<出席者>電力・ガス・石油・マスコミ業界関係者4人
福島第一原発事故は、エネルギー需給の在り方について大きな問い掛けを残している。
しかし、エネルギー・原子力問題に正面から向き合うマスコミの報道は少ない 。
―東日本大震災、福島第一原発事故から10年を迎える。東京電力の社員は、事故を思い返さざるを得ない。
電力 原発事故に直接対応したのは原子力部門だが、本当につらい思いをしたのは事務系職員だ。本店と支社・支店の社員が、福島の賠償対応に駆り出された。
あれだけの事故を起こしたのだから当たり前だが、福島の人たちの怒りは並大抵でなかった。それでも皆、「何で俺たちが」と思いながら、ひたすらお詫びを繰り返した。そのうちメンタル面で耐えきれない社員が出てくるようになって、会社は2年で異動させるようになった。
石油 東電の肩を持つわけではないが、福島事故で被害を受けた人たちに対応する姿を見て、さすがは日本を代表する企業の社員たちだなと思った。
ガス 福島第一原発事故で東電は実質国有化されて、大きく変わった。それとともに東電がリードしてきた電気事業と、事業を取り巻く環境も変わった。1980年代にはなかった料金値上げがあり、規制緩和は送配電部門の法的分離まで進んだ。
ただ、東電の抱える問題は解決していない。賠償や廃炉に充てるだけの利益は稼いでいないし、トリチウム水の海洋放出もめどが立たない。再建の切り札の柏崎刈羽原発の再稼働も、10年経ってもまだ先行きが見通せない。
マスコミ 原発事故で、電力業界は東電という「長兄」をなくした。ならば「次男」、「三男」が頑張って、東電が一手に引き受けていた永田町や霞が関、マスコミ対応を引き継ぐべきだった。
しかし、今まで東電に頼りすぎていたので、関西電力、中部電力がすぐにその代役を果たすわけにはいかなかった。それで電力業界は政治力を失った。
東電に福島事故の賠償、廃炉を任せ、ほかの電力会社にも原発の安全対策で膨大な費用を負担させるには、本当ならばある程度、地域独占・総括原価主義を残すべきだった。だが、電力業界の力が弱まったことで、規制緩和が大きく進んだ。
結果として、電力会社の体力は衰弱する一方で、東電も賠償や廃炉の費用を負担できる状況にはなっていない。ほかの電力会社も、原発が稼働していても青息吐息の経営が続いている。
電力 冷静に考えるならば、マスコミさんの言う通りだと思う。だけど、福島事故後に吹き荒れた反原発・反東電の嵐の中、とてもそんなことを言い出せる雰囲気ではなかった。
ガス 確かに、福島事故前の東電の力は圧倒的だった。経産省の役人の中には、「俺の人事は東電が決める」と言う人もいた。今の落剝ぶりを考えると、まさに諸行無常の一言だ。


