マスタープランでは従前の内容から一歩踏み込み、具体的な系統整備の将来構想が示された。そのポイントや課題、今後の進め方などについて、電力広域的運営推進機関の寺島一希理事に聞いた。
【インタビュー】寺島一希/電力広域的運営推進機関理事

―今回策定したマスタープランのポイントを教えてください。
寺島 2017年5月に公表した「広域系統長期方針」は、再生可能エネルギーなど新規電源の接続量増加を見据え、「日本版コネクト&マネージ」の導入など既存設備の有効活用を前提に広域連系系統の整備・更新の方向性をまとめたものです。それに対し今回のマスタープランは、北海道ブラックアウト(全域停電)やカーボンニュートラル(CN)宣言などを踏まえ、適切な信頼度を確保しながらCN社会を実現するための広域連系系統のあるべき姿を示したことが大きなポイントです。国民負担最小化の視点から、他に類を見ない規模で全国千数百カ所もの送電系統を模擬したシミュレーションを実施。その中での混雑状況などを把握した上で、費用便益評価を行いました。
―21年5月公表の中間整理から大きな変更がありました。
寺島 中間整理は第五次エネルギー基本計画をベースとしたので、その後のCN宣言や第六次エネ基を踏まえ、電源想定や需要シナリオを大きく見直す必要がありました。加えて、再エネ電源近傍の需要により再エネ利用率を増やすことで、再エネ比率5~6割の下での出力制御率を中間整理時点の40%程度から、今回10%程度まで軽減できる見通しとなりました。これも、中間整理からの大きな進展だと捉えています。
ステップバイステップで実行 資金調達の仕組みも必須
―各整備計画は具体的にどう進めるのでしょうか。
寺島 全ての計画を一気に実行に移すのではなく、適切な時期に適切な規模で順次進めていくことになります。政府の要請もあり、北海道~東北間の海底直流送電(HVDC)の新設、九州~中国の関門連系線、中部~関西~北陸の交流ループの増設計画などを優先的に進めることになるでしょう。ただし、計画の具体化に当たっては、技術的な課題も含めた地に足のついた精緻な検討が求められます。特に北海道~東北のHVDCは、複雑な日本近海の地形に前例のない規模で敷設する事業であり、ルートに関する国の実地調査結果を踏まえて工事計画を検討し、事業性の評価を行う必要があります。
―さまざまな不確定要素を指摘する声があります。
寺島 洋上風力は今後の開発、稼働状況への留意が必要ですし、既存の火力燃料の水素・アンモニアへの転換もあくまで一定の仮定に基づくシナリオ想定であることは事実です。当機関としても、23年度供給計画の取りまとめに際して経済産業相に対し、脱炭素電源の確保の仕組みと併せ、水素・アンモニアを含めた燃料サプライチェーン構築への政策支援の重要性を提言しました。また、HVDCなどでは資金調達の円滑化も重要であり、政府と連携しつつ、合理的な事業環境の整備も重要です。マスタープランの具体化に向けては、これらの課題に取り組むと同時に、さまざまな方面からのご意見もいただきたく思っています。















