EU(欧州連合)でここ数年議論になっていたEUタクソノミーの認定基準案が、ようやく示された。加盟国の間で意見が割れていた原子力と天然ガスは、条件付きで「グリーン」に認定する方針だ。加えて事業者に対し、投資家の判断基準となる情報開示義務を規定する。
角谷仁之/TMI総合法律事務所パートナー
2月2日、EC(欧州委員会)は、EUタクソノミーに一定の原子力及び天然ガス発電を盛り込む補完委任法案の最終案を公表した。EUタクソノミーは、2050年に「気候中立」を達成する目的に照らして、環境目的に貢献する経済活動への民間投資を促進するため、EU金融資本市場における市場参加者・発行会社を対象に、気候変動に対する持続可能性の確保に貢献する経済活動を産業別に判別する基準を提供している。
EUタクソノミーの認定基準を定めるタクソノミー規則では、対象とする経済活動を、再生可能エネルギー発電などの「低カーボン活動」(10条1項)、石炭発電などから低カーボンへの移行を目指す「過渡的な活動」(10条2項)、環境目的達成を「可能にする活動」(16条)の3種類に分けている。本年1月1日に公表された規則原案では、原子力および天然ガス発電を「過渡的な活動」に区分した。この間、タクソノミー認定のスクリーニング基準である①温室効果ガス排出抑制レベルが最高水準であること、②再エネ発電などの低カーボン活動の開発を阻害しないこと、③事業資産ライフサイクルでのCO2排出量の上限設定などの環境・安全基準――について、加盟国専門家グループと諮問機関により約3週間の期間でレビューされた。
諮問機関であるサステナブルファイナンス・プラットフォ―ムと一部の加盟国からは、原子力発電には気候変動対策以外の循環型経済への移行や生物多様性維持などの環境目的の観点から、天然ガス発電には化石燃料の有害性から、批判と疑問が提起された。しかしECは、EUタクソノミーは気候中立に貢献する低カーボン活動の判別だけでなく、技術的スクリーニング基準と一定期限を定めた「過渡的な活動」を通じ、各国の実情に応じて段階的に持続可能なエネルギーシステムを構築する取り組みも支持していると反論。批判勢力の主張を却下して最終案を示した。
原子力は3種類で条件提示 ガスには厳格な基準求める
原子力発電のスクリーニング基準では、他の環境目的を著しく阻害しないことを前提とし、事業内容を3種類に分けてそれぞれ設定。①放射性廃棄物の生成を抑制し、30年ごろの実用化を目指している第4世代原子炉の研究開発活動に関するタクソノミー認定要件を定める、②最高水準の環境性能と安全性を備えた最新の第3プラス世代原子炉(EPR=欧州加圧水型炉、ESBWR=高経済性・単純化沸騰水型原子炉など)の建設は40年までに当局の承認を得る、③既存の原子力発電所の改良と運転延長についてもライフサイクルでのCO2排出量、放射性廃棄物処理や安全性基準などを定めて40年までに当局の承認を得る――こととした(下記表参照)。