【ワールドワイド/コラム】国際政治とエネルギー問題
2022年2月に起きたロシアのウクライナ侵攻により、世界秩序は根幹から揺さぶられた。世界の混乱は、さまざまな分断をもたらす一方、同時に再統合の契機をもたらす。23年における基本的な枠組みは、欧米諸国を中心とするG7陣営、中露を中心とする旧社会主義陣営、新興国や中立的な立場の国々という、三つのグループへの分化が進む一方、再統合も進行した。本稿では、分断促進の要素として上海協力機構(SCO)の拡大、BRICSの拡大、および交通回廊の再編を取り上げ、次回の国連改革につながる要素を取り上げる。
三地域への分断の萌芽は、22年3月2日開催の国連総会緊急特別総会でみられた。同会合では対露即時無条件撤退要求決議案への投票が行われ、141カ国の賛成多数で採択された。一方、ロシア、ベラルーシ、シリア、北朝鮮、エリトリアの5カ国は反対し、中印など35カ国が棄権した。
23年には中露が主導する地域機構やグループが拡大した。SCOは7月4日にイランの加盟を承認し、8月24日にはBRICS5カ国がサウジアラビア、アルゼンチンなど6カ国の加盟を決めた。こうした動向には、地域レベルあるいは各グループの統合と、より高次の世界レベルにおける分断という要素が見られ、背景には米主導の国際秩序への対抗軸を築こうとする中露の思惑が働く。
世界の分断と統合の同時進行の中で、BRICSは拡大・統合の要素を形成した。23年8月22日のヨハネスブルグ首脳会議にはウクライナ侵攻に中立的な立場をとるグローバルサウスを中心とした40カ国以上の首脳が参集した。とはいえ、拡大BRICSグループは米国との過度な対立は避けたいという立場の国が多い。主催国の南アフリカ・ラマポーザ大統領は8月20日、「拡大BRICSはよりバランスの取れた世界秩序を築くという思いを共有する国で構成されるべきだ」との考え方を表明、対米欧の対抗軸となるとの見方に反対した。
23年を通じてBRICSの再統合とは別に、西側陣営からは、中国の巨大経済圏構想である一帯一路戦略の切り崩しが図られた。米政府は9月8日、インドから中東を経由して欧州までを鉄道と海上輸送網で結ぶインフラ計画に関する覚書をインド、サウジアラビア、EUと結んだと発表した。同合意は9日、デリーで開会したG20サミット宣言に合わせて発表された。G7の中で唯一、一帯一路に参加していたイタリアは12月6日、離脱を中国側に正式に伝えた。同構想にはイスラエルの将来的な参加も見込まれていた。バイデン政権は22年、サウジとイスラエルの国交正常化に向けた仲介に乗り出し、インフラ投資を中東戦略に組み込むことで域内での影響力の回復を図ろうとしたが、10月7日のハマスによるイスラエル攻撃で戦闘が激化し、その意図は崩壊した。
ウクライナ戦争を除けば、米大統領選の帰趨とイスラエルとハマスの和平実現が24年の注目点の筆頭であるが、イスラエル情勢・国連関連動向は、次回取り上げる。
(須藤 繁/エネルギー・アナリスト)





