新電力は高圧での「ラストリゾート問題」に続き、低圧での自由料金と規制料金の「逆転現象」に直面。各社が料金戦略の練り直しやDRの取り組みを進める一方、政策の見直しを求める声が高まっている。
全エリアで大手電力会社の経過措置規制料金が残る電力の低圧部門では、自由料金の戦略練り直しが課題となっている。新電力は、料金規制の撤廃や、撤廃までしなくとも燃料費調整制度の上限値を見直さなければ、自由化の進展にブレーキがかかると懸念する。
小売り全面自由化当初から、新電力各社は規制料金を基準に、そこから安値を提示するように料金を設計。営業効率や顧客の分かりやすさを重視した結果、独自燃調などの文字通り「自由」なプランは少なく、大手電力各社の燃調上限をそのまま採用するケースが大勢だ。しかし価格高騰が終息する気配がない中、最近では燃調上限を撤廃する新電力が増えている。

燃調上限撤廃か維持か この局面で上限設定も
東急パワーサプライの場合、春頃までは電源の市場調達抑制といった努力で耐えようとしてきたが、同社が供給する東京エリアの平均燃料価格が上限に達したタイミングで、上限を撤廃する方向で検討を進めている。「これ以上の影響は看過できない」(同社電力企画室)との判断だ。同社はもともと安値を強く訴求するわけではなく、電気料金だけではないサービスとのバンドルでの「おトク感」をアピールしてきた。とはいえ、「上限撤廃後の新料金と、いずれはなくなる規制料金が逆転する状況はいびつだ。高圧での最終保障供給約款を巡る状況と似たような構図」(同)と訴える。
上限撤廃後は、「規制料金と比べて誰でもおトク」といった従前の説明はできなくなる。「お客さまに燃調制度を正確に理解してもらうことの難易度が高い点が、新規獲得のブレーキになると懸念する。誤認がないよう営業も守りになる」(同)と課題を挙げる。
逆に上限維持を選択した事業者も、規制料金と自由料金の「逆転現象」の解消、つまり規制料金の在り方の見直しを求めている。ソフトバンク系のSBパワーは、顧客にとっての分かりやすさ、規制料金からの移行のしやすさを追求しており、燃調上限の撤廃は熟考の構えだ。「燃調の上限があることは短期的には需要家保護につながるが、今は需要家が規制料金に逆戻りして競争が起きていない状況。それは将来の需要家の選択肢を狭めることになる」(同社事業戦略部)と指摘する。
日本全体で約半分に規制料金が残る現状を新電力から見ると、燃調上限を突破したエリアでは大手電力が本来の適正価格よりも安値で販売し顧客を獲得していることになり、一般的な商売であれば独占禁止法上の問題も出てこよう。同社は「競争環境のいびつさこそ課題。総括原価からの脱却という電力システム改革本来の目的と逆行する」として、政府に一段踏み込んだ検討を求めている。
一方で、この局面であえて上限を設定するケースもある。KDDIはこれまで、auでんきで燃調の上限を設定してこなかったが、大手電力の燃料価格が上限を突破したエリアで上限を設定し始めた。「auでんきの料金は、地域電力会社の従量電灯の料金と同等で提供してきた。その趣旨に則り、契約約款も含めて適切な改定を行った」(同社広報部)と説明する。
いずれにせよ、自由料金の設計当時には想像し難かったこの異常事態を乗り切ろうと、それぞれ苦渋の決断を下している。













