「これは電力自由化の危機だ」――。
25日に開かれた経済産業省電力・ガス取引監視等委員会の制度設計専門会合(座長=稲垣隆一弁護士)で、全国的な電力需給のひっ迫に伴う日本卸電力取引所(JEPX)スポット価格の高騰を巡り、オブザーバー参加の新電力幹部らがこのままでは自由化が逆行することになりかねないと危機感を露わにした。
エネットの竹廣尚之経営企画部長は、「(kW時不足という)制度設計上、想定していなかった事象に対してさらなる実効的な措置がなければ、事業の回復プランを描けず融資をつなぐこともできない。国がさらに踏み込んだ措置を示すことが電力産業で事業を継続することへの判断材料として価値を持つ」と強調。その上で、「2月以降も、予備率が8~10%を超えても市場価格が高騰しかねない事態への緊急的な措置として、予備率8%の時のインバランス精算単価の上限をkW時45円に設定するなどの弾力的な措置をお願いしたい」と要望した。
SBパワーの中野明彦社長兼CEOは、「一部では消費者を巻き込み、電力市場、電力自由化そのものの健全性に疑義が生じつつある」との懸念を示し、「建設的な議論を積み上げ、結果としてお客さまの選択肢が増えてここまで自由化が進展してきた。それにもかかわらず、逆戻りのようなことが起きてしまうのは非常に残念なこと。そうならないためにも、短期的に同じような事象が発生した際には柔軟かつ機動的に対処するとともに、早期に市場を健全な状態に戻していただきたい」と訴えた。
資源エネルギー庁はこれまでに、インバランスの精算単価の上限をkW時200円とする措置や平日朝夕それぞれで最高価格を付けたコマの需給曲線を公開するなど市場の沈静化を図ってきた。26日受け渡し分のスポット市場システムプライスが11.9円(24時間平均)まで下がるなど、落ち着きを取り戻しつつある。
とはいえ、新電力各社の資金繰りは厳しく、22日には秋田県鹿角市などが出資する地域新電力「かづのパワー」が来月14日で売電を休止し解散を視野に入れていることが明らかになったが、ほかにも電力事業の売却や譲渡といった話は水面下で進んでいるようだ。あるエネルギー関係者は、「金融機関に追加融資を頼んでも、仕入価格が20倍にもなるようなボラティリティの高い事業に融資できないと断られたという話も聞く。インバランス精算が待ち受ける3~4月に向け、どう事業を清算するか考えている新電力は多い」と明かす。
700社近くが参入し活況した電力市場だが、一定の淘汰は免れそうもない。







