新電力向けリスク管理業務を支援 「Enepharos」で事業の安定図る


【日鉄ソリューションズ】

電力の事業環境が不透明感を増す中、リスク回避が各社生き残りのカギだ。

日鉄ソリューションズが「リスク管理」システムを販売した。

 ウクライナショックによって化石資源調達の不透明感が増し、さらには再エネ大量導入などによって電力卸市場価格のボラティリティが高まるなど、電力事業者にとって長期的な視座に立ち、かつ安定的な業務の遂行が日に日に難しくなってきている。とりわけ、自社電源を持たず電力調達を卸市場に依存する割合が高い中小の新電力各社にとっては、昨今電力業界からの「退場」を余儀なくされているケースも出てきており、業務におけるリスク管理への取り組みは、避けて通れない課題となっている。そうした中、情報システムの設計開発や運用業務を手掛ける日鉄ソリューションズ(森田宏之社長)が新電力会社向けに、電力取引・リスク管理業務を支援する「Enepharos(エネファロス)」の提供を開始した。

金融工学のノウハウ活用 「灯台」で近未来照らす

「ラテン語のファロス(灯台)を組み合わせた造語で、事業の道標となるようなサービスにしていきたいという思いから名付けました。事業規模が小規模~準大手規模の新電力会社様をターゲットに、主に“3年”という中期先の業務見通しの作成サポートを通じてリスク管理を支援できたらと思っています」。金融ソリューション事業本部営業本部の片渕将志さんは説明する。

金融部門と電力リスク―。二つの取り組みに一見、親和性のないように見えるが、さにあらず。もともと、同社では金融デリバティブ業務を支援しており、そのノウハウを使って2001年頃から、アルミや銅といった非鉄金属調達向けのリスク管理業務支援に関わってきた。「現物」取引とは異なる先物取引、スワップ取引といったさまざまなデリバティブ商品を組み合わせながら、リスク管理の最適化を図る経済行動をシステムによって支え、大手商社を含めた国内の名だたる企業に導入してきた実績を持つ。加えて、石油元売り向けの「石油先物」商品など、エネルギー企業向けにもシステム導入の実績を持つ。そうして培ってきたノウハウを新たな領域に生かせないか。そんな発想から、電力市場に目を向けた経緯がある。

新電力の課題改善に挑戦 中長期の事業計画を支援

Enepharosのサービスの中身をのぞく前に、現在、中堅どころの新電力は電力取引業務に一体、どんな課題を抱えているのか。同社が調べたところ、「リスク管理の専門知識を持つ要員の属人化が課題」「電力価格などを入力するファイルはExcelファイル。ファイルデータが巨大になってきていて、取り扱いが困難になりつつある」「部署ごとに異なるファイルを使っていて、部署間同士や、現場と経営層の認識に齟齬が生じている」といった共通の課題を抱えているケースが多く存在することが分かった。

そこでEnepharosは、①電力取引管理・リスク管理・事業計画をサポート、②電力規制やガイドライン変更に伴うシステム改変の柔軟性、③クラウド型システムで手軽に導入―の三つのコンセプトを掲げ、「卸契約管理」「電力需要予測」「JEPX取引管理」「先物取引管理」「スワップ取引管理」「ポジション・損益管理」「リスク管理」「マーケットデータ管理」といった機能を提供する(表参照)。

Enepharos(エネファロス)が提供する機能

例えば、「来冬のスポット価格が高騰する可能性がある。先物を買う場合の事業損益はどうなるか」。そんな先物売買のシミュレーションを行う場合、価格高騰シナリオを入力→先物の入力→損益シミュレーションを高速ではじき出す―といった流れになる。システム内にはLNGや石油の先物やスワップ取引指標を登録できるようになっており、主に大手事業者が中心となって手掛けている化石資源調達関連の価格管理も、Enepharosのリスク管理機能の一環として内包している。

グループの先端IT活用 即時性・柔軟性高い計算機能

「小売り量を伸ばしたいが、調達価格が上昇した場合はどうなるか」といった見通しを出すことで、事業を拡大するか縮小するかの判断材料にも出来る。こうした機能は、経営層への報告書や銀行からの融資相談の際の事業計画を提出する際の資料作成負荷の低減にも役に立つ。

これらの機能設計には数学的な数理モデルが欠かせない。同社の強みは同じ金融関連のグループ会社の存在も大きい。データマイニングの世界的な競技会で上位入賞するなどの実績を持っていて、これらの技術力を活用したシステム設計を施している。Enepharosは人工知能やデータ解析に多く用いられているプログラミング言語やクラウドなどの先端ITを用いて開発された。

「普通にExcel計算していたら膨大な時間を要しますが、このシステムでは1日48コマの電力取引を、向こう3年間までの見通しを含めて高速計算ではじき出します。また、ユーザー独自の指標を計算に組み込むことも可能ですね」(同事業本部金融プラットフォーム事業部の石垣嘉津弥さん)

左から石垣さんと片渕さん

国の英知を結集して電力システム改革の議論を進めてきた一方、今、さまざまな「想定外」が事業環境を悪化させ、結果、数多くの事業者が“退場”している。こうした環境下で今後、公益事業者として求められるのは多様なプレイヤーが、長期的に、かつ安定的に業務を遂行し続けられるかどうか、だ。「リスク管理の重要性は日に日に増していると感じています。また、サステナビリティの観点から、今後、太陽光を含め、さまざまなエネルギーソースの活用が重要になります。日本における多様な電力ソースを活用した電力需給の安定化に寄与できれば幸いです」。同事業本部長の前原卓己・執行役員は最後にそう話す。

※1 Enepharosとそのロゴは、日鉄ソリューションズの商標または登録商標。その他本⽂記載の会社名および製品名は、それぞれ各社の商標または登録商標。

お問い合わせ先:https://www.marketing.nssol.nipponsteel.com/commodities-energy/inquiry/index.html

【マーケット情報/12月2日】原油上昇、中国経済の回復期待が強まる


【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油市場は、主要指標が軒並み上昇。中国におけるロックダウンの一部緩和による景気回復と、それにともなう石油需要回復の予測が強材料となった。

米国では、国内のインフレ率改善を受けて、連邦準備理事会(FRB)が金利の引き上げペース緩和を示唆。それにより、経済とエネルギー消費回復の可能性が期待され、原油価格を持ち上げた。ただ、週後半に発表された11月の米雇用統計で、労働者不足と賃金上昇率の実態が市場予測を上回ったことからインフレ圧力の継続が懸念された。そのため、FRBによる金利引き上げペース緩和に対する見通しも不透明となり、油価の上昇をある程度抑制した。

米原油の週間在庫は、国内製油所の稼働率上昇と輸出増を背景に急減。さらに、OPECプラスの減産計画をめぐっては、市場では現状維持の見立てが続いたことが、油価の上方圧力となった。実際、OPECプラスは12月4日の会合で減産規模の現状維持を決定している。

一方、G7によるロシア原油価格の上限規制は、期日目標としていた11月25日までに最終決定に至らかったため、市場では様子見が続いた。その後、G7は12月2日に上限価格をバレルあたり60ドルで妥結した。ただ、原油供給への懸念は生じなかったことなどから、油価への影響は限定的となった。

【12月2日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=79.98ドル(前週比3.70ドル高)、ブレント先物(ICE)=85.57ドル(前週比1.94ドル高)、オマーン先物(DME)=81.12ドル(前週0.50ドル高)、ドバイ現物(Argus)=80.96ドル(前週比0.49ドル高)

【コラム/12月5日】「融資保証見直しを考える~蒸し返しに首を傾げる」


飯倉 穣/エコノミスト

1,山手線電車内ビジョン広告が目に止まった。「この決算書じゃ、どうせ断られるでしょ! いいえ T銀行なら、決算書だけでなく不動産担保力も重視」と謳う。マイナス金利且つ金余りの中、融資先探しに翻弄される銀行員を想像した。

 「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」(22年10月28日)は、対策の一つに「経済成長を担うスタートアップ起業加速で経営者リスク軽減のため個人保証を不要とする制度の見直しや中小企業対策でも個人保証に依存しない融資慣行の確立」を目指す。

報道は伝える。「「経営者保証」制限 起業促す 金融機関に説明義務、来年から 中小向け融資見直し 金融庁11年ぶり」(日経11月2日)

 金融市場における慣行・制度変更の試みは、どれほど起業促進となり、中小企業の経営に活性化をもたらすだろうか。方向感覚微妙な融資保証見直しを考える。

2,いつの世も銀行が顧客を求める一方で、信用供与(融資)の厳しさを味わう人がいる。事業計画にやや説得性なく起業したくても資力がないか、収支不全、債務過多、資力欠如等信用力のない法人・個人である。一定条件に適う保証は、融資を得る身近な方法である。債務者の失敗で返済困難となれば、保証人は様々な債権者の要求で修羅場に直面し、悲劇も産まれる。このためいつの時代も保証人は債務保証の慣行を問題視し、その非合理性を訴え、廃止を求めたい。

3,金融機関にとって融資保証は貸付返済をより確実にする手法である。金融の歴史そのものである。企業の財務改善があれば、徐々に融資保証不要となる。それでも経営責任を問う形で一部残存する。中小企業は、所有と経営の一体性や、企業経営の不確実性が大きく、担保不足等の場合も含めて融資保証が継続している。金融サイドから見れば、合理性があり、借入サイドから見れば、先に保証ありきでは、意欲をそがれ、不合理・不当の念を隠しえない。且つ弱い立場の人は条件を受け入れざるを得ない。保証を巡る貸すものと借りるものの思いと論理は常に嚙み合わない。

4,過去保証のあり方が経済成長の絡みで検討された。アベノミクスの成長戦略である。「日本再興戦略~Japan is Back」(13年6月14日)は、「内外の資源を最大限活用したベンチャー投資・再チャレンジ投資の促進」で「個人保証制度の見直し」を盛る。「経営者本人による保証について・・一定の条件を満たす場合には、保証を求めないことや、履行時において一定の資産が残るなど早期事業再生着手のインセンテイブを与えること等のガイドラインを策定する・・」と述べた。それを受け金融庁は、「経営者保証に関するガイドライン」(13年12月9日)を公表した。対応で、融資保証なしの前提は、法人と経営者個人の資産・経理の明確な分離、二者の資金のやり取りが社会通念上適切な範囲であること、法人の資産・収益力で借入金返済が可能と判断しうること、適時・適切な財務情報の提供、経営者から十分な物的担保の提供があること等を記す。

 記述内容は、リーマンショック後、債務過剰になった中小企業対策という意味合いが大きい。起業促進となったか不明である。

5,投資(出資)と貸付けでリスクの取り方が異なる。投資は、事業失敗も覚悟である。配当以上にキャピタルゲイン目的である。融資は、事業の成功を前提として、収益から返済を受ける。預金原資のような場合、貸し倒れリスクは、極めて小さく見込む。「融資の要諦は回収にあり」の言葉がある。貸付金の返済は、当然回収可能という性善説の考えは経験的に不適切である。お金は人を惑わす。世の中、返さない人もいる。故に信用供与の言葉がある。

金融の論理から見れば、抑も保証は、回収をより確実にするためである。お金の返済における保証人の資力期待に加えて、経営者の事業の継続性、借入金返済意思の確認や経営責任の明確化等々である。 

6,起業におけるリスクの見方は、新技術や新事業の企業化の具体例が重要である。企業審査は、財務分析や各種ヒアリング等により対象企業の信用を判断する。実績のない法人等は、事業計画で判断となる。将来の不確実性をもつ。在来型の事業であれば、同業者の状況で比較判断も可能である。他方新技術の場合、技術評価が必要となる。過去の経験で、松茸の人工栽培の例がある。その技術が本当に実用化できるか。その当時、研究者やその分野の専門家、農業関係の専門金融機関も技術の蓋然性を検証できなった。結局融資困難となった。その場合、キャピタルゲイン(成功報酬)期待のリスクを織込んだ投資は可能でも、リスクを最小限にしたい融資は困難である。

7,現在銀行の経営環境は厳しい。差別化・高付加価値化できない「お金」の競争が続いている。冒頭に述べた金融状況下、収益力の低下でより長い貸し付けを行い(期間リスク)、より回収不確実な事業に融資(信用リスク)を行っている。つまり「銀行預金という貨幣を、流動性が低くリスクの高い投資に転換させる貨幣と銀行の錬金術」(マーヴィン・キング「錬金術の終わり」17年5月)が拡大している。先行きに懸念もある。銀行にリスクありである。

 この状況で金融機関の信用判断に政府が介入することはいかがであろうか。勿論公序良俗違反、信義誠実違反、権利の濫用は許されないが。信用供与の判断は、各銀行の経営マターである。

8,政治家は、個人・小企業の声を聴く機会が多い。金融機関の対応が問題となれば、政策的対応を考える。起業家の場合も金融的問題を声高に叫ぶ。所詮回収困難な融資は、無理である。その時は投資会社やファンドに投資を求める。それらが無理となれば、起業を断念せざるを得ない。金融市場の姿である。無理強いは、不全を招く。

9, 繰り言になるが、経済の真実はただ一つである。成長は、技術革新とその企業化である。企業化の時、事業家は、全責任を担うことが求められる。物的担保がなければ、事業責任者としての保証は、覚悟の証として合理的と金融機関は考える。事業家が、他の手段なく、保証を回避するのであれば、金融機関の判断は厳しくなる。そこに金融世界と実物世界の桎梏がある。その実態に対し金融庁の押しつけ基準は相応しいだろうか。政府が出来るとしたら政策金融等の補完程度であろう。

 Sound Bank(健全な銀行)を旨とする銀行は、信頼もあるが薄情でもある。事業家と金融家の見方は、かみ合わない。起業は、まさに市場が決めることである。そこに政策介入すれば、起業家の幻想を助長することにならないか。融資保証問題は、藁をもつかむ政策に見える。今回の融資保証の見直しは、新型コロナ感染による過剰債務問題に焦点を当て調整すべきと考える。

【プロフィール】経済地域研究所代表。東北大卒。日本開発銀行を経て、日本開発銀行設備投資研究所長、新都市熱供給兼新宿熱供給代表取締役社長、教育環境研究所代表取締役社長などを歴任。

COP27で途上国巻き返し 先進国譲歩で新基金創設


エジプトで11月6~20日にかけて開かれた温暖化防止国際会議のCOP27では、先進国が途上国に譲歩する形で「ロス&ダメージ」(損失と損害)に関する新たな基金の創設が決まった。翻って前回は欧米の「緩和」に関する主張を大きく取り入れ、産業革命前からの気温上昇を1.5℃未満に抑える目標の追求や、石炭火力の段階的削減などを打ち出したが、今回の合意文書ではここからほぼ前進せずじまいだった。

現地で会議を見守った有馬純・東京大学公共政策大学院特任教授は、「一言でいえば途上国の逆襲。損失と損害の基金創設自体が大金星だ。中身の検討はこれからだが、膨大な金額を要することは間違いなく、先進国のツケはますます膨らむことになる」と評する。

損失と損害とは、温暖化の影響に備える「適応」では防ぎきれない災害などへの対応。適応基金がすでにある中、先進国側は、温暖化に伴う被害への金銭的な補償責任はできる限り免れたい考えで、これまで議論は進んでこなかった。しかし今回、議長国のエジプトが最重要議題にすると表明。交渉は難航したが、会期を2日延長した結果、基金の創設に合意できた。次のCOPで対象範囲や資金調達方針などを詰める。

閉幕会合で演説後拍手を受ける議長のシュクリ・エジプト外相(央)(11月20日)(提供:朝日新聞社)

他方、欧米が前進させたかった1.5℃実現への「緩和作業計画」を巡っては、めぼしい成果はなかった。欧米は経済成長著しい中国やインドなどの削減対策強化を促したかったが、その思惑は外れた。

そして今回はロシア有事後初のCOP。「議論への影響を注目していたが、化石燃料利用に関する現実的な議論は生じなかった」(有馬氏)。現実問題とのギャップは縮まらないまま閉幕した。

逆風吹く「八甲田風力」の実情 反対運動で計画見直しへ


八甲田山周辺で計画される、日本最大級の陸上風力発電事業に反対運動が起きている。

事業者は国立公園内の風車を除外するなど計画を修正。過度な再エネ政策の転換点となるか。

「再生可能エネルギーが日本の未来に必要なのは理解している。しかし八甲田山の尾根を削り、後世に残すべき自然を破壊してまで進めるべきものなのか」―。

風力発電導入で全国一を誇る青森県。その南側の八甲田山系では、国内最大級の風力発電事業が計画されている。事業に反対する市民団体「Protect Hakkoda」の川崎恭子さんは、計画の是非をこのように問いかけた。

八甲田山を中心にした地域は人間の手が加えられていない原生林や希少生物の宝庫だ。県道から一歩外れた瞬間、手つかずの森が辺りを覆う。かつて映画の舞台にもなった八甲田山の荒々しい自然に魅力を感じる観光客は多い。そんな中で計画が進む風力発電だが、昨今の再エネを巡るトラブルもあり「風向き」が変わりつつある。

事業主体のユーラスエナジーが進める「(仮称)みちのく風力発電事業」の計画によると、青森市や十和田市など県内6市町にまたがる約1万7300haに、ブレード部分の先端が地上から最高200mに達する風車(定格出力4000~5000kW級)を120~150基建てる。最大出力は約60万kWにのぼり、一つの風力発電事業としては国内最大だ。2021年9月に事業計画を公表し、30年4月の運転開始を目指す。

現在は環境影響評価(アセスメント)の配慮書提出段階だが、配慮書には想定区域として十和田八幡平国立公園が含まれている。川崎さんは「大半は保安林であり、生態系へ悪影響が懸念される」と計画見直しを求め、5月には約7600人分の署名簿を県と青森市に提出した。その規模の大きさから注目度も高く、安易な環境破壊は起きそうもなく思えるが、実は抜け穴があるという。

この事業における資材運搬ルートには国立公園内、田代平地区の県道242号から延びる林道を使用する予定だ。整備は行き届いておらず、乗用車1台がようやく通れる程度。5000kW級の風車ブレードを運搬するのは不可能だ。原生林が並ぶ区域の林道拡張工事は事業計画に必須だが、工事は環境アセス対象にならない可能性があると川崎さんは指摘する。国立公園内は片側が崖の部分もあり、拡張には反対側の原生林を大幅に伐採する必要がある。「現在はユーラスエナジー側が自制しているが、計画が進めば林道工事は止まらない」(川崎さん)と危惧する。

影響はすでに景観面に出ている。ジャパン・リニューアブル・エナジーが手掛ける七戸十和田風力発電所は、ユーラスエナジーの事業計画に隣接する形で4000kW級風力発電8基(出力規模3万500kW)を運用中だ。山丘ガイドが本職の川崎さんは「田代平湿原を訪れた観光客から『せっかくの自然に風車が紛れ込み残念』と言われた」と肩を落とす。

地元住民は林道の拡張工事を危惧する

数少ない適地で競争が激化 推進していた自治体も反発

これまで青森県は、数少ない陸上風力の適地として多くの風力事業を担ってきた。しかし近年は限られた適地を巡り事業者間の競争が激化。自治体側も地元産業の活性化のため風力発電導入を推進してきたが、ユーラスエナジーの配慮書計画を受けた三村申吾青森県知事は8月の記者会見で「再生可能エネルギーだったら何をやってもいいのか」と不快感を表明。運搬ルートや国立公園内の開発計画に苦言を呈している。

青森市議会では事業に反対する議員らが中心となり、9月に事業中止を求める決議案を提出した。これは否決されたが、反対運動を行う中村美津緒市議は「10月の青森市議会選挙で今回の風力発電事業反対派が過半数を上回った。12月に行われる定例会で決議案を再提出する」と白紙撤回の実現に意気込む。

ただ、反対運動に参加する人の中には「事業の白紙撤回が一番だが、本質的な環境への影響や論点を論議せぬまま、反対だけ声高に叫んでも事態は変わらない」と冷静な意見もある。再エネに対する住民同士の温度差もあり、一致団結した反対運動にはつながっていないという。

事業者側も計画見直し 可能な限り負荷軽減へ

一方で、やり玉に挙げられるユーラスエナジーの意見はどうか。取材に対し、林道の拡張工事については「道が無いところに一から新たな道を造成するよりも、伐採面積・改変面積を減らせるメリットがある」と回答。可能な限り伐採範囲を軽減しながら林道を活用する意向を示している。

また、当初提出した配慮書では「各種条件をクリアする場合は、国立公園内での風車設置も否定されていない」としていたが、住民の反対意見や国立公園内への風車設置に対し「原則設置しないよう」求める環境大臣意見を反映。「Protect Hakkoda」との意見交換後、風車設置区域から国立公園を除外する方針に修正した。

事業全体の風車数についても、17基を設置検討していた国立公園内・境界の風車をゼロとするなど、最大150基から3分の2程度の最大100基まで減少させる計画変更を行う。その他、十和田八幡平国立公園に面する南側の開発計画区域を縮小。「環境に与える影響の確認作業はこれから実施する。その結果次第ではさらなる区域絞り込みが必要だと考えられる」としている。

今後の想定スケジュールに関しては、年内提出予定だった方法書の公表時期を見直し、準備書提出以降のスケジュールも住民説明を行った上で慎重に進める考えを明らかにした。ユーラスエナジーは山林業者からの意見として「風車と風車をつなぐ道路を森林施業目的として併用できれば、入りづらい場所、管理しづらい場所にアクセスしやすくなる」と林道整備のメリットを強調。そのほか主要な環境アセスメント項目である「騒音・水質・地質・猛禽類・景観」の項目についても、法令に基づき適切に対処、可能な限り影響軽減に取り組むとしている。

今後は事業者側と地元住民の間で、どれだけ合意点を見出せるかが焦点だ。環境アセスメントの実務研究を行う朝倉淳也弁護士は「合意形成がなされないと、事業者側がやりたい放題になる」と指摘。一方の事業者側からは「他社に取られる前に計画を進めようと、なりふり構わぬ業者が多くなった」(大手再エネ事業者)と規律の乱れを嘆く声が上がる。

日本の狭い国土で行う大規模再エネ開発はすでに限界点に達した感がある。過度な再エネ促進政策の転換点となるか、八甲田山風力発電事業の未来に注目したい。

電柱強度診断の効率化に向けて 映像から劣化状態を分析


【電力中央研究所】

今後、国内で標準期待寿命の65年を迎える電柱の数が増えると予想される。

高経年化した電柱の劣化状態を数値化する「電柱劣化診断技術」の開発が急ピッチで進む。

 増え続ける高齢者、現役世代の減少―。社会保障制度の維持が大きな課題となっているが、電柱をはじめとする送配電設備も同様の問題を抱えている。

国内にある電柱の多くは1960~70年代の高度成長期に施設され、本格的な経年対策が求められている。その一方、電気保安分野への入職者の減少に歯止めが掛からないことが指摘される。この難局を乗り越えるには、技術革新による電気保安の効率化が必要だ。

経済産業省の諮問機関であるスマート保安官民協議会は2021年、「電気保安分野 スマート保安アクションプラン」を策定し、デジタル化などによる業務効率化を促すために規制や制度の見直しを発表した。

さらに同年、電力広域的運営推進機関が「高経年化設備更新ガイドライン」を策定。このガイドラインはレベニューキャップ制度の事業計画に盛り込まれ、一般送配電事業者はガイドラインに基づき、各設備のリスク量を評価したうえで設備更新計画に反映させなければならない。

託送料金は直接的には小売り電気事業者が負担するが、最終的に電気料金として需要家に転嫁される。安定供給だけでなく、国民負担の観点からも電気保安の効率化は避けられないといえよう。

微細な揺れを1000倍に強調して可視化

画像処理を用いた最新技術 初となる電柱への応用

現在、電柱の更新や補強は、その劣化状態に応じて各事業者が行っている。更新の手法や考え方は事業者間でほぼ同じだが、設備の設置地域・経年・電柱の傾き・湾曲・ひび割れなどを基に、それぞれの経験や知見を踏まえ、巡視点検で設備更新の必要性を判断している。

しかし、スマート保安を実現するためには、劣化を判断する科学的根拠が必要だ。経験豊富な巡視点検者の主観的な判断に頼るのではなく、電柱が安全強度を満たしているかを比較可能な客観的数値で示さなければならない。

現在、電柱にセンサーを設置し、傾きや振動、変位によって損傷を検知する試みが行われているが、膨大な電柱の数を考慮するとセンサー設置のコストがかさむ。またセンサーを設置した箇所の振動や数値解析に基づくものが多く、電柱全体の振動姿態(対象がどのように揺れているか)については分からない部分が多かった。

電柱の安全強度を、より客観的に、より早く、低コストで判断できないか―。その解を追い求めるのが、電力中央研究所のグリッドイノベーション研究本部ファシリティ技術研究部門の高田巡上席研究員だ。

高田さんの専門は「画像処理」。構造物の強度変化は「外から加えられた力にどのような反応を示すか」(外力に対する応答特性)によって確認でき、特に局所的な損傷の影響は振動姿態に現れるから、電柱の安全強度の判断には画像処理が最適だ。それを分かっていながら、これまでは技術的な制約などにより電柱に応用できずにいた。

そんな中、NECが画像処理による「光学振動計測技術」を開発。カメラで撮影した構造物の映像から表面の微細な「動き」を捉え、対象の劣化状態を診断する。カメラで対象を撮影するだけで、構造物に近接することなく劣化状態を簡単に調査できるのだ。橋やトンネルといった巨大な構造物で実証が行われている。

質・スピードが格段に向上 電柱強度診断の未来

頑丈な電柱だが、人が押したり、風が吹けば微細に揺れる。電柱の強度診断に光学振動計測技術を応用できるのではないか―。

そこで高田さんは、横須賀地区にある電力中央研究所の試験用電柱を市販のカメラやスマートフォンで撮影。その映像をNECの光学振動計測技術で分析し、振動姿態を可視化した。実用化への第一歩を踏み出したのだ。

今後は振動計測精度を検証するため、他のセンサーの計測結果との比較などを行う。また安定的な精度を得るための条件や適応範囲を明らかにし、さまざまな状態の電柱で活用できるように研究を進めていく。変圧器など、対象を電柱上の配電設備まで広げた点検ができる可能性もあるという。

高田さんの研究で、電柱の強度診断の未来は大きく変わるかもしれない。巡視員がカメラで撮影した映像を現場からサーバーに送る。光学振動計測技術で振動姿態を計測し、安全強度を確認する―現場作業の質・スピードが格段に向上することが期待される。

電力という重要インフラを守るべく、高田さんは今日も電柱と向き合っている。

実験を行った電柱と高田さん

予備率マイナスから3%ラインを死守 展望なき需給対策で拭えぬ不安感


一時は予備率マイナス見通しのエリアもあった今冬の電力需給は、関係者の対応で辛くも3%を死守した。

ただこれで安心という水準ではなく、根本的な対策は示されないまま、電力危機が常態化している。

一昨年冬の電力ひっ迫以降、高需要期はもとより、端境期でも需給が危ぶまれる状況が相次ぐ中、政府が11月1日、今冬の電力需給対策を決定した。当初は東京エリアで1、2月に予備率がマイナスとなるなど、多くのエリアで安定供給に必要な最低ラインの3%を下回り、これまで以上に厳しい見通しとなっていた。

その後、各事業者が供給力確保などの対策を積み重ね、一番厳しい時期、エリア(東北、東京)でも4%台を確保できた。3月の福島県沖地震の影響で停止していた相馬共同火力の新地発電所1号機が発電を再開したほか、補修計画の変更、一般送配電事業者が実施するkW公募、原発の特重(特定重大事故等対処施設)設置工事の前倒しなどを講じた結果だ。

危機の経験重ね対応拡充 エリア全体の対策も深化

政府は供給対策だけでなく、需要側にも節電協力の呼びかけやDR(デマンドレスポンス)の普及などを働きかけ、今夏に続き、多くの小売り事業者がDRサービスを提供する。いざという時の調整力というより、「夏冬のDRを習慣づけ、特に太陽光が沈んだ際の需給が危ない、との認識が定着することが大事」(電力関係者)と、需要家への啓もう的な役割が期待されている。

関係者は今冬、昨冬・今夏よりも手厚い対応を実施する方針だが、具体的にはどう備えているのか。特に需給が厳しい東京エリアを抱えるJERAの野口高史・最適化統括部長は「供給対策としては、これまで以上に厚めに火力をラインナップするように準備してきた。今冬、kW公募で落札した供給力は、昨冬より200万kW弱増えている」と説明する。東京エリアは姉崎5号と6号、中部エリアは知多5号、知多第二の1号、四日市の4軸、5軸を追加供給力として確保している。

さらに、「営業運転が開始される2月までは安定的な供給力としては見込めないが、リプレース中の火力が約660万kWある。試運転中の姉崎新1号(65万kW)など、必要に応じて活用したい」と続ける。計画外停止の未然防止策も重要であり、①事前の不具合を取り除く、②予兆を見逃さない、③停止となった場合は早期復旧―といった基本的な対策を徹底することに尽きる。

リプレースが進む姉崎火力。今冬も需給への貢献が期待される
提供:JERA

他方、燃料確保については、追加kW時公募で12億kW時、LNG船3隻分約18万t相当を落札しており、東京・中部エリアに全量玉出しする。こちらも昨冬、今夏と増加傾向だ。加えてJERAグローバルマーケッツ(GM)を活用した機動的な調達も図る方針。

そしてJERAは昨冬以降、エリア全体の安定供給の確保に向けた見直しにも着手している。東京エリアでは、JEPX(日本卸電力取引所)への玉出しに関して入札主体を東京電力エナジーパートナー(EP)からJERAに変更。スポット市場の入札価格に反映する限界費用の考え方を、追加的なLNGの調達価格を考慮するようにした。加えて、東電EPとの契約内容も見直し、EPからの通告変更のタイミングを前倒しし、EPへの供給力を早めに確定するようになった。「こうした対応で、基本的にはエリア全体で玉切れを起こさないようになった。ただ、米フリーポートでの火災に伴う供給支障といった不確実性も考えれば、同様の取り組みを全国大に広げることも重要になる」(野口氏)。

さらなる備えとして、電力・ガス間の連携強化も大事な視点だ。

今までも事業者の判断で業界の枠を超えた融通を実施してきたが、11月21日の燃料調達に関する官民連絡会議でも、改めて地域内連携を強化することを確認。全国的に燃料在庫を比較的高いレベルに維持することを目指す。

「需給対策は毎回ステップアップしており、政策にも同調している」(同)。ただ、kW公募などによりコストの回収可能性は高まっているものの、例えば容量市場で供給力を確保していくのは24年度以降で、費用回収の仕組みは限られている。さらに、公募で募集をかけるタイミングは高需要期の3~4カ月前で、設備によっては準備が間に合わない可能性も。予見性をさらに高めることが求められている。

対処療法より根本治療を CNとの両立どう克服?

関係者は目の前の危機に対し、できる限りの策を講じている。ただ、これらはあくまで〝対処療法〟だ。「全体の予備力をきちんと確保するというより、今は額面の帳尻合わせをしている状態だ」(電力関係者)。例えば今冬の予備率の状況では、仮に需要が少ないエリアで突発的に大型電源が脱落するようなことがあれば、一気に10%近く落ちる可能性もある。

求められるのは、電力危機を繰り返さないための〝根本治療〟だ。「本来なら高需要期のリスクはBG(バランシンググループ)が、稀頻度リスクは系統運用者がそれぞれ責任を負うべきだが、そのバランスが崩れている。改善に向けた議論は進んでいるものの、それぞれの役割分担を今一度見つめ直すことが重要だし、これらの範疇を超えたロシア危機のようなリスクもある」(JERA野口氏)。リスクごとの性質に合わせた対応を日本全体で考える必要がある。

中でもカーボンニュートラル政策との相性の悪さは深刻だ。政府は非効率石炭火力への対応で、一定の退出や稼働抑制を促す規制などを設けたが、関係者は石炭火力の過度な退出が進みかねないと警鐘を鳴らし続けているし、「DRや節電があれば火力が退出してもよい」と錯覚されることを懸念する声もある。振り返れば、1979年の第二次オイルショックを機に政府は石油専焼火力の新設を禁止。設備の老朽化と減少が進み、内航船などのサプライチェーンも失われた。このままでは、石炭火力で同じことを繰り返しかねない。

今冬を乗り越えた後、政府は需給検証を行う予定だが、その際に電力危機の本質的課題にどこまで踏み込むのか。それができなければ、GX(グリーントランスフォーメーション)の実現は遠のくばかりだ。

大手電力の業績が総崩れ 規制料金の赤字影響鮮明に


資源価格高騰・円安進行を受け、エネルギー関連事業者が軒並み好業績を上げる中で、大手電力各社は総崩れの状態だ。

池辺電事連会長は11月18日の会見で「規制料金の在り方の検討が必要」と提起した

10月下旬に発表された2022年度上半期の決算(当期純損益)を見ると、大手電力10社のうち東京が1433億円の最終赤字を記録したのを筆頭に、東北1363億円、関西763億円、中国560億円、九州476億円、中部426億円、北陸381億円、沖縄168億円、北海道16億円と、9社が最終赤字に転落。四国だけが89億円の最終黒字となった。

通期予想を見ても、東京と九州が未定としている以外は、東北1800億円、関西1450億円、中国1390億円、中部1300億円、北陸900億円、北海道710億円、沖縄416億円、四国250億円と、大幅な最終赤字となっている。

最大の要因は、規制料金部門の収支悪化だ。石炭、LNG、石油の燃料調達価格が上昇する中で、燃料費調整条項に基づく燃調価格が全電力で上限(基準価格の1・5倍)に到達。超過分については、事業者側が負担する状況となっている。どの程度の負担額かといえば、事業者によって差があるものの、標準家庭(月使用量260kW時)の12月分料金で1400~3600円程度だ。仮に現状で燃調上限を撤廃すると、それだけの値上がりが発生することになる。

「燃料価格は過去にない水準に上昇し経営を圧迫している。このまま赤字が継続すれば、私どもの使命である電力の安定供給に支障をきたしかねず、複数の会社では規制部門の料金値上げが避けられない状況だ」。電気事業連合会の池辺和弘会長は11月18日の会見で、こう警鐘を鳴らした。

都市ガスは軒並み増益に 調整上限の影響受けず

その一方で、原料費調整条項の調整上限の大影響を実質的に免れた都市ガス会社の上半期決算は好調ぶりが目立った。主要6社の当期純損益を見ると、東京716億円、東邦68億円、西部71億円、北海道23億円、広島11億円の5社が最終黒字に。大阪だけが、米フリーポートLNGの火災事故の影響で割高なスポット調達を余儀なくされていることから、297億円の最終赤字となった。

通期予想では、東京1180億円(対前年比23・3%増)、大阪290億円(同77・8%減)、東邦160億円(同3・5%増)、西部100億円(同20倍)、北海道53億円(同1・2%増)、広島29億円(同20・8%増)と、全社が最終黒字だ。東邦を除き規制料金部門がないという事情もあり、大手電力との違いは鮮明だ。

ちなみに石油・LPガス主要各社の通期の純損益予想は、ENEOS3300億円、出光興産3250億円、コスモエネルギーホールディングス1150億円、岩谷産業300億円、伊藤忠エネクス130億円、ニチガス110億円と、こちらも全社が黒字だ。

いずれにせよ、大手電力の惨状が際立っているのは事実。安定供給体制を維持する上でも経営の健全化は急務だ。元凶である規制料金の在り方が問われている。

大けがから復帰し3年ぶり優勝 世界の頂へ「恩返し」目指す


【京葉ガス/柔道部】福岡 克仁

 岡山・関西高校在学中の2013年、全日本実業柔道団体対抗で記録員を務めると、その年に準優勝を収めた京葉ガスの活躍に心を惹かれた。「仕事をしながら競技を続け、強い相手をなぎ倒していく姿に憧れた」。当時、関西高校柔道部を指導していた槇英樹氏が京葉ガス出身ということもあり、社会人と柔道家を両立する京葉ガス柔道部に魅力を感じていた。

22年の全日本実業個人では3位入賞を果たす
提供:京葉ガス

15年に日大進学後、1年生で全日本学生体重別優勝を果たすと、京葉ガスの河原正太監督から「講道館杯を制し、世界を目指してほしい」とスカウトを受け、大学卒業後に入社した。全日本実業での団体優勝を目標に掲げる京葉ガスは、重量級の選手が多く在籍。「73㎏級の自分では力で勝負できない。体幹や肉体の強さで戦う」と猛練習を重ねたが、稽古中に左ひざの前十字、内側、後十字の断裂、半月板の損傷という大けがを負ってしまう。

「軽量級なのに会社から声をかけてもらって、恩返しもできず柔道を辞めなければいけないのか」と絶望に打ちひしがれるも、京葉ガスは寄り添った。結果が出なければ実業団選手は3年で一区切り、と言われる中で「焦らずにけがの再発だけはしないように」(河原監督)と長いリハビリに取り組んだ。復帰戦となる3年目の21年12月に全日本実業個人で優勝を果たした。出場権を手にした講道館杯は、新型コロナの影響で中止となってしまったが、代替開催された選考会でも結果を残し、全日本柔道連盟の強化選手に選ばれた。

現在は総務グループに所属しながら、午前と午後に分けて業務と練習を両立。会社に隣接する柔道場を拠点にしながら、首都圏の強豪大学や実業団へ出稽古に向かう。京葉ガス柔道部としては、地元市川市で行う柔道教室に河原監督やコーチ陣が中心となって参加し、子どもたちに柔道で得た経験を還元している。「柔道を通じて人とのつながりも増え、この会社に入社することができた。会社や柔道に恩返しができたら」と感謝の気持ちを話す。

選手としての目標は、今年の講道館杯で優勝し日本代表に選ばれて、日の丸を付けて世界で戦うことだ。同じ73㎏級には五輪二連覇の大野将平選手や、10月に開催した世界選手権準優勝の橋本壮市選手などライバルは多いが「昔ほどプレッシャーはない。自分のできることを行い、全力を出し切るのみ」。泰然自若の心で世界の頂に挑む。

1996年生まれ。岡山県出身。日本大学1年時の2015年、全日本学生柔道体重別で優勝。19年京葉ガス入社。入社直後、左ひざに大けがを負うも21年、全日本実業個人で3年ぶりに実戦復帰し優勝を果たす。

【マーケット情報/11月25日】原油下落、中国ロックダウンが重荷


【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み下落。中国における新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、経済減速と石油需要後退の懸念が一段と強まった。

中国では23日、過去最大の新規感染者数3万1,000人を記録。中国東部・鄭州市では25日からロックダウンが敷かれ、また、移動規制の対象地域も拡大。経済がさらに冷え込み、石油需要が減少するとの予測が広がった。

米国の製造業における購買担当者景気指数(PMI)が11月、2020年6月以来初めて前月比で悪化したことも、価格に対する下方圧力として働いた。

また、供給面では、ロシアの11月海上出荷が、21日時点で既に今年最高の日量350万バレルに達している。G7が禁輸措置の一環として、12月5日からロシア産原油に対する価格上限導入を計画しており、それまでに出荷を急いでいるとみられる。

一方、G7は依然、価格上限の詳細を詰めている状況。詳細が不透明なまま、5日を前に、リスク回避のためロシア産原油の取引が停滞する可能性が台頭した。さらに、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェイト、およびイラクは増産を否定。OPECプラスによる協調減産の重要性を強調した。ただ、供給減少の見込みは、価格の強材料とはならなかった。

【11月25日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=76.28ドル(前週比3.80ドル安)、ブレント先物(ICE)=83.63ドル(前週比3.99ドル安)、オマーン先物(DME)=80.62ドル(前週比3.55ドル安)、ドバイ現物(Argus)=80.47ドル(前週比3.94ドル安)

次代を創る学識者/宮原ひろ子・武蔵野美術大学造形学部教養文化・学芸員課程教授


太陽活動の変動がどのように地球環境に影響しているか。

それを解明し、気候変動対策や気象予報に生かすべく研究を続けている。

太陽物理学、宇宙線物理学の研究に従事しながら、武蔵野美術大学で、芸術を志す学生たちに一般教養として物理学の講義を行っている宮原ひろ子教授。物理と芸術、一見相反するもののようだが、「どちらも物事の観察がベースにあるという大きな共通点があり、表現に説得力を持たせる上で物理の知識が大事になってくることもある。サイエンス・アートに取り組む学生もいて、そのお手伝いができることにやりがいを感じている」と話す。

研究テーマは、太陽活動の長期的な変動のメカニズムを探ること、そしてそれに伴い地球に降り注ぐ宇宙放射線量がどのように変動するかを分析し、それらが地球の気候変動や気象現象に及ぼす影響を解明することだ。

降水量の増減は、二酸化炭素(CO2)排出量の増大に起因する温暖化によるものと説明されがちだが、気候予測モデルは未完成で、一定の条件でのシミュレーションであり実験段階に過ぎない。実は、宇宙放射線など地球外からも含めさまざまな要因があると考えられ、特に、銀河宇宙線が雲の発達に影響しているのではないかとの仮説に立ち研究を進めている。

太陽活動や宇宙放射線の影響については、今のところ定量的な手掛かりは得られていないが、それを解き明かすことができれば、より精緻な気候変動予測や天気予報が可能になる。それが研究の最終目標だ。「現在は、予測できるのはせいぜい10日程度先までの天気だが、3カ月先まで読めるようになるかもしれない。太陽光や風力など、自然変動型の再生可能エネルギーの発電予測の精緻化にも貢献できたら」と、期待を込める。

熱中できるテーマ 研究を継続できる鍵

宮原教授は、名古屋大学理学研究科で博士課程を修了した後、NASA(アメリカ航空宇宙局)ゴダード宇宙飛行センターや、東京大学宇宙線研究所などで研究に従事してきた。

宇宙放射線が気候や気象に及ぼす影響を研究する研究者は世界的にも少ない。「学位取得後は、地球や宇宙を研究する異分野のラボに籍を置かせてもらう形で研究を進めてきた。仲間と議論する機会がなかなか持てなかったことは大変ではあったが、幅広い分野に触れてきた経験が今は大きな財産になっている」と語る。「何より、熱中できるテーマと出会えたことが最大の力になった」とも。

ただ、一児の母でもある宮原教授が、自らの経験を踏まえて実感していることは、女性が結婚や出産・育児を経験しながら研究者としてのキャリアを形成することの難しさだ。特に博士号を取得してから10年程度は、任期付きの職を渡り歩かなければならない状況との相性の悪さを感じている。そのため、「これから研究者を目指す人たちが、ライフイベントによる障壁を感じることなくキャリアビジョンを実現できるような環境が必要だ」と言い、その具現化にも貢献していきたい考えだ。

みやはら・ひろ子 1978年埼玉県生まれ。2005年名古屋大学理学研究科素粒子宇宙物理学博士課程修了。東京大学宇宙線研究所などで研究に従事。13年武蔵野美術大学専任講師に着任し、准教授を経て21年4月から現職。

【メディア放談】エネルギー政策と新聞報道 日経の「緊急提言」に物申す!


<出席者>電力・ガス・石油・マスコミ/4名

緊迫化するエネルギー情勢を受けて、日経が「緊急提言」を行った。

原子力推進を盛り込んだが、求められているのは中立・客観的な報道だ。

 ―原子力発電を巡る風向きが大分、変わってきた。マスコミの世論調査を見ると、再稼働や新増設・リプレースに賛成が反対を上回っている。

 ウクライナ侵攻で深刻度を増したエネルギー危機が背景にありそうだ。そういう世の中の風潮を感じ取ってか、新聞も論調を変えつつある。

電力 日経は9月にエネルギー政策について緊急提言を打ち出した。「原発活用の体制を国主導で再構築」しろという。

 もちろん歓迎している。だが、別に原発を持ち上げてほしいわけじゃない。再エネ、原発、火力。それぞれ長所、短所がある。どう電源構成のバランスを取れば、最も安定・低廉な電力供給ができるのか。日経は日本を代表する経済紙だ。経済分析専門の研究機関も持っている。再エネや原発を日経なりにきちんと評価して、ベストだと考える方策を示してほしい。

―クオリティペーパーならばそれが役割だろう。

電力 今まではあまりにも再エネに偏りすぎていた。太陽光、風力については何の疑問も持たずに推進側の言い分を記事にしていた気がする。それを真ん中に戻してほしいだけだ。

ガス 提言をつくる際に社内でかなりのせめぎ合いがあったという。再エネは2050年に7割を目指すとしている。この数字をどう見るかは別にして、関係者が「編集局の中にかなりの再エネ原理主義者がいることが分かった」と漏らしていたらしい。

―ほかの新聞は。

石油 東京も、例えば三菱重工業が発表した革新軽水炉のことを余計な論評を付けずにたんたんと載せていた。毎日は記者が上司の意向を忖度しないで自由に記事を書いている気がする。

 朝日もそうだが、個人のレベルでは意外に原子力に中立的な記者が多い。ただ社説になると違う。朝日、東京、毎日は反原発の主張を頑として変えない。

マスコミ 朝日、東京の論説を変えるのは、イスラム教徒をキリスト教に改宗させるようなもの。それでいいと思う。日本は中国、北朝鮮と違う。全体主義の国ではない。原発、自衛隊、米軍基地移転に反対する人たちがいるから、その声を代弁するメディアも要る。ある意味で社会が健全な証しだ。

電力 ただ、「うそ」は止めてほしい。よく例に出る「メガソーラー完成、原発1基分」の記事は「うそ」だと思っている。わざと右目をつぶって、左目だけで見えることを書く。太陽光発電で意図的にkW時に触れない記事は、正しいことを伝えていない。

―新聞も商品。朝日、毎日、東京は読者が再エネを「信仰」しているから、そういう記事を載せてきた。

石油 日経はどうだったかな。さすがにもう載せないと思うけど、注意して読んでいくよ。

原発に追い風吹くが…… 投資回収に難題あり

―原子力肯定派が増えていることで、政府が進めようとしている再稼働、運転期間延長、新増設・リプレースに弾みが付きそうだ。

電力 追い風が吹いて環境は整いつつあるが、本当に大変なのはこれからだ。再稼働と運転期間延長はそれなりに進む。問題は新増設・リプレースだ。原発の建設コストは1基1兆円程度になる。しかし、今、それだけの額の投資を回収できる保証はない。金融機関は安易な融資はしない。

―確かに原子力規制委員会の判断、裁判所の決定や判決、自治体首長の考えなどで、原発は突然止まったり、定検中の発電所が再稼働しなくなったりする。

電力 原発の発電単価を低レベルに保つには、そういったリスクを一つずつ消していくしかない。それは水面下での作業になる。

マスコミ 反対派はコストの点を突いていくだろう。そこが原発の「急所」だと思う。リスクを減らすのは面倒な作業になるが、再稼働、運転延長から一歩ずつ進めて信用を得ていくしかない。すると需要家の理解が得られて、「一時的に多少値段が高くなっても、安定した電源が必要」となるかもしれない。

―もっとも原子力も完璧なエネルギー源ではない。

マスコミ むしろ足を引っ張りかねないのは原発推進派の方だ。原子力は優れた技術だが、国や学識者などが「上から目線」で話をしても拒否反応しか起きない。あれだけの被害があったのだから、日本人は福島事故を忘れていない。東京電力の「A級戦犯」は起訴までされたが、国は「無罪」になった。傲慢な態度を取ると猛烈な反発をくらうことになる。

官邸のトップダウンに困惑 問われる首相の「話す力」

―電気・ガス料金の急激な値上がりの激変緩和として、政府は負担軽減策を打ち出す。託送料金の引き下げなどが検討された。

ガス 政権首脳の「需要家に軽減幅が分かるようにしろ」の一声で託送料金の引き下げはなくなった。激変緩和対策は官邸からのトップダウンで、実際に対策を考える経産省は頭を抱えている。

石油 もともとはガソリン価格高騰への対策だった。景気後退の懸念で原油価格は一時的に下落したが、OPECプラスの減産で来年、また上昇するかもしれない。当然、リンクして天然ガスも上がる。しかも円安が進んでいる。するとズルズルといつまでも高騰対策を続けなければならない。

マスコミ では財源をどうする。首相は「聞く力」で総理総裁になったが、エネルギー政策では「話す力」が問われる。時には、できないことはできないと言うことも大切になる。

―せっかくの黄金の三年間。輝いてほしいのだが……。

森林資源を地域密着型発電所に 持続可能な豊かな社会の実現を


【リレーコラム】勝山 猛/フォレストエナジー執行役員

 わが国の経済競争力の低下が止まらない。

1ドル140円で換算した今年のドル建て名目GDPは30年前に逆戻りし、4兆ドルを下回り、4位のドイツとほぼ並ぶ見込みと報じられたのは記憶に新しい。今や一人当たりのドル建て名目GDPは世界30位近くの水準にある。自律的な経済成長が実現できなくなった穴埋め策として、財政出動で経済を支えてきた結果、今年度末の普通国債発行残高は30年前の約6倍、初の1000兆円超えが予想される。政府債務残高は対GDP比で250%超、世界ワースト2位という状況だ。これまでは家計と企業の貯蓄によって国債の国内消化構造を維持してきたが、貯蓄超過の余剰幅は頭打ちを迎え、この構造が揺らぐ懸念が生じている。

この懸念を増幅させる事象の一つが経常収支の悪化だ。経常赤字が続けば国債の国内消化率が低迷し、海外資金の調達が必要となるが、国債消化の海外依存はひとたび信用不安が発生すると急速な財政悪化を招きかねない。 これら経済的諸問題の解決に寄与し、さらに環境問題の改善、エネルギー安全保障の確立にも寄与するのが再生可能エネルギーだ。再エネの普及は経常収支の改善、経済構造の改革に寄与する。また、地球温暖化対策、エネルギー自給率の向上にも寄与する。

バイオマス発電で地域と国に貢献

中でも当社の主業である地域密着型の小型木質バイオマスエネルギー事業はこれら諸問題の解決に寄与する有力手段の一つであることを信じて疑わない。わが国は国土の約7割を森林が占める世界有数の森林資源大国だ。この森林を有効活用する事業が地域密着型の小型木質バイオマスエネルギー事業である。

中山間地域の森林資源をエネルギー源として活用し、分散電源化を実現することで地域内のエネルギー循環・経済循環に貢献し、わが国の経済・エネルギー構造の改革に寄与する。また、当社の発電所で副産物として生まれるバイオ炭は、CO2などの排出量の削減に関わるJクレジットの認証を受けた。つまりカーボンニュートラルを超え、カーボンネガティブを実現する事業であり、脱炭素化に貢献する事業である。森林資源の活用が森林整備につながり、CO2吸収源対策に寄与することも可能だ。さらには欧州が先行する熱電併給設備などの国産化を進め、産業空洞化対策に寄与することもできる。

この事業を通じて日本経済の再生、脱炭素社会の実現、エネルギー安全保障の確立に寄与し、持続可能な豊かな社会の実現に貢献する。使命感を持って取り組んでいきたい。

かつやま・たけし 国内外の資産運用会社、金融庁などを経て、2012年、FIT制度創設と同時に再エネ業界に転身する。フォレストエナジーの創業メンバーとして木質バイオマスエネルギー事業に従事。現在に至る。

※次回はレノバ執行役員の永井裕介さんです。

【柳本 顕 自民党衆議院議員 環境大臣政務官兼内閣府大臣政務官】「電力構成のベストミックス重要」


やなぎもと・あきら 京都大学法学部卒。1997年関西電力入社。99年より大阪市会議員(5期)。2015年、19年大阪市長選挙出馬。21年、衆院初当選(比例近畿ブロック)。22年環境大臣政務官兼内閣府大臣政務官に就任。

父の急逝をきっかけに、関西電力を退社。市議として政治の世界に飛び込んだ。

大阪都構想議論で注目を集Aめ21年衆院初当選。福島復興や環境問題に尽力する。

 父親は元大阪市議会議員の柳本豊氏。叔父は衆議院で法務委員長などを務めた柳本卓治氏と、政治を身近に感じられる立場にあったが、政治家を志したことはなかった。頭にあったのは「日本という国に対して、どう貢献できるか」。就職活動ではインフラなどの基幹産業に対し興味を持ち、大学卒業後は関西電力に入社した。

入社3年目の1999年、本店に異動となった直後、父・豊氏の逝去に伴う大阪市議会の補欠選挙が行われることとなった。「25歳で仕事も後任に引き継ぎを終えたタイミング。さまざまな状況が重なり、運命的なものを感じた」と出馬し、最年少25歳で初当選を果たす。以降、一般企業で培った市民感覚を忘れず、大阪市議会で市民に寄り添った政策提案を行ってきた。

名前が一躍全国で知られるようになったのは、2度にわたる大阪市長選挙だ。1回目となる15年当時、橋下徹大阪市長と大阪都構想で論戦を繰り広げていたが、出身である西成区の特区構想などで「西成を変えることが、大阪・日本を変えることになるという思いは、橋下さんと合致していた」と話す。高度経済成長期の西成区は、日本の労働力を担うエリアであったが、90年代以降は労働産業の構造が変化。まちづくりは大きな転換期を迎えていた。

大阪市の権限や財源を、府に吸収させる大阪都構想には反対したが、一極集中構造から多極分散型の国土構造へ変革を求めるベクトルでは、橋下市政に協調して、西成区だけでなく、大阪全体の都市ブランド力の構築を目指した。

地方行政に関わる中で、国の民営化推進路線への課題も見えてきたという。「新自由主義的な発想ですべて民間に任せることは、行き過ぎた競争をあおることになる」と、インフラの過剰な民間委託で起こり得る生活基盤の破壊に警鐘を鳴らす。大阪市では都構想とともに、水道事業を巡る民営化の議論も行われていたが「命の水に外資企業が入って、本当に市民の生活を守れるのか」と疑問を呈していた。

制度設計や行財政改革という面で俯瞰的に政策を行う国の視点には、地元の視点や現場の状況把握が足りないと話す。「これまで携わってきた地方政治のエッセンスを国政に注入したい」という思いで、21年に衆議院選挙に出馬、初当選を果たした。

行財政改革で過度な集約化を危惧 多極分散型の国土構造変革目指す

22年8月、第2次岸田改造内閣の環境大臣政務官兼内閣府大臣政務官に就任。環境保全分野で、海洋プラスチック問題や循環経済への移行、公害健康被害対策や東日本大震災、福島原発事故からの復興再生に向けた取り組みを担うとともに、原子力規制委員会を所管する。内閣府の政務官も兼務し、原子力防災にも関わる。10月には福島第一原子力発電所を視察した。「想定外も想定しながら、安全対策と復興への住民理解のための信頼関係の構築を進めなければいけない」と決意を新たにする。

原子力の活用に関しては、関電時代に教育を受けた「電力構成のベストミックスのあり方」を重視している。当時と現在で比率は異なるものの、火力と水力と原子力、そして再生可能エネルギーで、それぞれ役割を担うことが重要だと話す。安定的で安価、CO2排出量削減という点で、原子力も一定の役割を持つと期待している。

資源循環、廃棄物行政の面でも大阪での知見を生かしたいと話す。13年当時、大阪市の中で唯一中心部に立地するごみ焼却場「森之宮工場」の老朽化に伴い、建替や廃止の議論があった。紆余曲折の結果、周辺部の焼却工場で分散対応し、現地は別用途で活用する方向となった。「老朽化や余力ある処理場の集約化は、行財政改革の視点でいえば正しい」とする一方で「環境負荷の観点でいえば、市中心部の処理場がなくなったことで、輸送によるコスト増やCO2排出に影響がある」と指摘。真の循環型社会を目指す上では、廃棄物処理についても行革による集約化・広域化の視点だけではなく、新技術をいかした自区内処理に努める必要もあると前を見据える。

現在は大阪の課題や問題を吸い上げ、国に反映する橋渡し役として汗をかく毎日だ。大阪都構想の住民投票などで、市井の声の力を体感し「政治は住民の声があれば、マグマのよう物事が進む」と話す。自身も日々、住民の声を聴くことが政治活動だとして、情報発信や信頼関係構築の重要性を説く。「父の死

をきっかけにサラリーマンから転身したが、政治の世界の非日常性を常に感じてきた。政治家らしくないかもしれないが、一般的な感覚をこれからも持ち続けたい」。市民に寄り添う政治信念をこれからも貫いていく。

【需要家】節電プログラムの効果は カギ握る広報戦略


【業界スクランブル/需要家】

冬の需給ひっ迫に備え、政府による節電プログラム促進事業が始まっている。小売り電気事業者が実施する節電プログラムに参加した家庭などの低圧の需要家に対し2000円、高圧・特別高圧の需要家に対し20万円相当のポイントを付与する。節電行動を実施せずともポイントが得られる枠組みで、施策の効果は不透明であるが、やるからには少しでも効果を上げるため、政府、電力会社からの積極的な広報に期待したい。筆者が契約する電力会社の場合、会員向けウェブサイトより節電プログラムへの参加を表明することが可能となっている。こうした仕組みの場合、まず会員向けウェブサイトの閲覧率向上に向けた取り組みが必要であろう。

エネルギー小売り事業者の情報提供について検討している経済産業省の「エネルギー小売事業者の省エネガイドライン検討会」では、委員より需要家がウェブサイトを閲覧しない実態について指摘される場面があった。同委員会で公表された消費者向けアンケート(2020年11月実施)によると、電力会社が「家電等の使い方による省エネ効果や光熱費の削減額」の情報提供を行うことを把握している割合は33%で、請求額など基本的な内容を除く情報については認知度が低い状況である。一方、アンケートでは情報の入手先としてSNSやテレビも一定のニーズがあることが確認されており、さまざまなチャネルを通じた広報が有効と考えられる。

近年電力会社のウェブサイトでは、エネルギー消費量の他世帯比較など、省エネルギーを促すコンテンツが充実しつつある。節電促進事業がこうしたコンテンツに触れるきっかけとなることで、需給ひっ迫時における節電だけでなく、平時の省エネルギー推進につながることにも期待したい。(K)