【業界紙の目】古見純一郎/石油産業新聞社 編集局長
ロシアによるウクライナ侵攻によりエネルギー価格が高騰を続ける中、LPガス価格も同様の動きだ。
さらにパナマ運河の通峡料値上げなどの課題も抱え、依然不透明な状況になっている。
ロシアによるウクライナ侵攻開始から4カ月が経過した。多くの尊い命が失われたことに加え、世界経済にも深刻な影響を与えている。欧米のロシアに対する厳しい制裁により原油や天然ガス価格が高騰。原油市場に連動する形でLPガス価格にも影響が及んでいる。
ウクライナ侵攻後のサウジアラムコCP(契約価格)の推移を見ると、3月積みCPは、原油市況が一時1バレル100ドルを突破し2014年9月以来の高値を更新する中、原油価格高騰に伴いプロパン1t895ドル(前月比120ドル高)、ブタン920ドル(同145ドル高)と上昇した。
さらに4月は原油価格がロシアへの経済制裁措置の実施で急騰し、08年8月以来の高値を更新。CP価格はプロパン940ドル、ブタンは960ドルと連れ高となり、14年1月ぶりの1000ドル突破も見えてきたが、その後原油市場の極端な乱高下は収まり、5月、6月は下落に転じている。
5月のLPガス市場は、欧州では温暖な気候でプロパン需要は減少、中東市場も不需要期を迎える中、中国はコロナウイルス感染拡大に伴う上海のロックダウンなどにより需要が落ち込んだ。サウジアラビアなど産ガス国の在庫高や米国玉も含め供給は潤沢なこともあり、需給緩和で市況は軟化し、CP価格は年初水準に戻ってきたものの、20年6月のプロパン350ドルと比べると約2倍だ。
タクシー事業者支援は奏功 調達多様化で供給不安なし
LPガス輸入価格高騰に対応すべく、国土交通省は4月からタクシー事業者に対する燃料価格激変緩和対策を実施している。これは国民生活への影響を緩和し、今後の需要回復局面にタクシーの供給が順調に回復するための下支えが目的で、LPガスを使用するタクシー事業者に対して燃料高騰相当分を支援するものだ。ガソリンなどに対する補助金と同様の措置であり、ガソリン価格は3月以降、横ばいが続く。輸入価格の上昇分は政府の補助金などで賄うため大きく値上がりはしていないが、いつまで継続されるかは不透明だ。
OPEC(石油輸出国機構)プラスは、6月2日に開かれた閣僚会合で、従来堅持していた日量43万バレルという月間増産ペースを、7、8月は65万バレルに引き上げる追加増産を表明。原油価格抑制に作用するかと思われたが、その後も原油価格は上昇傾向を示し、LPガス価格も再び上昇局面に入ることが懸念されている。
調達面からロシアへの依存度を見ると、石油4%、天然ガス9%、石炭11%に対し、LPガスはロシアからの輸入はゼロとなっている。LPガス輸入は、米国や中東からの安定した供給に加え、近年カナダ、オーストラリアのシェアが拡大するなど多様化が進む。LPガス輸入の中東依存度は07年度に過去最高の91%に達したが、LPガス輸入元売りの努力とともに、シェールガス革命に伴う米国からの輸入本格化などで、中東依存度は16年58・6%から21年には8・9%に低減されている。逆に米国産輸入は、16年31・8%から69・5%に拡大、カナダ12・6%、オーストラリア7・2%となっており、供給面については安定的であるといえるだろう。
パナマ運河が大幅値上げ 日中韓の元売りが反発
4月の総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会で、日本LPガス協会はウクライナ危機について、「LPガス価格は高騰しているが、量的な意味での供給不安は発生していない。日本のLPガスの輸入量は約1000万tだが、ロシア産のLPガス輸入はここ20年ゼロで全く依存していない」としている。

LPガス価格上昇のもう一つの懸念事項が、パナマ運河庁が4月付で通告してきた料金システム変更と規定改定だ。16年に拡張工事を終え開通した新パナマ運河は、米国メキシコ湾から日本着まで、従来は喜望峰周りのルートで約45日かかった輸送日数を30日以下に短縮するとして大いに期待されていた。これまで10~20%程度の通峡料値上げはあったものの、今回は全船種平均で3年間のうちにそれぞれ22年と比べ30%、40%、60%と大幅な値上げとなる。その中でもLPG船の場合は194%と約2倍近く大幅に値上げする内容だという。
これらを受け、日本のLPガス元売り会社5社(アストモスエネルギー、ENEOSグローブ、ジクシス、ジャパンガスエナジー、岩谷産業)から成る日本LPガス協会と、韓国のSKGas、中国のオリエンタルエナジー、ワンファケミカルの四者は、パブリックコメントに共同で意見書を提出した。四者はパナマ運河経由で年間約2000万t、約900航海に相当する米国Gulf湾産LPGを極東アジアに輸入しており、今回の通峡料などの大幅値上げについて受け入れ難いと表明。さらにLPG船の通峡予約タイミングの改善についても要望した。パナマ運河到着2週間前の予約では、米国FOB(本船渡し)船積みおよび日本、韓国、中国での荷揚げスケジュールに適切なスロットの確保が困難であると主張する。
現在のような不確実性の下、本船を早めにパナマ運河に到着させねばならないことや、運河混雑時はさらに状況が悪化すると指摘。現在の通峡予約タイミングを80日前に変更することを要請した。実際に6月のフレート市況を見ると、パナマ運河の滞船が一時1~2週間に達し、タイト化に拍車を掛けたとの報告もあり、市況は昨年1月以来の高値となっている。意見書では、「日本、韓国、中国にとってLPGは産業向けだけでなく、商業・民生用として一般の人々にとって欠かせないエネルギー源であり、米国からのLPG輸入量は非常に多くを占め、パナマ運河のスムーズで安定した通峡は必須の条件」と見直しを求めた。
ロシアのウクライナ侵攻から4カ月、原油市況が乱高下する中、LPガス輸入価格も不透明感を増している。さらに、米国からのLPガス輸入量が多くを占める状況下で、パナマ運河の安定した通峡は必須条件だといえるだろう。
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