【東京ガス VPP運用編】
「十分なリソースを獲得し、それを電力市場で実際に運用してお客さまにしっかりとメリットを提供することがVPPを進める上で欠かせない」。リソースアグリゲーションビジネスグループの森田哲グループマネージャーはこう話す。まず同グループでは主に業務・産業用のユーザーを対象にリソースの獲得活動を展開中だ。核となる設備がコージェネである。これまでピークカットなど多様な観点で導入されてきたが、これにVPPという新たな役割を担わせるのがミッションの一つだ。
労力を割くのがユーザー側への丁寧な説明だという。電力システム改革の経緯、電力市場の詳細な中身、安定供給(電力の同時同量など)を担保する仕組みなど―。市場の中でVPPが果たす役割について理解を得なければならない。
電力制度をしっかり理解 英製技術を活用し基盤整備
「リソース獲得はお客さまの協力や理解があって初めて成り立つ。そのためには、われわれが複雑な電力制度の仕組みをしっかりと理解することが重要だ。それを踏まえて一連の仕組みをお客さまに丁寧に説明する。大変だが、おかげさまでお客さまとのコミュニケーションが深まっている」(森田氏)
もう一つの業務が、獲得したリソースを実際の電力市場で運用すること。現在その基盤を整備している。その時にカギを握るのが、東ガスが電力小売分野で提携する英国オクトパス社の技術を活用した「クラーケンフレックス」だ。これはユーザーのリソースとつながるためのプラットフォームである。
英国では日本に先んじて、2000年代初めにはすでに電力市場改革が進んでいた。「そうした技術を日本仕様にカスタマイズして、リソース活用する基盤整備を進めている」と同グループの伊藤文樹係長は話す。
実際、どんな運用になるのか。例えばA地点の火力発電所による計画外停止が発生し供給力が失われそうだから1時間後に1万kW分の電力需要を1時間ほど抑える、あるいは再エネの余剰発電が生じそうだから30分後に1万kW分の需要を1時間ほど増やす―。季節、日々、そして瞬時に変動し続ける電力需給に対応する管理を、需給状態や市場価格をアルゴリズムとして制御システムに組み込みながら、最適解となるような対価をユーザーに提供する。これこそが、同グループが進めるソリューションだ。