11月3日に投票が行われた米大統領選の開票結果を受け、民主党のバイデン政権が誕生する可能性が濃厚になっている。トランプ大統領は「敗北」を受け入れず、裁判などで徹底抗戦する構えだが、旗色は極めて悪い。そうした中、中東情勢の不安定化を懸念する声が高まり始めている。
海外メディアの報道などによると、鍵を握るのがイスラエルだ。トランプ大統領はここ数年、イスラエルとアラブ諸国の緊張緩和に力を入れてきた。トランプ政権の仲介によって、イスラエルとの国交正常化に合意したアラブ諸国は、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、スーダンの3カ国に上る。そして、サウジアラビアもこれに加わる見通しだ。
ところがバイデン氏は、米国とサウジの関係を見直すことを公約に掲げている。オバマ政権時代から民主党とサウジは関係が良くない上、イスラエルやサウジと敵対するイランとの関係改善を狙うバイデン氏の外交姿勢は、中東における米国のプレゼンスに大きな変化をもたらす可能性が高い。
もしオバマ政権時代の中東政策に立ち返ることになれば、どうなるか。「(イランの核合意が復活したりすれば)わが国は、行動に打って出るしかなくなる。結果、イランとイスラエルの暴力的な対決につながる」。イスラエルの閣僚の一人はバイデン氏当確の報を受け、こんな見解を示したという。事と次第によっては、イスラエルとアラブ諸国の国交正常化路線も修正を余儀なくされよう。いずれにしてもトランプ氏主導による中東の〝関係正常化〟政策は、政権交代によって大きな転機を迎えることになりそうだ。

提供:朝日新聞社
米ロ関係は悪化か 高まる軍事的緊張
そんな情勢下、がぜん存在感を増しそうなのがロシアだ。プーチン大統領は昨年10月中旬、12年ぶりにサウジを訪問し、サルマン国王やムハンマド皇太子と会談した。それまで両国はシリア情勢を巡って対立的関係にあったが、プーチン、サルマン両氏は「サウジとロシアのエネルギー協力が、中東の安定と安全保障にとって重要」との認識で一致した。以来、両氏の関係は緊密に。去る9月にも電話会談を行い、エネルギー分野を中心とした二国間の関係強化を確認し合ったという。
最大の問題は、バイデン氏が「安全保障上、最大の脅威」とロシアを名指ししていることだ。「プーチン大統領とバイデン氏の相性は決して良くない」。ロシア情勢の専門家はこう指摘する。
「米国がイランとの関係を修復し、ロシア、サウジとせめぎ合うようなことになると、軍事的緊張は急速に高まっていく。戦争などの地政学リスクが原油価格の高騰を引き起こすのは、火を見るよりも明らかだ」(経済産業省関係者)
原油情勢を巡っては、米国のパリ協定復帰による脱炭素化の加速や、コロナ禍の再拡大で石油需要が減退し、「今後、原油価格は下落に向かう」と予想する向きも少なくない。さまざまな思惑が交錯する中、わが国は油価の乱高下に備える必要がありそうだ。





