【東京ガス[法人営業部門]】
東京ガスは法人営業機能を子会社のTGESに集約する。豊富な技術力を兼ね備えた営業パーソンがユーザーの脱炭素ニーズに応える。
カーボンニュートラル(CN)に向け、エネルギーを供給する側、消費する側ともに、さまざまな動きが生まれている。「水素導管を敷設した水素の供給や利用」「自己託送などの仕組みを使った再生可能エネルギー電気の積極活用」「CN都市ガスの利用」「再エネ利用の拡大に向けた設備運用の高度化」といった実ビジネスの動きから、将来のCN化を見据えた「メタネーション設備の実証運用」など実に多様だ。
いずれも、エネルギー事業者にとって、「エネルギーを右から左へ流す」といった従来のビジネスモデルだけでは成り立たない。安全に、そして安定的にエネルギーを途絶えることなく供給し続けてきたことへの高い評価は揺るがないものの、今後CNの実現を目指す中では、従来モデルをさらに深く掘り下げていく作業が必要になるだろう。
事業者としては、需要家側の「どうすれば脱炭素に近づけるか」というニーズにいかに応えていくかが、腕の見せどころになる。その際、キーワードになるのが「ソリューション」だ。
中計の「ソリューション」 技術の知見生かした営業
東京ガスは、今年2月末に中期経営計画を発表し、その中では三つの主要戦略を挙げている。「エネルギー安定供給と脱炭素化の両立」「変化に強いしなやかな企業体質の実現」に加えて掲げるのが「ソリューションの本格展開」だ。
その方針を具現化するのが、4月に実施される東京ガスの法人営業部門と東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)を完全統合する組織改編で、これにより法人営業機能をTGESに集約する。
TGESは、言わずと知れた国内最大級の地域冷暖房事業者で、地冷で培ってきた設備群の運用ノウハウを生かしてエネルギーサービスを手掛けてきた。コージェネ、ボイラー、ヒートポンプ、蓄熱槽や蓄電池など扱ってきた熱源設備は多様だ。最近では再エネ事業のエンジニア業務にも関わるなど、あらゆるエネルギー設備に関する技術の知見を備えた組織だ。
この統合でガスや電力の販売に加えて、エネルギーサービスや脱炭素メニュー・商材、分散型機器など全てをTGESが担うことになる。技術を知る営業パーソンがフロント営業を担い、ユーザーの困りごとや脱炭素ニーズに迅速かつ的確にワンストップで対応する。
では、法人営業部門の脱炭素ソリューションとはどのようなものか―。例えば、TGESが提供する「ソーラーアドバンス」がある。ユーザーは初期投資ゼロで再エネ電気を利用できるサービスで、煩雑な電力系統の需給調整もTGESが担う。また、大型LNG火力発電所を建設・運用してきたノウハウを生かし、大型再エネ電源・バイオマス火力発電のEPC(設計・調達・建設)業務をユーザーから請け負うといった実績も積み上げている。
冒頭で触れたように多様な動きが生まれているということは、裏を返せばCNに向けたアプローチとその解は多様に存在するということ。ソリューションを前面に打ち出した東京ガスが、そのニーズにどう応えていくか注目される。
次項以降では、東京ガス法人営業部門の営業戦略インタビューを掲載。さらに成田国際空港社と東京ガスグループが共同で取り組む、エネルギー供給と脱炭素ソリューションの全体像を紹介する。
【囲み記事】CO2は邪魔モノではない 「CCU」を目指す商品群
脱炭素ソリューションに資する商材に、水素を直接・間接燃焼する水素バーナーがあり、実際に産業分野で販売が始まっている。一方、CO2を有効活用する「CCU(CO2分離回収・利用)」にも取り組む。その一つが都市ガス自体の脱炭素化となるメタネーションだ。水素とCO2を合成させて人工的にメタンを作るもので、水素キャリアであり、CCUでもある。コストやCO2削減の帰属先の課題があるが、LNGや都市ガスの既存インフラを有効活用できる点で取り組む意義は大きい。
身近な商材はコンクリートだ。ガス機器利用時のCO2を吸収・固定化させる「CO2-SUICOMO®」の技術開発に鹿島建設と取り組み、商用化を進める。そのほか、洗剤や肥料などの原料となる炭酸カリウム製造の商用化も目指す。排気中のCO2を水酸化物と反応させて作る。2m程度の設備で省スペースへの導入も期待されている。
水素バーナー式工業炉を開発している