小笠原潤一/日本エネルギー経済研究所研究理事
広域系統整備計画を具体化する上では、技術革新などさまざまな不確定要素が存在している。実効性を高めるために何が必要か。日本エネルギー経済研究所の小笠原潤一研究理事が解説する。
電力広域的運営推進機関が策定した「広域系統長期方針(広域連系系統のマスタープラン)」では、2050年を視野に入れた「ベースシナリオ」「需要立地自然体シナリオ」「需要立地誘導シナリオ」の三つの将来シナリオを基に費用便益分析を行い、広域系統増強の方針が示された。
電源構成については「再生可能エネルギーの最大限の導入に取り組む」との政府方針を受け、いずれのシナリオでも、太陽光約2億6000万kW、陸上風力約4100万kW、洋上風力約4500万kW―と同一条件とする一方、再エネ発電の出力変動や出力抑制回避に貢献する電解槽による水素製造、DAC(大気からのCO2直接回収)、蓄電池、EV自動車やヒートポンプといった再エネ余剰活用による電力需要シフトの制御可能性に差を設け、評価が行われている。
すなわち、ベースシナリオでは再エネ余剰活用需要の2割が制御可能、需要立地誘導シナリオではそれら需要の8割が制御可能、そして需要立地自然体シナリオではそれら需要の全量が一定負荷と設定され、これらの対策により、電力需要が従来比55%程度増加することになる。
欧州送電系統運用者ネットワーク「ENTSO―E」が「10カ年ネットワーク発展計画」で、電源構成について三つのシナリオを作成し、その上で広域的な系統増強の必要性について評価を行っているように、不確実性のある電源投資については複数シナリオを設定するのが通常の姿だ。
しかし、日本では、現段階で政府が示しているのは30年の電源構成見通しであり、50年についてはまだ何ら提示されていない。このため、広域機関は現状で考えられる最大限の再エネ導入を見込んだ上で、それを支える需要側設備の活用をシナリオとして振らせざるを得なかったものと考えられる。
