【東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)】
東京ガスと東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)は、ノリタケカンパニーリミテドと共同で、水素燃焼式のリチウムイオン電池(LiB)電極材用連続焼成炉「C-SERT-RHK-Nero(シーサートRHKネロー)」を開発した。特殊なセラミックを用いた水素燃焼ラジアントチューブバーナーを採用した世界初のLiB電極材用焼成炉だ。
連続焼成炉は大容量のもので全長40m、百数十台のラジアントチューブバーナーが並ぶ。あらかじめ設定された温度環境の中を、製品がローラー搬送により連続で通過することで、高品質な熱処理を行う。東京ガスグループの研究施設「アスラボ」では、その一部分を切り出した試験炉で顧客のニーズに合わせた検証を行っている。
自動車や通信機器にも展開 脱炭素に向けた提案を行う
ネローの主な特長として、燃焼時のNOX(窒素酸化物)の抑制と高い耐熱・耐蝕性がある。水素専焼はCO2が発生しない一方、火炎温度が高く燃焼速度が速い。そのため、NOXが発生しやすいという課題があった。この課題に対し、これまで開発してきた省エネバーナーの独自技術である「二段燃焼技術」や「自己排ガス再循環技術」を応用し燃焼をコントロールすることで、NOXの発生を抑制している。
また、従来の炉の課題であった耐熱・耐蝕性ついては、特殊セラミックを用いることで解決した。ネローに搭載されたラジアントチューブは、1300℃の炉内温度に対応可能であり、LiB電極材の焼成時に発生する特殊腐食雰囲気にも強い耐性を有している。

シーサートRHKシリーズはネローのほかに、都市ガス燃料型の「C-SERT-RHK(シーサートRHK)」と、電力対応型の「C-SERT-RHK-Fos(シーサートRHKフォス)」がある。どちらも、ネローと共通のセラミックラジアントチューブを採用している。
「ネローで培った技術を生かして、燃焼や炉の操業に関する技術など、カーボンニュートラルに向けたトータルエンジニアリングを行っていきたい」と、エンジニアリング本部燃焼システム部新商材開発・営業グループの米島正人マネージャーは意気込みを語る。
今後、LiB分野にとどまらず、高温域での熱処理が必要な自動車用超高張力鋼板等や通信機器、セラミックなどの分野への展開も目指すという。現状では水素は高価なため、省エネ化検討をはじめ、都市ガスとの混焼でエネルギーコストを削減したり、試験炉を用い実際に水素燃焼でテストを実施するなど、脱炭素化のための提案をしていく方針だ。