電源の脱炭素化が急務となる中、会社創立から70年の節目を迎えた。電力安定供給という変わらぬ使命を果たしながら脱炭素を進め、水素社会のけん引役として世界で存在感を示す企業として成長し続けようとしている。
【インタビュー:渡部肇史/Jパワー社長】
志賀 ウクライナ情勢の膠着状態が続いています。燃料調達面にどのような影響が出ていますか。
渡部 2021年度の実績ベースですが、当社の火力発電所で使用する石炭の約8%をロシア産が占めています。石炭は性状が一様ではなく、発電所のボイラーによって相性が異なります。政府が経済制裁措置としてロシアからの石炭の原則禁輸を打ち出したことを受けて、今後はオーストラリアやインドネシアを中心とする産地の相性の良い性状の石炭に切り替えていかなければなりません。
志賀 オーストラリア炭を巡っては、欧州各国が既に争奪戦を繰り広げているようです。
渡部 引き合いの増加に合わせて増産されることが理想です。当社もオーストラリアの石炭会社と交渉をしているところですが、今のところ同国からの石炭調達に大きな影響は出ていません。
志賀 一般炭の価格が高騰していますが、収支にどのように影響しているでしょうか。
渡部 今のところは、国内の発電事業の収支については、一定期間で石炭価格上昇の影響を調整する仕組みはありますが、とはいえ、決算収支への影響を注視していかなければなりません。石炭のマーケットの高騰が早期に収まることを期待しています。

2002年企画部長、06年取締役、09年常務、
13年副社長などを経て16年6月から現職。
志賀 岸田政権が物価対策として電気料金を抑制する政策を打ち出せば、電力産業をはじめインフラを担う企業は体力を損なわれかねません。
渡部 大変難しい問題です。電力に限らず生活や経済に影響力がある事業は、政策の動向をうかがいながら事業を運営していかなければならないタイミングなのでしょう。電力産業においては、電力自由化の流れがある一方で、原子力のみならず石炭やガス火力、再生可能エネルギーなどほぼ全ての電源が政策の影響を強く受けるようになってきていると感じます。そのため、どの電源を選択するかという課題一つとっても、企業の自主判断だけでは立ち行かなくなってきています。