川内原発が20年運転延長 準国策に電力供給で貢献


原子力規制委員会は11月に川内原子力発電所1、2号機(出力各89万kW)の20年の運転期間延長を認可した。住民団体などが延長の賛否を問う住民投票条例の制定を直接請求していたが、県議会で否決されている。「九州電力は延長の決定にホッとしていることだろう」(電力関係者)というのも、今後、九州では安価で安定した電力供給が欠かせなくなるからだ。熊本県では半導体受託製造大手のTSMC、またソニーが半導体工場を建設している。多くの関連企業も周辺に立地する。今や準国策といえる半導体の国内生産。それを電力供給面で支えるために、それぞれ2024年、25年に運開から40年を迎える川内1、2号機の稼働延長が必要だった。

九電の経営への影響も大きい。川内原発を再稼働する際に、安全対策工事や特重(特定重大事故等対処施設)の建設に膨大な額の投資を行っている。投資資金を回収するに20年の運転延長は不可欠だっただろう。

原子力で次の一手は―。川内原発の新増設がささやかれている。1兆円を超えるとされる建設資金の回収など課題は多いが、九電の経営は好調。その「挑戦」に期待する声は多い。

政府が世界初の移行国債発行へ 脱炭素化への明確な道筋を描け


【論説室の窓】西尾邦明/朝日新聞 論説委員

政府は世界初のGX経済移行国債を発行し、官民で150兆円超の投資を目指す。

日本の脱炭素の道筋が「1・5℃目標」に整合し、科学的根拠に基づく内容であるか検証が必要だ。

 「世界で初となる国としてのトランジション・ボンドであるGX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債は、産業界、アジアにおける同様の取り組みの呼び水となることが期待される」

岸田文雄首相は11月7日、官邸で行われたGX実行会議で、こう強調した。この日、新たな国債「GX経済移行債」のフレームワークを公表し、資金の使途や管理の仕組みについて、国際資本市場協会(ICMA)が示す国際基準に合致することを国内外の二つの第三者機関から認証を得て、「国際的評価に至った」と胸を張った。

日本の移行国債は脱炭素と経済成長の両立を掲げ、20兆円規模の発行を呼び水に10年間で150兆円超の官民投資を目指す。償還は、カーボンプライシングでまかなうものだ。

GX実行会議で取りまとめを行う岸田首相(11月7日)
提供:首相官邸ホームページ

再生可能エネルギーなどへの投資に使う環境国債は、世界30カ国以上に広がる。だが、日本政府が念頭に置く資金使途には、原子力の次世代革新炉のほか、火力発電の水素・アンモニア混焼など、環境国債に認定された実績がないものが含まれる。このため、他国では前例のない移行国債を発行することになった。

確かに、民生・産業部門の消費エネルギーの約6割は熱需要であり、高温熱分野は電化が難しく、排出を減らす脱炭素化技術への開発投資は欠かせない。

5月のG7広島首脳コミュニケも「トランジション・ファイナンスが、経済全体の脱炭素化を推進する上で重要な役割を有することを強調する」としている。だがこの下りは「1・5℃目標と整合的で、ロックインを回避し、効果的な排出削減に基づいている」ことが条件付けされている。

肝心なのは、日本の脱炭素への道筋が、国際合意である「1・5℃目標」と整合し、科学的裏付けのある内容かどうか、なのだ。


アンモニア混焼火力発電 効果やコストに厳しい目

中でも、石炭火力発電でのアンモニア混焼は、排出削減の効果やコスト、現実的な導入時期について、不透明な要素が強く、批判が高まっている。

アンモニアを20%混焼する実証実験が進むが、石炭から排出される二酸化炭素が80%残る上に、現状は天然ガス由来が主流で、NGO気候ネットワークによると、1%程度の削減にしかならないという。50%混焼でも削減効果はガス発電の平均値を下回る。保安面の課題のほか、温室効果が二酸化炭素の310倍の二酸化窒素の適切な管理も欠かせない。

気候コンサルのリーブライク・アソシエイツによると、海外の再エネ由来のアンモニアを日本の発電で利用すると、そのエネルギー効率は5分の1に低下する。トランジション・ゼロは、燃料費は現状でグレーアンモニアの20%混焼で石炭の2倍で「経済的に利用価値を得るには炭素価格が1tCO2当たり205ドルになる40年までかかり、その結果、均等化発電原価(LCOE)が1MW(=1000kW)当たり約280ドルという、きわめて高い金額になる」と指摘する。

その上で、35年までの電力部門の太宗の脱炭素化や温室効果ガス60%削減などと整合した導入が見込めるかも問われる。国際エネルギー機関(IEA)が9月に改訂した「ネットゼロロードマップ」は、水素とアンモニアについて「高コスト化と最終用途競争が続いているため、21年版よりも役割が小さい」と指摘し、技術進展に遅れが見られる。

環境金融の国際組織クリーンボンドイニシアチブが10月に公表した日本政府向けの報告書は、アンモニア混焼発電について「1・5℃目標」と整合していないとして、移行国債の「信頼性を損ない、グリーンウォッシュの批判を浴びるリスク要因でもある」と指摘。シンクタンクのインフルエンスマップが11月に公表した報告書も「日本のGX政策は、科学的根拠に基づく政策と大幅な乖離がある」と結論付けている。

UAEでCOP28が開幕 全世界の進捗評価を初実施


地球温暖化防止国際会議・COP28が11月30日、アラブ首長国連邦(UAE)で始まった。さまざまな論点が予想される中、もっとも注目されるのは初めて実施されるグローバル・ストックテイク(GST)だ。

世界全体の進捗評価を行うGSTは、各国が自主的に目標(NDC)を提出・更新、状況報告とレビューで実効性を高めていくという、パリ協定のコンセプトの根幹を担う。ただ、欧州は昨年来のエネルギー危機を経ても1・5℃目標の追求とNDC引き上げの声を弱めず、「パリ協定の瓦解が始まっている」(COPに参加してきた有識者)との評も。

日本はNDC(2030年度46%減)に対し21年度に約20%減を達成した実績を主張するが、それがどう評価されるのか。そしてIPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告書にも書き込まれた「35年60%削減」を巡る書きぶりなど、GSTの成果物がどのようなメッセージを示すのか―。

このほかUAEが提案する「再エネ3倍」イニシアチブの行方、それが各国の思惑と絡み交渉にどう影響するのかも要注目だ。

【覆面ホンネ座談会】笛吹けども踊らずの再稼働 安全審査の非合理を糺す


テーマ:原子力規制委員会の安全審査

岸田政権は「GX(グリーントランスフォーメーション)基本方針」で既存原発の最大限活用を盛り込んだが、原子力規制委員会による審査は長引いている。今回は特に長期化するサイトの状況を中心に、業界関係者が課題を語った。

〈出席者〉 A学識者  B元原子力規制関係者  Cジャーナリスト

―まずは北海道電力の泊3号機。審査を申請したのは2013年7月と全国の原発でも最も早い部類だった。

A 最大の懸案だった敷地内の断層の活動性については、21年7月に規制委が「活断層ではない」とする北電の主張を認めた。審査申請から約8年たってのことだった。東日本大震災後の12年7月、原子力安全・保安院(当時)で敷地内断層の再調査を決めたが、対象外だった泊原発の審査にここまでの時間がかかるとは……。

B 当時、再調査の対象になったのは6原発。保安院は泊原発について、書類を見る限りは問題ないと判断した経緯がある。

C 泊原発は建設時に上載地層をほぼ全て削り除いていたこともあり、新規制基準での審査では断層の活動性の否定に時間を要してしまった。一時は廃炉寸前にまで追い詰められたが、敷地の片隅に上載層のかけらが残っていたことで望みをつないだ。ボーリングして標高図を描き、等高線を引いて活動性を否定できた。

B 防潮堤は液状化の影響を考慮して、地中の岩盤に直接設置する構造となった。だが、北電は震災後の緊急安全対策として、独自に防潮堤を建設していた。二度手間となったが、この防潮堤も「津波を防ぐ」という点では悪くなかった。

基準地震動を巡っては原子力規制庁が15年ごろに中途半端な対応をしたことで、北電側は審査が終わったかの印象を持ったようだ。規制庁は審査の途中できちんと論点整理をしなかった。それは反省すべきだ。

A 現在は周辺火山の影響評価も行われている。10月末に規制委の石渡明委員などが、泊原発から10㎞ほど離れた区域の地層を視察。火砕流などが到達していないかを確認するためだが、スムーズにクリアできるといい。

C 同時期に申請した川内原発や大飯原発は早期に再稼働した。活断層評価の違いがあるにせよ、審査時間の差は大き過ぎるよ。

A 川内原発の最終審査が行われていた頃、規制委に行くと必ずと言っていいほど、九州電力の黒スーツを着た軍団があいさつ回りをしていた。かなりの迫力があったし、規制委からすればプレッシャーだったはずだ。

C 川内原発の次に動いたのは関西電力の大飯原発だった。関電は審査のとき、黒部ダムの土木技術者をそろえたと聞く。関電の土木技術者は黒部ダム建設の伝統を引き継ぎレベルが高い。規制庁側がいい加減なことを言うと、即座に反論していた。

B 川内と大飯の最終審査の順番を巡っては、規制庁内でも議論があったらしい。業界ナンバー2の関電を先にすべきという声が強かったようだが、審査の中身は川内が頭一つ抜けていた。もしかすると九電の〝迫力〟も影響したかもしれない(笑)。

効率的な審査が行われなければ、政府方針は絵に描いた餅で終わりかねない。


石渡委員の「怒り」を買った原電 絶体絶命のピンチ乗り越え

―日本原子力発電の敦賀2号機は資料の「書き換え」などを問題視され、2度の審査中断を経験した。2度目には規制委の山中伸弥委員長が「審査打ち切り」に言及するなど、瀬戸際まで追い込まれた。

C 1度目は20年、原電が無断で資料を書き換えていたことに端を発する。「無断で書き換えた」というと、自らが有利になるように工作したと捉えられがちだが、実際には違うようだ。規制庁から「きちんとした形で更新して最新の形で審査資料として提出するよう」に指示を受け、「最新の形」にするための書き換えだったという。のちに原電への疑いは晴らされ、昨年10月に審査を再開した。

ところがその後、2号機建屋の真下を通る破砕帯と活断層の疑いがある断層との連続性を調べるボーリング調査で、取り出した薄片の資料の一部が最新の活動面を示していないことが判明。これに規制委は態度を硬化し、再び審査中断に。規制委から事実上の「最後通牒」を受けたが、原電は改めて申請書を提出し、9月に審査再開となった。

A 地質学会の重鎮である石渡委員は、地質図やその基礎データに強いこだわりがある。原電としては、審査を受けた書類のボーリング柱状図を最新版に変えた。しかし、石渡委員は最も重要な部分を書き換えられたと感じたようで「改ざんだ」と激怒した。

B もちろん、原電に悪意があったわけではないが、メディアは大なり小なり事業者のミスばかりを強調する。そして「資料すらまともにつくれない事業者」を取り締まる「正義の規制委」というイメージが植え付けられてしまう。これでは事業者への不信感は増すばかりだ。本質から離れた部分で混乱し審査が遅れている現状は、規制委にとっても不本意ではないか。

C 活断層の議論でいつも思い出すのが、北海道新聞(2013年4月30日)に掲載された菅直人元首相のインタビュー記事だ。菅氏は「政権が自民党に代わって民主党が目指した脱原発政策は頓挫しましたね」との質問にこう答えた。「トントントンと10基も20基も動くなんてあり得ない。何となれば、原子力安全・保安院を潰して原子力規制委員会をつくったからです。彼らは活断層の話を始めた」。泊や敦賀は10年もの間、この呪縛に苦しめられ続けているわけだ。

原子力事業所の万が一に備える組織 さらなる安全性確保への進化を続ける


【日本原子力発電】

原子力事業所に対し、多様かつ高度な災害対応を可能とする美浜原子力緊急事態支援センター。

万が一の支援活動に備えて、21人のメンバーは日々訓練と改良を重ねている。

福井県美浜町にある「美浜原子力緊急事態支援センター(支援センター)」は、2016年から日本原子力発電が主体となって運営している。今年10月に柏崎刈羽原子力発電所で行われた国の原子力総合防災訓練では、自衛隊との連携や原子力事業者との支援連携を行った。今回で4回目になる。

支援センターの役割は、万が一原子力事業所の施設で緊急事態が発生した場合、高放射線下で事故の収束活動を行うことと、要員の被ばくを可能な限り低減すること。緊急時には、放射線が高く立ち入りが困難な場所での活動となるため、支援センターには小型・中型ロボット計8台、ドローン2機、無線重機3台といった、遠隔操作が可能な無線資機材を備えている。

ロボットはがれきをアームで撤去しながら建屋内を進み、偵察を行う。ドローンは高所からの情報収集を担い、可視カメラや赤外線カメラ、放射線測定器を搭載し、サーモグラフの映像で漏れ出る液体などを映し出すことや、屋外の線量測定を行う。無線重機は線量の高い屋外でがれきの撤去作業などを行う。支援センターの約2万6000㎡の敷地の屋内外ではこうした無線資機材の訓練が日々実施されている。

各資機材の無線の飛距離は100m程度のため、操作はそれぞれの資機材から近い場所に被ばくを防ぐ設備を施したコントロール車を配備。資機材に取り付けたカメラの映像を頼りに、車内から操作用PCとハンドコントローラーで操作する。

訓練は、停電下でがれきが散乱した建屋内での作業など、予想されるあらゆるシチュエーションを再現して、繰り返し行う。原子力事業所を保有する電力9社と日本原燃からの出向者は、1年以内にこれら全ての資機材の操作を指導できるレベルにまで身に付けるほか、資機材のより有効な活用方法や、作業時間を短くする対策に取り組むのが任務だ。

コントロール車内から映像を見ながら重機を操作する


原子力事業者と協働で対応 想像力働かせ訓練と改良

万一の事態が発生すると、6人3班体制の緊急出動隊を編成する。輸送は各資機材や食糧、備品などを積んだ大型車両など12台で現地の災害対策支援拠点に向かう。陸路を基本とし、状況に応じて空路の併用もできるよう、支援センター内にはヘリポートを備える。

支援センターには3人が残り、事業者の災害対策本部との支援内容調整や、自治体や自衛隊との調整窓口、追加資機材の調整などを担当する。こうした現場のイメージをつかむため、冒頭で紹介した連携訓練などでは、実際に資機材を運んで訓練している。

総括グループの井関雅喜GMは「私たちは実際に出動することがあってはならない組織。さまざまな状況を想定し、考え続け、新たな視点や発想を取り入れて具現化することがモチベーションになっている」と話す。フランスやドイツにもチョルノービリ原発事故後に設立された同様の組織がある。10月にフランスで開催された情報交換会では、支援センターの取り組みについてプレゼンテーションを行い、最新知見の共有や共通の課題を議論した。

原子力事業所は安全確保のためにさまざまな安全性向上対策に取り組んでいる。支援センターは、万が一の時にも被害の拡大防止に資する組織として、たゆまぬ訓練と改良を日々重ねている。

脱炭素先行地域が74件に 初期案件のフォロー重要に


環境省が進める「脱炭素先行地域」の第4回選定結果が11月7日に示され、12件の計画が加わった。2025年度までに100カ所という目標に対し、今回までで先行地域は74件となり、空白県も減少。〝脱炭素×地域課題解決〟のモデル作りは着実に広がりを見せる。

選考を経るごとに実現可能性を高めるべく見直しを行い、第3回以降は「重点選定モデル」を設けるようになった。例えば今回、北海道苫小牧市は次世代エネルギー供給拠点の形成を掲げ、「施策間連携」「民生部門電力以外」の2点で同モデルに選ばれた。具体的には、系統への再エネのノンファーム型接続が可能となったことを機に、産業の脱炭素化を図りつつ、それを民生へ波及させる新たなPPA(電力購入契約)モデルの構築を目指す。

他方、特に初期に選ばれた計画の中には、事前の合意形成不足などで実現が難しい内容を掲げたケースも散見される。また、第3回からは民間事業者との共同提案を必須要件としたが、それ以前の計画の中には共同提案者がいない例もある。制度開始から1年半以上たつ中、各地の進捗の分析とフォローアップの深掘りが求められるフェーズとなっている。

民生電力需要の脱炭素化のハードルはやはり高い

【イニシャルニュース 】大手電力に値下げ圧力 むしろ値上げの本音


大手電力に値下げ圧力 むしろ値上げの本音

大手電力会社が軒並み過去最高益を叩き出し、世間では電気料金を値下げしろという論調がまん延している。だが、新電力関係者のT氏は、「値下げなどとんでもない。特に規制料金も、標準約款ともに値上げしていない関西と九州は、他社並みに値上げしなければやってられないというのが本音のはずだ」と指摘する。

どういうことなのか。背景にあるのが、規制当局の指導の下進められている卸取引の内外無差別の徹底だ。

実はこの10月、関西が来年度から複数年契約の卸取引の入札を実施したのだが、ベースとミドル電源合わせて4倍の応募があったという。「これは、西日本エリアの別の大手電力が相当量応募しなければあり得ない倍率。特に隣接するC電力は、募集量の100%で応募したようだ」(前出のT氏)

エリアの制約や転売禁止などの条件が撤廃され初めての入札。これにより関西電力の小売部門は、自社電源よりも高い他社電源から調達せざるを得なくなり、来年度は調達コストが上がるにもかかわらず、料金を上げられないというジレンマに陥る可能性も。

発電部門からしてみれば、相手が大手電力の小売りであろうと入札参加を拒否できないため、発販の利害は独立する。「卸売りの内外無差別=発販の実質分離」の世界も見えてくる。

翻って、自社電源からの調達を前提にした規制料金の根幹は揺らぐことに。大手電力OBのH氏は、「新電力が大手電力と同じ条件で電源にアクセスできる以上、料金の経過措置規制は廃止するべきだ。それができないのであれば、新電力にも売り上げに対して一定比率は大手と同じ規制料金で売ることを義務付けるべきだ」と強調する。

日風開勢力が相次ぎ退場 再エネTFは活動再開

洋上風力発電事業を巡る贈収賄事件で、秋本真利・元自民党衆院議員が受託収賄・詐欺の罪で逮捕・起訴された問題を巡り、秋本被告に資金を提供していた側の日本風力開発グループの幹部が相次いで表舞台から退いている。

まず当時社長の塚脇正幸氏は8月4日の秋本氏家宅捜査の時点では、「贈賄をした事実は一切なく、この点を立証できる客観的な証拠が数点存在」するとしていたものの、1週間後に一転して贈賄性を認め、9月1日付で社長職を辞任。27日に、贈賄の事実で東京地裁に起訴された。

その後、日風開副会長の加藤仁氏が10月18日付で、日本風力発電協会の代表理事を退任した。さらに、日風開子会社の幹部でK大学寄付講座に携わっていたX氏も、10月末にひっそりと双方の要職から退いたもようだ。

一部報道などによると、東京地裁は秋本氏側からの二度の保釈請求を却下し、慎重な取り調べを続けているとみられる。洋上風力を巡る政治と金の問題はまだまだ尾を引くことが予想される中、秋本氏が師と仰ぐ河野太郎・規制改革担当相をはじめとする再エネ推進勢力がここにきて活動を再開してきた。

秋本問題が尾を引く洋上風力事業

11月10日、内閣府の「再エネ規制総点検タスクフォース」の会合がおよそ4カ月ぶりに開かれた。この日の議題は、「農山漁村地域における再エネ導入目標策定のフォローアップ」と「蓄電池の大量導入に向けた系統連系の認証手続などの在り方」で、河野氏も出席。今後、洋上風力公募第二ラウンド4海域の落札や第三ラウンドの入札が控える中、洋上風力関連で再び存在感を高めてくるのか。

ともあれ、水面下のロビー活動で中心的役割を果たしてた日風開勢力の弱体化が、今後の洋上風力政策にどんな影響を与えるのか、要注目だ。

IEAの2030年見通しは矛盾だらけ 一般メディアは表面的報道から脱却を


【識者の視点】大場紀章/ポスト石油戦略研究所代表

「2030年までに化石燃料供給はピークに」との見通しをIEAが示し、波紋を広げている。

本文をよく読むと、その主張との矛盾が見えてくるが、一般メディアは表面的な報道にとどめている。

国際エネルギー機関(IEA)は10月24日、2023年版の「World Energy Outlook」(WEO)を公開した。今回の主なメッセージは、石油・天然ガス・石炭といった化石燃料の供給量が30年までにピークを迎え減少に転じるというもので、IEAによるこのような見通しは初めてだという。メディア各社も同様の趣旨で内容を伝えており、例えば朝日新聞の同日付の記事は「化石燃料需要、30年までにピーク IEAが予測、再エネが上昇」というタイトルだった。

石油企業や産油国は強く批判した。OPEC(石油輸出国機構)は、IEAの主張は「世界のエネルギーシステムを破壊し」「非常に危険」であると公式に声明文を発表。過去にOPECがIEAを批判することはあったが、見解の違いを越え、ここまで強い言葉で非難したのは異例のことである。

石炭で特に顕著な変化 無茶な想定を前提に

それでは、実際のレポートの中身はどのようなものか。比較のため、過去5回分の化石燃料の見通しを図にまとめた。まず22年版との比較では、石油供給のピークが大きく前倒しされたことが今回最大の変更点だとわかる。中欧米市場の30年のEV販売比率が50~65%と想定されたことや、中国の30年までの平均GDP成長率が4.7%から3.9%に下方修正されたことなどの変更で、こうした石油見通しとなった。

一方、過去の版の変遷をみると、石油見通しよりも、天然ガスと石炭の変化の方がはるかに大きいことがわかる。例えば19年版までは直線的な成長で外挿されていた天然ガス供給量が、21年版と22年版で大きく下方修正され、横ばいからわずかに減少するところまで減らされている。

過去のWEOにおける化石燃料供給見通し

石炭の見通し変化は、ほぼ横ばいの石油・天然ガスに比べるとさらに激しい。石炭消費量が図のように急激に減るためには、世界の石炭消費の約6割を占める中国の消費量がすぐに減り始める必要がある。23年版の本文では、中国では過去5年間平均で毎年40‌GW(1GW=100万kW)の石炭火力発電所が完成し、現在も100GWが建設中、22年だけで90‌GWが新たに建設承認され、計画はこれからもさらに増える、としながらも、25年から中国の石炭火力の出力は急激に減少するという。再エネの大量導入により、石炭火力の設備稼働率が現在の53%から30年に40%まで低下するからというが、さすがに無理がある想定ではないのか。

このように実際に本文をみると「IEAの今年の発表は30年までに化石燃料がピークになる」というメッセージとのギャップや、その前提に無茶なものが少なくないことに驚かされる。これは、IEAという組織が単なるエネルギー研究機関以上の存在であることが関係している。

記録的猛暑の電力に異変 最大減もkW時は伸びる


全国で記録的な暑さとなった今夏。例年であれば最大需要が過去最高となってもおかしくないが、資源エネルギー庁によると、東京電力パワーグリッド(東電PG)管内での最大需要は7月18日に記録した5525万kWと、昨夏に比べ405万kW減少した。

今夏は全国的に記録的な暑さだった

9月の有識者会合でエネ庁事務局は、テレワーク率の減少や節電意識の高まり、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴う外出の増加などをその理由に挙げた。また、太陽光発電の自家消費が増え、系統電力の消費が減ったことも考えられる。だが、「それだけでは消費電力量(kW時)が伸びた理由を説明しきれない」と語るのは、エナジープールジャパンの市村健社長だ。

現在、同社デマンドレスポンス(DR)事業の実発動の9割を経済DRが占め、しかもそのうちの8割が需要を創出する「上げ」のDRだという。つまり、電気料金が安い夜間に操業していた大口需要家が、電力の消費量が少なく、太陽光発電による電気が余りやすい日の昼間を選んで稼働をシフトさせているということだ。太陽光の出力抑制が課題となる中、市村氏は「DRは太陽光発電を生かした需要最適化とともに、kW時の増加に貢献できる」と話している。

循環型の地産地消エネルギーへ 原子力由来水素を発電所内で利用


【関西電力】

関西電力は、原子力発電の電気で製造した水素を原子力発電所内で利用する実証を始めた。

カーボンニュートラル社会を目指す上で、高まるCO2フリー水素へのニーズに的確に対応する狙いだ。

使用時にCO2を排出しないことから、カーボンニュートラル(CN)社会実現の鍵を握る次世代エネルギーとして期待されている水素。自動車など輸送の動力源や産業用、発電燃料といったさまざまな用途で水素を活用するには、安価・大量に製造し輸送するサプライチェーンの構築が急務であり、各所でそれに向けた挑戦が始まっている。

高浜3号機のボンベ室に搬入された水素のカードル

製造時からCO2を排出しない再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」や、天然ガスや石炭といった化石燃料から製造しCCS(CO2の回収・貯留)と組み合わせる「ブルー水素」など、多様な資源から製造できることも水素のメリットの一つ。その中で、関西電力が昨年度から取り組んでいるのが、原子力由来水素の製造と利活用だ。


製造から利用までを追跡 CO2フリーの要請に対応

昨年度は、福井県敦賀市と共に、美浜・高浜・大飯発電所で発電した電気を同市の公設市場に設置した水素ステーションに供給して水素を製造する実証を実施した。トラッキング(追跡)システムにより、発電日と水素を製造した日時、利用先などを紐付けすることで、水素が原子力発電の電気によって製造されたことを特定。約3か月間の実証期間中に63㎏の原子力由来水素を製造し、3・7tのCO2削減効果を得られたことを確認したという。

昨年度に行った実証では、製造した水素を燃料電池車(FCV)や専用容器「カードル」に供給していたが、この10月には、循環型の地産地消エネルギーとして、原子力由来水素を原子力発電所内で利用し、製造から利用までの一連の流れをトラッキングする実証に着手。同月26日には、高浜発電所において、1本当たり7㎥の水素を充填した容器30本を1組にまとめたカードルを、3号機のボンベ室に運び入れ設置する様子を報道陣に公開した。

実証のイメージ

原子力事業本部原子力企画グループの小島庸光マネジャーは、「CN社会実現に向け、将来、カーボンフリー水素への要望が高まることが予想される。トラッキングにより原子力由来であることを明確にすることで、こうした要望に的確に応えることができる」と、同実証に取り組む意義を強調する。

原子力発電所ではもともと、発電する際に熱を持つ発電機の冷却用に水素を利用しているほか、1次冷却材の溶存酸素濃度が上昇し配管の応力腐食割れを抑制するためにも、水素を体積制御タンクに充填している。これを原子力由来水素に置き換えることで、CO2排出量を抑える効果も狙える。

実証期間の来年3月31日までに、発電機の冷却用としてカードルを9回計119㎏、体積制御タンクには2回計12㎏の水素を3か所の発電所内に運び入れる計画だ。

同社は、「ゼロカーボンロードマップ」において、「原子力エネルギーを将来的には、その電気や高温熱を使った水素製造にも活用し、さらなる可能性の拡大を図る」ことを掲げ、今後、同実証を通じて原子力を活用した水素サプライチェーンの構築実現に向けた検討を重ねていく方針。

「原子力はCO2フリーのエネルギー。その立地地域である嶺南地域を、CO2フリーの先進地域として価値を高めていくことに貢献していきたい」と小島マネジャー。CNの取り組みにより、地域全体の魅力向上に寄与していきたい考えだ。

大型トラックはFCVで 用途ごとの適性くっきり


自動車の〝ベストミックス〟が垣間見えた。

国内外のメーカーが続々と新型EVを披露した「ジャパン・モビリティショー2023」(10月26日~11月5日)。トラックの分野では、トヨタと日野の「日野プロフィア Z FCVプロトタイプ」、いすゞとホンダの「ギガフューエルセル」など水素燃料電池車(FCV)が目立った。

いすゞとホンダが共同開発する水素トラック「ギガフューエルセル」

FCVはBEV(バッテリーEV)に比べて航続距離が⻑く、燃料の補給時間が短いという特徴を持つ。このため、ディーゼルエンジンが主流であるトラックやバスなど、移動距離が⻑い大型車に潜在性があるのだ。一方で、バイクや軽自動車など近距離用途はBEV、中距離移動を目的とした乗用車はハイブリッド車(HV)に適性がある。

水素トラックについては、各ステークホルダーが「三すくみ」の状態にあった。需要が⾒込まれず投資計画が⽴てられないメーカー、車両と⽔素ステーション(ST)がなく導⼊計画を⽴てられない物流関係企業、車両の導⼊数が分からず投資計画が⽴てられないインフラ事業者―。そこで経済産業省は7月、水素トラックの普及に向けた中間案を公表。足元での利用は「数十台」にとどまるが、30年までに1・7万台程度の車両供給が必要だとした。政府も6月、6年ぶりに水素基本戦略を改定し、30年度までに1000基程度の水素STの整備を目指す。

かつて日本はトヨタがFCVの「ミライ」を発売するなど、水素分野で世界の先頭を走っていた。だが、「すでに米欧に追い抜かれている」との指摘もある。水素トラックの導入拡大が日本の巻き返しにつながるかもしれない。

「容量拠出金」を巡る右往左往 電力販売競争は新たな局面へ


2020年度に開設された将来の電力安定供給を確保するための容量市場。来年度には拠出金の支払いが始まる。

新たなコストを負担することになる小売各社はこれにどう備えるのか―。動向を探った。

「容量拠出金の支払いに伴うコスト増は、1kW時当たり2円前後と見ている。小売料金に転嫁しなければ利益が帳消しになりかねない水準だが、どう転嫁するべきか決めかねている」

ある新電力幹部はこう語り、いよいよ来年度に容量拠出金の支払いがスタートするのを控えながらも、その対応に苦慮している様子をうかがわせる。

悩みに拍車をかけたのが、東京電力エナジーパートナー(東電EP)の長崎桃子社長が、専門紙のインタビューで「販売単価への上乗せをしないことにした」と答えたことだ。これには、「大手電力会社が転嫁しないというのであれば、当社もその動きに追随するしかない」と、別の新電力関係者も肩を落とす。

確かに、東電EPのみならず、大手電力会社系の小売事業者を見ると、料金転嫁に向けた表立った動きはない。だが、実際には6月に低圧・規制料金を値上げに踏み切った大手電力7社は、容量拠出金を原価に反映済み。例えば、東電EPの場合、原価算定期間(23~25年度)の3年間で平均1440億円を織り込んでいる。

広域機関は容量市場の周知に注力している

同社の担当者は、「料金に転嫁しないというよりも、相対卸契約による調達費用から発電事業者に支払われる容量確保金分が控除されることで負担額相当が相殺できるために、トータルの電力調達コストが大きく変わらず、需要家に請求する費用として表に出ないだけだ」と説明する。

これは大手系に限らず、もともと相対契約の比率が高い事業者も同様で、拠出金が必ずしも全ての小売事業者にとって負担増につながるわけではない。要は、市場調達比率が高い事業者ほど、容量拠出金が純粋なコスト増につながり、経営を左右しかねない大きな問題となっているもようだ。


高まる調達のボラティリティ 料金への反映どうあるべきか

容量市場の経過措置考慮後の1kW当たりの平均約定単価は、初回の24年度こそ9533円と高値を付けたものの、25年度は3109円に大幅ダウン。26年度は5178円と前年度の1・7倍だが、指標価格である「Net Cone」を下回る低水準であることに変わりはない。

このため、一部の新電力からは、「24年度さえやり過ごせばなんとかなるのではないか」という雰囲気すら漂ってくる。だが、このまま容量価格の低迷が続けば、発電所の退出が加速し市場価格が再び高騰するリスクは十分にある。ここ数年の燃料費や市場価格の高騰により苦境に陥ったことが象徴するように、電力経営のボラティリティは高まる一方だ。

こうした状況に、エネチェンジの千島亨太執行役員は、「東電EPは、来年度の高圧・特別高圧の標準メニューの見直しで、500kW以上の需要家の料金に市場・燃料価格の変動を反映することでリスク回避、収益改善を図ろうとしている。長期割引が廃止され実質値上げになる既存契約の需要家もあり、拠出金負担を勘案しても新電力でも需要家に適切なメニュー提案ができる」と、形勢は必ずしも新電力不利ではなく、むしろ料金を通じて、需要家に一定程度リスクを許容してもらう努力・工夫することの重要性を説く。

中東緊迫よそに油価軟調 需給改善も不透明続く


イスラエル軍によるガザ地区への地上侵攻で中東情勢が緊迫化の様相を呈する中、原油価格は米ニューヨーク市場で11月20日現在76ドル台と軟調に推移する状態が続いている。イランやサウジアラビアなどの産油国に戦火が拡大していないことが主因といえ、懸念される第三次石油危機勃発の兆候は今のところ見られない。

アラビア海上で行われた中国・パキスタンの合同演習(11月14日)

「ハマス・イスラエルの戦闘が広範囲の地域紛争に発展するとの懸念は現実になっておらず、石油供給への重要な影響は出ていない」

国際エネルギー機関(IEA)は11月度の石油市場報告の中でこう指摘し、今年の石油供給見通しについて米国などの増産を踏まえ日量1億180万バレルと、前月から20万バレル引き上げた。前年比170万バレルの増加だ。

ただ需要も前年比240万バレル増の1億200万バレルと供給量を上回り、年平均で過去最高となる見通し。ひっ迫感は解消されつつあるものの、報告は「地政学リスクの高まりで脆弱な状態が続く」として、原油価格変動の可能性を指摘している。24年については、供給量が1億340万バレルと、需要の1億290万バレルを上回る見通しだ。

果たして原油価格はどう動くのか。専門家の間では、主要国の金融引き締めに伴う景気減速も重なり、低調に推移するとの見方が多い。一方ゴールドマンサックスは、OPEC生産量が低水準を維持するとして、24年度の北海ブレント先物が足元の82ドルから上昇し92ドルで推移すると予想。不透明な状況が続くのは間違いない。

脱炭素時代に向け欧州などで脱化石が叫ばれているが、世界経済における石油の重要性はいささかも揺らいでいないようだ。

【マーケット情報/12月1日】原油下落、需給緩和感強まる


【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み下落。中国需要後退の見方、および米国の生産増加が、OPECプラスの協調減産による影響を上回った。

中国の製油所は10月、稼働率を引き下げた。国内需要の弱まりを受け、在庫の積み上げを避けたもよう。11月にはさらに下がったとみられている。また、国内旅行は8月以来減少が続いており、ガソリンや軽油などの消費減も見込まれている。同国の石油需要回復は、依然見通しが立たない状況だ。

加えて、米国では9月、国内産油量が過去最高を記録した。これにより、需給緩和感が一段と強まった。

一方、イラク、アラブ首長国連邦、クウェイトなどOPECプラスの構成国6カ国が、2024年1~3月にかけて合計日量70万バレル相当の減産を計画。サウジアラビアは、日量100万バレルの自主的追加減産を、3月まで続けると公表。ロシアも、原油輸出を一段と削減する方針を発表した。ただ、価格の上方圧力とはならなかった。


【12月1日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=74.07ドル(前週比1.47ドル安)、ブレント先物(ICE)=78.88ドル(前週比1.70ドル安)、オマーン先物(DME)=81.24ドル(前週比1.55ドル安)、ドバイ現物(Argus)=81.13ドル(前週比1.81ドル安)

JERAと九電「協業化」の深層 電力販売や資金・燃料調達で利害一致


JERAと九州電力が燃料・火力部門などでの協業を拡大する方針を10月下旬に発表した。

さまざまな事業リスクに対峙するための新たなエネルギー連携の形となりそうだ。

燃料価格のボラティリティ拡大、火力電源の機動的な運用、卸取引の内外無差別の徹底など、電力経営を取り巻く環境が大きく変化する中、特に火力・燃料を巡るリスクを1社単独では抱え込めない時代に突入している。それを象徴する発表が、10月23日にあった。

JERAと九州電力は同日、エネルギー安定供給を確保しつつ脱炭素を加速させるという共通課題を踏まえ、両者の包括的協業を検討すると発表した。これまで両社間では、2005年からのLNG輸送船の共同保有や、JERAグローバルマーケッツ(GM)を通じたLNGトレーディング、九電やJERAを含む電力7社間での水素・アンモニアのサプライチェーン構築など、協力関係を構築。これをさらに強化し、①再生可能エネルギーを含む新規電源の共同開発、②燃料需給調整協力の強化、③水素・アンモニアのサプライチェーン構築・拡大検討の加速―を柱に掲げた。「今回の座組みは他社との連携から一歩踏み出した形。さまざまな協議項目が盛り込まれたが、両者が合意できるものがあれば具体的な協業に発展させていきたい」(JERA担当者)


袖ケ浦と五井の分かれ目 九電・JERA双方にメリット

中でも注目されたのが、①の第一弾となる五井火力(千葉県市原市)への九電の参画だ。五井火力(計234万kW)は現在、1~3号機ともリプレース工事が進行中で、1号機が24年8月、2号機が11月、3号機が25年3月に運開予定。発電端熱効率64%の最新鋭ガス火力となる。

リプレース工事が進む五井火力(9月下旬)
提供:JERA

今回、五井火力の運営会社「五井ユナイテッドジェネレーション」について、JERAの出資持分の一部を九電に譲渡した。その結果、JERA、もともと参画するENEOS、そして九電の出資比率は、9対5対1となる。九電はこの比率(約6・7%)に応じて電気を引き取る。

九電は19年に発表した経営ビジョンの中で、九州域外での電源を30年度までに持ち分出力で100万kWという目標を掲げていた。五井火力への参画は、このビジョンに合致するものだ。ある電力関係者は「九電は首都圏の電源を欲していた。東京ガスとの一件がまとまらず、どうなるのか注目していた」と感想を述べる。

東ガスとの一件とは、同じく千葉県の袖ケ浦市でのLNG火力(計195万kW)新設計画のこと。本誌でも既報の通り紆余曲折を経て、東ガス単独で建設することになった。