【マーケット情報/5月6日】原油続伸、供給減の見込み強まる

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み続伸。供給減少の予想が一段と広がり、需給逼迫観を強めた。

欧州委員会は、ロシア製品の段階的な禁輸措置を検討している。原油は今後6カ月以内に、石油製品は年末までに完全撤退を立案した。ただ、一部加盟国は引き続き、経済への影響を考慮して慎重な姿勢。合意形成には至っていない。

米石油会社パイオニア・ナチュラル・リソーシズは、米国エネルギー情報局(EIA)の見通しほど国内生産は伸びないと予測。石油各社は、新型コロナウイルス感染拡大による需要後退や人手不足などの問題を抱えているうえ、増産よりも株主還元を優先していると指摘した。EIAは、今年の産油量は日量1,201万バレル、来年は過去最高の日量1,295万バレルに上ると見込んでいる。

OPECプラスは6月の増産量を、従来の計画通り日量43万2,000バレルで留めると決定。ロシアからの供給に先行き不透明感があるものの、中国需要の後退で相殺されるとみているようだ。

一方、米国の石油サービス会社ベーカー・ヒューズが先週発表した国内の石油採掘リグ稼働数は、前週から5基増加し、557基となった。また、4月29日までの一週間における米航空機の利用者数は、新型ウイルス感染者数の増加を受け、過去3週間で最低を記録。ただ、価格の弱材料にはならなかった。

【5月6日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=109.77ドル(前週比5.08ドル高)、ブレント先物(ICE)=112.39ドル(前週比3.05ドル高)、オマーン先物(DME)=107.87ドル(前週比4.79ドル高)、ドバイ現物(Argus)=107.20ドル(前週比1.24ドル高)

GXリーグに440社賛同 入り乱れる企業の思惑

経済産業省が、カーボン・クレジット市場での自主的な排出量取引などを行う場として2023年4月から始める「GX(グリーントランスフォーメーション)リーグ」の賛同企業が、440社(4月1日時点)に上った。

カーボンプライシングを巡っては、エネルギー高騰に歯止めがかからない状況下で石油元売りへの補助金を拡充、延長したことで、炭素税の導入議論が停滞。当面の手法としては排出量取引に軍配が上がりつつある。

GXリーグには大手電力や大手都市ガス、一部新電力などが賛同するほか、石油製造、鉄、化学、自動車、紙パ業など、産業界の主要企業が名を連ねる。今後、これらの企業と経産省で制度設計を進めていく。

ただ、思惑はさまざまだ。「政府による排出量取引が導入されたら海外に製造部門を移さざるを得ない。制度設計でそうした方向に行かせないために賛同した」(製造業関係者)。他方、CO2削減の過剰達成が見込める企業はそれで収益を最大化する方向を探るだろう。440社もの思惑がどう帰結するのか、要注目だ。

秩序崩壊で発生したエネルギー危機 電力システム改革変更の契機に

【識者の視点】松尾 豪/エネルギー経済社会研究所代表

価格高騰・需給ひっ迫という未曽有のエネルギー危機が世界的に発生している。

その荒波はわが国の電力市場にも押し寄せる。危機の構図と対策を専門家が解説する。

 世界各地でエネルギー価格が高騰し、電気・ガス料金の上昇や市場価格高騰に直面している。日本でも燃料・電力市場価格高騰、新電力経営破綻、電気料金の急激な上昇、老朽火力の廃止に伴う供給力不足といった諸問題が相次いで発生している。

国内外の諸要因により、日本を取り巻くエネルギー情勢は大幅に変化し、電力自由化への逆風が高まっている。

諸外国で先行した電力自由化・電力市場は1990年代に設計・導入が進んだが、「東西冷戦に勝利した西側諸国による国際秩序を大前提に設計されたもの」であり、安定的な資源開発・燃料供給が行われる大前提において経済効率性の向上や最適化を目指してきたものであった。

今回、力を背景とした一方的な現状変更の試み、すなわちロシア軍によるウクライナ軍事侵攻によってこの大前提が崩れ、急激にエネルギー安全保障の課題が政策課題に浮上している。われわれは、電力システム改革の前提が変化しており、従前とは一線を画した議論が必要になっていることを認識する必要がある。「短期市場」を前提にした経済効率性の向上(自由化)から、「長期契約」を前提にした安定供給・低廉な電気料金の維持が求められるようになっているのだ。

天然ガスリスクが表面化 長期契約の重要性高まる

さて、今次危機ではエネルギーシステムの根幹が揺らぐ事態が多発した。特に大きく注目されたのは天然ガスであり、契約形態(長期契約・スポット活用)や輸送形態(パイプライン・LNG)による長短所が再認識され、リスクが表面化した。

欧州は天然ガスパイプラインへの依存度が高い。パイプラインの特徴は当日受け渡しが可能であり、運用柔軟性を有することである。ロシアのガスプロムは2020年まで当日受け渡しのスポット入札を行っていたほか、欧州の事業者は契約で定められたレンジの範疇で取引量を頻繁に変えており、実際にロシアと欧州をつなぐ「Yamal Europe Gas Pipeline」や「Soyuz Gas Pipeline」の流量は刻々と変化している。欧州の脱炭素を支えていたのは、上限値・下限値のレンジ設定がなされたロシア・ノルウェー産天然ガスの供給契約と地下ガス貯蔵設備であったといえる。

一方、日本は資源国と天然ガスパイプラインで接続されておらず、船舶輸送に頼る必要があり運用柔軟性に乏しい。 20/21年冬の需給ひっ迫ではLNGの運用柔軟性の課題が、昨今のエネルギー危機では燃料契約ショートの課題が、それぞれ再認識された。

今後、日本では洋上風力発電の導入拡大を控えるなど、変動性再生可能エネルギー(VRE)大量導入時代を迎えるが、VRE発電出力が継続して低下した場合に備えた燃料調達・電源確保が必要となる。

昨年の欧州・中国では風力出力低下がきっかけで需給ひっ迫に直面し、LNGをスポット調達したもののLNG到着までにタイムラグがあり、スポット玉が需要地に到着した時には需給ひっ迫は解消している事態が発生している。20/21年冬の日本でも同様の事象が発生した。これらケーススタディを踏まえると、今後洋上風力発電の大量導入を控える日本では、需給ひっ迫時に備えて燃料長期契約の重要性が高まると考えられる。

欧州連合加盟国は27年までにロシア産資源の脱却を目指しており、今後世界的な資源開発・獲得競争が行われる可能性がある。資源開発の観点でも長期契約は極めて重要である。

他方で、日本のLNG長期契約は、脱炭素化の潮流など、需要の見通しが難しいことから減少傾向である。21年に閣議決定された第六次エネルギー基本計画においても、電源構成に占めるLNG比率は30年目標では20%に減少(19年実績は37%)する見込みとなっている。

大手発電事業者の発電用LNG長期契約容量

燃料調達が曲がり角に 適切なリスクヘッジを

また、足元では原子力発電設備の新規制基準安全対策費を含めた、電源固定費の回収が課題となっている。結果として稼働率の低い火力発電所の閉鎖が相次いでおり、夏季・冬季の供給力不足の課題が深刻化、電力取引市場のさらなる価格高騰や、小売り電気事業者による顧客新規受付停止につながっている。

燃料長期契約の維持や電源固定費回収にあたっては、電力システムの諸費用を回収する役割を負う小売り電気事業者の重要性が高まる。これまで、大手電力会社は自社需要を前提に燃料調達を行い、余剰分を相対販売もしくはスポット市場への売り入札を行ってきたが、全面自由化に伴う小売り競争の激化と電力・ガス取引監視等委員会から求められる卸取引の内外無差別によって、この運用は曲がり角に来ている。今後は新電力を含めた燃料調達スキームの構築が必要になるものと考えられる。

小売り電気事業者は、電源固定費の負担や燃料価格の変動リスク・引取量のオフテイクを前提とした電力・ガス長期相対契約を発電事業者と締結し、電力のトレーディング機能を強化し、適切なリスクヘッジを行う必要がある。長期相対契約とトレーディング・適切なリスクヘッジを行うことで、小売り電気事業者は自社需要に対する安定供給・低廉な電気料金の維持が実現でき、結果として需要家の信頼につながる。

他方で、発電事業者も変革が必要になる。再エネ導入拡大に伴い、燃料運用最適化のニーズが今後更に高まると考えられる。大手電力会社間では、将来的な燃料トレーディング機能統合の検討が必要になるものと考えられる。

今次エネルギー危機はエネルギー事業者に多大なインパクトをもたらしたが、一方でエネルギービジネスの本質を問うものであり、エネルギー市場参加者はビジネスモデルの変革が求められている。

まつお・ごう 大学在学中の会社起業を経て、2012年イーレックス入社。代理店制度構築、VPP事業調査、制度渉外などを担当。アビームコンサルティングで国内外電力市場・制度の調査・事業者支援を担当した後、19年ディー・エヌ・エー入社。引き続き国内外電力市場・制度の調査を担当したほか、分散電源事業開発に携わった。21年3月から現職。

電力需給のひっ迫招いた不作為 自由化と脱炭素の見直しを

【論説室の窓】井伊重之/産経新聞論説委員

経済産業省が初めて発令した「電力需給ひっ迫警報」は、首都圏の電力供給の危うさを浮き彫りにした。

電力需給が綱渡りの状態に陥るような、安定供給を揺るがす不作為はすぐに改めるべきだ。

 「このままでは電力供給が大変厳しくなり、午後8時以降に東京電力管内で200万から300万戸が停電する恐れがある」

3月21日夜に経済産業省が東電管内に需給ひっ迫警報を発令したが、それでも22日の電力需給は気温低下で節電が思うように浸透しなかった。同日昼前には東北電力管内にも警報が発令された。このため、東電パワーグリッド(PG)は午後の記者会見で、このままでは停電の恐れがあると強い調子で警告し、家庭や企業に節電を呼びかけた。萩生田光一経産相も緊急会見で節電を改めて要請した。

実際に300万戸が停電する事態になれば、一時400万戸超が停電した東日本大震災直後に次ぐ規模だ。そこまで東電と東北電の電力需給は厳しい局面に追い込まれていた。だが、東電PGの脅しのような警告が効を奏し、都内では街頭の広告ネオンが消え、都庁や東京スカイツリーなどの観光地ライトアップも相次いで中止された。こうして夕方以降の電力使用は徐々に減少し、大規模な停電は何とか回避された。

もちろん警報発令のタイミングや、大口需要家に節電を義務付ける電力使用制限令をなぜ発動しなかったかなどの検証が欠かせない。しかし、何よりも電力需給のひっ迫が常態化しつつある構造的な要因に目を向ける必要がある。首都圏における電力の供給余力は不足しており、需給がひっ迫するたびに全国規模の電力融通と節電要請が繰り返されているものの、これらはその場しのぎの対症療法にすぎない。脱炭素と電力自由化で供給余力が低下している現実を直視し、安定電源の確保に向けた具体的な対策を講じなければならない。

首都圏への電力供給余力は不足している

常態化しつつある電力不足 石油火力廃止が大きく影響

今回の電力ひっ迫は、3月16日に福島県沖で発生した最大震度6強の地震で同県沿岸部の火力発電所が被災し、供給力が低下したためだ。東日本では地震の影響で一時、約650万kWの電源が失われた。2月の厳冬期を過ぎて点検に入った発電所も多かった。これらに加えて東日本を季節外れの寒さが襲い、暖房需要が急拡大した。

いくつかの悪条件が重なったことが電力需給のひっ迫につながったわけだが、その背景にあるのは電力会社の供給余力の低下だ。特に脱炭素化に向けて太陽光発電が大量導入されたことで火力発電所の操業率は下がる一方、電力自由化を背景にして採算性が低い老朽化した石油火力発電所を中心に廃止が進んでいる影響が大きい。

わが国では、高度経済成長期の1960年代から70年代にかけて電力需要が急増し、それに伴って火力発電所が相次いで建設された。それらの発電設備は建設から50年以上を経て老朽化が進み、ちょうど廃止時期を迎えている。

経産省によると、2016年度から20年度までの5年間で1000万kW近い石油火力が廃止された。これまでは稼働率が低く、老朽化した石油火力が需給ひっ迫時に活躍していたが、電力自由化で電力会社はそうした余分な発電設備を保有できなくなっている。これが供給余力の低下を招いている最大の要因といえる。

懸念されるのは、そうした老朽化した石油火力の廃止がこれから加速していくことだ。ここ数年は北海道電力や北陸電力などで液化天然ガス(LNG)火力発電所の新設もあったが、21年度から25年度までの5年間では1140万kWの石油火力が廃止される予定だ。今後は廃止火力が新設火力を大幅に上回り、供給力の低下が顕著になる。このため、経産省では火力発電所の廃止を巡り、事前届け出を義務付ける電気事業法改正案を今国会に提出した。供給不足が予想される場合には廃止の延期を求め、その維持管理費を補塡する措置も講じる方針だ。

ただ、老朽石油火力の廃止を多少延ばしても、根本的な対策にはならない。東京電力と中部電力の火力発電部門を統合したJERAは、電力需給のひっ迫警報が解除された約1週間後、すでに休止していた9基の火力発電を廃止すると発表した。その合計発電能力は約400万kWに及ぶ。いずれも高度経済成長期に完成した発電設備だ。同社ではその跡地に約660万kWの火力発電を新たに建設して供給力を高めるというが、設備廃棄から建設までには2年程度の時間がかかるため、すぐに供給力が増強されるわけではない。

太陽光発電は役に立たず 高まる原発再稼働を求める声

こうした状況を見て、「再エネの導入を急ぐべきだ」との声も出ている。だが、今回もそうだったように、悪天候時には太陽光発電は稼働せず、必要な発電量は全く稼げない。昨年夏に起きた欧州の電力危機は、風がやんで主力の風力発電が稼働しなくなったことが大きな要因だった。日本も再エネの導入拡大が政策課題となっているが、火力発電の新設を妨げている脱炭素と電力自由化の見直しが急務だ。

その上で首都圏の安定供給をいち早く確保するためには、安全性を確認した原発の再稼働が欠かせない。ここにきて政界からも原発の早期再稼働を求める声がようやく上がり始めた。自民党の電力安定供給推進議員連盟は、テロ対策で使われる特定重大事故等対処施設(特重施設)の整備待ちの原発について、「原発を稼働させながら整備することを認めるべきだ」とする決議をまとめた。

また、日本維新の会も特重施設待ちの関西電力美浜3号機や高浜1、2号機について、緊急稼働させるように求めた。同時にエネルギー基本計画も再改定し、原発の位置付けを明確化するように要請した。

こうした提言について、萩生田氏は「原発の安全性は原子力規制委員会の所管なので、経産省としてコメントは控える」との姿勢に終始している。政府の意思決定システムの中では原発の安全対策は規制委の所管だが、規制委の審査のあり方などは政治が監視すべきだ。少なくとも規制委の安全審査を効率化するなどの具体的な対策を講じる必要がある。政府・与党は不作為を今こそ脱する時だ。

求められる導管運営の効率化 より低廉な託送料金の実現に期待

【佐藤美智夫/東京電力エナジーパートナー 副社長販売本部長】

導管事業者3社が発足したのを機に、これまで以上に導管運営の効率化を図る努力をしていただけるものと期待しています。効率化を反映し託送料金が低減されれば、都市ガスを利用する全てのお客さまのメリットになります。

例えば、現在は、原則として内管保安を担う導管事業者と消費機器保安を担う小売り事業者の双方が開栓に赴く必要がありますが、電力と同様に全需要家にスマートメーターが行き渡れば遠隔操作が可能となり、保安業務の効率化とコスト抑制につながるはずです。

制度面では、複数の事業者のコストを比較し、基準となるコストを算定する「ヤードスティック方式」により査定された託送料金がいまだに採用されていることに懸念を持っています。地方の都市ガス会社の中には、託送料金が高く新規参入できないケースが見受けられます。

当社が立ち上げたガス卸のプラットフォーム「東京エナジーアライアンス(TEA)」に14事業者が参加し、大都市圏では需要家選択肢が多様化されるなどシステム改革の目的がある程度達成されました。しかし参入者がない地方都市ガスエリアもあり、低廉な相対卸料金など、競争に資する仕組みの導入は不可欠です。

特に大口需要家のより低炭素な天然ガスへのニーズが高まっています。そのニーズに対応するため、ガスの供給インフラは今後も非常に重要な役割を果たします。

今後、京葉ガスと大多喜ガスが共同で建設中のJERA富津LNG基地から姉崎火力発電所を結ぶ「なのはなパイプライン」の運用が開始され、当社が活用可能な導管ネットワークが強化されます。電化に取り組みつつ、これらのインフラを活用しながら、電化が困難な高温の熱分野へは低炭素な天然ガスをしっかりと供給し、電気・ガス、そして設備を含むトータルのエネルギーサービスを提案していきます。

低・脱炭素化時代のガス供給 導管事業者の視点で議論

【野田太一/経済産業省 資源エネルギー庁 ガス市場整備室長】

ガスシステム改革には、天然ガスの普及拡大と安定供給の確保、そして都市ガス料金の最大限の抑制と利用メニューの多様化、事業機会の多角化―といった狙いがあります。中でも2017年の都市ガス小売り全面自由化は、利用メニューの多様化、事業機会の拡大を大きく後押しするターニングポイントとなりました。

天然ガスを巡る環境は著しく変化していますが、都市ガス小売り市場における競争を通じて、各事業者からさまざまな料金メニューが提示され、引き続き需要家の選択肢が拡大していくことを期待しています。

東京・大阪・東邦の大手都市ガス3社のエリアは、大きな商圏を抱えていることもあり非常に需要密度が高く、新規参入者が多いエリアです。導管部門が別会社化したことは、システム改革の大きな節目となりますが、これまでも適正に業務が進められてきましたので、市場競争への影響という意味では短期的に劇的な変化をもたらさないかもしれません。ですが、長期的に見れば社員の意識や各社の事業戦略などにさまざまな変化をもたらすことが期待されます。

3月7日のガス事業制度ワーキンググループにおいて、今後のガス政策の在り方を巡る論点の一つとして、「法的分離等の環境変化を踏まえた、レジリエンスを含むガス供給ネットワーク・ガス供給事業の在り方」を提示しました。いずれかのタイミングで、低・炭素化、脱炭素社会実現に向け、水素や合成メタンなど先々を見据えたガス体エネルギーのネットワークがどうあるべきか、導管事業者の視点から議論する機会を設けたいと考えています。

導管新社3社には、ネットワークを通じた供給において、最適な在り方を考える主体となっていただき、将来の日本のガス体エネルギーのネットワークのあるべき姿をわれわれと共に考えていただきたいと思います。

地域社会に選ばれ続ける企業へ 五つの取り組みに挑戦する

【東邦ガスネットワーク/伊藤 克彦社長】

いとう・かつひこ 1982年名古屋工業大学工学部卒、東邦ガス入社。広報部長、企画部長、取締役常務執行役員、取締役専務執行役員などを経て2022年4月から現職。

―新会社発足に合わせ「ビジョン」を策定しました。

伊藤 ビジョンの中で、2030年代半ばまでに目指す企業像として、「導管事業のさらなる成長」「導管エンジニアリングの発展」「地域貢献」の三つを当社が果たすべき役割として掲げ、その実現に向け「時代が求めるエネルギーの供給」「揺るぎない安定供給と安全の追求」「先進技術による現場の革新」「広範なエンジニアリング事業の展開」「持続的社会への貢献」という五つの挑戦を設定しました。

 これらの挑戦は、東京ガスネットワーク、大阪ガスネットワークとも連携し、より効果的・効率的に進めます。取り巻く環境は激変していきますが、地域社会の皆さまに選ばれ続ける企業となり、公益事業者としての責任を果たしていきます。

―地域のガス市場活性化にどう取り組みますか。

伊藤 地域に根差した導管事業会社として、「都市ガス輸送量の拡大」と「カーボンニュートラルへの挑戦」に注力します。当社の供給エリアである東海3県は、自動車産業をはじめとするものづくりの集積地であり、名古屋市中心部での再開発や東海環状自動車道の整備が計画されるなど、今後も経済・産業が発展しガス需要開拓の余地が十分にあります。

 より低炭素な天然ガスの普及拡大への期待に応えるためにも、導管投資を引き続き積極的に行い輸送能力を強化します。また、将来の脱炭素社会の実現に向けては、水素ローカルネットワークに対応するインフラ建設や保安体制の整備、メタネーションガスの導入を目指します。

揺るぎない安定供給確保へ 熟練技能と最新技術を活用

―供給の安定性、効率性向上への対応は。

伊藤 安定供給と安全・安心の確保はガス事業の基本であり、成長を支えていく上での一丁目一番地です。これらを支える「ヒト」の専門知識や熟練技能を着実に伝承しつつ、最新技術やデジタル技術を活用し、揺るぎない安定供給をより効率的に実現していきます。例えば、経年管対策では、米ベンチャー企業のFracta社と共同開発した「ガス管劣化予測アルゴリズム」を活用し、対策の優先順位付けと絞り込みを行います。このほか設備点検の膨大なデータを蓄積し、これまでの予防保全からAIによる予知保全へと高度化し、維持管理の高度化を図ります。

―導管会社に求められる新たな取り組みとは何でしょうか。

伊藤 収益基盤を広げていくため、積極的に展開していこうとしているのが導管エンジニアリングです。これまで培ってきた独自の非開削工法や、グループ会社や協力会社の豊富な経験を生かし、当社ならではの導管エンジニアリング力を他のガス事業者にとどまらず、地域の水道ネットワークの建設・維持管理の分野などにも展開し、地域のインフラの老朽化対策や建設業界全般の人手不足といった社会課題の解決へも貢献していきます。

信頼されるライフラインカンパニーへ 保安・安定供給と生産性向上目指す

【大阪ガスネットワーク/中村 剛社長】

なかむら・つよし 1985年同志社大学文学部卒、大阪ガス入社。執行役員、常務執行役員、大阪ガスマーケティング社長、ネットワークカンパニー社長などを経て2022年4月から現職。

―新会社の発足でどのような変化がありましたか。

中村 大阪ガス創業以来の大きな変革になったことは間違いありませんが、分社化に向けた準備を社員一丸となって進めてきたこともあり、スムーズに立ち上がったと思っています。保安・安定供給といった業務内容はほぼ変わらないとはいえ、財務や採用といった業務も独立して行うようになるため、徐々に自立自走の取り組みが出てくるかもしれません。当初は全社員が大阪ガスからの出向者という体制でスタートしましたが、徐々に正社員の比率を高めていく方針です。今年度からは少人数ですが中途採用を実施しつつ、2024年度からの新卒採用開始に向けた活動を始めます。

―どのような企業像を目指しているのでしょうか。

中村 脱炭素化への取り組みや、激甚化する自然災害への対応など、安全・安心なガスの供給は、当社にとってこれからも守るべき普遍の使命です。一方で、お客さまとのつながりを意識しながら、時代とともに変化するニーズに応える新たなサービスにも挑んでいく必要があります。生産性向上や収益拡大などを通じて自立自走の経営に取り組み、「つなぐ、まもる、いどむ」というスローガンの下、信頼されるライフラインカンパニーであり続けることを目指します。

エネルギーシステムを提案 低・脱炭素化のニーズに対応

―具体的にどのような収益拡大策をお考えでしょうか。

中村 安全・安心にガスを供給するため、災害発生時も被害を最小化し復旧を早期化する設備やシステムの更新・導入などに取り組んでいきます。加えて、需要開拓にも積極的に取り組んでいきます。

 例えば官公庁を中心に、耐震性の高い供給設備への更新やガスコージェネレーションなど分散型の発電設備の導入への引き合いが強まっています。小売り事業者とは違うアプローチで、低炭素で環境負荷が低いガスを安定的に供給するようなエネルギーシステムを提案・整備していくことが大事な取り組みの一つだと考えています。国内で蓄積したこうしたノウハウを生かし、将来は海外でも保安やレジリエンス強化の取り組みを展開し、域外ガス事業の活性化を図ります。

―そのほか、注力していくべきことは。

中村 AIを活用した他工事のパトロールなど、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務改革を積極化しているところです。ガス業界のみならず、インフラ産業全体を活性化させるような取り組みを次々と繰り出すことで、企業として成長していきたいと考えています。そしてそれが、社員一人ひとりが会社を成長させるプレーヤーとなり、採用市場でも「魅力的なイケてる会社」と位置付けられることにもつながると期待しています。アイデアが生まれ企業が成長し、さらにより良い人材を獲得する―。こうした良いサイクルを早期に構築したいですね。

安心・安全・信頼のブランドを継承 原点に立ち返ってガスの普及に臨む

【東京ガスネットワーク/野畑 邦夫社長】

のはた・くにお 1984年東京工業大学大学院理工学研究科修了、東京ガス入社。執行役員、東京ガスエンジニアリングソリューションズ社長執行役員、常務執行役員、副社長執行役員、代表執行役副社長などを経て2022年4月から現職。

―4月1日、導管ネットワーク事業会社として新たなスタートを切りました。

野畑 ガス事業とは本来、導管を通じてガスを供給する事業であり、それを承継したのは当社であり第三の創業期と位置付けています。社員に対しても、東京ガスが136年の歴史の中で、最も大切にしてきた安心・安全・信頼のブランドを引き継いだ重責と誇りを持って仕事に臨むようメッセージを伝えています。

 電力会社の法的分離と大きく異なるのは、ガス漏れや定期点検の際にお客さま宅を訪問するのはネットワーク会社であるため、そのことを社会に広く知っていただく必要があるということです。そのため、会社発足と同時にテレビCMも展開しています。

―法的分離の実施まで、特に苦労した点はありますか。

野畑 法的分離による分社化と同時に、導管の建設・維持管理業務を担う二つの子会社を吸収合併しました。これは、地域に根差したネットワーク会社として、現場により近い会社にしていきたいとの思いからです。ただ、システムの改修など法的分離に向けた手続きと同時並行で行ったため、こなさなければならない業務量が膨れ上がりました。

 このため、新会社をどのような会社にするのか、ビジョンを描くことを先送りせざるを得ませんでした。まずは半年ほどかけてこれまでの取り組みを総点検し、中期経営計画やビジョン策定につなげていく方針です。例えば効率化を最優先にすることで犠牲にしていることはないか、ネットワーク会社としてガスの普及にどう取り組むかなど、ガス会社の原点に立ち返って考えていきたいと思います。

若い働き手の確保へ 現場作業をスマート化

―ガスの需要開拓にどのように取り組みますか。

野畑 当社の供給エリアである首都圏でも、都市ガスが行き届いていないエリアは相当あります。低炭素化に向けた電化推進が言われていますが、そういったエリアの自治体や地域の住宅メーカーなどに働きかけ、ガスの良さを知ってもらい、レジリエンスの観点から電気とガスの互いの良いところを選んで使っていただけるよう提案していきます。

―安定供給と効率化の両立をどう図りますか。

野畑 デジタル技術をいかに活用できるかにかかっています。ウェアラブルカメラを装着することで現場に行かずに複数人で現場の状況を共有したり、写真を取り込むことで施工図を自動的に作成したりと、デジタル化による業務の効率化を着実に進めていきます。

 また、工事現場でのオペレーションに伴うCO2排出削減にも取り組んでいきます。作業のデジタル化や重機のEV化など大阪・東邦ガスネットワークや他のインフラ産業とも連携し、高齢化が進む中で若い人に魅力的な職場だと思ってもらえるようなスマートな現場をつくっていければと思っています。

【都市ガス導管新社発足】総合エネルギー市場創造へ 集大成を迎えたエネルギー一体改革

4月1日、ガスシステム改革の最終段階となる法的分離が実施された。

脱炭素化やエネルギー資源価格高騰など事業環境が激変する中で、新たに誕生した導管3社はどのような役割を果たしていくのか。

 東京・大阪・東邦の大手都市ガス3社の導管部門の法的分離が4月1日に実施され、東京ガスネットワーク、大阪ガスネットワーク、東邦ガスネットワークとして新たなスタートを切った。ガスシステム改革の総仕上げとなる法的分離を経て、業界の垣根を取り払い総合的なエネルギー市場を創り上げるために進められてきたエネルギー分野の一体改革は、一つの区切りを迎えたことになる。

以前は、特定の事業者が小売りやガスパイプラインの維持・運用などを地域独占的に行ってきた都市ガス事業。新たに小売り事業に参入する事業者は、託送契約を結び既存の導管を利用して自社の顧客にガスを供給する。そのため、小売り事業者間の競争を促進するには、新規参入者と導管を持つ事業者の小売部門との導管利用における公平性の確保が求められる。

導管運用の中立性確保のため、これまでもガス製造や小売部門と別会計にする「会計分離」が行われていた。だが、大手電力会社の法的分離が2020年4月に実施され送電部門を別会社化したこともあり、それと平仄を合わせる形で、ガス会社にも「兼業」を禁じる法的分離を義務化することで、より厳格な中立性を求めることになったのだ。

とはいえ、既存都市ガス事業者の多くは中小規模であり、自前のLNG基地を持ち都市ガスを製造している事業者は少ない。そこで、①導管の総延長数が全国シェアでおおむね1割以上であること、②保有する導管に複数事業者のLNG基地が接続していること―を要件とした結果、大手3社のみに法的分離が義務化され、取締役などの兼職や適正な競争関係を阻害する恐れのある条件でグループ内取引を行うことの禁止といった行為規制が課されることになった。

ただし、導管分離が義務化されない他の事業者にも、導管事業者が自社の小売・製造部門の事業活動を有利にする広告・宣伝などを行うことの禁止など、行為規制の一部が課される。

都市ガス小売り事業者の競争相手は同じ都市ガスの売り手ばかりではない。既存の都市ガス事業者は、自由化前からLPガスや電化など、他燃料も含めた激しいエネルギー需要争奪戦を繰り広げてきた。今後は、人口減少や供給設備の老朽化といった課題に直面する上、「脱炭素化」や「LNGをはじめとするエネルギー資源の価格高騰」といった新たな要素も、地方の中小事業者を含む都市ガス業界にさらなる変革を迫ることになるだろう。

導管3社プロフィール(2020年度末実績)
各社供給計画より作成

熱エネルギーの脱炭素化 欠かせない各社の連携

都市ガス事業を巡る経営環境が激変していく中で、新たに立ち上がった導管事業者に求められることは何だろうか―。

日本ガス協会の早川光毅専務理事は、導管を使ってガス体エネルギーを供給する導管事業者を「ガス事業そのものの中核を担っていく存在だ」と位置付け、その上で、「これまでの『安定供給と保安の確保』というミッションに加え、『ガスの普及拡大』の取り組みも導管事業者の重要な役割であり、その実現のためには、各導管事業者が個別に創意工夫をしつつ協調して対応しなければならない」と、ガス体エネルギーの成長には各社の連携が欠かせないとの見方を強調する。

例えば導管3社は、24年度に順次導入が始まるスマートメーター開発で共同歩調を取っている。通信規格を共通化することで開発コストを低減しようという狙いだ。

通信機能を備えたスマートメーターの普及が進めば、遠隔で都市ガスの検針・閉栓などを行えるようになり、平常時の現地作業の大幅な効率化を図ることができる。また、地震などの自然災害時にも遠隔での保安措置が可能となり、保安の強化やレジリエンスの向上につながる。

「脱炭素」という避けては通れない命題にも協調して取り組むことになる。石油や石炭よりもCO2排出量が少ない化石エネルギーとして、低炭素社会の担い手として期待されてきた天然ガス。ところが時代は脱炭素社会を見据えはじめ、このままでは業界そのものの存続が危ぶまれかねない。次世代の熱エネルギーとして既に水素やメタネーション、アンモニアの導入を模索するが、その供給システムの実現に導管3社が果たすべき役割は大きい。

新設された導管3社は、導管によるガス供給の安定性と効率性の向上というこれまでの役割に加え、新たな需要開拓や脱炭素化に向けた新技術の確立、スマートメーターを活用したサービスなど、新たな事業分野に主体的に取り組んでいくことが期待される。

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中国の国産軽水炉輸出が順調 日本は技術損失に悲壮感も

中国核工業集団公司(CNNC)は3月25日、第3世代加圧水型軽水炉「華龍一号」型の原発、福清原発6号機(福建省)が営業運転の認可を受けたと発表した。パキスタンでは華龍一号型を採用した原発2基が発電を開始。さらに2月にはアルゼンチン政府が国内原発に華龍一号型の商業炉採用を発表するなど、中国は原子力の国産化と輸出に力を入れている。今後、小型モジュール炉(SMR)建設輸出も進める方針だ。

「華龍一号」型の福清原発6号機
提供:Avalon/時事通信フォト

その一方で、日本の革新炉開発の見通しは暗い。日本原子力産業協会の新井史朗理事長は4月の定例会見で「日本のSMR開発は世界に比べ、出遅れている」と指摘。その理由に国内サプライチェーンの劣化を挙げた。新井理事長は「この10年で20社以上の企業が原子力産業から離脱した。計画的な技術維持をしなければならない」と危機感をあらわにする。

国家の経済成長に大きく寄与するエネルギーを保証することで、相手国に存在感を示す原発輸出ビジネス。かつての技術力を失いつつある日本の存在感は今や薄い。「中国やロシアとの軽水炉輸出対決に今から勝つのは困難。SMRでも白旗を上げたら日本の原子力産業はどうなるのか」と、関係者からは悲壮感も漂う。

【覆面ホンネ座談会】対露制裁の「ブーメラン」 資源小国が取るべき選択は?

テーマ:ロシアとのエネルギー事業の行方

ウクライナでの惨劇が明らかになるにつれ、ロシアに対する経済制裁でエネルギー事業へのさらなる介入を求める論調が目立つ。日本が関わるロシア事業の行方はどうなるのか。

〈出席者〉  A電力業界関係者  Bロシア関係専門家  Cガス業界関係者 

―サハリン1・2などからの撤退はないと、岸田文雄首相や萩生田光一経済産業相はたびたび口にしてきたが、4月8日に首相はロシアからの段階的な石炭輸入禁止を発表。一部では制裁は石炭、石油、最後にLNGという順で検討されるのではとも言われている。

A EUは日本に先んじてロシア産石炭の禁輸を発表した。石炭の海上貿易規模は約10億tで、ロシア産はその18%ほどを占める。欧州向け石炭の一部はシベリア鉄道を東に向かい中国などで多少さばけるが、鉄道能力の限界もあり輸出量は相当減る。他方、オーストラリアなどほかの産炭国の生産能力に余剰はなく、市場はますますひっ迫する。こういう需給環境下なので、日本の一般炭のロシア産比率は13%程度だが、代替炭の調達は簡単ではない。価格もまだまだ上がる。

 石炭への上流投資はパリ協定以降、金融機関が消極的な姿勢に転じ、ここ5~6年停滞していた。こうしたエネルギー業界の課題が、今回の有事で洗いざらい出てきた。

B 2月以降下旬、さまざまな企業、個人がロシアへの経済制裁の対象となった。当初は、制裁対象の個人が企業との関わり方を見直し、事業への影響を回避する余地もあった。しかしSWIFT(国際銀行間通信協会)からの除外や、米国の石油をはじめとする化石燃料禁輸、EUの石油化学企業への制裁、そして石炭輸入の規制と、強化が加速している。2014年のクリミア危機後のロシアへの制裁よりかなり厳しい。日本が遠巻きに眺めているうちに、化石燃料輸入のロシア依存度が低い米国が率先して手を打っていった。他方、当初EUの制裁は米国と比べて控えめだったが、14年のマレーシア航空機撃墜以降は態度を硬化し、18年の化学兵器使用疑惑を契機にさらに厳しい制裁を課すようになった。

C ロシア産天然ガスの排除は相当厳しい。全世界のガス貿易量の約25%がロシア産だ。プーチン大統領がパイプラインのバルブを締めれば自由に動かせるLNGで手当てしなければならないが、もともとパイプラインガスの量は非常に多く、かつ今はLNGの需給がタイトで、すぐの増産は難しい。先ほどAさんがロシア産石炭シェアの高さを紹介したが、それを聞いて事態の深刻さを再認識した。ガスが十分調達できなかった場合の代替燃料は石炭か石油しかない。しかし、先にEUが制裁として石炭輸入を絞り、その後プーチンにガスを絞られたらどうしようもない。

資源大国ロシアへのエネルギー制裁には疑問が残る

石炭の即増産は非現実的 脱炭素で首がしまる欧州

C 春になり(欧州の指標価格の)TTFや(アジアスポット指標の)JKMは100万BTU当たり30ドル台で推移。以前の5ドル台と比べれば高いものの、現在の価格は落ち着いているように見え、世間はガスの脱ロシアもいけると思うかもしれない。だが、今後夏、冬にEUが危機的状況になることは分かり切っている。今から石炭を減らすなんてとんでもない。日本政府がサハリン2などから撤退しないという姿勢は正しかったが、EUに続いて発表した石炭禁輸が大きなブーメランになるのではないかと心配している。

A 石炭は開発のリードタイムが短く、かつては価格が上昇すれば2~3年で増産できた。しかし前述の通り上流開発に金が回らなくなり、既存の石炭鉱山を使い倒すほかない。生産ピッチを多少上げることは可能だが、価格低迷期に生産性の高い鉱区を使い、手間のかかる場所ばかり残っているのではないか。あとは西側の金融の影響を受けない中国がどれほど増産し、輸入を減らしてくれるかだ。

B 資源開発の実態を考えると、欧州は次の冬も厳しくなる。昨年からガスプロムの欧州向けのガス輸出量は契約の範囲内にとどまり、地下ガス貯蔵在庫の少なさが以前から問題となっていた。欧州委員会は貯蔵量を増やすよう指示していたが、貯蔵事業者は高い価格を払ってまでガスを確保しようとしなかった。ガスプロムは、21年に圧入した分はすでに使い切り、20年に圧入したガスしか残っておらず、新たに追加しないと冬に向けて欧州は需要を賄えないと警告している。

C 脱炭素、自由化の罪もある。欧州ではガスも持続可能でないとの論調が強まり、ロシアとの長期契約を縮小してきた。実は欧州にはセキュリティーを担当する機関が存在せず、ガス貯蔵を計画的に管理できていない。事業者は自社の得かどうかだけで判断する。何の保険もなく、自由化や脱炭素に走った結果だ。日本も欧米追従で自由化を進めてきたが、世界のガス・LNG市場の一体化が進んでおり、日本も間もなく同様の問題を抱えそうだ。

A 脱炭素化でエネルギーソースの多様性が失われた。パイプラインガスは相手側にトラブルがあればすぐ止まってしまう。だから欧州では貯蔵でき、余剰の際は転売できる石炭がかつては調整力を担ってきたが、脱炭素でサプライチェーンが細り、結局ガス火力が需給調整役となっている。一方で再生可能エネルギーが増え、必要な調整幅は拡大した。

 日本でも石油火力の退場とともに、調整力はガス火力に集約していった。海上貿易のLNGは、AがだめならBに切り替えるといった自由度は高いが、いかんせん2週間分しか在庫がない。21年1月の日本での電力需給ひっ迫では、この弱点が浮き彫りになった。結局、今の自由化の制度下では限界費用という一元的価値で電源の淘汰が進んでしまう。

―ロシア問題では化石燃料に注目しがちだが、ウラン資源についてはどうだろうか。日本への影響はあまり考えられないと聞くが。

B 米国はロシア産石油、石油製品、LNGなどエネルギーのあらゆる分野で制裁を課したように見られているが、ウランは入っていない。しかし、米国議会においてウランの輸入禁止に関する法案が審議中であり、今後注視が必要だ。

 ただ、石炭などと違い、カザフスタンがウラン価格を見て生産を調整するなど生産能力には余裕がある。カザフでは1月、LPGの値上げがきっかけで反政府デモに拡大、全国に広がり、ロシア主導のCSTO(集団安全保障条約機構)が鎮圧に動いた。しかしカザフはウクライナ侵攻を拒否し、現在はロシアと距離を置いている。

 また、カザフのテンギス油田からロシア領内を通過し、ロシア黒海沿岸のノボロシースク港を結ぶCPC原油パイプラインを巡る動向に注目している。日本も21年にCPCブレンドを16万㎘輸入しており、投資する米シェブロンなどの出方が気になったが、結局米国による制裁の対象外となった。ただし、3月下旬以降、CPC原油の輸出が3分の1に減少している。ノボロシースク港の出荷設備が嵐で損傷したとして、復旧までにノヴァク副首相は1~2カ月、CPCは3~4週間を要するとの見通しを発表している。

東ガスがCN連携を加速 地域と「三方一両得」の関係へ

東京ガスによる脱炭素を軸にした広域戦略が本格始動だ。同社と卸先ガス事業者、自治体の3者による「カーボンニュートラル(CN)のまちづくりに向けた包括連携協定」が神奈川や埼玉、茨城などで広がりを見せており、これまでに7地域で協定を結んだ。「脱炭素化で地域を活性化させることが目標だ」。同社広域エネルギー事業部の馬場敏事業部長はこう意気込む。

東ガス、狭山市、武州ガスの提携会見

一連の動きの背景には、政府が進める「地域脱炭素ロードマップ」の存在がある。地域資源を最大限活用しながら脱炭素化や経済活性化を図る取り組みだが、自治体は何から手を付けるべきか苦慮している。そこで、自治体は大手や地元のガス事業者が有する先進技術、ノウハウなどを活用することで、脱炭素化を加速させたい狙いがある。

地域でのネットワーク力を有する卸先ガス事業者は、大手の力を借りることで自治体への幅広い提案が可能になる。東ガスにとっては連携地域を拡大させ、首都圏で自社のプレゼンスを高める効果も期待できる。

CNという新たなビジネス領域で、〝三方一両得〟の関係を築く包括提携。今後の行方から目が離せない。

【イニシャルニュース】 非常事態で表に出ない 東電社長への違和感

 非常事態で表に出ない 東電社長への違和感

「3月22日に国内初の電力需給ひっ迫警報が発令された前後、小早川(智明・東京電力ホールディングス社長)さんはなぜ表に出てこなかったのか。会見すら開かれなかったことには、個人的な違和感を持っている」

こう話すのは、元東京電力幹部のA氏だ。22日は、3月16日に福島県沖で発生した最大震度6強の地震の影響で、東北電力原町や相馬共同火力新地、東京電力広野などの大型火力が軒並み停止。そこに悪天候による寒波が重なって東北、東京両電力管内で電力需給がひっ迫した。

とりわけ東京は厳しく、22日午後には「使用率107%」という異例の非常事態に。揚水が底をつく午後8時以降の停電は避けられないとの見方が広まる中、萩生田光一経産相が午後3時に節電強化を求める緊急会見を開き、東電もウェブサイト上で「節電のお願い」を断続的に行った。JERAが停止中のLNG火力を急きょ稼働させたことも奏功し、停電を回避することはできたのだが……。

小早川社長は表に出てこなかった

「停電寸前の局面での強力な節電要請だったことを考えれば、小早川さんは直接需要家に語り掛けるべきだったのでは。仮に22日は対応に追われてそれどころではなかったとしても、後日に会見を開くなどして『皆さまの協力のおかげで何とか乗り切ることができました』といった謝意表明はあってしかるべきだったと思う」(A氏)

関係者の中には「東電は需給ひっ迫警報の責任者ではないため、会見を行う必要はなかった」と見る向きもあるが、発電や送配電、小売りも含めた東京電力グループの総責任者は小早川氏。経営者として相応の対応が求められるのはある意味、当然のことだろう。振り返れば、2019年9月の台風15号による千葉大停電の際も同じような指摘が聞こえていたような……。

火力政策に一抹の不安 専門家不在の審議会

3月22日の電力需給ひっ迫では、この間の自由化・脱炭素化政策で放置してきた課題が一気に噴出した。経産省は今回のひっ迫を検証するとともに、今年度も夏、そして冬の需給見通しが厳しくなるとして、対応策の検討に乗り出した。中でも火力の過度な退出を防ぎ、必要な規模の設備を温存して、いざひっ迫時に活用できるためには何が必要か、詰めていくことが重要になる。だが、火力政策の見直しに向けて一抹の不安を感じる一幕があった。

3月25日の電力・ガス基本政策小委員会は、今後の火力政策が議題の一つだった。その事務局資料の中に、休止火力の再稼働には「1年以上のリードタイムが必要」との一文があった。これに委員のM氏が「1年以上かかるのであれば、いざというときに役に立たないのではないか」との旨、指摘したのだが……。

ある電力関係者は、「再開までに要する時間は何年止めているかなど状況によって変わるもの。実際、昨年停止したばかりだった姉崎火力は1年もかからず稼働できた。さらに、数週間で再開できるような保管の仕方も可能だ」と話す。

しかし同日の会合ではM氏の指摘に対し、事務局はもとより、オブザーバー参加の電力関係者からも説明がなく終わってしまった。会合に、火力の専門家が参加していなかったためだろう。審議会の一場面にすぎないかもしれないが、されど神は細部に宿る。

原子力委員会の復権 エネ庁が後押しか

原子力関係者の間で注目されているのが、原子力委員会U委員長の意欲的な活動だ。まだ具体化していないが、原子力委の権限を強化し原子力復活の「司令塔」にしようと考えているらしい。エネ庁もその動きを支援するようだ。

20年に委員長に就任したU教授は真面目な人格者と周囲の評判は良い。もともとメーカーから大学に転じ、電力や原子力産業にも理解がある。「今の日本には原子力政策を長期にじっくり考え、実現する政府機関がない。このままでは日本の原子力全体が衰退する」と嘆いているという。

委員会では有識者を続けて呼び、各国の事例を調べ、政策の研究を進めているという。原子力委は1956年の設立当時、学者などを集めて原子力政策の理論武装と司令塔になることを期待された。その後、権限を縮小されたが、確かに日本の原子力政策の柱になり得る組織だ。

U委員長の意向に反応したのがエネ庁だ。原子力に関係するM部長、E課長は経産省内で原子力復権を唱え、自由化見直し論者として知られる。経産省はかつて原子力推進の政策を担ったものの、福島原発事故の責任を問われ、事故の後に規制部門を分離させられ、権限と社会的信用を失った。エネ庁の代わりに、原子力委を原子力規制委員会や関係者に物申せる機関にしようとの思惑が垣間見える。

しかし、U委員長の意欲に周囲は乗り気でないという。原子力委の常勤委員のS氏は元外交官で産業振興に関心がなく、事務局も文科省などの寄せ集め。「U氏の善意と熱意が空回りし、エネ庁に利用されなければいいが」(原子力学界関係者)と、心配する声も出ている。

処分場文献調査に動き 伊豆諸島も候補浮上

北海道の寿都町、神恵内村に続き、他の自治体でも、使用済み核燃料の最終処分場選定のための文献調査を目指す動きが、水面下で活発化しているようだ。

伊豆諸島で文献調査もあり得るか

複数の関係筋によると、三重県A地域、島根県K町およびB地域、福岡県C地域に加え、東京・伊豆諸島でも文献調査の可能性を探る動きが出ているという。「各大手電力管内から最低1自治体に名乗りを上げてもらいたいところだ」。電力業界の関係者はこう話す。

最終処分場の選定作業は、①資料を中心にした2年程度の文献調査、②ボーリング調査などによる4年程度の概要調査、③地下施設での調査・試験を通じた14年間程度の精密調査―の3段階で進められる。調査開始から施設建設地の決定まで足がけ20年近くに及ぶ長期戦だ。調査に応じた自治体には、文献で最大20億円、概要で70億円の交付金が国から支給される。

20年8月の文献調査開始から間もなく2年がたつ寿都町では、近く調査の評価に取り掛かる予定。報告書を公表した後に、概要調査に移るかどうかを判断する住民投票を行う方針だ。

また寿都町から3カ月遅れで神恵内村の調査が丸2年を迎える。去る2月に行われた村長選では、現職で調査を受け入れた高橋昌幸村長が、脱原発派の新人に圧勝し6選を果たした。関係者によれば、北海道電力泊原発の近隣にある同村では、原発交付金の恩恵を受けてきた経緯から処分場調査に前向きな住民が少なくないという。

さまざまな事情を抱えながらも、最終処分場の選定作業は着実に歩を進めつつある。

後継者選びが難航 三村知事6選出馬か

7月に行われる参議院選挙で、自民党の青森県連は齊藤直飛人・県会議員を候補者として擁立することを決めた。齊藤氏は元大相撲力士で最高位は関脇。日本オリンピック委員会の委員を務めたこともある異色の経歴の持ち主だ。

しかし、対立候補の田名部匡代氏は青森政界の「名門」の出身で、国政選挙で合わせて4回の当選を重ねている。田名部氏に勝つことは、「まず難しい」(事情通)というのが下馬評。そのため県政界関係者の関心は、来年6月の知事選に移っている。多選に対する厳しい批判から当初、現職の三村申吾知事の6選出馬はないと考えられていた。しかし、「出馬の可能性がある」(同)という。

三村氏の後継として、以前からM市のM市長、A市のO市長、元知事の次男・K衆院議員などの名前が取り沙汰されていた。「M市長は県政よりも国政進出を狙っている。O市長は、もし三村氏が『出る』といったら逆らえない。K議員は元知事の意向次第だが、代議士の職を優先するはずだ」(同)。ふさわしい候補者が見当たらないことが、三村氏出馬を予想する理由だ。

青森県自民党の有力者、E衆院議員と三村氏が「犬猿の仲」(同)であることも、候補者選びを困難にしている。三村氏は知事選出馬について沈黙を守っているが、その心中は。

ガス業界が初のCNセミナー開催 合成メタン技術推進で目標達成へ

【カーボンニュートラルセミナー】

 日本ガス協会と東京ガス、大阪ガスの3者は3月24日、2050年カーボンニュートラル(CN)実現に向け、業界内の取り組みを発信する報道機関向けセミナーを都内で行った。初開催となる同セミナーはオンラインでも同時配信し、ガス会社関係者を中心におよそ200人が参加した。

セミナーでは「『メタネーション』の社会実装に向けた都市ガス業界の挑戦」をテーマに、メタネーションの意義や業界の取り組みなどを説明した。メタネーションとは、水素とCO2を反応(サバティエ反応)させ、都市ガス用の合成メタンを生成する技術で、実用化すればCO2の排出量が回収量と相殺され、CN実現へ前進する。

最初に登壇した日本ガス協会の竹田剛CN推進センター長は、現在のガス業界の方針について述べた。既存インフラを活用できるメタネーションの利点を踏まえて「30年に都市ガスのCN化率を5%以上にして、50年までには都市ガス全体に占める合成メタンの割合を90%まで増やしたい」との目標を掲げている。

オンライン視聴含めおよそ200人が参加した

CN達成に合成メタン活用 都市ガス業界で技術開発

続いて、地球環境産業技術研究機構の秋元圭吾氏が講演し、50年CN実現に向けたシナリオを分析。CN化後も高温熱を使う産業用でガスの需要が高まると指摘した。秋元氏は「ガス業界はクレジットでオフセットしたCNガスから、合成メタンの移行へと、スムーズなCN達成の道筋が立つ」と説明。合成メタン活用は経済的な合理性があることを示した。

東京ガスと大阪ガスは、それぞれのメタネーション技術開発について説明。既存のサバティエ反応を用いたメタネーション実証実験を進めるとした。東京ガスは、将来的に高効率化や低コスト化が期待できる「ハイブリッドサバティエ」「PEMCO2還元」「バイオリアクター」など、革新的技術の開発推進を発表。大阪ガスも「バイオメタネーション」「SOECメタネーション」など新技術を、大阪市此花区内の研究拠点「カーボンニュートラルリサーチハブ」で開発していくと述べた。

3者はセミナー終了後、同セミナーを定期的に開催する方針を示している。大阪ガスの森田哲司エネルギー技術研究所長は「CN宣言で加速した流れに乗り、チャレンジ精神を生かして技術の実現化に動く。25年の大阪万博までに披露できるようにしたい」と展望を語った。今後は東京ガス、大阪ガスともに研究施設の見学会の開催も進める方針だ。