〝ハイブリッド大国〟の日本において、EVが主役となる時代は本当に到来するのか―。
欧米や中国でのEV台頭を背景に、コストやインフラなど多様な視点でのEV論争が盛んだ。
そもそもわが国では、1997年にトヨタ自動車が世界初の量産ハイブリッド車(HV)となる初代「プリウス」を発売して以来、日産自動車やホンダなど国内メーカー各社が続々とHV市場に参入し、高級車から軽自動車まで多彩な車種でHV化を展開してきた。日進月歩の技術開発で高性能化・低コスト化が着々と進み、今や新車販売の半分をHVが占める状況に。気付けば、世界でも屈指のHV社会が形成されつつあるのだ。
こうしたHV先駆者としての歴史があるだけに、エンジンを搭載しないBEV(バッテリーEV)を巡っては、「環境性能はもとより、イニシャル・ランニングコスト、リセールバリュー、航続距離、エネルギー供給インフラなどさまざまな面でEVの優位性が発揮されない限り、HVを上回るシェア獲得は現実的に難しい」(マツダ関係者)と見る向きが多い。
しかし、その一方で世界的にはEVシフトが加速。海外のモーターショーに目を向ければ、まさに〝EV花盛り〟の様相だ。実際、輸入車を扱うディーラーからは、「10年後には販売車の主力がEVになるのはほぼ確実」(フォルクスワーゲン代理店関係者)との声も。「日本がエンジン車に固執していると、ガラパゴス化してしまう」(同)という危機感は、決して絵空事ではないのだ。
昨年時点での新車販売におけるEVのシェアを見ると、中国20%、欧州12・1%、米国5・8%に対し、日本は1・4%にとどまっている。とはいえ、日産の軽EV「サクラ」の登場や中国・BYDの上陸などで、「EV時代の幕開け」といった雰囲気も漂い始めた。2035年までに新車販売での電動車比率100%を目標として掲げる日本で、EVは乗用車の主役となり得るのだろうか。

必要な充電器整備の加速 集合住宅への設置に課題も
EV時代の行方を占うに当たって、まずは普及の土台となる充電インフラの現状を見てみよう。
EV充電器には、3~6kWの低出力で長時間をかけて給電する普通充電器と、最大150kWの高出力により短時間で給電可能な急速充電器がある。普通充電器は戸建てや集合住宅の共用駐車場などに、急速充電器は高速道路のSA・PAや道の駅、ディーラーなど主に公共用として設置されている。
政府が10月に策定した充電インフラ指針では設置目標が30年までに「30万口設置」となり、これまでの数値から倍増した。だが、3月時点での設置数は普通充電器が約3万基、急速充電器が約9000基。目標にはまだまだ遠い。遠出の際などに重要となる公共用充電器では、EV・プラグインハイブリッド車(PHEV)1台当たりの基数が欧州を上回っているものの、欧州並みのEV普及率を目指すのであれば、整備を一段と加速させる必要がある。
一方で都市部に多い集合住宅向けの普通充電器の設置は、大きな課題を抱えている。まず新築物件については、「ライオンズマンション」などを手掛ける大京が昨年5月、今後開発する分譲マンションの全駐車区画にEV用の充電コンセントを標準設置すると発表。また東京都では25年から新築マンションへのEV充電器設置を義務化するなど、少しずつ取り組みが進み始めた。
問題は大多数の既築物件だ。充電器の設置には管理組合の同意が必要で、理事会では全会一致、その後の総会で半数以上の賛同が求められるケースが多く、導入は一筋縄ではいかない。ほかにも機械式駐車場では、設置可能な駐車場が限定されることや設置コストが高額といった問題もある。
都市部でマンション住まいの会社員は、電車通勤で車は週末使いというケースが多い。「駐車場に置かれている時間が圧倒的に長いので、その間に充電できてこそEVのメリットがある。それができない限り、現車のHVから買い替える際の選択肢にはなり得ない」(都心在住のサラリーマン)
「自宅に充電器がなくてもEVを購入するお客さまも少しずつ増え始めた」(前出の代理店関係者)というが、自宅充電がマストと考えている層にEVの購入を訴求していくのは容易ではないだろう。








