【おやおやマスコミ】井川陽次郎/工房YOIKA代表
日本の原子力業界にとって久々に元気が出るニュースだろう。読売2021年12月4日「日立・GE、次世代原発受注、カナダで」「重大事故時、安全停止」である。
「日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)の合弁会社、GE日立ニュークリア・エナジーは2日、カナダの電力会社から次世代原子炉『小型モジュール炉(SMR)』を受注したと発表した」と記事にある。
「受注したのは、出力30万kW級の沸騰水型SMR。出力を従来型の原発の3分の1以下に抑え、小型化した。カナダのオンタリオ州ダーリントンに建設し、28年の稼働を目指す。約30万世帯分の発電を行う計画だ」。研究開発ではない。実用炉の建設だ。意義は大きい。
SMRは設備の小型化と簡素化を特徴とする。安全性も高いとされる。「建設費を従来の原発の5分の1程度に抑え、重大事故でも冷却水を自動循環させ安全に停止させる」。まずは規制当局の審査が控える。万全を期したい。
同日の日経は、「安全性が長所とされる一方で、運転実績はほとんどなく稼働時のトラブルといった不測の事態への予見も立てにくい。既存の原発のような国際的な規制も未整備」とくぎを刺す。
読売の記事にある通り、「世界的な脱炭素の流れを受け、発電時に温室効果ガスを排出しない原子力発電への関心は再び高まっている」。建設・運転の成否は、原子力の未来にも関わろう。
日経は、「今回手掛ける小型原子炉は日立が強みを持つ軽水炉の技術を使い、国内で培った工法のノウハウを活用できる。技術・技能の伝承につながりそうだ」と日本にとっての意義も指摘する。
ビジネス面でも期待は大きい。「(SMRは)規格化された部材一式を工場で造って現地で組み立てるのが特徴。既存の原発で5~7年かかっていた工期を約3年に短くできる」(日経)。
反原発の立場が鮮明な朝日は冷ややかだ。同日記事で「放射性廃棄物が出ることは従来の原発と同じだ。建設費が大型炉よりかからないといっても、出力の規模は小さく発電コスト全体で見ると安くなるとは限らない。廃炉にも巨額の費用が想定される」と、従来通りの原子力批判を展開する。
どんな電源もメリット、デメリットがある。太陽光発電など再生可能エネルギーの多くはクリーンなイメージの一方で、発電量が安定しない。設置による大規模な自然破壊も起きている。原子力は発電の安定性、高いエネルギー密度が強みだ。朝日記事は、またか、と思わせる内容である。
無論、おのおのの電源ごとに課題への地道な取り組みは欠かせない。原子力では特に既設炉の安全確保が最優先だが、隣国の対応が不信を広げている。
中国広東省台山市にある台山原子力発電所1号機のトラブルだ。21年6月に米CNNが「放射性物質が漏れた」と報じた。運転を担う中国広核集団は燃料棒の損傷を認め、運転を止めた。
1号機はフランスが開発した欧州加圧水型炉だ。中仏が原因を調査している。ロイター11月30日「設計上の欠陥が原因か」は、フランスのNGOへの内部告発を踏まえ、「原子炉圧力容器の設計上の欠陥で振動が発生し燃料が損傷した可能性がある」と報じた。本当なら厳格な対処が求められる。
「不透明な中国の原発情報公開」(日経6月24日)との批判は今も続く。ありきたりの批判よりも、メディアが追及すべき重要な問題である。
いかわ・ようじろう(デジタルハリウッド大学大学院修了。元読売新聞論説委員)












