<出席者>電力・石油・ガス・マスコミ業界関係者/4名
都議選で自民党は予想外の敗北を喫し、総選挙も情勢は厳しいようだ。
エネルギー政策には政治の安定が不可欠だが、雲行きが怪しくなった。
―7月の都議選は大方の予想に反して、自民党は惨敗に近い結果となった。
電力 選挙戦の最終日に過労で入院していた小池百合子都知事が応援に出て、都民ファーストに同情票が集まったといわれている。だけど、自民党が負けた本当の理由は、コロナ対策だと思う。
ガス 同感。デルタ株がまん延して、感染者が増えてきた。東京・大阪などの大都会で、自民党の支持率が急落している。このまま総選挙に突入すると、自民党はかなり議席を減らすことになる。
石油 政府・与党幹部は秋の総裁選・総選挙に向けて、「ホップ、ステップ、ジャンプでいく」と言っていた。まず都議選で圧勝し、東京五輪・パラリンピックを成功させ、衆院選で勝つという構図だった。
ところが、楽観視していた初めの都議選でつまずいた。五輪も無観客が決まり、宿泊・飲食業者は不満を募らせている。これでコロナ感染者が急増したら、衆院選も厳しい結果になりそうだ。
エネ基で新増設見送り 沈黙守る「長老」議員
―自民党=原発維持・推進、野党=原発反対という構図で考えると、自民党が議席を減らすことはエネルギー政策への影響も大きい。カーボンニュートラル、それにCO2排出46%削減の目標を達成するには、原発の稼働や新増設・リプレースなどが欠かせないが。
電力 もちろん、自民党内には原発立地地域の出身議員を中心に、原子力は欠かせないと考える議員は多くいる。だが、衆院で過半数の議席を得ている今も、党として原発に寛大になったわけではない。原子力推進の象徴だったエネルギー基本計画での新増設・リプレース記載も結局、見送られた。
マスコミ 与野党問わず、常に政治家の頭の90%を占めているのは選挙のことだ。福島事故から10年たったが、今も原発への反感は強い。もし自民党が原発推進だけの政党ならば、多くの国民の支持は得られない。
党内には河野太郎行政・規制改革相、小泉進次郎環境相をはじめ、反原発派議員が少なからずいる。エネルギー政策を真面目に考えている議員にとっては、こういう人たちの発言や態度は無責任としか映らないだろう。
だけど、河野さんや小泉さんがいることは、党にとって、そんなに悪いことじゃない。都心部を中心に、一定の有権者の支持をつなぎ留めている面がある。
石油 そういう面もあるかもしれない。だが、やりすぎじゃないか。河野さん、小泉さん、それに金融機関を通じて酒類の提供停止の圧力をかけようとした西村康稔経済再生担当相。この3人への役所の評判は非常に悪い。官僚からすると、西村さんのやったことは普通はあり得ない。3人とも事務方の言うことを聞かず、半ば思い付きで物事を進めているという。
マスコミ 安倍晋三前首相が月刊誌で、次の首相候補を挙げている。加藤勝信官房長官、下村博文政調会長、茂木敏充外相、岸田文雄前政調会長の4人。河野さん、小泉さんはともかく、総裁選に立候補したこともある西村さんの名前を挙げなかったことは意味深だった。
電力 エネ基での原発の扱いの件も、再エネ拡大しか念頭にない小泉さんが大分、いろいろと動いたようだ。不思議なのは細田博之さんや額賀福志郎さんのような、エネルギー関連議員の「長老」が、小泉さんたちがやりたい放題やっていることに、声を上げないことだ。さすがにある幹部は「調子に乗るな」と一喝したようだが。
ガス 小泉さんは今までも、ことあるごとに脱原発を主張してきた。今回エネ基のことで、党内に150人近くいる原発推進の議員を完全に敵に回したと思う。ただ「これで政治家として一皮むけた」という人もいる。脱原発を政治信条として、今後もぶれないで主張していくということだ。
―一方、都議選の敗北で自民党内がぎくしゃくしだしたようだ。
マスコミ 3A(安倍前首相、麻生太郎財務相、甘利税調会長)と二階俊博幹事長との関係は相当、深刻らしい。岸田派の林芳正元文部科学相が、参院からくら替えし衆院選に山口3区から立候補する。この選挙区には二階派の重鎮で、官房長官、文科相を歴任した河村建夫さんがいる。二階さんとしたら、完全にけんかを売られたと思うだろう。
二階さんは、中央政界復帰がうわさされる小池都知事との関係が良い。脱炭素化を目指す中、きちんとしたエネルギー政策を進めるには、自民党がしっかりしてもらわないと困る。だけど総裁選も絡んで、これから一波乱あるかもしれない。
太陽光の発電コスト 朝日の「偏向報道」再び
―話題を変えるが、経産省が7月12日に2030年の電源別の発電コストの試算を公表した。太陽光発電が原発を下回ったことで、各紙大きく取り上げている。
電力 朝日は「発電コスト最安、原子力→太陽光」、毎日は「発電費最安は太陽光」。いずれも13日の朝刊一面で扱った。ただ今回、「朝日はひどいな」と思った。太陽光など出力が天候で変わる電源を系統につなぐと、変動を吸収する火力発電が必要になる。そういった系統安定化費用について全く触れず、龍谷大の大島堅一さんに「原発が経済性に優れている根拠はなくなった」と言わせている。
毎日も同じように、大島さんの主張を掲載している。しかし、東大の荻本和彦さんの「(系統安定化費用が)含まれていない要素も多い」とのコメントを掲載して、わずかだがバランスを取ろうとしている。
―朝日だけ読んでいる国民は、完全に「洗脳」されてしまうな。