全面自由化後初の電気料金値上げが実施されたが、大手電力はもとより新電力からも不満が募っている。需要家保護に偏った今回の厳しい査定を振り返ると、料金規制を巡るさまざまな課題が浮かび上がる。
昨年来、大手電力会社の主たる経営課題だった低圧規制料金の値上げが、6月1日、ようやく実施に至った。燃料費や卸電力市場価格の高騰により供給コストが料金収入を大きく上回る状態が続いたことから財務状況が悪化し、中部、関西、九州を除く7社が昨年11月から年明けにかけて原価を洗い替え、経済産業省に値上げを申請した。当初の上げ幅は標準家庭料金で28~48%(表参照)程度。東日本大震災後の原発緊急停止に伴う2012年の料金改定以来の実施となり、その行方は国民の大きな関心事となった。
しかし約10年前の前回改定と同様、その認可プロセスではたびたびの「政治介入」があり、電力・ガス取引監視等委員会の料金制度専門会合での審査に横やりを入れる格好となった。

※1 レベニューキャップ制度の導入に伴う託送料金の改定影響を含まない数値
※2 レベニューキャップ制度の導入に伴う託送料金の改定影響を加味した数値
補正申請で値上げ幅圧縮 政治リスクで審査長期化
まずは岸田文雄首相が、物価高対策の視点から「日程ありきでなく、厳格、丁寧な査定による審査」を要求。これを受け、監視委の専門会合では燃料価格の採録期間を、それ以前に比べれば価格が落ち着いてきた22年11月~23年1月に見直した。さらに原価上、卸電力市場価格については電力先物価格の平均値(23年2月における東京商品取引所の23年度各限月)を採用することに。専門会合は計16回の審査を経て4月末に査定方針案を取りまとめ、その間7社は原価の再算定を行った。
重ねて、河野太郎消費者相の姿勢が、審査の長期化に拍車をかけた。大手電力の相次ぐ不祥事発覚を重く見て、「電力の経営が効率的なのか見極めなければならない」などと追及。査定方針案がまとまった後、経産省と消費者庁との協議がスタートし、同庁内の会合などでも河野氏の問題意識に基づく形で検討が進んだ。一連の同庁側の対応について、専門会合委員からは「意見があるのなら査定の間違いを指摘するべきだ」といった苦言がたびたび飛び出した。
そして同庁との協議終了の翌日、5月16日に「物価問題に関する関係閣僚会議」が査定方針を正式決定。7社は同日中に補正を提出し、経産省が19日に認可した。紆余曲折を経た最終的な値上げ幅は、標準家庭料金で14~42%と当初申請時から大幅に圧縮された。
結局、審査の長期化により先行5社の値上げ実施までには半年を要した。5社にとって実施が2カ月遅れたダメージは大きく、30億~130億円程度のマイナス影響をもたらしたという。
ただ意外にも、電力会社の収支や財務状況に関心を寄せる関係者は、この顛末を前向きに受け止めている。格付投資情報センターの西村聡彦・格付本部副本部長は「22年度決算ベースと比べて収支構造は改善され、特に燃料高への耐久力が高まった。また、震災後の値上げ時と比べれば政治リスクや国民感情は落ち着いており、審査期間も短い」と指摘。「昨年の今頃、規制料金値上げという選択肢もある中、各社が実情に見合った対応策を実施すれば信用力は保たれるとのストーリーを描いた。概ね、その範囲内で進んでいる」と強調する。
確かに、これで経営悪化の元凶だった燃料価格上昇による逆ザヤは解消される。基準燃料価格は1㎘当たり約4万2000円~5万8000万円引き上がり、足元の燃料価格と、基準価格の1.5倍に設定される上限までの間にはかなりの余裕が生じた。













