に訪れており、関心の高さがうかがえる。燃料電池事業横断推進室の河村典彦水素事業企画課長は、実証施設の能力について「長期的には再生可能エネルギー由来のグリーン水素を用いるのが目標です。現段階は、グリーン水素ではないが消費拡大、利活用の好事例を示していきたい」とアピールする。

実用化課題は発電コスト 価格引き下げで選択肢に

このような水素によるRE100スキームにおいて、課題の一つがコストだ。現在の水素発電では、1kW時当たり0.6㎥の水素が必要で「例えば今の1㎥当たり100円の水素価格では、経済合理性が成り立たない」(河村課長)。経済産業省は2030年に向けて、水素価格を同30円、50年には同20円程度に引き下げる目標を掲げており、河村課長は「同30円なら再エネ電力程度のコスト、同20円なら系統電力並みになります。そうなれば電力の選択肢の一つに選ばれる可能性も出てきます」と期待を寄せる。
そのほか、ガス管と別の水素導管の敷設や関連法案の整備などといった課題も実用化に向けて解決しなければいけない。
河村課長は将来に向けて、「水素は、エネルギーミックスの考えで共存を図りながら推進していくべきだと思っています。燃料電池を用いた分散型エネルギーはBCPの観点からもリスク分散につながるほか、電力価格上昇に対応する自衛手段にもなります」と強調する。23年4月以降は実証実験を次のフェーズに進めて、欧州や中国などにもアピールし、海外展開する計画。パナソニックは、脱炭素社会の実現に向けて、純水素型燃料電池を核とした水素の利活用を進めていく。

【特集2】水素・メタネーション技術を展開 脱炭素化の切り札として注目

【日立造船】

日立造船は水素発生装置とメタネーション装置を手掛ける。次世代エネルギー製品として各方面から注目を集めている。

脱炭素化に向けた次世代エネルギーとして脚光を浴びているのが、水素と合成メタンだ。この二つに関連する装置を手掛ける日立造船には各方面から多くの引き合いが寄せられている。
同社の水素発生装置「HydroSpring」は固体高分子(PEM)型水電解法を採用する。PEM型は電解槽内に設置した電解膜を純水で満たし電気で水素と酸素に分離する。中でも、電源の出力変動にミリ秒単位で追従できる長所により、風力発電、太陽光発電などの再生可能エネルギーで発生する急激な出力負荷変動にも対応する。
また、純水で水素を製造できるため環境負荷が小さい。10〜100%で水素発生量を制御することが可能なほか、電流密度が高く電解装置自体のサイズを小さくできる。1500kWクラスでの水素発生量は400Nm3時に上る。このほか、屋外設置ができる点も利点となっている。

水素発生装置「HydroSpring」


触媒技術に強み 低温反応性能と高耐久性


水素発生装置と組み合わせて合成メタンの製造に利用するのがメタネーション装置だ。同社は以前から装置の反応器と触媒の製造を手掛けている。特に触媒技術に強みがあり、CO2と水素からメタンへの転換率は99%以上、エネルギー効率は75~80%を有する。
電解・PtGビジネスユニット営業部の足立進一電解営業グループ長は「同触媒は200℃台の低温でもメタンへの反応が可能なほか、2万時間以上の耐久性などを有しています」とアピールする。

メタネーション装置


最近はエネルギー事業者だけでなく、企業からもメタネーションへの引き合いが増えている。高橋哲也営業部長は「工場のCO2削減に検討する企業が増えています。企業の脱炭素への考え方・取り組みなどをヒアリングしながら、機器・システムの提案を行っています。排出するCO2が低濃度の場合には濃縮が必要だったり、水素はどう調達するかなどを考える必要があります。脱炭素に向けてどこに採算性を見出すのか、各企業の方針にかかっています」と、現状を説明する。脱炭素化を推し進める企業の積極的な姿勢が、次世代技術のこれからを左右していきそうだ。

【特集2】自社製品のCO2削減でCN貢献 水素100%燃焼給湯器を開発

【リンナイ】

リンナイは脱炭素時代に向けて給湯器向け水素100%燃焼技術を開発した。従来の給湯器で培った技術を応用し実現。今年秋から海外で実証を始める。

リンナイはこのほど、家庭用給湯器向け水素100%燃焼技術を開発した。今年11月からは、オーストラリアで実証実験を開始。実用化に向けた取り組みを加速させる。
同社は、2050年脱炭素化に向けて、独自のカーボンニュートラル(CN)宣言「RIM2050」を策定。日本国内全体のCO2排出量は11億794万t。このうち、リンナイの給湯、暖房、厨房商品を使用して排出されるのは1.5%に上る。これを受けて、「自社製品のCO2排出削減の取り組みはCNにおいて大きな役割を担う」と位置付け、開発を加速させている。その一つが水素給湯器だ。水素100%燃焼が可能でCO2を排出しないのが特長となっている。

水素100%燃焼の給湯器


水素を扱う上での燃焼の課題は逆火による爆発の恐れと、燃焼が安定しないことの二つだ。開発ではこれらを解決しながら、①従来の給湯器と同様に任意の水量と湯量に即座に対応できるよう低能力でも安全かつ安定的に燃焼できること、②天然ガスから水素への仕様転換が容易にできることが同時に求められる。


水素特有の燃焼特性 新たな燃焼技術で解決

そこで、新たに開発したのがバーナーとバーナーボディーだ。バーナーは、燃焼速度とガスの噴出速度のバランスを保つことで火が燃える。水素は燃焼速度が天然ガスより8倍は速く、低能力では噴出速度が遅くなり、バーナー内部に炎が入る逆火が発生しやすい。
この解決のため、海外向け給湯器やボイラーで使用されている全一次燃焼方式を採用し、かつ使用する金属繊維の素材や金属繊維の構成、板金に入れるスリットのパターンなどを見直し、逆火耐性、火炎均一性など水素燃焼に最適な条件を実現した。
バーナーボディーは万が一逆火が発生したときの安全性を確保するために開発した。天然ガスを燃焼する従来構造はガスの制御・混合を最適に行うため、ガスと空気をファンの手前で混ぜた状態で送っていた。これに対し、水素給湯器では、ファンとバーナーの間で水素を供給し空気と混ぜるようにした。さらに、バーナーの直前に低圧損のフレームトラップを取り付けることで、逆火時のリスクを最小限化している。これらにより、天然ガス同等の給湯性能を達成した。このほか、都市ガスから水素への転換を簡単な部品取り付けとマイコン内のデータを変更するだけで一時間以内に対応できるようにしている。
開発を担当した要素開発部の赤木万之次長は「オーストラリアの実証では長期使用などを検証します。英国やニュージーランドでも水素の利活用は検討されており、今後の各国の政策などを注視し、商品化に向けて先行したい」と意気込む。今後も、同社では燃焼技術を核にCN実現に向けた取り組みを加速させていく。

【特集2】NEDO実証でグリーン化模索 特約店の環境推進をサポート

【ENEOSグローブ】

ENEOSグローブはLPガスの脱炭素化施策を展開中だ。CNLPガス販売や特約店の支援策など多岐にわたる。

ENEOSグローブは、今年度から経営企画部に、新たに「カーボンニュートラル推進グループ」を設置した。カーボンニュートラル(CN)の推進を目指して、CO2排出量の削減目標や取り組み方針を策定するほか、グリーンLPガス(合成燃料)の研究開発にも着手する。

CO2原料のLPガス製造 社会実装まで包括的に検討

サプライチェーン排出量には、燃料の燃焼や工業プロセスなど、自社の直接排出である温室効果ガスなどが該当するスコープ1、他社から供給され、自社で使用している電気や熱・蒸気の使用に伴う間接排出のスコープ2、どちらでもなく、自社以外のサプライチェーンにおける間接排出のスコープ3がある。同社のグリーンLPガス研究開発は、スコープ3の排出量削減に貢献する取り組みだ。

NEDO実証のスキーム図

同研究開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発・実証事業」に、富山大学と日本製鉄と共同で「カーボンリサイクルLPG製造技術とプロセスの研究開発」を提案し、4月1日付で採択されたものだ。①触媒技術開発、②製造工程、③社会実装モデルの研究開発―を実施し、事業化に向けた包括的な検討を行う。

①の技術開発として、Fischer―Tropsch(FT)合成を用いて、カーボンリサイクルLPガスを製造する。FT合成とは、一酸化炭素と水素から触媒反応による、LPガス成分を含む液体炭化水素の合成過程のこと。

②の製造工程では、火力発電所・製鉄所などからCO2を調達し、水素はコスト面で課題はあるが、再生可能エネルギーによる電気分解や海外からのグリーン(あるいはブルー)水素の調達などを想定する。また、オンサイト型のカーボンリサイクルLPガス製造では、バイオマス資源からCO2と水素を含む合成ガスを取り出す技術を検討している。これらのガスからFT合成で液体炭化水素を合成し、精製・調整を経てLPガスを製造する。

③の社会実装モデルとして、製造されたLPガスの貯蔵・輸送や、LPガスの連産品を含めた利活用などを模索する。

LPガスは国民生活に密着した重要なエネルギーだ。現在、国内需要は年間約1400万tで、全国の約半数の世帯で使用されている。同社は、化石燃料ではなく、CO2原料のLPガスを製造するための高効率な製造技術とプロセス研究開発を進める。その成果を用いたカーボンリサイクルLPガスの早期商用化よって、脱炭素社会の実現に寄与する考えだ。

米国認証クレジットで提供 特約店と手を携えて

ENEOSグローブは顧客である特約店に対して、CNを推進するさまざまな取り組みを行っている。その一つに、CNLPガスの販売がある。米国の国際NGO団体が認証したクレジットにより、採掘から燃焼に至るまでに発生するCO2をオフセットしたものだ。全国各地の顧客から多数問い合わせを受け、既に複数の契約を締結した。納入後には、独自の供給証明書も発行。グループの環境方針として「事業活動における環境保全の推進」「低炭素・循環型社会への貢献」を掲げる同社にとって、CNLPガスの販売は、その実現に資するものとなっている。

また、12年から「ECO&EARTHキャンペーン」を展開している。同キャンペーンは、エネファームのさらなる拡販、家庭用・産業用の燃料転換、省エネ機器販売の後押しなどが目的だ。特約店の事業活動を支援するとともに、低炭素かつ豊かで安心・安全な暮らしの実現を目指す。

同社は、政府が掲げる50年の脱炭素社会実現に向けて、LPガス事業を通じたさらなる施策を今後も積極的に展開する構えだ。

【特集2】特約店向けに新商材でサポート 環境型LPガス運搬船を導入

【ジクシス】

親会社である住友商事の知見を生かしクレジットを調達するジクシス。特約店向けには「環境住宅」普及でサポートする。

コスモエネルギーホールディングス、住友商事、出光興産の3社が出資するLPガス元売り、ジクシス。同社が低炭素・脱炭素に向けて取り組むのは「自社の事業活動における対策」や「LPガス運搬船への環境対策」を進めるのと同時に、特約店向けには「クレジット使用によるCNLPガス販売」や「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)仕様も可能な先進のLPガス住宅の販売サポート」を展開している。

住商系の知見活用 LPガス仕様の先進住宅

このうち、クレジット調達については取り組み始めたばかりだ。「親会社である住友商事グループの知見も活用しながら、クレジットの由来となるプロジェクト内容を確認し、第三者機関からの認証を得たクレジットを取り扱っています」と、企画管理本部経営企画部の田中保次長は説明する。

そんなクレジットを、まずは同社の事業活動における温室効果ガス排出分(GHGプロトコールのスコープ1・2)の相殺に活用する。同時に、全国各地の特約店へCNLPガスとして販売を順次進めている。

特約店では、ジクシスから購入したCNLPガスを、現状では「小売り商材」としてではなく、主に自らの事業所やオフィスなどで生じるCO2の相殺に利用しているケースが多いそうだ。

特約店向けには、CNLPガスの取り扱いだけでなく、新しい商材にもトライしている。『ホッと楽な家』というブランド名でLPガス式エネファームを標準搭載した先進のLPガス住宅だ。オプションとして、住宅内の年間消費エネルギーと、生み出すエネルギーを相殺するZEH仕様の住宅も展開している。同社が関わるのは、住宅販売ではなく住宅設計プログラムの提供だ。

和歌山県内につくったモデルルーム

「地域の工務店との連携が必須となっていきます。実際に和歌山県の工務店に協力してもらい、県内にモデルルームを開設しました。当社としては工務店と特約店を結び、こうした住宅が増えることで、結果としてLPガスの販売促進につなげていければいいと考えています」

大型船舶の環境対策 デュアル燃料式で運搬へ

ジクシスは、LPガスサプライチェーン全体で低炭素化に取り組んでいる。

LPガスを運搬する船舶は、従来は重油燃料で運航していたが、昨今は世界各国で船舶燃料の環境対策が求められている。こうした中、重油に加えて、環境性の高いLPガスも燃料として活用できるデュアル・フューエルタイプの船舶を来年から用船する計画だ。「水素やアンモニアなども将来的には輸送できる設計となっています」とのことだ。

サプライチェーン全域で環境対策を果たそうと、ジクシスの挑戦が始まっている。