【特集2】デラックスタイプの新製品発売 高級感ある外観と性能を兼ね備える


【リンナイ】

リンナイは7月12日、ガス衣類乾燥機「乾太くん」デラックスタイプを発売する。2013年の登場から10年ぶりのフルモデルチェンジとなる。

乾太くんにはスタンダードとデラックスの二つのタイプがある。もともとは、手前から温風が出て、ドラムの奥に糸くずフィルターがあるスタンダードタイプのみの展開だった。その後、フィルターが手前にあると手入れをしやすいというニーズから、デラックスタイプが誕生した。

ドラム内が見える窓付き 糸くずフィルターに工夫

今回のフルモデルチェンジによって、①容量の拡大、②デザインの刷新、③新たな衣類ケアコースの搭載―の3点が更新された。①は従来の5㎏から6㎏への拡大に加え、大容量の9㎏モデルも新たにラインアップした。洗濯機の大容量化に対応しながら、設置スペースを考慮。高さと横幅はそのままのサイズで奥行きのみを変更し、容量の拡大を図った。②は高級感のある外観とした上で、使用感にもとことんこだわった。「扉の開閉時の重厚感や操作パネルやダイヤルのクリック感は特に意識した」。営業本部営業企画部の中尾公厚部長はこう話す。③は高温の温風でのケアが難しい革製品やデリケートな衣類などに対応。シャープのプラズマクラスターによる除菌・消臭を図る新コースを設けた。

近年、共働き世帯の増加などから、家事の効率化ニーズが高まっている。今回のフルモデルチェンジでは「複数の家事を並行する中で進行状況を確認したい」という要望に応えるべく、ドラム内が見えるよう扉に窓を取り付けた。従来のデラックスタイプでは扉の内側にあった本体側に設ける必要があった。そこで構造を一から見直し、本体入口下部の目立たない位置にフィルターを配置した。扉を開けたときのスタイリッシュさも重要視する徹底ぶりだ。

さらにスマートフォンアプリ「リンナイアプリ」との連携で、残り時間の確認や完了通知の受け取りができるようになった。乾太くんのアプリ連携は今回が初めてだ。SNSをきっかけとした購入が増えているという背景もあり、家電とスマホの連携に対するユーザーの関心は非常に高いという。

リンナイは乾太くんシリーズの23年度の年間販売目標として12万台を掲げている。「乾太くんは設置場所にガス栓を設ける必要があるなど、ガス事業者の協力が欠かせない。オール電化に対抗できる商品として『乾太くんを使いたいからガスを引く』と言ってもらえるようにしていきたい」と、中尾部長は意気込みを見せた。

【特集2】質量販売向け消費者講習を開催 適したLPガス設備をネット販売


【ELG】

質量販売や付随するLPガス製品が事業拡大に寄与すると考えるELG。全国第1号で緊急時対応講習実施者に認定され月1回講習を開催する。

ELGは東大阪市を拠点とする中小LPガス事業者で現在、業界で大きな注目を集めている。経済産業省の「質量販売緊急時対応講習実施者」に全国第1号で認定され、毎月リモートや対面形式の講習を開催して反響を呼んでいるのだ。「リモート形式では毎月100人程度が受講している」。こう話すのは、講師を務める同社の米島周作社長だ。

ELGはLPガス製品のインターネット販売の事業に注力してきた。全国各地から注文がある中、質量販売に関する問い合わせが近年多く集まっていたという。その大半が「地元のLPガス事業者に質量販売をお願いすると扱ってないと断られた。何とかしてもらえないか」という内容だった。

米島周作社長

LPガスには、緊急時に販売事業者が30分以内に消費者のところへ駆けつけ、緊急対応できることを保安機関としての認定条件にしている。このため、キャンピングカーやキッチンカーなど、移動して使用するのは事業者が保安活動を保証できるものではないと断られるケースが多い。

しかし近年のアウトドアブームや災害におけるLPガスの貢献など利便性が認められたことで、経産省が昨年保安機関の認定に関するルールを条件付きで変更した。これにより、需要家が「質量販売緊急時対応講習」を受講すれば、自ら緊急時の対応が可能となり、販売事業者は30分ルールを考えることなく、LPガスを販売し、需要家は利用できるようになった。

同講習には、前述のキャンピングカーやキッチンカー利用者をはじめ、多くの需要家が参加しているという。「参加者の多くはネットや口コミ情報を頼りに参加している。当社が講習を行うのは需要家の利便性向上とLPガス普及促進のため。より多くの人に知ってもらいたい草の根運動だ」と米島社長は強調する。

質量販売向けLPガス設備 BBQグリルなどを販売

同社では、質量販売に適したLPガス設備の販売も積極的に行っている。その一つがバーベキュー(BBQ)製品だ。米国のウェーバー製のBBQグリルなど、関連製品の国内代理店を務める。ウェーバーはアウトドア愛好家を中心にファンが多く日本上陸が望まれていた。しかし、肝心の燃料となるLPガスを30分ルールによって事業者が取り扱ってくれないことがネックになり、普及していなかった。現在は、大手量販店でも取り扱うようになり、関西方面ではELGを事業者として推薦しているという。こうした新たな需要開拓がLPガス発展の裾野をさらに広げていきそうだ。

米ウェーバー製のBBQグリル

【特集2】カーボンマイナスを目指すオフィス 自然との共生で室内環境も快適に


【戸田建設】

戸田建設が茨城県つくば市に構える筑波技術研究所のグリーンオフィス棟では、「カーボンマイナス」の取り組みが進行中だ。年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスの『ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)』を達成した上で、施工から運用・解体までのCO2排出量の実質マイナスと、働きやすい室内環境づくりを目指している。

登はん・下垂植物を組み合わせて、上下に生育するよう植栽

2017年5月、ZEB建築の要素技術を実証する環境技術実証棟が完成した。その設計段階で技術実証の終了後、21年にZEBとして改修される計画だった。当時ZEBが普及しつつある中で、その先を行くカーボンマイナスの構想が浮かび上がってきた。この構想は政府がカーボンニュートラルを宣言した20年よりも早い、15年から始まっていたという。「消費エネルギーは設計時の想定より約26%低く、太陽光も多めに発電できている。ZEB計算の対象とならないコンセントなどの電力も含め、カーボンマイナスの達成を目指している。建物のライフサイクルを70年と捉え、38年ほどでエネルギー収支が逆転する計算だ」と村江行忠技術研究所長は話す。グリーンオフィス棟へと生まれ変わった現在は執務スペースとして活用され、研究所員の働きやすさの満足度も高い。

省エネと快適性を両立 壁面緑化と地中熱利用

同施設には建築をはじめとする多くの技術要素が取り入れられている。その一つに、壁面緑化ユニットがある。日光や雨風を遮るルーバーとつる植物を組み合わせ、CO2の吸収と日射熱の抑制を実現。このルーバーに使用される木材は、施設建設時に伐採した樹木を原料とした再生木だ。壁面で生育されるつる植物は、自然の要素を取り入れ生産性の向上などを促す「バイオフィリックデザイン」となるほか、紅葉など季節ごとに外観の変化をもたらす珍しい建築となっている。

ルーバーは内側からも緑が覗く

室内を快適に保つ設備としては、タスクアンビエント空調がある。個人と空間全体を効率的に空調するため、在・不在と温冷感を画像AIで解析する制御を組み込んでいる。冷暖房には熱回収効率が高いオープンループ方式で採熱した地中熱を活用している。

こうした高いデザイン性と環境性が評価され、第1回SDGs建築賞国土交通大臣賞と22年度のグッドデザイン賞を受賞した。既存の取引先を中心に、見学の問い合わせが多数寄せられている。戸田建設は、顧客に提供する施設への技術展開を通じて、脱炭素社会の実現に貢献していく方針だ。

【特集2】コージェネ利用で災害対策と省エネ 工場の操業に合わせて稼働を制御


【広島ガス】

広島ガスは企業のカーボンニュートラル(CN)に向けた取り組みや省エネ、災害発生時のBCP(事業継続計画)対策の切り札としてコージェネレーションを中心に据えたエネルギーサービスの提供に注力している。2050年CN達成に向け、転換期においては低炭素化が不可欠だ。そこで同社では設備更新による省エネと合わせて天然ガスとLPガスの導入を顧客に促していく。

また、広島県は18年の西日本豪雨で大きな被害を受けた。その教訓から、県全体でBCP対策への意識が高まっており、対策として災害に強いガスインフラの利用を提案している。

そうした提案が奏功し、エネルギーサービスを展開した案件がある。同県を中心とするスーパーチェーン「フレスタ」への停電対応型コージェネの導入事例だ。フレスタは、これまで県内に点在していた惣菜や精肉加工の工場と本社機能を集約した拠点を新設。これに合わせて、停電対応型コージェネをエネルギーサービス方式で導入した。

フレスタが導入した停電対応型コージェネ

コージェネは平時に工場や本社の空調などに使用する電気の3分の1を供給。災害発生時は事務所の照明や通信機器に給電し本社機能を維持するようにした。

2グループに分けて運用 電力と熱の負荷に応じて運転

一方で、フレスタは広島市と災害時の物資協定を締結。加えて、工場新設時には災害時の協定を締結し「浸水時緊急退避施設」に認定された。これにより、新工場の4階以上の共用部分に2000人の地域住民を受け入れられるようにした。この避難エリアでもコージェネから給電し、照明やスマートフォンへの充電などに利用できるようにしている。

省エネに関しては、コージェネからの排熱利用とデマンド抑制を効果的に実施するため、6台設置した停電対応型コージェネ(35 kW)の制御を3台×2グループに分けて管理を行っている。一つのグループは工場の熱需要に合わせてベースロードで、もう一方は工場の電力や熱の需要が高い時間帯に運転する。二つに分けたことで、電力と熱の負荷に応じた運転が可能となり、省エネ・省CO2に寄与する。排熱については5台分を貯湯槽用、1台分をボイラーで利用している。

「工場は24時間操業で、深夜もエネルギー需要があるため、ベースロード運転は必須だ。並行して、省エネのため季節変動を考慮する必要がある。夏場は空調を利用するため、フル稼働だが、春や秋は運転を制御することで、省エネ効果を上げている」。産業用エネルギー営業部開発グループの森本瑛梨子主任は効率的な運用について説明する。

同社ではフレスタと同様に、食品工場を中心に省エネやBCPなどをアピールしコージェネを中心としたエネルギーサービスの普及に努めていく。

【特集2】製造効率の向上と脱炭素化 「上げDR」で一挙両得


【東京製鐵】

太陽光発電が普及する中で発生してしまう余剰電力を、有効に活用する試みが進められている。それは、特定の時間帯に電力需要を引き上げる「上げDR(デマンドレスポンス)」だ。

東京製鐵の九州工場で取り組む上げDRは、電力単価が高いとされている昼間にあえて工場を稼働し、電力需要を創出するというものだ。この取り組みが始まったのは、2017年のこと。九州電力管内では冷暖房の需要が少ない春と秋を中心に、太陽光を出力制御せざるを得ない状況が続いていた。そこで九州電力から東京製鐵に対し、昼間の余剰電力を割安な夜間と同等の価格で使用しないか、という提案があった。上げDRの対象日は火・水・金曜の週三日で、実施した場合、約5万3000kWの電力需要を創出する。

再エネと電炉は好相性 蓄電池代わりの上げDR

鉄鋼製品の製造法は主に2種類ある。鉄鉱石や石炭などを原料とする高炉法と、鉄スクラップを溶かす電炉法だ。東京製鐵が上げDRに応じられた大きな理由として、電炉法の採用がある。電炉には投入電力の上げ下げや、1分程度であれば投入電力をゼロにできるといった操業の柔軟性があるからだ。

国内の鉄の蓄積量は約14億tと言われている

電炉で鉄スクラップを溶かした後は、連続鋳造機で固めて半製品にする「製鋼」と、半製品に圧力をかけて加工する「圧延」を行う。一般的な一週間単位の操業パターンでは、製鋼は電力単価が安価な平日夜間と土日終日、圧延は金曜の夜から火曜の夜までに行われる。上げDR実施時の操業パターンでは、平日の昼間と夜間の電気料金が切り替わる午前10時と午後10時に製鋼の操業を停止。上げDRの要請があり、かつ圧延の操業がある火曜の昼間にまとめて稼働することで、製造工程の脱炭素化とコスト削減を実現した。

さらに、生産効率も改善したという。製鋼と圧延を同時に操業する時間の比率をシンクロ率といい、製鋼後の半製品を熱いまま圧延工程に受け渡す比率をホット率という。この二つがそれぞれ10%ほど向上した。製鋼と圧延の間が空くと、半製品が冷めてしまうため、再加熱しなければならない。上げDR実施すると、製鋼後の熱いままで圧延工程に移ることができ、再加熱が不要となる。これにより、加熱炉で使用する都市ガスの削減につながっている。

「高炉と比べてCO2排出量が少ない電炉と再生可能エネルギーを組み合わせ、蓄電池代わりに使ってもらう。われわれの柔軟な調整力を生かして、余剰な再エネを貯めるのではなく、使い切る形で協力していきたい」。中上正博九州工場長は展望をこう語る。

東京製鐵は現在、九州以外のエリアでも実証を進めているという。同社の上げDRの展開に期待が高まる。

【特集2】再開発で高効率のエネルギー供給 寒冷地ならではの取り組みも


【北海道ガス】

北海道ガスは経営計画「Challenge 2030」を掲げ、省エネを基盤として、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを展開している。「46エネルギーセンター」(札幌市)による再開発エリアへのエネルギー供給も、その一つだ。

同センターは、北海道ガスの都市ガス製造工場跡地を活用する「北4東6周辺地区第一種市街地再開発事業」の一貫として設置された。再開発エリアは三つの地区で構成され、札幌市の中央体育館であり指定避難所でもある「北ガスアリーナ札幌46」、全2棟・275戸のマンション、202戸のシニア向けマンション、フィットネスクラブがある。これらの施設への効率的なエネルギー供給が評価され、「コージェネ大賞2022」民生部門の最高位である理事長賞を受賞した。

4種のエネルギーを供給 地域全体でのエネマネ

再開発には①積雪寒冷地での省エネ、②都心地区の低炭素化、③地区全体の強じん化(レジリエンス強化)―の三つの課題があった。これらを解決するため、46エネルギーセンターは設置された。

供給するエネルギーは電力、温水、冷水、融雪温水の4種類で、主な設備はコージェネや地中熱ヒートポンプだ。電力は系統電力とセンター内で発電し、エリア内全ての施設に供給。温水と冷水はそれぞれ80℃と7℃ほどで、暖房・給湯と冷房に使用される。

寒冷地特有のエネルギーとして、融雪温水も供給する。40℃ほどの低温の排温水の活用で、ロードヒーティング専用のボイラーや電熱線が不要となる。また、太陽光の利用方法にも特色がある。太陽光発電ではなく、太陽光集熱器により熱として回収。太陽光の電力への変換効率は20%ほどだが、熱としては約50%で回収でき、通年ある温水需要に対応可能だ。

街区のエネルギー使用・発生の状況やCO2削減量を一元化

コージェネの活用により、災害時に外部からの電力供給が途絶えても、エネルギー供給が可能だ。複雑な制御のため、CEMS(コミュニティーエネルギーマネジメントシステム)を北海道で初導入。地域全体の需要を予測し、機能的で効率的な省エネを実現した。加えて、省人化や住民へのDR(デマンドレスポンス)要請などにも役立っているという。 エネルギーシステムグループの奥山憲司副課長は「多くの事例の中から理事長賞を受賞できたのは、寒冷地という地域条件や小規模な取り組みゆえに他地域への展開が可能な点が評価されたから。脱炭素には需要と供給双方の省エネが第一歩。道内はもちろん、他のエリアへの展開にも貢献していきたい」と意気込みを見せた。

【特集2】半導体工場の標準ガス検知器 機能集約を図り使用部材を低減


【理研計器】

理研計器のガス検知器「GD-84D」シリーズが省エネ大賞製品・ビジネスモデル部門を受賞した。半導体市場向けの同製品は業界のスタンダード機として普及している。その要因に迫った。

日本国内に大型工場の建設が計画されるなど、盛り上がりを見せる半導体業界。その工場内では、200種類を超えるガスや薬液、金属材料などが大量に使われている。中には、毒性が強く、人体に悪影響を及ぼすものもあり、万が一の漏洩時には迅速で正確な検知が求められている。

理研計器が手掛ける半導体市場向けスマートタイプマルチガス検知器「GD-84D」シリーズは、大気中の可燃性ガスや毒性ガスの漏洩や酸欠を検知することで警報を発する製品だ。業界のスタンダード機として国内外の工場で多く採用されている。

省エネ大賞で製品・ビジネスモデル部門を受賞した「GD-84D」

半導体工場ではガス検知器の点数削減、ガス検知器のコスト削減を含むイニシャルコストの削減が継続的に求められている。そこで、GD-84Dの開発では、従来機から大幅な性能向上を図るため、①自己診断機能を強化した高性能ガスセンサー、②複数のガス検知器を1台に集約すること、③環境負担軽減への配慮―を目指した。

この結果、従来はガス種ごとに必要だったガス検知器について1台で4種のセンサーを搭載できる製品を開発。これに合わせてガスセンサーも新たに開発した。新しいガスセンサーは体積を従来から91%減まで小型化し、寿命では2年の延長を実現した。さらに、ガス検知器内にガスを引き込むポンプも1セットで4種のガスに対応するものを開発したことで、一つの検知器に4台分を集約することが可能となった。これにより、従来機の6割以上の消費電力削減を図った。さらに、電気通信配線やガスのサンプリング配管など周辺部材の導入点数も最大4分の1に削減できるようになった。

導入コスト全体を最適化 省エネや省資源に貢献

このように前機種から大幅に機能集約を実現したことが評価され、GD-84Dは省エネルギーセンター主催の「2022年度省エネ大賞」の製品・ビジネスモデル部門エネルギーセンター会長賞を受賞した。

「1台のガス検知器で4種のガスに対応したのに加えて、サンプリング配管や電力通信配線など周辺部材を大幅に削減したことも評価されたと考えている。サンプリング配管はとても高価だ。従来は使用するガス種ごとにこれを数十m程度導入するため、顧客の費用負担が大きかった。そうした導入コスト全体の削減、省エネ、省資源などが、脱炭素やSDGsの観点から全体的に評価されたのではないか」。営業技術部の森阪秀一部長は、受賞についてこう話す。

現在、検知器は一度設置されたら10年は使用する製品だという。それだけに信頼性が求められる。顧客の要望に応えながらの製品開発は困難を伴うが、今回のような性能向上の実現は産業発展につながる。理研計器はそうした開発に今後も邁進する構えだ。

【特集2まとめ】省エネビジネスの活況 最先端の取り組みを一挙紹介


2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みや
BCP対策への対応に頭を悩ます企業が急速に増えてきた。
そうした中で活況を呈しているのが省エネビジネスだ。
「乾いた雑巾」とも言われている省エネ対策だが、
熱分野や建物分野をはじめ、改善の余地はまだまだ残る。
省エネを巡る最先端の取り組みを紹介する。

【アウトライン】省エネ強化へ制度整備が進展 短中期の脱炭素対策の柱に

【インタビュー】「乾いた雑巾」にあらず 産業用改善策は熱利用にあり

【レポート】鹿児島初のエネルギー面的供給 地方ガスの活性化に貢献

【レポート】再開発で高効率のエネルギー供給 寒冷地ならではの取り組みも

【レポート】コージェネ利用で災害対策と省エネ 工場の操業に合わせて稼働を制御

【レポート】製造効率の向上と脱炭素化 「上げDR」で一挙両得

【トピックス】半導体工場の標準ガス検知器 機能集約を図り使用部材を低減

【インタビュー】省エネの先にある取り組み 環境価値を創出するSXへ

【レポート】庁舎で全国初のZEB認証取得 行政として率先垂範示す

【レポート】沖縄県最大級の商業施設 脱炭素目指すエネサービス提供

【レポート】ZEB化に向けた新たな手段 業務を止めずにリニューアル工事

【レポート】カーボンマイナスを目指すオフィス 自然との共生で室内環境も快適に

【トピックス】空気循環で屋内温度差を緩和 健康性と快適性を追求するZEH

【トピックス】家庭のガス消費量削減に効果発揮 床暖房省エネリモコンを発売

【特集2】ZEB化に向けた新たな手段 業務を止めずにリニューアル工事


【大成建設】

大成建設はこのほど、既築ビルをZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化する「グリーン・リニューアルZEB化工事」を自社の関西支店で実施した。同工事は、既存建築物の特性を考慮して最適な省エネ、創エネ技術を導入し、事務所を稼働させながら、改修工事を行うもの。これにより、関西支店はBEI(省エネルギー性能指標)0・37を達成し、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)において「ZEB Ready」を取得している。

同社が考える建物のZEB化では、①パッシブ技術で必要なエネルギーを減らす、②アクティブ技術でエネルギーを効率的に利用する、③再生可能エネルギーを利用する―の大きく三つだ。①のパッシブ技術は高断熱化、自然換気、日射遮蔽、植栽・緑化、昼光利用などが該当する。

庇や植栽などを取り付けた同社関西支店

改装したビルでまず目を引くのがその外観だ。各階の窓の外にはルーバーと庇が新たに設けられ、植栽がされている。これが、日射遮蔽や緑化に寄与し快適性を向上している。

建物の改修では新たな仕組みを多数取り入れている。独自の自然採光ブラインド「T-Light Blind」は、ブラインドを上下二段構成にして二つの異なる種類のスラットを採用。下部のブラインドでは室内窓際に直接日光が入らないように遮光し、上部のブラインドでは太陽光を反射させて、オフィス室奥の天井面に光を取り入れる。これにより、室内窓際に入る直射日光を避けながら明るい環境を実現し、エネルギー消費量も削減できるようにした。

②のアクティブ技術では、高効率照明や空調、それらの制御システムの導入、空調設備のダウンサイジング化を図る。照明と空調を制御する人検知省エネ自動環境制御システム「T-Zone Saver」ではLED照明の制御に独自の人検知センサーを採用し、従来の4灯単位から1灯単位で制御することで照明に使われるエネルギーを最小化する。

さらに、同システムでは空調も制御、在籍人数に応じた適正な換気量に調節することで外気ロスを低減する。

太陽光パネルを独自開発 オフィスの一部をテラス化

③再エネ関連では、窓建材に太陽光発電セルを組み込んだシースルー対応の太陽光発電パネルや、ビル外観に配慮したカラー太陽光パネルなど独自製品も採用する。このほか、オフィスの一部をテラス化したり、インナーバルコニーを設置するなど、オフィスの快適性を重視した改修も行った。これらにより、CO2削減量は年間365t、光熱費は同1760万円の削減につながるとのことだ。

現在、同社はグリーン・リニューアルZEBを検討する顧客などを対象に見学を受け入れている。リニューアル推進部の須田健二部長は「今回の改修工事の知見を生かし、顧客への展開を目指していく」と意気込む。既築ビルのZEB化は多くのビル所有者などの課題となっている。今回のようなリニューアルの取り組みが突破口となり、脱炭素化をさらに加速させていくだろう。

【特集2】省エネ強化へ制度整備が進展 短中期の脱炭素対策の柱に


脱炭素やエネルギー価格上昇をきっかけに企業や家庭での省エネ対策への意識が高まりつつある。省エネ法や建築物省エネ法の改正など制度整備が進む中、ビジネス機会も大きく広がってきた。

2050年カーボンニュートラル(CN)社会の実現に向け、日本のエネルギー需給構造の転換と安定的なエネルギー供給を確保するための法制度整備として、今年4月に改正省エネルギー法が施行された。

具体的には、①非化石エネを含めたエネルギー全体の使用を合理化、②工場などで使用するエネルギーを非化石エネに転換促進、③ デマンドレスポンス(DR)など電気需要の最適化―などを掲げている。そうした中にあって、今後10〜20年後を見据えた期間においては、省エネや低炭素化に資する取り組みが欠かせない。

東京ガスエンジニアリングソリューションズは、鹿児島県初となるエネルギーの面的供給のプロジェクトを手掛けた。病院やホテルに電気と熱を供給。エネルギー効率の高い設備を導入しながら、供給安定性とBCP(事業継続計画)の機能を高めている。

東京製鐵は九州工場で、九州電力管内で発生した余剰電力を消費する「上げDR」に取り組んでいる。九電管内では、需要閑散期の春や秋に太陽光発電の余剰電力が多く発生し、出力制御を行っている。この余剰を解消するため、昼間に割安な料金メニューを設定してもらい、工場を積極的に稼働させている。

ストック平均でネットゼロ 高い目標にどう対応するか

建築物の省エネにおいては、昨年6月に施行した改正建築物省エネ法で、50年に住宅・建築物のストック平均でZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)基準水準の省エネ性能を確保することを目指す方針を打ち出している。

省エネ基準適合義務の対象外の住宅、小規模建築物の省エネ基準への適合を25年度までに義務化するとともに、30年度以降に新築される住宅・建築物はZEH・ZEB基準の省エネ性能の確保を目標に掲げている。

ZEB化工事を実施した大成建設のオフィス

この目標達成に向け、大成建設は既築ビルをZEB化する「グリーン・リニューアルZEB化工事」を展開。同工事は、既存建築物の特性を考慮して最適な省エネ、創エネ技術を導入し、事務所を稼働させながら、改修工事を行うことが可能。同工事を実施した同社関西支店では、BEI(省エネルギー性能指標)0・37を達成し、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)において「ZEB Ready」を取得した。

こうした産業や建築向け省エネ施策の最新動向を取り上げる。

【特集1まとめ】広域送電網の期待と死角 「マスタープラン」を徹底検証


日本国内に新たな広域送電網を整備する青写真が示された。
電力広域的運営推進機関がまとめた広域連系系統のマスタープランだ。
総額7兆円規模の資金を投じ、洋上風力など再エネ電気の融通を強化する。
とりわけ主軸の海底直流送電では、事業化への期待が高まっている。
一方で事業主体や費用回収スキームをどうするかなど、課題も山積みだ。
関係者の話からは、事業の実現可能性を巡る死角が浮き彫りに。
果たして、広域送電網の整備は日本の国益につながるのか。
構想の先にはカーボンニュートラル社会実現への難題が横たわる。

【アウトライン】脱炭素と電力安定供給の両立へ 50年に向けた広域送電網の絵姿

【レポート】新技術実現と事業環境整備が不可欠 実効性高めるポイントを解説

【インタビュー】50年の広域連系のあるべき姿を提示 具体化には継続的な検証が重要

【座談会】避けて通れない国民負担の話 GXに必要な全体最適の視座

【インタビュー】海底調査後に具体的検討へ デジタルとの一体整備が重要に

【特集2】分散型を一気通貫で管理 モバイルアプリで簡単導入


【NextDrive】

これまで大口需要家向けとされていた、同一規格での分散型プラットフォーム。NextDriveが提供する「Ecogenie+」は、家庭から企業まで目的別の活用が可能だ。

近年はエネルギーマネジメントシステム(EMS)のデータ集約に、さまざまな企業が乗り出しており、データを管理制御する仕組みや接続されるデバイスも多種多様だ。これらを一つにまとめるプラットフォームを構築したのが、EMSの開発提供を行うNextDriveだ。

同社は通信基盤の設定、各種デバイスの制御管理、データの可視化や外部システム連携サービスなどを一気通貫で行うプラットフォーム「Ecogenie+(エコジーニー・プラス)」を提供している。プロダクトソリューション部の小長井教宏部長は「プラットフォーム構築で、企業が分散型エネルギーリソース活用に注力し、価値創出に取り組む環境を作りたい」とサービスの意義を語る。

LTEゲートウェイ「Atto」を紹介する小長井部長

このプラットフォームの利点はその設置、設定の容易さにある。これまで分散型エネルギー設備を同一の仕組みで構築するプラットフォームは、高額で大口需要家向きとされていた。同サービスは、モバイルアプリで簡単に導入でき、家庭内の消費者向け機能から、企業管理者向けシステムまで、使用者の目的に合わせて柔軟に活用することができる。

また、Wi-Fi環境がなくても通信可能な「Atto」や、わずか5cm角と世界最小クラスの「CubeJ」といったエネルギーマネジメントコントローラーによって、スマートメーター、太陽光、蓄電池、EVからエアコンに至る幅広い機器と連携。メーカーごとに異なる設備、異なるプロトコルでも統合管理が可能で、電力の可視化、機器の遠隔制御などを行うことができる。各種端末の情報は、安全性を確保したネットワーク通信で集約し、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)実現やJ―クレジット取得に伴う業務効率化など、企業が分散型エネルギー資源を活用できるようサポートする。

先進性が評価され受賞 分散型リソース集約に寄与

このように、インフラ設備全般へ対応可能な先進性を評価され、Ecogenie+は2022年度の新エネ大賞・新エネルギー財団会長賞(商品・サービス部門)を受賞した。今後の目標について小長井部長は「異なるインターフェース同士のすり合わせでトラブルが起きないよう、満足していただける価値を作る必要がある」と話し、安定したサービス提供に尽力する姿勢を見せた。

企業による分散型リソースの集約促進、そして脱炭素社会構築のために「EMSの再定義を目指す」(小長井部長)。NextDriveのさらなる進化が楽しみだ。

「CubeJ」はコンセントに挿して使用

【特集2】これからの街づくりで強み発揮 自治体の取り組みをサポート


【インタビュー】松原浩司/日本熱供給事業協会 専務理事

脱炭素に向けてCO2排出量低減に寄与する熱供給が注目を集める。日本熱供給事業協会も普及に向けて自治体のサポートに注力する。

―長期ビジョン発表から3年が経過しましたが、公表後、どのような動きがありましたか。

松原 カーボンニュートラル(CN)への対応として「温室効果ガス算定・報告・公表制度(SHK制度)」における熱供給事業者別排出係数制度の導入に向けた取り組みを行っています。これにより、熱供給事業者自身がCO2排出の少ない熱を製造する取り組みを助長するとともに、カーボンオフセットされた熱を需要家へ供給できるようになります。国は今年度中の導入を目指しています。

未利用エネルギーの活用 個別では困難な省エネ実現

―制度の導入で熱分野のCO2削減につながりそうですか。

松原 熱供給事業者が未利用エネルギーを有効利用するなど、CO2排出の少ない熱を需要家に供給し始めることで、地域全体のCO2削減につながるものと考えます。

―再生可能エネルギー大量導入について、地域熱供給との親和性や共存のメリットはありますか。

松原 地域熱供給は、地中熱、河川熱など、個別建物では使いづらい未利用熱の活用が可能です。エネルギー需要が集約する地域では、建物に熱源を持つよりも、導管で冷・温水を地域全体に送る方が、省エネ・脱炭素につながります。東京の田町駅東口北地区では、エネルギーマネジメントシステム(EMS)を用いて、天候や施設のエネルギー使用状況などのデータを基に効率的な運転が行われています。地域全体でエネルギーを管理するので、デマンドレスポンス(DR)にも対応できます。

―BCP対策にも寄与しますか。

松原 2018年9月に発生した北海道胆振東部地震のときは強みを発揮しました。エネルギーセンターから供給を受けていた「さっぽろ創世スクエア」ではブラックアウトの中、熱と電気の供給を継続しました。観光客や帰宅困難者に空調の効いた避難場所を提供でき、災害状況の情報発信やスマートフォンの電源提供ができました。地域熱供給の導入は、不動産の価値や自治体の企業誘致力の向上にもつながると考えます。

―自治体との連携についてお聞かせください。

松原 再開発・街づくりにおいて地域熱供給の導入を必ず検討していただきたいです。協会主催の研修会などを通じて、地域熱供給への理解を深めてもらい、ゼロカーボンシティ宣言や脱炭素先行地域の取り組みにどのように貢献できるのか、自治体の皆さまと一緒に考えていきたいと思っています。

―協会として50年に向けた展望はありますか。

松原 地域総合サービス事業(DTS)への進化を目標としています。省エネや脱炭素の課題解決はもちろん、エネルギー以外でも、地域密着型のサービスの展開を通じて、各地域になくてはならない会員企業を増やしていきたいです。

まつばら・こうじ 中央大学法学部卒、現経済産業省入省。四国経済産業局資源エネルギー環境部長、地域経済部長などを歴任。21年から現職。

【特集2】新たなエネ供給の形を提示 再エネを利用した電力網構築


【千葉県 いすみ市/リソルの森】

大規模発電所の電力供給に頼らず、コミュニティーで電源と消費施設を持ち地産地消を目指すマイクログリッドが注目を集めている。再生可能エネルギーを用いて、カーボンニュートラル(CN)を目指すほか、地域経済の発展、BCP対策など目的はさまざまだ。千葉県では2019年に台風が襲来し、長期間にわたる停電が発生した。こうした影響もあり、分散型エネルギー導入への関心が高く、複数のプロジェクトが進められている。その代表的な事例が「いすみ市地域マイクログリッド構築事業」と、複合リゾート施設「リソルの森」だ。

関電工が設備構築を手掛けた「いすみ市地域マイクログリッド構築事業」は災害などで系統からの電力供給が途絶えた際に、地域マイクログリッドを立ち上げ、大原中学校やいすみ市役所を含むエリア一帯に電力を供給するもの。関電工といすみ市、東京電力パワーグリッド木更津支社と共同で、この事業を推進してきた。

主な設備は太陽光パネルと蓄電池、LPガス発電機だ。これらをエネルギーマネジメントシステム(EMS)で制御していく。メーカーと共同開発したLPガス発電機を用いることで、長時間の安定した電力供給を可能にした。

いすみ市役所の屋上に216枚の太陽光パネル、大原中学校の屋上に528枚の太陽光パネルを設置。さらに、大原中学校の敷地内にEMSと蓄電池、LPガス発電機、インバータ、バルクなどが設置されている。

LPガスは、アストモスエネルギーと大多喜ガスが供給するCNLPガスを使用する。発電機が4日間以上稼働できる量を備蓄しているという。

安定した電力供給が可能 強靭化に資するシステム

マイクログリッドの立ち上げから復旧までを、3者が連携して行う。①停電の原因調査・復旧の見通し調査、②マイクログリッドの使用判断、③マイクログリッド系統の構築要請、④マイクログリッド関係者への周知、⑤マイクログリッド系統の構築、⑥マイクログリッドモードへの設定変更と発電機起動、⑦復旧―の7ステップだ。完成披露式では、実際に一時的に系統電力を遮断した実演「ブラックスタート」も行われた。

3月27日に開催したいすみ市マイクログリッドの完成披露式

「今回、関電工は太陽光発電と蓄電池、LPガス発電機の三つの電源を統合し、制御するシステムを開発した。これにより、安定した電力供給が可能となった。国土強じん化に貢献する新しいエネルギー供給の形を示せた、と自負している」と、関電工の中摩俊男社長は話す。次なる取り組みとして、システムの標準化とコストダウン、配電事業ライセンスの取得を目指すという。配電事業ライセンスを取得できれば、発電と小売りの兼業が可能となる。関電工は、再エネの地産地消のさらなる促進を目指していく。

もう一つの事例であるリソルの森は、千葉県の中央に位置する複合リゾート施設だ。別荘やホテル、ゴルフ場をはじめ、フィットネスや医療施設を有するメディカルトレーニングセンター(MTC)など、さまざまな施設が330万㎡の広大な敷地に点在している。こうした施設にも脱炭素の波は押し寄せている。

「これまで脱炭素の取り組みは企業が主体だった。いずれは一般の需要家にまで波及する。脱炭素への取り組みがリゾート施設を評価する基準の一つになるのではと考えている」。こう語るのはリソル総合研究所の湯田幸樹会長だ。

施設内で利用し自家消費 自己託送でゴルフ場に送電

同社がエネルギーに関わるようになったのは、ゴルフ場の未利用地を活用するため、再エネ固定価格買い取り(FIT)制度で太陽光発電所を手掛けたことに始まる。ただ、FITは長期にわたり継続できる仕組みではない。このため、エネルギーを地産地消できるやり方を模索していた。そうしたときに、東京電力グループから低炭素投資促進機構(GIO)の支援による「郊外型スマートコミュニティ構築事業」について声がかかり、今回のマイクログリッドを手掛けるようになったという。

同システムは、リソルの森の敷地内に太陽光発電設備(1200kW)を設置。主要施設のMTCで自家消費し、余剰分を隣接するゴルフ場のクラブハウスに託送して、発電した電力を全量消費する仕組みになっている。「当初は全て自営線を敷設して運用しようと考えたが、距離が長くなってしまう。そこで、東京電力パワーグリッドと相談して、系統を利用することで自営線を半分に短縮して敷設し、コスト低減が図れることを確認した。結果、自己託送を行うシステムになった」と設備を管理する東光高岳の石渡剛久フューチャーグリッド推進室長は話す。

リソルの森の敷地内にある太陽光発電所

マイクログリッドの運営では、前日昼までに自己託送計画を策定し、電力広域的運営機関に提出している。当日は、計画に従い発電量や需要量を制御し、30分間の電力量を計画と一致させている。同時同量が達成できない場合は、インバランスとしてペナルティーが発生する。「ウクライナ危機以降のエネルギーコストの値上がりで、インバランス料金がシステムを運営する上で足かせとなっている。なるべく出さないように注意している」と湯田氏は苦労を語る。

自己託送ルールを順守しながら、インバランスを最小限に抑えるため、MTCには据置型蓄電池100kW、VtoHシステムが1台、ゴルフ場にヒートポンプを設置し、自己託送を実現する制御対象としている。今後はEVや電気カートなどリゾート施設内に導入し太陽光発電の電気をさらに有効活用していく構えだ。