ロシア依存度ゼロもLPガス高騰 複層要因で値下がり要素なく

【業界紙の目】古見純一郎/石油産業新聞社 編集局長

ロシアによるウクライナ侵攻によりエネルギー価格が高騰を続ける中、LPガス価格も同様の動きだ。

さらにパナマ運河の通峡料値上げなどの課題も抱え、依然不透明な状況になっている。

 ロシアによるウクライナ侵攻開始から4カ月が経過した。多くの尊い命が失われたことに加え、世界経済にも深刻な影響を与えている。欧米のロシアに対する厳しい制裁により原油や天然ガス価格が高騰。原油市場に連動する形でLPガス価格にも影響が及んでいる。

ウクライナ侵攻後のサウジアラムコCP(契約価格)の推移を見ると、3月積みCPは、原油市況が一時1バレル100ドルを突破し2014年9月以来の高値を更新する中、原油価格高騰に伴いプロパン1t895ドル(前月比120ドル高)、ブタン920ドル(同145ドル高)と上昇した。

さらに4月は原油価格がロシアへの経済制裁措置の実施で急騰し、08年8月以来の高値を更新。CP価格はプロパン940ドル、ブタンは960ドルと連れ高となり、14年1月ぶりの1000ドル突破も見えてきたが、その後原油市場の極端な乱高下は収まり、5月、6月は下落に転じている。

5月のLPガス市場は、欧州では温暖な気候でプロパン需要は減少、中東市場も不需要期を迎える中、中国はコロナウイルス感染拡大に伴う上海のロックダウンなどにより需要が落ち込んだ。サウジアラビアなど産ガス国の在庫高や米国玉も含め供給は潤沢なこともあり、需給緩和で市況は軟化し、CP価格は年初水準に戻ってきたものの、20年6月のプロパン350ドルと比べると約2倍だ。

タクシー事業者支援は奏功 調達多様化で供給不安なし

LPガス輸入価格高騰に対応すべく、国土交通省は4月からタクシー事業者に対する燃料価格激変緩和対策を実施している。これは国民生活への影響を緩和し、今後の需要回復局面にタクシーの供給が順調に回復するための下支えが目的で、LPガスを使用するタクシー事業者に対して燃料高騰相当分を支援するものだ。ガソリンなどに対する補助金と同様の措置であり、ガソリン価格は3月以降、横ばいが続く。輸入価格の上昇分は政府の補助金などで賄うため大きく値上がりはしていないが、いつまで継続されるかは不透明だ。

OPEC(石油輸出国機構)プラスは、6月2日に開かれた閣僚会合で、従来堅持していた日量43万バレルという月間増産ペースを、7、8月は65万バレルに引き上げる追加増産を表明。原油価格抑制に作用するかと思われたが、その後も原油価格は上昇傾向を示し、LPガス価格も再び上昇局面に入ることが懸念されている。

調達面からロシアへの依存度を見ると、石油4%、天然ガス9%、石炭11%に対し、LPガスはロシアからの輸入はゼロとなっている。LPガス輸入は、米国や中東からの安定した供給に加え、近年カナダ、オーストラリアのシェアが拡大するなど多様化が進む。LPガス輸入の中東依存度は07年度に過去最高の91%に達したが、LPガス輸入元売りの努力とともに、シェールガス革命に伴う米国からの輸入本格化などで、中東依存度は16年58・6%から21年には8・9%に低減されている。逆に米国産輸入は、16年31・8%から69・5%に拡大、カナダ12・6%、オーストラリア7・2%となっており、供給面については安定的であるといえるだろう。

パナマ運河が大幅値上げ 日中韓の元売りが反発

4月の総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会で、日本LPガス協会はウクライナ危機について、「LPガス価格は高騰しているが、量的な意味での供給不安は発生していない。日本のLPガスの輸入量は約1000万tだが、ロシア産のLPガス輸入はここ20年ゼロで全く依存していない」としている。

パナマ運河通峡料大幅値上げの影響も大きい

LPガス価格上昇のもう一つの懸念事項が、パナマ運河庁が4月付で通告してきた料金システム変更と規定改定だ。16年に拡張工事を終え開通した新パナマ運河は、米国メキシコ湾から日本着まで、従来は喜望峰周りのルートで約45日かかった輸送日数を30日以下に短縮するとして大いに期待されていた。これまで10~20%程度の通峡料値上げはあったものの、今回は全船種平均で3年間のうちにそれぞれ22年と比べ30%、40%、60%と大幅な値上げとなる。その中でもLPG船の場合は194%と約2倍近く大幅に値上げする内容だという。

これらを受け、日本のLPガス元売り会社5社(アストモスエネルギー、ENEOSグローブ、ジクシス、ジャパンガスエナジー、岩谷産業)から成る日本LPガス協会と、韓国のSKGas、中国のオリエンタルエナジー、ワンファケミカルの四者は、パブリックコメントに共同で意見書を提出した。四者はパナマ運河経由で年間約2000万t、約900航海に相当する米国Gulf湾産LPGを極東アジアに輸入しており、今回の通峡料などの大幅値上げについて受け入れ難いと表明。さらにLPG船の通峡予約タイミングの改善についても要望した。パナマ運河到着2週間前の予約では、米国FOB(本船渡し)船積みおよび日本、韓国、中国での荷揚げスケジュールに適切なスロットの確保が困難であると主張する。

現在のような不確実性の下、本船を早めにパナマ運河に到着させねばならないことや、運河混雑時はさらに状況が悪化すると指摘。現在の通峡予約タイミングを80日前に変更することを要請した。実際に6月のフレート市況を見ると、パナマ運河の滞船が一時1~2週間に達し、タイト化に拍車を掛けたとの報告もあり、市況は昨年1月以来の高値となっている。意見書では、「日本、韓国、中国にとってLPGは産業向けだけでなく、商業・民生用として一般の人々にとって欠かせないエネルギー源であり、米国からのLPG輸入量は非常に多くを占め、パナマ運河のスムーズで安定した通峡は必須の条件」と見直しを求めた。

ロシアのウクライナ侵攻から4カ月、原油市況が乱高下する中、LPガス輸入価格も不透明感を増している。さらに、米国からのLPガス輸入量が多くを占める状況下で、パナマ運河の安定した通峡は必須条件だといえるだろう。

〈プロパン産業新聞〉石油産業新聞社発行〇1960年創刊〇購読者数:1万5000部〇読者層:LPガス元売り・卸売り・小売り事業者、ガス機器メーカー、官公庁、団体など

燃料・原料費の上昇続く 「値上げ改定」待ったなし

電力・ガス会社が調達する燃料・原料費の上昇に歯止めが掛からない。5月下旬に各社が発表した7月分の標準料金の状況を見ると、電力の燃料費で東北、北陸、関西、中国、四国、九州、沖縄の7社が上限に到達。ガスの原料費では東京ガスが上限に達した。石油、LNG、石炭の超高値推移に加え、為替でも約24年ぶりに1ドル135円を付けるなど円安が加速。調達費のさらなる上昇は避けられない見通しだ。

「上限を超えた分については、事業者の持ち出しになっており、このままだと収益への悪影響が避けられない。石油製品分野では国の補助金が投入されているが、電気・ガス分野でも何らかの対策が必要だ」(エネルギー関係者)

正攻法の手段として考えられるのが、値上げ改定の実施だ。とりわけ大手電力の規制料金は認可を受けてから10年前後経過しているものが多く、中には燃料構成が大幅に変わっているところも。「早急に燃料費の洗い替えをしないといけないレベル」(学識者)だという。自由料金部門の上限廃止も含め、参院選後には電気・ガス値上げが一段と加速するのか。

【コラム/7月8日】太陽光発電の新たな問題 水害とテロの危険点検を

杉山大志/キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹

東京都で太陽光パネルの新築住宅への義務付け条例案が検討されている。6月24日までの期限で一般からの意見募集(パブコメ)の受け付けが終わったところだ東京都による意見募集ホームページはこちら

経済性、系統安定性、土砂災害、景観、ジェノサイドへの関与など、ここにきて問題点が噴出している太陽光発電だが、本稿ではさらに最近気づいた二つの問題点について述べよう。

東京都の太陽光パネル 大水害時に感電事故の懸念

火災の際、太陽光パネルに放水すると、水を伝って感電の危険があることはよく知られるようになった。消防庁資料の冒頭だけ紹介しよう(全文はこちら

消防庁が都道府県担当課に発出した太陽光発電に関する消防活動の留意点

消防の放水が問題になるぐらいだから、水害の場合にももちろん感電の危険がある。これは政府機関NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託で太陽光発電協会(JPEA)が作成した資料に説明がある。これも一部だけ紹介する全文はこちら

水害時の太陽光発電システムに関する注意喚起

普通の電気であれば、大水害の時には送電線のスイッチをいったん切れば感電の心配はなくなるが、太陽光パネルは光が当たる限り発電を続けるので感電の危険がある。従って水害が起きやすい場所では太陽光パネルの設置には気を付けねばならない。東京都で特に心配なのは江戸川区だ。

江戸川区資料では、最悪の場合、最大で10m以上の浸水が1~2週間続くと警告されている。この資料は「ここにいてはダメです」という衝撃的なメッセージで話題を呼んだものだ。一部だけ紹介する全文はこちら

江戸川区水害ハザードマップでは広域避難などを呼び掛ける

さて、大規模な水害が起きた時に、太陽光パネルは感電で二次災害を起こさないのだろうか。それによって復旧が遅れたりすることは無いのだろうか。

問題はもちろん江戸川区だけに止まらない。洪水が起きかねない場所は東京都の至る所にある。太陽光パネル導入を急ぐ前に、まずは安全性の確認が必要なのではないか。

問題は再エネの「規律」だけか 悪意ある事業者が停電を起こす危惧  

「再エネ発電の一部で規律に課題、停電に至ったケースも」と、電気新聞が6月7日付で報じている。

記事によると、「送配電網協議会は6月6日、経済産業省などが開いた再生可能エネルギーの事業規律を強化するための有識者会合で、一部再エネ発電事業者の運用や工事面の問題を提起した。運用面では、給電指令を受けた再エネ事業者の認識不足と機器の誤操作で、系統が停電したケースがあったと報告」としている。

これについて説明しよう。再エネ事業者は、送電線・配電線を管理する送配電事業者の指令に従って、発電した電気を送電する。工事中の時などは、指令があれば、スイッチを切らねばならない。この電気新聞記事は、その指令に誤って従わなかった事業者がいて、停電が発生した、としている。

今回は再エネ事業者の「規律」の問題として扱われているが、もしもこの再エネ事業者が「悪意」を持っていたらどうするのか。

かつての電気事業者は日本の大企業ばかりだから、そんな心配は無かった。だが電力自由化と再エネ大量導入によって多数の事業者が参入した。中国系の企業も多い。

現代の戦争は「ハイブリッド戦争」であり、武力による攻撃に並行してインフラを攻撃するのは世界の常識になっている。

太陽光・風力を大量導入した結果、いまや日本の多くの地域で、瞬間的ではあるが電力供給の半分以上、九州に至っては7割を太陽・風力が占めることがある。経産省資料の図の最下段の赤枠がそれに当たる。

再エネ比率は九州が突出するが、他のエリアでも高くなっている

このうちのいったいどれだけが中国系の企業なのか。それが一斉に悪意を持って、送配電事業者に従わず、本国の命令によって送配電網のかく乱を試みたらどうなるのか。

例えば一斉に出力を落とす、あるいは過剰に出力する。他にも電気的にかく乱するさまざまな方法がありうるのではないか。同時多発的に各地で停電を起こしたり、その復旧を妨害したりすることで日本を混乱に陥れ、それに乗じて武力攻撃をしてくる可能性は無いのか。 杞憂であることを祈りたいが、早急に、再エネ事業者の実態の調査と対策が必要ではないか。

【プロフィール】1991年東京大学理学部卒。93年同大学院工学研究科物理工学修了後、電力中央研究所入所。電中研上席研究員などを経て、2017年キヤノングローバル戦略研究所入所。19年から現職。慶應義塾大学大学院特任教授も務める。「中露の環境問題工作に騙されるな! 」(共著)、「脱炭素は嘘だらけ」、「15歳からの地球温暖化」など著書多数。

エネルギー安全保障と脱炭素 両立へ新たな首脳会議創設を

【論説室の窓】竹川 正記/毎日新聞 論説副委員長

ロシアのウクライナ侵攻と西側諸国の経済制裁はエネルギー危機を招来した。

エネルギー安全保障と脱炭素の両立に向け、新たな首脳会議を創設し国際協調を強化すべきだ。

「戦争を終わらせるためにロシアに最大限の圧力をかける」―。ロシア産石油の輸入禁止で合意した5月末の欧州連合(EU)首脳会議。マラソン協議を終えたミシェルEU大統領は、こう強調した。欧州はロシア産石油の最大の輸出先で、ウクライナや国際社会から「プーチン露大統領に軍資金を提供している」と厳しい批判を浴びてきた。

今回の合意により、年末までにロシアからの輸入の9割が止まるという。専門家は「ロシアは中国やインドなどとの取引拡大に動いているが、EUの禁輸分を完全に穴埋めするのは難しい」と解説する。追加制裁に一定の効果ありというわけだ。だが、ミシェル大統領が言うようにプーチン政権への圧力を最大化するには「石油より依存度が高い天然ガスの禁輸に踏み込む必要がある」(米証券アナリスト)。

「脱ロシア化」を進める欧州 中東産などアジアと争奪戦に

天然ガス調達の半分以上をロシア産に頼るドイツでは、産業界から「製造業への打撃が深刻で、大量の倒産や失業を生む」と懸念する声が出ている。だが、「法の支配に基づく国際秩序維持」を掲げる欧州各国は、ロシア軍によるウクライナでのさらなる大規模な人道被害や、生物化学兵器の使用などが明らかになれば、ロシア産ガス禁輸に踏み切らざるを得なくなるだろう。逆に、ロシア側が報復措置としてガス供給を削減・停止するシナリオも指摘される。

このため、欧州各国は代替調達先の確保や、電源構成の見直しを急いでいる。ただし、欧州の「脱ロシア」化は国際エネルギー市場で大きなハレーションを引き起こしている。結果的に、中東産などの原油・天然ガス調達を巡り、日本を含むアジア各国との争奪戦を招いているからだ。市場では「歴史的な相場の高騰が長期化する」との見方が大勢となっている。

温暖化対策の後退も懸念される。EUは表向き「再生可能エネルギーの導入による脱炭素化の手は緩めない」(フォンデアライエン欧州委員長)と強調するが、実際は化石燃料への回帰が進む。環境政党である緑の党と連立を組む独シュルツ政権が、二酸化炭素(CO2)を多く排出する石炭・褐炭の火力発電の全廃時期を大幅に先延ばししたのは象徴的だ。

エネルギーの供給不安やインフレ急進を前に、他の西側諸国も「背に腹は代えられない」として、環境よりもエネルギー安全保障を優先する姿勢を鮮明にしている。昨秋の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の議長国を務めた英国は、北海油田での石油・天然ガス増産に動く。脱化石燃料が看板公約のバイデン米政権も11月の連邦議会中間選挙に向けてエネルギー価格抑制に躍起で、国内シェール業界に石油・ガスの増産を求めている。

また、温室効果ガス排出量が世界1位の中国と3位のインドは、ロシア産石油の調達を拡大するほか、国内での石炭生産や石炭火力の発電量を大幅に増やしている。先進国がウクライナ支援や軍備増強への支出を拡大させる中、温暖化防止を巡る国際支援が滞れば、東南アジアなど途上国の脱炭素化政策が停滞するのも必至だ。

ミシェルEU大統領は最大限の圧力をと訴えた
出所:EUウェブサイトより

化石燃料に回帰する主要国 温暖化対策が頓挫する懸念

一方で、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告によると、各国が提示した現状の温室効果ガス削減策では、2050年までに産業革命以来の気温上昇を1・5度以内に抑えるパリ協定の目標達成は困難という。脱炭素化の取り組み加速が必要な局面にもかかわらず、COPの協調体制はエネルギーショックに直撃されて頓挫しかねない状況だ。

エネルギー安全保障と、脱炭素化のトレードオフに直面する世界。従来のようにエネルギー政策と温暖化対策を「縦割り」で議論していては、難題に対応できない。両政策を統合した新たな国際的コンセンサスづくりが不可欠だ。

本来なら、議論の舞台として、G20(主要20カ国地域)首脳会議がふさわしい。G7(先進7カ国)から、中国、インド、資源国のサウジアラビア、ブラジルやインドネシアなど有力新興国まで網羅しているからだ。だが、ウクライナ危機を起こした張本人のプーチン露大統領もメンバーのため、G20は事実上、機能不全に陥っている。

そうならばエネルギー安保と脱炭素政策の統合にテーマを絞った形で主要国・地域による首脳会議を新たに立ち上げ、国際協調を探るしかない。ウクライナ侵攻で国際情勢が激変したことを踏まえ、エネルギー安保と地球温暖化対策の両立を目指す現実的な解を首脳レベルで見出す努力を行うべきだ。「早期の100%再エネ化」などという野心的すぎる目標を追求するのではなく、当面のエネルギー安定供給確保にも配慮した現実味のある脱炭素時代へのトランジション(移行)シナリオを構築する必要がある。

再エネのバックアップ電源に使われる石炭を含む化石燃料の扱いを巡っては、今後も相当期間、活用し続けなければ経済が回らない現実を直視し、火力発電の低炭素化に協力して取り組まなければならない。金融市場でのESG投資の広がりで、化石燃料の上流部門の開発に投資マネーが回らず、供給不足に拍車が掛かる事態に対処する必要もある。

サウジアラビアなど資源国に石油・天然ガスの増産協力を求めるなら、先進国は中長期的に資源国が化石燃料を活用した水素(ブルー水素)供給国に転換できるよう技術支援を強化しなければならないだろう。途上国対策も肝要だ。天然ガス争奪戦からはじき出されないように配慮するとともに、国際通貨基金(IMF)など国際機関を巻き込んだ大規模な基金をつくり、脱・低炭素発電へのシフトに向けた資金支援を強化することが必須だ。

秩序なき化石燃料の争奪戦による世界経済の混乱を防ぎ、温暖化対策を破綻させないためには、主要国の首脳がエネルギーと環境政策のグローバルガバナンス体制を立て直すことが急務だ。

初の全国大会に約170人が参加 再エネ乱開発防止へ「法規制を」

【全国再エネ問題連絡会】

 メガソーラーや大規模風力発電設置工事に伴う環境破壊に反対する全国ネットワーク「全国再エネ問題連絡会」が、6月4日に初の全国大会を都内で開き、約170人が参加した。大会では「既に取り返しのつかない乱開発は、全国各地で起こっている。国民が一致団結し、これらの問題を一日も早く解決しなければならない」と表明。政府に対し、問題解決に向けた法整備を訴えた。

昨年7月発足の同会には、全国都道府県から約40団体が参加。第一部となるパネルディスカッションには、衆議院議員の福島伸享氏や社会保障経済研究所代表の石川和男氏、環境エネルギー政策研究所の山下紀明主任研究員らが出席し、多発する太陽光発電・風力発電のトラブルの原因について議論を交わした。

討論の中で同会の山口雅之共同代表が、山下氏に「同研究所の飯田哲也所長が、森林を大規模に破壊するメガソーラー・風力発電建設に反対していると聞くが、研究所の公式な見解とみてよいか」と質問。山下氏は「(研究所として)大規模に開発しているメガソーラーを積極的に推進してきたことは一回もないし、これからもないだろう」と回答した。これを受け、山口氏は同研究所に対し、連絡会への協力を呼び掛けた。

山口雅之共同代表(右)らが乱開発への危機感を訴えた

宇久島のメガソーラー事業 佐々木氏が不備を訴える

第二部では、全国各地の再エネトラブルについて、住民団体が現状を発表。長崎県「宇久島の生活を守る会」の会長を務める佐々木浄榮氏は、佐世保市の宇久島全体で行うメガソーラー発電事業について説明した。

この事業は島の4分の1、720haの用地に太陽光パネル約165万枚を設置。完成すれば48万kWの発電性能を持つ国内最大規模のメガソーラー計画だ。佐々木氏は、住民に説明なく乱開発が進む現状を批判。「事業者は720haの用地を準備できていないにもかかわらず、48万kWの事業を掲げ、単純に1・5倍して必要面積を割り出した。とりあえず1円でも高い間に認定だけ取って後から変更すればいい、という考えが見て取れる」と、固定価格買い取り制度(FIT)の点から事業の不備を訴えた。

今回の全国大会では、自民党の古屋圭司政調会長代行らもビデオメッセージで参加した。古屋議員は「真の地産地消・地域共生型エネルギーシステムを構築する議員連盟」の会長として「私たちは自然を守り、国土を守り、再エネの健全な活用を目指していく」と表明。太陽光パネル事業による乱開発に警鐘を鳴らしている。

九電が袖ヶ浦火力計画から撤退 新設投資の難しさ浮き彫り

九州電力は、東京ガスと進めていたLNG火力発電所建設計画からの撤退を決めた。エネルギーを巡る世界規模の混乱が続く中、燃料市場と電力市場を含む諸情勢を勘案した結果、同計画への継続的な経営資源の投入を取りやめるとの判断に至ったという。

袖ケ浦で計画中のLNG火力の完成予想図(提供:千葉袖ヶ浦パワー)

一方東ガスは、「再生可能エネルギーの導入に欠かせない調整力として期待されるLNG火力への投資を通じて、電力の安定供給に貢献し責任あるトランジションを実現する」として、単独で検討を継続する意向を明らかにした。

九電が撤退を決めたのは、千葉県袖ケ浦市の出光興産の所有地を活用した200万kWの大型LNG火力の建設計画。当初は出光を含む3社で石炭火力を検討していたが、十分な事業性が見込めないことから19年に出光が撤退。その後、発電燃料をLNGに切り替え東ガスと検討を進めてきた。

ところが、この数年でLNGを巡る環境は激変。ウクライナ情勢の緊迫化も相まって、燃料価格は高騰、調達リスクが顕在化し不透明感が増してしまった。ある発電事業関係者は、「安い燃料が発電所の競争力の源泉となる以上、今は新たな電源のための燃料調達契約に踏み切れない」と、電源投資判断が難しい実情を語っている

泊原発で運転差し止め判決 危険性の説明に「飛躍」あり

札幌地裁は5月31日、北海道電力泊発電所について、安全性の基準を満たしていないとして運転差し止めを命じた。

運転できない泊原発の「危険性」とは

10年以上の裁判の末、北海道電力が最終書面を提出する前に、審理打ち切りで結審した経緯があるが「この判決は全国の裁判に波及しないだろう」(TMI総合法律事務所、森川久範弁護士)という。北海道電力も「判決は当社の主張をご理解いただけず誠に遺憾であり、到底承服できるものではない」と6月2日に札幌高裁へ控訴したことを発表した。

判決要旨では審理打ち切りに関して「被告(北海道電力)が立証を終える見通しが立たない」ことを理由にしているが、原子力規制委員会による適合性審査が続いた状態での安全性立証は不可能なはずだ。森川弁護士は「規制委による審査終了が見通せず、いつ運転できるか不透明な原発の『運転に起因する被ばく被害の可能性』を示した判決で、具体的な危険性の説明に飛躍がある」と指摘する。

判決について木原誠二官房副長官は「(再稼働に)何か変更はあるということはない」とコメント。「どちらが勝っても控訴審に進む裁判。その間に状況は変わる」(政府関係者)とすれば、この裁判に何の意味があるのか。

【覆面ホンネ座談会】電気料金規制を巡る想定外 電力需給危機で欠陥露呈

テーマ:電気料金規制見直し

 燃料価格の高騰と度重なる電力需給ひっ迫を背景に、経過措置料金規制や最終保障供給約款の在り方が問われ始めている。自由化と需要家保護の間で料金制度はどうあるべきか。

〈出席者〉Aガス業界関係者 B電力小売り事業関係者 C元大手電力関係者 

―電力の需給ひっ迫と卸価格高騰が、全面自由化後の電気料金制度の欠陥を露呈させた。

A 今起こっている事象は、電気・ガスを含むエネルギー自由化を選択した日本が通らざるを得ない道だ。規制と保護よりも自由化を選択したはずなのに問題が起きると制度がおかしいという話になるが、こういうことを経験しながら理想的な制度にしていくべきなのだろう。都市ガス業界は、経過措置規制が解除されつつある。電気の経過措置規制も同様に、競争が促進されていることを前提に経過措置を外すのがあるべき姿だ。

B 自由化されたにもかかわらず、旧一般電気事業者も新電力も横並びになっていることに違和感がある。新電力が提供する料金メニューは、旧一電の規制料金に対して何%割り引くといったものばかり。事業者側のこの横並び意識を変えない限り、制度を見直しても何も変わらないし自由化は失敗する。今、特に通信系の新電力が過去の習慣にとらわれない新しいメニューを打ち出し始めている。この期に及んで、これまでの延長線上で戦おうとする事業者は、大手であろうと新電力であろうと淘汰されていくだろうね。

C 旧一電は、料金改定に伴う原価の洗い替えを極端に嫌がっているようだ。需給計画を立てそれに対応する原価を計算した上で料金を算定し、パブコメにかけて経済産業相の承認を得るというプロセスの多さを考えると、料金見直しは割に合わないというのも理解できる。そうであるならば、極めてスピーディーに改定できるようにルールを変更するべきだ。毎年度の決算で利益とコストを出しているのだから、そのデータを元にできるのではないか。その点、都市ガスでは収支状況が逐次反映されている。

A 確かに都市ガスの託送収支については、決算の数字を踏まえ収支計算の報告書を提出するし、改定時の料金原価との整合を見ている。その結果、超過利潤が出ていたり改定の率が低かったりすると電力・ガス取引監視等委員会の指導を受けることになる。経過措置料金についても同様の事後評価を行っており、電気も同様のはずだが。

C いずれにしても、料金改定に踏み切らなければならないタイミングが来ている。新電力の多くは、旧一電の規制料金と同様に燃料費調整制度を設け調整単価に上限を設けている。上限を外してしまうと、燃料費高騰局面では規制料金よりも高くなってしまうからね。本音では上げたいけど、旧一電よりも低廉な価格であることを訴求しているから上げられない。特に家庭向けでシェアを伸ばしているガス、通信系の新電力は、上限撤廃で集客に歯止めがかかってしまうことは相当な痛手になる。

B 多くの小売り事業者が、そろって燃調の上限を撤廃したい、もしくは独自燃調を取り入れたいと言うけど、やっぱり実現は難しい。需要家に料金体系を説明することが難しくなるし、何より燃調次第で規制料金を上回ってしまうリスクがある。分かりやすさにこだわるばかりに、オリジナル性も失っているわけだけど。

燃料価格高騰局面はしばらく続きそうだ

大幅な赤字決算でも 料金改定に二の足踏む旧一電

―規制料金が残っていることが、新電力のメニュー作りをマンネリ化させているのかな。

A ガスは、2017年の小売り全面自由化に際して、経過措置料金規制の撤廃を判断する四つの基準を設けた。電気は自由化時にはその基準の設定がなかったが、19年に電力・ガス取引監視等委員会が基準を作り、今後はそれに基づいて撤廃が議論されるのだろう。だけど、果たしていつ撤廃が現実のものになるのだろうか。

C エリア内に5%以上のシェアを持つ事業者が複数いて、競争環境もイコールであれば撤廃するという条件を達成するのはほぼ不可能だよ。東京と関西エリアにはシェア5%以上の新電力があるとはいえ、どちらも大手都市ガス会社がかろうじてクリアしているのみ。KDDIはシェアを伸ばしているけど、大手電力会社の代理販売なのでこの条件では考慮されない。規制撤廃には程遠いよ。

B 今、新電力の経営がますます厳しい状況に追い込まれているから、代理販売や取次が増えていけば、ますます規制撤廃できずに競争者がいなくなる可能性がある。

A 旧一電は、戦略として料金を見直さないのではないかと勘繰ってしまう。見直しによって新電力が息を吹き返してしまうくらいなら、多少の取りっぱぐれをしばらくの間耐え、上限バンドを外した新電力から需要家が自社に戻ってくるのを待とうとしたたかに考えている旧一電がいてもおかしくない。確かに21年度の決算は厳しかったけど、単純に燃調の期ずれの問題だとすると、今年度は、さらに燃料調達コストが上がるようなことがない限り回収局面になって利益が出るのではないか。

B 旧一電側の話を聞いていると、昔は無視できる程度の差分だったが、今は無視できるような金額ではないというよ。料金改定したいのが本音だと思う。

―調整単価が上限に張り付いているところはこれ以上価格に転嫁できず厳しいが、北海道、東京、中部あたりはまだ上限に達していないので回収局面というとらえ方ができるかもしれない。

B 欧州の旺盛な需要を踏まえても、そう簡単に燃料コストが下がることはないだろう。電力需給にしても、18年夏に初めて燃料制約による需給ひっ迫が起きて価格がスパイクしたが、LNGの備蓄基地が整備されたわけでもなく何も変わっていない。むしろ火力の休廃止が進んだ分、悪化してしまっている。

C 危機を乗り切ってしまうと、まあいいかと正常化の流れが止まってしまうのがいつものパターン。この2年、同じような事象が繰り返し起きたことでようやく尻に火が付き議論が前に進み始めた。

B 小売り事業者は、24年度に支払い開始を控える容量市場を懸念している。果たして新電力は容量拠出金に耐えられるだろうか。容量分の単価を転嫁できるよう料金メニューを切り替えておかないと、今度は容量拠出金のために需要家を失うことになる。

【イニシャルニュース 】パワハラ問題再燃? 広域機関内部で混乱

 パワハラ問題再燃? 広域機関内部で混乱

5月半ば、エネルギーフォーラムに1通の差出人不明の封書が届いた。中に入っていた手紙は、電力広域的運営推進機関のパワハラ問題を内部告発するもので、このままでは組織が崩壊してしまいかねないと憂う内容が記されていた。その一部を紹介する。

「経済産業省から出向しているX氏のパワハラが日常化している。好き嫌いが激しく、自分に従わない人、仕事が遅い人、自分の思考を理解できない人をいじめまくって出向元に返してしまう。(中略)このままでは誰かが訴訟を起こすか、大きなトラブルが発生してしまうかもしれない」

ただ、あくまでもこれは匿名のいわゆる「怪文書」。真相を探るべく、事情通に聞くと、セクハラ、パワハラのみならず、オフィス内での不適切な行為など、耳を疑うような話が飛び出してきた。その中でも多くの人が深刻に見ているのが、やはりX氏によるパワハラだった。

パワハラ問題で揺れている

「全ての業務を自らの目を通さないと気が済まず、キャパオーバーで業務が滞っているにもかかわらず、その責任を担当者に押し付けて衆目の前で謝罪させる。企業からの出向者は相当参っている」(大手エネルギー関係者A氏)

「社員をメンタル不調にさせられたT社に至っては、この状況が放置される限り、職員を送れないと引き上げさせてしまった」(事情通B氏)

広域機関では昨年8月、理事で事務局長を務めていたT氏が退任したが、これもパワハラが原因だったとみられる。経産省のみならず、民間エネルギー会社からえりすぐりの職員が出向しているはずの広域機関内で、なぜこのようなことが繰り返されるのか。

「新型コロナ禍で多くが在宅勤務をしていて、お互いをよく知らない出向者同士、うまくコミュニケーションが図れず組織の統制が取れていないのかもしれない」(大手エネルギー関係者C氏)

混乱収束の道筋が見通せない中、前任のS氏が再登板するのではないかとの観測も業界内で広がり始めている。今年度夏・冬と厳しい需給が予想されている中で、広域機関に期待される役割は大きいのだが。

NHKの電力危機解説 担当M氏の上から目線

今年度夏、冬の電力需給問題が深刻になっている。政府は停止中の火力発電の稼働などでしのごうとしているが、停電は避けられないとの指摘も出ている。

マスコミも電力不足を問題視し始めた。テレビ各局は朝の情報バラエティー番組で電力危機について取り上げている。その中で、信頼度の点から国民への影響力が強いのは公共放送、NHKだろう。

NHKで情報番組に登場し、電力不足について説明するのはM解説委員だ。専門は科学技術・宇宙・原子力。福島第一原発事故の際は、特別番組で事故原因などの解説に当たっていた。

M氏の原子力についての見解は「かなりのアンチ」(業界関係者)と言われている。だが、その理由からでなく、業界関係者、中でも広報担当者の間でM氏の評判は芳しくない。

「Mさんから『自宅に資料を届けてくれ』と電話があり、休日に自宅へ向かった。近くまで着いたので電話すると、『ポストに入れておいてくれ』の一言。感謝の言葉など全くなかった」

ある広報マンはこう苦々しく話す。視聴者からすれば、正しい説明をしてくれれば人柄は関係ない。だが、「公共」にあぐらをかいた上から目線の人物に、公平な良い解説は期待できるだろうか。

石川県の副知事人事 気になる志賀への影響

経産官僚の西垣淳子氏が7月1日付で石川県の副知事に就任する人事が、エネルギー業界でひそかな話題を呼んでいる。西垣氏は、東大法卒で1991年入省のキャリア組。商務情報産業局生活文化課長、中小企業庁小規模企業振興課長、特許庁審査業務部長などを歴任した。一見、エネルギー畑とは無縁の西垣氏の動向がなぜ業界で話題になっているのか。事情通が言う。

「実は西垣氏は、経産官僚で現在内閣府に出向しているY氏(91年入省)の妻。その影響もあるのか、原発嫌いといわれている。石川県には、北陸電力の志賀原発があり、原子力規制委員会による審査のため長期停止を余儀なくされている。最近明るい兆しも見え始めた矢先だけに、西垣氏の副知事就任が志賀再稼働にマイナスの影響を与えなければいいのだが……」

副知事人事の波紋が広がる(石川県庁)

とはいえ、馳浩知事の期待は高いようだ。女性副知事の登用を知事選の公約に掲げており、県議会でも「私や徳田博副知事とは違った能力、人脈を持つ人が望ましい」と述べている。旧労働省出身の太田芳枝氏以来、28年ぶりとなる女性副知事の誕生で県政はどう動く のか。志賀はともかく、まずは夫の得意分野である再エネの乱開発防止で手腕を発揮してほしい。

選挙後の原子力に注目 自民で推進派が台頭

自民党が原子力の活用にかじを切った。岸田文雄政権が発足した際に、原子力推進派が政権と党の担当に起用され、その人事の影響が出てきた。政治的に難しい問題だった原子力規制改革が、7月の参院選後に動く可能性がある。

原子力を敵視し、再エネを過度に重視するいわゆる「KKコンビ」が、菅政権では党のエネルギー政策を振り回した。そして原子力規制の混乱が放置されてきた。その是正に、今の自民党は動いている。

岸田政権では甘利明議員を当初幹事長にし、高市早苗議員が政調会長になった。岸田首相はエネルギー問題にそれほど関心がないとされるが、この二人は原子力活用を主張し、人事に手を付けた。

自民党の「原子力規制に関する特別委員会」委員長に原子力活用派のS議員、経済産業部会長に高市氏に近いI議員(現在は退任)を据えた。閣僚人事は首相が主導するが、萩生田光一経産相は原子力推進を以前から唱えており、H副大臣は原子力規制改革を党内で主張してきた中心人物だ。

自民党は参院選公約で、原子力の活用を主張。経産省は原子力を減らすという第六次エネルギー基本計画の中身を唱えなくなった。さらに規制特別委では、立地県選出で規制政策批判を重ねたT議員とS議員が幹事長と事務局長に就任。5月に同委員会がまとめた原子力規制の提言では「法改正を視野」という強い言葉が示された。以前に同委員会を仕切ったI議員は環境副大臣を務めた中間派で、法改正は消極的だった。「人事の効果が出た」(自民党筋)とされる。

自民党の原子力規制改革への意気込みは、原子力規制庁、そして経産省も十分認識しているもようだ。7月の参院選後に、原子力規制の改善に向けた、新しい動きがあるかもしれない。

K議員のパワハラ気質 簡単には変わらずか

毛並みの良さと国民への発信力の強さから根強い人気を誇る与党のK議員。これまで政権や党の要職を務め、再生可能エネルギー拡大や脱原発に向けて辣腕を振るってきた。一方、官僚に対する「公衆面前パワハラ」とも取れる言動が物議を醸すこともあり、その気質は簡単には変わらないようだ。

自民党の某調査会にて。その日のテーマであるカーボンプライシングについて経産省幹部が説明をしたところ、出席していたK氏がかみついた。排出権取引について「経産省はやる気がないとちまたで言われているが、どうなんだ」と詰問した。

その一幕をK氏はSNSにも投稿し、「(経産省幹部が)むにゃむにゃと言い逃れ、やる気ありますとは言わない」と不満をあらわにした。ちなみにその投稿後、コアなK氏ファンの間でこの経産省幹部は「むにゃ局長」と呼ばれるようになったという。

ただ、経産省は炭素クレジットの自主的取引を行うGX(グリーントランスフォーメーション)リーグを来年から始め、賛同企業とその詳細な検討を今年進める。また同省は、GXリーグをおいおい義務的な排出量取引に発展させるということも、さまざまな場でおおっぴらに言及するようになってきた。

むしろ排出量取引への積極姿勢を隠さないようになってきたと受け止めるのが自然だが、K氏にはそうは受け止められないようだ。

電力不足の危機感広まる 島根2号機の再稼働に同意

「隕石が原子炉を直撃しても、放射性物質の拡散は防げるのか」「リスクがゼロでないと動かせないというと、隕石や小惑星が衝突したらどうなるのかと荒唐無稽の議論になる。冷静に議論しなければならない」

島根原発は日本で唯一県庁所在地に立地する

島根県の丸山達也知事は6月2日、中国電力島根原子力発電所2号機(82万kW)の再稼働に同意すると表明した。知事の同意は、県議会に設けた原発対策特別委員会の委員長報告に基づくものだ。2021年9月に設置された特別委員会では、冒頭のような議論が県議の間で交わされていた。委員会は7回開催し、さまざまな疑問や懸念に対して、中国電力をはじめ国・県の担当者などが丁寧に回答を行っている。

島根2号機は21年9月に原子炉設置変更許可を取得。島根2、3号機は唯一県庁所在地(松江市)に立地する原発であり、稼働に対して慎重な住民も多いとされる。中国電力は21年10月から松江市と周辺自治体の住民に説明会を開始。既に松江市をはじめ30㎞圏内にある島根県と鳥取県の自治体首長の同意を得ている。素早い対応であり、首長らの同意判断も早い。背景には「電力危機に頭を痛める国の強い意向がある」(業界関係者)とされる。安全対策工事は22年度中に終わるもよう。23年夏までの運転開始を目指す。

西日本では、関西電力美浜3号(82万6000kW)機が運転再開を10月から8月に前倒しする。特定重大事故等対処施設(特重施設)の設置期限を過ぎたため昨年10月から停止していたが、工事を早める。これも国の要請によるもの。電力危機に理解を示す自治体関係者などの協力を得ることで、再稼働が進展し始めている。

法人顧客をサイバー攻撃から守る セキュリティーと保険をセットで提供

【中部電力ミライズ】

 企業に対するサイバー攻撃が増加する一方、「対策方法がわからない」「システム担当を雇用する余裕がない」などの課題を抱える企業は少なくない。中部電力ミライズはこうしたニーズを受け、4月22日から中部エリアの法人顧客に「サイバー対策支援サービス」を開始。NTT西日本のセキュリティーサービスと三井住友海上火災保険のサイバー保険を組み合わせ、ネットワークや端末の監視、運用管理サポート、サイバー保険をワンパッケージで提供する。

ワンパッケージでサイバー攻撃対策

選べるセキュリティー 管理運用サポートも充実

中部電力ミライズは、セキュリティー対策として、ネットワーク監視サービスと端末監視サービスを用意している。ネットワーク監視サービスでは、ウイルスやハッキングからネットワークを守るゲートウェイセキュリティー機器(UTM)を設置、不正な通信がないか、一括で監視・保護する。端末監視サービスでは、ネットワークに接続されている端末を守るエンドポイントセキュリティーで、ウイルスの侵入を防ぎ、駆除を行う。これら二つのサービスは顧客の事情に合わせて選択でき、両サービスの利用でセキュリティーの強化も可能だ。

さらに、顧客の管理運用の負担を軽減するため、サポートを充実させている。サポートセンターでは、顧客が気付かない不正な通信やウイルス攻撃に対し、24時間365日監視を行う。インシデント発生時には、メール・電話での通知や遠隔でのウイルス駆除に加え、訪問でのパソコンの復旧なども行う。また、サイバー攻撃を受け賠償損害・費用損害が発生した場合、保険金が支給される。保険料はサービス利用料に含まれているため、新たな料金負担は不要だ。

中部電力ミライズは「サイバー対策支援サービス」の展開に当たり、2月に情報処理推進機構の「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の認証について一部を除き取得している。主に中小企業向けのサイバーセキュリティー支援サービスをワンパッケージで提供する企業に関する認証だ。同社は今後、電気とガスにとどまらない「新しい価値」を届けるサービスの展開を目指す方針だ。

【コラム/7月5日】経済財政運営基本方針と新しい資本主義を考える~まずエネ対策を、見識曖昧・看板塗り替えながら少しの光明か

飯倉 穣/エコノミスト

1,今年も「経済財政運営と改革の基本方針(以下基本方針22という)」の閣議決定があった(22年6月7日)。副題に「新しい資本主義へ ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」とある。理念と本質的な経済政策の中身はこれからで、効果薄き従来政策の看板塗り替えが多い。

報道は「新しい資本主義 変質 新自由主義の転換めざしたがー旧来型に回帰バラマキ色」(朝日6月1日)、「人への投資 世界水準遠く 3年で4000億円 骨太方針決定 成長へ生産性向上急務」(日経6月8日)等と伝えた。作成過程で自民内の注文報道も目についた。

岸田流で各界から様々な投げ入れがあったであろうか。基本方針22の経済政策を考える。

2,過去、小泉純一郎政権は6回の「骨太の方針(01~06年)」、安倍晋三・福田康夫・麻生太郎短命政権の骨太方針、民主党政権の経済対策中心の後、安倍政権は8回の基本方針(アベノミクスの展開:13~20年)、そして菅義偉政権「基本方針21」(21年)があった。それぞれ現状認識の誤謬と経済論軽視の対応で不適切だった。小泉劇場は、民営化、特区、分権、独法化、貯蓄から投資等で国民を沸かせた。アベノミクスは、三本の矢の旗印で、稼ぐ力、海外成長市場、600兆円経済、1億総活躍社会、Society5.0挑戦等を掲げた。放漫財政・金融の打上花火だった。いずれも金融バブル崩壊等で行き詰まる。

各基本方針は、負担の痛みを回避し「成長可能神話」で彩ったが、思い付きのアイデアだけで、経済健全化と無縁だった。この間国際競争力低下・貿易収支の赤字化、財政頼りの経済運営・国債残高積み上げで、内外不均衡拡大且つ国力消耗となった。繰り言だが、下村治博士が述べた現実直視、内外均衡重視の「節度ある経済運営」とは異なる。政府の失敗続きにもかかわらず、経済活動は、人々のうごめきの中で悲喜こもごも継続している。通常の景気変動では、マクロ政策で何もしない選択も重要ある。

3,基本方針22は、アベノミクスの蹉跌を述べず、引き続き大胆な金融政策・機動的財政政策・成長戦略の堅持で、民需主導自律的成長とデフレ脱却を謳う。そして2段階アプローチ(コロナ・ウクライナ絡み当面の緊急対策とその後の総合的な方策による成長と分配の好循環)を掲げる。

今回は「人への投資」というお題目で政策の再編成を試みている。新機軸は、資産所得倍増プラン、官民連携投資、社会的課題の民間力の活用であろう。中長期的に官民連携の計画的重点投資推進で成長力強化、成長分野への労働移動、省エネ・脱炭素で比較優位確保、産業構造変化で持続的成長を目指す。

現状の経済・社会状況から見て、塗り直し政策がどの程度必要で効果を収めているか。またエネルギー情勢の変化で一般論はあるものの、電力システム改革失敗に起因する電力の供給不安に触れていない。

 基本方針22の認識と政策は、例えば経済変動、経済成長、現経済の不均衡にどんな影響を与え、経済の目的達成の一歩前進となるのであろうか。

4,二段階アプローチは適切か。経済の現状は、コロナの影響が残る中で、資源・エネルギー価格上昇に伴う輸入物価上昇を受け、縮小均衡調整となる。海外への所得流出に伴う経済水準低下はやむを得ない。選択肢は限られている。価格上昇の転嫁(縮小均衡)の受容である。エネルギー対策には限りがある。マクロ政策で総需要抑制の他、供給で原子力発電増、需要面で節約である。すでにコロナ対策で不要・十分な財政出動をしており、屋上屋の緊急対策(財政支出)は抑々余計である。

5,次に民需主導の自立的成長を狙う政策の誤謬が懸念される。現経済の成長力の見方である。過去2000年以降21年までの実質経済成長率は、年平均0.6%(コロナ前19年まで0.7%)である。01年以降の基本方針は、政治的プロパガンダで、思い違いの連続であった。成長力の源泉である民間企業設備投資の現実を見誤っている。当年度の設備投資で翌年度のGDPをどのくらい押し上げるかという比率の推移を見れば、一目瞭然である。現経済は、0.1未満である。80兆円投資して8兆円の実質GDP増加にもならない。民間企業資本ストックは、1000兆円を超えており、毎年の設備投資は、中身の変化はあろうが、ほとんど維持投資と推定される。残念ながら技術革新を体現する独立投資不足である。 

1969年産業政策は、「模倣から創造へ」を掲げた。その課題が半世紀以上継続している。大学等基礎研究体制、企業の研究開発体制に問題があるのか、依然判然としない。米国物真似のベンチャーとベンチャーキャピタル期待一辺倒の政策は観念すべきであろう。

6,成長の本来の原動力は、企業である。過去の日本は、なぜ活力を有していたか。その後バブル経済を経て、米国要求の企業改革が進み、日本企業の多くは活気を低下させた。株主代表訴訟、独禁法、コーポレートガバナンス等投資家重視の改革が、企業経営・従業者に混迷を招いている。その反省と見直しが必要である。

7,経済運営では、内外均衡を重視した運営が基本である。とりわけ中長期的には財政均衡が重要である。00年以降成長期待で財政再建への挑戦が試みられたが、実現していない。唯一民主党野田政権で、野党自民党の見識で、税・社会保障一体改革の消費税増税合意が行われ、その後実施された。その精神も、ばらまき政治で消失した。現在は、財政破綻状況である。財政不均衡は、経済縮小というインフレか重税で、いずれ決着をつける方向になる。基本方針22は、財政健全化の旗を下ろさず「経済立て直し・財政健全化」を掲げた。財政均衡への道は未検討である。

8,繰り言になるが、経済の目的は、第一に雇用、第二に物価の安定、三四無く次が貿易の自由化であろう。経済政策の失敗の帰結であるバブル崩壊・企業リストラの下で、働く人は、早期退職、転職等を余儀なくされた。この結果安易な労働移動の勧めが横行した。それは生産性の低い分野への労働移動をもたらし、不安定な雇用が増大した。多くの働く人にとって重要なことは、生活の糧を確保し、日々安心して働くことである。それを企業経営でも第一とする企業理念とそれを支える制度見直しが必要である。

9,新しい資本主義の知恵はこれからである。現下の課題であるエネ価格高騰・輸入物価上昇への対応は、マクロ政策で金融引き締めという金融政策、財政支出圧縮という縮小均衡調整が妥当である。又エネルギー政策では、限られたエネルギーの選択肢を、情緒で判断せず、節電・再エネの限界も考慮して、過去の教訓を生かした原子力発電の活用以外に方策はない。更に電力の安定供給をより確実にするに電力システム改革(自由化)の見直しが重要である。

日本の科学技術開発力の低迷で、適度の成長は当面困難である。中長期的に基礎研究体制の見直し(大学改革の再考等)、企業活力を阻害する各種負担(コーポレートガバナンス改革等)の排除から手を付けていかざるを得ない。経済運営では、財政均衡を念頭に置いた運営が重要である。そして経済の目的は、雇用であることを再確認して政策を再構築すべきである。

岸田政権提唱の新しい資本主義は、官邸主導でなく、内容を各界が提案し、官僚の勉強と立案を基礎とする建付けである。構造改革の見直し、今後の施策の理論的精査を行い、妥当な政策を決めていくことが期待される。政治の思いでなく、官の知恵が問われている。

【プロフィール】経済地域研究所代表。東北大卒。日本開発銀行を経て、日本開発銀行設備投資研究所長、新都市熱供給兼新宿熱供給代表取締役社長、教育環境研究所代表取締役社長などを歴任。

GX移行債の焦点は償還財源 年末に向けCP綱引き加速

5月下旬、クリーンエネルギー戦略に関する有識者懇談会にて突如、岸田文雄首相が表明した「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債」。今後10年で政府資金20兆円を確保し、官民で150兆円もの投資を呼び込もうと狙う。4月に自民党環境・温暖化対策調査会がまとめた政府への提言で「ロードマップを年内に策定する」としたカーボンプライシング(CP)とも絡み、今夏設置される「GX実行会議」で中身を詰めていく。

財務省はグリーン国債発行には否定的だったが、炭素税導入には前向きだ

焦点は償還財源だ。可能性としては、①炭素税導入、②GXリーグを発展させ、有償化かつ義務的な排出量取引導入、③GXでの経済成長に伴う法人税・所得税・消費税の増収―といったパターンがあり得る。特に炭素税の議論はエネルギー価格高騰で一時トーンダウンしたが、各所での将来の財源不足が懸念される中、再び水面下で模索する動きが出つつある。

ただし、導入に伴う負担軽減策や既存制度との整理は大きな課題。例えば、燃料に課税しようとすると、ガソリンユーザーの負担軽減策として走行課税を導入するなど、エネルギー諸税の組み直しが必要となるが、こうした議論がどこまで進むかは不透明だ。

ただ、いずれにせよ産業界の負担は増す。EUはCBAM(炭素国境調整措置)や、排出量取引の完全有償化に関する法案を検討中だが、ロシア有事でガスシフトなどのプランが崩れ始め、産業界の反発が強まっている。関係者からは「GX債を発行し大規模に投資しても、経済移行に失敗して期待するようなリターンが無ければ、単なる借金。捨て身の戦略にしか見えない」といった冷ややかな受け止めも出ている。

「笛吹けども踊らず」原発再稼働 東日本ゼロ解消に立ちはだかる壁

国内の原子力発電の稼働を巡る「西高東低」の状況が一段と鮮明化してきた。

深刻な電力不足に見舞われる東日本の50Hz地域で原発の早期再稼働はあり得るのか。

 「島根原発2号機の再稼働は現状においてやむを得ないと考え、再稼働の容認を判断した」―。6月2日、島根県の丸山達也知事は、島根県議会本会議で中国電力島根2号機の再稼働同意を表明した。同社は2021年9月に島根2号機の原子炉設置変更許可を原子力規制委員会から取得。今年に入り、松江市や鳥取県米子市など周辺自治体から再稼働同意の表明を受けていた。今後は規制委への補正申請提出と並行しながら安全対策工事を進め、早ければ23年春にも再稼働が実現する。

お隣の関西電力でも動きがあった。6月10日、美浜3号機の運転再開時期を当初予定していた10月から8月12日に前倒しすると発表したのだ。特定重大事故等対処施設(特重)の運用時期が9月から7月下旬に早まったためで、再稼働に向け「現下の厳しい電力需給状況を踏まえ、原子力プラントの安全・安定運転に努めていく」とコメントしている。

関西電力大飯・高浜、四国電力伊方、九州電力玄海・川内など、西日本の60‌Hz地域では原発の再稼働が順調に進んでいる(特重工事のため5基が停止中)。これに対し、東日本の50‌Hz地域ではいまだに原発ゼロの状態が続く。今年の夏と冬の需要期に、首都圏を中心に深刻な電力不足が予想される中、東北電力女川や東京電力柏崎刈羽の早期再稼働を求める声が日増しに高まっているが、実現は極めて厳しい状況にあるのだ。

安全工事の中断が必要 女川の早期再稼働は困難

まず女川2号機を巡っては、20年2月に原子炉設置変更許可を取得。21年12月に工事計画が認可され、地元宮城県、石巻市、女川町が20年11月に再稼働同意を表明した。規制委審査、地元同意という二つのハードルをクリアしたわけだが、問題は防潮堤の整備や圧力制御室の耐震補強といった安全対策工事が遅れていることだ。現状では、23年11月に工事完了、24年2月に発電開始、4月に営業運転開始の見通しだ。

「もし今冬に緊急再稼働させるとすれば、秋口に工事をいったん中断しなくてはならない。しかし政府は、原発稼働に関して安全確保が大前提という立場を繰り返し強調している。それを考えても、工事を中断しての再稼働などあり得ないだろう」(電力関係者)

政府から緊急再稼働を求められる可能性について、東北電力は「安全工事が完了していないので回答できない」との立場だ。エネルギー関係者の中には、「事故などの問題を起こしていない東北電力の女川であれば、何とか今冬の再稼働を実現できるのではないか」(中堅新電力幹部)と淡い期待を寄せる向きもあるが、現実は厳しいと見るのが自然だ。

女川2号機以外に、東日本で新規制基準に合格している原発は、東京電力柏崎刈羽6号機と7号機、日本原子力発電東海第二原発がある。しかし柏崎刈羽では21年1月、他人のIDカードを使い中央制御室に入室するというセキュリティー面の重大事案が発覚。規制委から核燃料移動禁止という事実上の運転停止を命じられた。また東海第二では避難計画の不備を指摘され、昨年3月の水戸地裁で運転差し止めの判決を受けている。

どちらも再稼働への道のりは遠いように思えるが、関係者によると、柏崎刈羽には情勢次第でわずかながら可能性があるという。端的に言えば、ロシア・サハリン産LNGの禁輸だ。

「ウクライナ戦争が一段と泥沼化し、欧米主要国がロシア産天然ガスの禁輸措置に踏み切れば、これまでサハリン産の調達を継続するとしてきた岸田政権も同調を余儀なくされよう。そうなると、年間約650万tのLNG調達に赤信号がともり、ただでさえ予備率マイナス予想の電力不足に拍車を掛けるのは必至。もし今冬の首都圏で大規模計画停電が確実視されれば、その回避に向けて安定電源の原発を動かさざるを得なくなる。そのときこそ柏崎刈羽の出番だ」(エネルギーアナリスト)

山口環境相(中央)に要請書を手渡す丸山島根県知事

柏崎刈羽に二つの壁 今冬再稼働諦めず!?

そんな柏崎刈羽の再稼働に立ちはだかるのが、規制委と新潟県という二つの壁だ。

参院選後の7月下旬、東電の核セキュリティ専門家評価委員会は、テロ対策など一連の不祥事の改善に関する報告書を提出する予定。これを踏まえ、規制委では追加検査を終えた後、東電の対応の妥当性を判断し、禁止命令解除の是非を判断するわけだが、首都圏の電力危機が現実味を帯びてくれば、この判断時期を早める可能性がある。「一つのタイミングは、更田豊志・規制委員長の任期が終了する直前の8月下旬ごろか」。事情通はこう話す。

一方の新潟県については、1年半近く中断されている「原発事故に関する検証総括委員会」を再開させることが求められる。その上で「萩生田光一経産相か、場合によっては岸田文雄首相が新潟県に足を運び花角英世知事と面談、エネルギー有事下における緊急再稼働の必要性について誠心誠意説明する。そこで初めて、花角知事の同意を得るための道筋が見えてくる」(新潟県関係者)。

大手電力会社の関係者によれば、「東電幹部は(柏崎刈羽の)今冬の再稼働をまだ諦めたわけではないと言っている。あらゆる手を尽くして改善の対応に当たるだろう」。時期として10月ごろまでに柏崎刈羽の燃料棒装填準備が完了すれば、今冬の緊急再稼働はあり得ない話ではない。東電は「コメントできる立場にない。改善措置活動を着実に進めていくのみ」としている。

原発は「可能な限りの低減」から「最大限の活用」へ―。世界的なエネルギー危機を背景に、原発政策に対する政府の姿勢は明らかに変わってきた。世論の変化も追い風となり、原発再稼働はもはや政治的タブーではなくなったと言っていい。ただ足元の電力不足対応だけではなく、中長期的に原発を安定電源として「最大限活用」していくためには、規制委の審査体制・位置付けを含めた規制体系の抜本見直しが不可欠だ。

わが国が、エネルギー安全保障やカーボンニュートラルの観点から、混迷する原子力・核燃料サイクル政策をどう再構築していくのか。政府、学識者、自治体、そして業界が一体となって議論を深めることが求められる。その突破口を開くのは、ほかでもない「時の政権」だ。「最大限の活用」をお題目のように唱えるだけでは何の意味もない。必要なのは、責任を取る「覚悟」と政策の「実行力」だ。

【マーケット情報/7月1日】米国、中東原油が上昇、需給引き締まる

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、米国原油の指標となるWTI先物、および中東原油を代表するドバイ現物が前週比で上昇。需給逼迫感が強まり、買いが優勢になった。

リビア国営石油は、政治体制などへの抗議デモを受け、東部輸出港と一部油田でフォースマジュールを宣言した。リビア最大のエルシャララ油田も既に、フォースマジュールの宣言下にあり、同国からの供給が不調となっている。また、米国では、原油在庫が前週から減少した。さらに、24日までの一週間におけるガソリン消費が増加。前年同月は下回ったものの、前週より需要は戻った。

一方、北海原油の指標となるブレント先物は下落。OPECプラスが、7月に続き8月も、日量64万8,000バレルの増産で合意した。追加増産拡大にともなう供給増加の予測が、ブレント先物の重荷となった。また、ロシアの6月1~29日における原油およびコンデンセートの生産量は日量1,067万バレルとなり、前月比で増加したとの情報だ。

【7月1日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=108.43ドル(前週比0.81ドル高)、ブレント先物(ICE)=116.63ドル(前週比1.49ドル安)、オマーン先物(DME)=106.40ドル(前週比0.11ドル安)、ドバイ現物(Argus)=105.81ドル(前週比0.06ドル高)