世界的な脱炭素化の加速によって、化石エネルギーの調達戦線に地殻変動が起きている。価格におけるボラティリティの高まりは、わが国にどんな対策を突き付けるのか。
昨年末、化石燃料価格の高値傾向が続いている。複数の関係筋の話を総合すると、要因の一つは、新型コロナウイルス禍よる経済悪化や金融市場の混乱に対し、日米欧の中央銀行が大規模な金融緩和を実施したことだ。投資マネーの流入が、化石燃料のみならず金属や穀物といったコモディティ価格を押し上げている。
もう一つの要因は、コロナ禍で落ち込んでいた世界経済が急速な回復基調にあることだ。石炭、LNG、石油ともに需要が急増しているにもかかわらず、上流における設備トラブルやこれまでの開発投資の停滞が裏目に。供給が追い付いていない状況だ。世界は「脱炭素」の御旗を掲げつつ、化石燃料争奪戦の様相を見せている。
2050年に脱炭素社会実現を目指すとはいえ、引き続き化石燃料の活用は欠かせない。だが国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の上流投資は14年の約8000億ドルをピークに減少に転じ、コロナ禍の20年には約3000億ドル台まで落ち込んだ。21年は若干回復する(約3500億ドル)とはいえ、再生可能エネルギー事業の投資額(約3670億ドル)が逆転する。
これまでは、需給がひっ迫し価格が上昇すると開発投資が進み供給量が増えた。ところが英BPや仏トタル、英蘭シェルといった上流メジャーが、脱炭素化に向け経営戦略を大転換。「上流で儲けた資金を再エネ開発に投じており、メジャーによる新規開発は今後も減っていく」(メジャー関係者)見通しだ。それをしり目に上流投資を強化しているのが、ロシア、中東などの国営石油会社や、中国・インドといった新興勢力だ。
様変わりする需給構造 現実味欠くエネ基案
化石燃料のほぼ全量を輸入に頼る日本。先進国と中東資源国という二元論で語られた需給構造が様変わりしている今、情勢変化を踏まえた化石燃料政策の重要性は一段と高まっている。だが、今般示された第六次エネルギー基本計画の素案を見ても、現実感を伴う議論の深掘りがなされたとは言い難い。エネルギー業界関係者からは「エネ基は日本の化石燃料活用の方針について間違ったメッセージを発信しかねない」と懸念する声が聞こえてくる。
石炭、LNG、石油―。いずれも価格上昇局面にあることに変わりはないが、置かれた状況は大きく異なる。日本の資源調達は今後どうあるべきか。取材から浮かび上がったのは、基本政策分科会でなおざりにされた「化石燃料ごとの国家戦略」議論の必要性だ。














