中国電力とJパワーが大崎クールジェンで取り組んできた酸素吹きIGCC+CO2分離・回収技術。究極のクリーンコールテクノロジーとして脱炭素実現へのゲームチェンジャーになるか。
中国電力とJパワーが共同出資する大崎クールジェンでは2019年、石炭からガスを精製しそのガスから製造した水素で発電する「酸素吹きIGCC(石炭ガス化複合発電)」に、CO2分離・回収設備を付設し、石炭利用のゼロエミッション化に向けた技術実証を進めてきた。
これは、ガス精製後の石炭ガス化ガスをCO2分離・回収設備へ送り、シフト反応により一酸化炭素(CO)と水蒸気(H2O)からCO2と水素(H2)に変換し、CO2吸収塔でCO2のみを分離・回収する仕組み。燃焼前の燃料ガスから分離するため、燃焼後の排ガスからに比べ、濃度が高く、エネルギーロスが少ない効率的なCO2の回収が可能になるという。CO2を分離した後の石炭ガス化ガスは、H2濃度が高いH2リッチなガスとなり、ガスタービンへ送られて火力燃料として発電に利用される。
16年度から3段階で進められてきたこの大崎クールジェンプロジェクトは、22年度で全ての実証スケジュールを完了。今後の計画については今のところ未定だ。
次に期待されるのは、ここで確立された技術が社会実装されることにより、石炭火力発電が新たな付加価値を持った発電インフラへと生まれ変わることだ。脱炭素の要請から、世界中で石炭火力の廃止が進んでいるが、他の化石燃料よりも安価で安定した調達が期待される石炭をカーボンフリーな形で利用し続けることができれば、資源の乏しい日本において、安定供給と環境性を兼ね備えた電源の一つとなり得る。
Jパワーは21年4月、「GENESIS松島計画」として、松島火力(長崎県松島市)2号機の酸素吹きIGCCへの転換を進め、CO2フリーの水素発電に向けた第一歩を踏み出すことを発表した。これにより、発電効率は約1割上昇し、CO2排出量は約1割削減できるという。
将来のゼロエミッション化に向けて、CCUS(CO2の回収・利用・貯留)設備を追設するための用地を確保することとしており、26年度には、30年度のCCS開始を見据えた「CCUSレディ」の発電所として再出発することになる公算だ。
大崎クールジェンで培われた究極のクリーンコールテクノロジーともいえる酸素吹きIGCC+CO2分離・回収技術。脱炭素実現に向け、ゲームチェンジャーになることが期待される。
