【エネルギービジネスのリーダー達】加藤芳樹・史葉/Weather Data Scienc合同会社共同代表
気象データとデータサイエンスを組み合わせたサービス事業を、夫婦で手掛けている。
気象に左右されるビジネスやサービスに対し、企業収益力につながるソリューション提供を目指す。

気象予報士の資格を持つ加藤芳樹・史葉夫妻。気象のデータを高度利用することで、気象条件により収益に影響を受ける企業の課題解決のためのサービスを提供するWeather Data Scienceを2018年に立ち上げた。気象データを活用したビッグデータの分析や、AI開発といったテクノロジーを駆使し、企業固有の問題解決に奔走している。
気象データをビジネスに 幅広い分野で顧客開拓を模索
「再生可能エネルギーをはじめとする電気事業や環境関連、フードデリバリーなど、気象にビジネスを左右される企業は全て顧客となるポテンシャルがある。気象に関することであればどのようなことでも手掛けていきたい」と語るのは史葉氏。
エネルギー分野では、再エネ事業者向けに気象条件で発電量が変動する太陽光や風力などの発電量データの分析や予測を精緻化するためのAI開発のほか、電力小売事業者向けに、電気料金戦略を決定するための前提となる電力需要と売り上げの予測値を提供するサービスなどを手掛けてきた。
エネルギー分野以外でも、コインランドリーの来客数を予測し、利用が少ないと予想される日には値段を下げることで需要を喚起するダイナミックプライシングを開発するプロジェクトに参画したのに加え、主人公が気象予報士を目指すNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」では、気象に関する台本考証にも携わった。
夫妻は民間気象情報会社であるウェザーニューズに所属し、気象予報士として勤務していた経歴を持つ。現在のビジネスにつながる転機となったのは、史葉氏が11年4月にエナリスに転職したこと。再エネFIT制度が始まり、太陽光発電の導入量が徐々に拡大していこうとする中で、気象データを活用し、電力取引や発電計画値を作るための太陽光発電予測システムを構築することが仕事だった。
同社を退職後は、太陽光出力予測をサブスクで売る個人事業を16年4月に立ち上げ。最初のクライアントは自治体系新電力1社だったが、開発費を回収できる見込みがなかったことなどから1年で終了。航空会社に勤め収入を得ながら、太陽光の発電予測サービスで新規顧客の開拓を目指した。
データサイエンティストへの転身を意識したのは17年こと。データサイエンティストやビッグデータといった言葉がもてはやされ始め、「気象データとデータサイエンスは相性が良いのではないか」と、当時別の航空会社に勤務していた芳樹氏に一緒に独立することを持ち掛けた。学び直しの期間に充てるために、2人はそろって退職を決意。データサイエンティスト養成講座を受講し、18年に独立を果たした。