【特集2】小型風力発電が運転開始 再エネ開発の目標達成に注力

【広島ガス】

広島ガスは、今年4月に北海道で小型風力発電所の建設に着工し、9月末までに全8基の営業運転を開始した。  

 
8基の内訳は、道北地域(猿払村)2基、道央地域(石狩市厚田区、えりも町)4基、道南地域(江差町、松前町)2基で、発電規模は各19・2kW。8基合計の想定発電量は年間63万7000kW時となり、一般家庭約170世帯分の年間電力使用量に相当する。FIT(固定価格買い取り)制度を活用し、北海道電力ネットワークを通じて供給する。

            設置された風車(猿払村)


同社が小型風力発電事業に取り組むのは今回が初めて。経営企画部イノベーション推進室の嵯峨山巧主任は「風力発電事業の実施には、風況の良い立地であることが極めて重要と考え、設置場所の選定に力を入れた」と語る。


運転開始から間もないが「想定以上に風車が回っている」という。風力発電の仕組みやシステムの全体像を把握することや、住民説明会の実施など初めての経験で苦労もあった。それだけに、現地に足を運び、全8基の風車の完成を確認した時には「感無量だった」と振り返る。

電力小売りの販売地域拡大 電源のベストミックス探る

同社は30年度までに再生可能エネルギー電源取扱量6万kWを目標に掲げている。また、売上高に占める電力小売りや再エネの比率を、25年度の1%から27年度には4%と徐々に引き上げていくことで、長期的には電力を都市ガスやLPGに並ぶ主力事業に育てる計画だ。


電力小売りは、2月に販売開始した「このまち電気」の提供エリアを、当初の中国エリアに加えて9月には関東・東北エリアへ拡大した。今後も拡充を進め、30年度10万件の目標を目指していく考えだ。


来年度には同社単独では初となるバイオマス発電所の運転開始も控えている。小林清秀室長は「それぞれの再エネの強みを最大限に活用することを念頭に、電源開発を進めていく」と話す。ベストミックスを探りながら目標達成にまい進する構えだ。

【特集2】水素利用のすそ野拡大へ 小規模需要の「壁」に挑む

【室蘭ガス】

水素は脱炭素社会実現への一つの重要な選択肢だ。ところが、高圧ガスの規制を受ける圧縮水素か、貯蔵・気化コストが高い液体水素が一般的で、少量を利用する需要家が選択しづらい次世代エネルギーとなっている。


こうした規制とコストの壁を打開するべく、室蘭ガス(北海道室蘭市)が市などと共同で取り組むのが、環境省委託事業「既存のガス配送網を活用した小規模需要家向け低圧水素配送モデル構築・実証事業」に採択された。LPガスの既存配送網を利用することで新たなインフラ構築のためのコストを抑えつつ、水素利用のすそ野を広げる狙いがある。

MHを利用し規制回避 LPガス混載でコスト抑制

実証のポイントの一つが、日本製鋼所M&Eが開発した水素吸蔵合金(MH)を利用することで、高圧ガス保安法の規制を受けない1MPa以下の低圧で水素配送を実現したことだ。金属原子の間に水素化物の形で取り込むことで、理論値では合金の体積の1000倍以上の水素を吸放出できる。

低圧水素を可能にしたMHタンク


もう一つのポイントは、再生可能エネルギー変動追従型の水素製造だ。供給する電力を平準化して製造するためには蓄電池が欠かせないが、設備コストがかかる。そこで、水電解装置を風力発電の変動に追従して稼働させ稼働率を上げることで製造コストの低減を図っている。さらには、ほとんどが大気放出されてしまう副生酸素も、市立室蘭水族館の養殖水槽に供給することで「価値化」している。

市保有の風車由来の電気で水素を製造


水素の供給先は、一般住宅の燃料電池(電気・熱)ロードヒーティングのボイラー(熱)、飲食店や宿泊施設のボイラー(熱)、金属加工工場における金属切断の熱源―の5カ所。無人、自動で水素が充填されたMHタンクをLPガスボンベと混載し、それぞれの需要家に配送する。タンクは約100㎏でLPガスの50㎏ボンベの約87㎏よりもやや重いが、LPガス配送インフラで無理なく配送できることを確認した。


営業部営業グループの吉田隆光参与は、「このモデルは水素を大量消費するには向かず、家庭の熱需要を全て置き換えるにはまだまだコストが高い。だが、割高になりがちな地方部のプロパンガスであれば、近い価格帯で実用化できる見込みは十分にある」と、実証を通じた手応えを語る。


残念ながら、今年度、実証期間を終えた後は、設備を撤去する予定とのこと。社会実装に向けた道のりには課題が残るが、再エネなどの地域資源を活用し製造した水素を、地域の多様な需要に応じて利用する自立分散型の地域水素サプライチェーンの可能性を示したと言える。

【特集2】独自技術で水素を高精度に検知 メタネーションを安全面から支援

【新コスモス電機】

40年ほど前から水素検知の技術を築いてきた新コスモス電機。
安全対策の観点から水素社会を支え、その存在感が増している。

都市ガス業界では、2050年のカーボンニュートラル(CN)実現を見据え、水素とCO2からメタンを合成するメタネーションなどの技術開発が行われている。これらの設備の運用において、安全性確保のため、ガスや水素の漏れをいち早く検知することが必要だ。


新コスモス電機は約40年前から産業分野において水素を選択的に検知する技術開発を行い、さまざまな検知器を製品化してきた。それらのラインアップの中で、今後、メタネーション設備などでの活用が期待されるのが、定置型の拡散式ガス検知部「KD-12」だ。

    「KD-12」には水素対応の防爆構造を採用した

研究成果が詰まった技術 水素だけを通す保護膜を使用

最大の特長は、同社独自の熱線型半導体式センサー技術。「長年にわたる研究開発で培ってきたノウハウが詰まっている」。経営企画室の十河泉広報部長はこう話す。核となるセンサー部分は、コイル状の白金線に金属酸化物半導体を焼き付け、保護膜で覆われている。わずか直径0.4~0.7mmほどの球体だ。検知するガス種に応じてセンサーの素材や対応温度を変えることで、さまざまなガスの検知が可能になる。例えば、水素を検知する際には、水素以外の分子を通しにくい保護膜を使用。「空気中のさまざまなガスより分子の小さい水素だけが保護膜を通り抜けるので、微量かつ低濃度でも高精度に検知できる」(十河部長)という。その他、アンモニアやメタンなどの検知部にも同センサー技術を用いてガスに応じた選択性をもたせている。


現場に配慮した機能もポイントだ。以前の機種は、検知部のほか警報部が監視室などに設置されていたが、「KD-12」にはガス濃度と警報の表示盤を本体に搭載。これにより、警報部が不要になり、ガス漏れの発生が現場ですぐ分かるようになった。また、従来は二人体制で行っていた点検・メンテナンスも、検知部のみなので一人での作業が可能だ。さらに、現場で磁気スティックを使い、表示盤で確認しながら調整もできるようになった。


同社のセンサー技術を用いた検知警報器は全国の水素ステーションの約8割で採用されているほか、アンモニア混焼の火力発電所などでの活用も進んでいる。CN実現を支える機器として、活躍の場がさらに広がりそうだ。

【特集2】特許技術の整流器により省スペース化 水素含有率をリアルタイムで計測

【エンドレスハウザージャパン】

工業用計測機器を世界的に展開するエンドレスハウザー。
高性能超音波式ガス流量計での日本市場開拓を進めている。

スイスの工業用計測機器メーカーのエンドレスハウザーが高性能超音波式ガス流量計「FLOWSIC500」を市場に展開中だ。同機器は現在、天然ガス・都市ガスの分配時などに使用する輸送取引用測定機器として使用されている。

                1台で天然ガスと水素の流量を把握できる


エンドレスハウザーは昨年、ドイツのセンサー企業SICK(ジック)と戦略的パートナーシップを締結。SICKのガス分析計および超音波式ガス流量計事業部門が分社化され、今年1月に両社出資による合弁会社「エンドレスハウザージック」(EHS)が事業を継承した。EHSは、ガス分析計・ガス流量計を製造しており、エンドレスハウザーは日本市場において、販売、普及推進に力を注いでいるところだ。

大口需要の流量計入れ替え促進 供給ネットワークのDX化貢献へ

FLOWSIC500は、独自構造のカートリッジ内に特許技術の整流器(フローコンディショナー)を内蔵するため、流量計前後の直管長の設置が不要で、設置スペースが大幅に削減される。また、一般的に使用されている機械式ガス流量計に対応したフランジ面間設計にしており、既設からの置き換えをスムーズに行うことが可能だ。


ガス供給ネットワ―クのDX(デジタルトランスフォーメーション)にも適応する。先進的なi-diagno
stics™機能により、流量計測値のほか、機器の状態やアプリケーション上の問題などをリアルタイムで出力。現場での点検、確認作業の省人化で、運用コストの削減に貢献する。


温度圧力センサーを搭載した、標準体積換算機能を持つ機種では、ガス品質インジケータ(GQI)を利用できるオプションがあり、天然ガス中の水素含有率(最大30%)がリアルタイムで計測できる。これにより、ガスクロマトグラフ利用時に比べ、費用、時間の大幅削減が可能になる。また、ニーズの高まりが期待される水素混焼施設では、水素含有率30%までの天然ガスの流量と混合率を1台で測定できる。


ガス測定グループの伊藤琢也プロダクトマネジャーは「都市ガス事業者をはじめ、大口需要家の機械式流量計への入れ替えを進めていき、ガス供給ネットワークのDX化に貢献していきたい」と市場への浸透に期待感をにじませた。

【特集2】巨大な発酵槽が圧巻 バイオガス製造拠点に潜入

JR鹿児島中央駅から高速道路を使って車で南へ30分ほど。錦江湾を臨む工業地帯の一角に、鹿児島市のバイオガス製造拠点となっている「南部清掃工場」がある。同工場では市内の家庭から回収した紙ごみや生ごみをバイオガス化し、導管を通じて500m離れた日本ガスの鹿児島工場に送る。その後、日本ガスが、これを都市ガス原料の一部として活用し、地域に再供給する。まさに、地産地消のエネルギー循環システムの中核と呼べる場所だ。

工場稼働前に発酵槽を整備 メタン生成菌がごみを分解

清掃工場の敷地に足を踏み入れると、まず目を引くのが2基の巨大な円柱形の「発酵槽」だ。1日の処理能力は計約60t。外から中の様子を見ることはできないが、投入されたごみは、全長約40mの槽内を16日間かけてゆっくりと通過していくとのこと。発酵に適した55℃に保たれた槽内には、工場稼働に先立つこと4年前に「メタン生成菌」と呼ばれる微生物が入れられ、これが、ごみを分解しガスを発生させる役割を担っている。

巨大なメタン発酵槽

南部清掃工場に運び込まれる可燃ごみの中には、ビニール袋やプラスチック類など、メタン菌が分解できないものが混ざっている。これらが発酵槽に入ってしまうと、肝心の生ごみ・紙ごみの投入量が減り、60tという処理枠を圧迫してしまう。これを防ぐためには、発酵槽に投入する前の分別作業が重要だ。

この鍵を握るのが、ドラム型の選別機。高速回転するブレードハンマーでごみを粗く破砕すると、生ごみや紙ごみはさらに細かくなりドラム底部の穴を通る。プラスチックごみなどは細かくならず穴を通らないため、確実に除去できるという仕組みだ。この工程を経ることで、発酵槽には効率よく有機物中心のごみを送り込むことができる。

発酵槽から取り出されるメタンガスの純度は55%程度。当然、このままでは都市ガス用には適さない。発酵槽のすぐ横に設置された「バイオガス精製設備」で、アンモニアや硫化水素、CO2といった不純物を取り除くことで純度95%まで高め、ようやく日本ガスの工場へ。燃料ガスと混ぜ、付臭や熱量調整を経て、地域のエネルギーとして再び市民の元へと「還って」いく。

            バイオガス精製設備で不純物を除去

日本ガスは、都市ガスの品質を維持するため、メタンの純度が95%を下回るなどの支障が生じた際には、受け入れを遮断する仕組みを講じている。また、薄まるとはいえ、受け入れるバイオガスの基準については慎重に検討した。試験的にガス機器の中で最も影響を受けるであろうエネファームを、バイオガス100%で1年間運転させた際も、何も問題がないことを確認できたとのことだ。

清掃工場は30~40年ごとに建て替えが行われ、現行施設の運用開始は2022年1月と比較的新しい。この建て替え計画の際、日本ガス側から「生ごみなどを地産地消のエネルギーとして都市ガス原料に利用できないか」と、森博幸市長(当時)に働きかけたことがきっかけとなり、バイオガス化設備の導入が決まった。

発電用途の議論に待った 循環型社会の実現を重視

それまでも、市町村や民間事業者の工場などでメタン化設備を導入する事例は多くあった。だが、いずれもFIT(固定価格買い取り制度)を用いた売電用の自家発燃料として活用されるのが主流。南部清掃工場におけるバイオガス化計画を巡っても、「発電用途に回し、FITで高く買い取ってもらった方が良い」といった議論が浮上したことがあったという。

そうした中で、地産地消による循環型社会を実現できること、市民の環境意識を分かりやすく啓発できることが、そうした意見をはねのける決め手となった。実際、今年4月には、市立の小学校全42校にこのバイオガスを活用した再生可能エネルギー100%の「カーボンオフセット都市ガス」の供給が開始された。ごみの削減や低・脱炭素化といった小学生の環境意識の醸成に一役買っている。

南部清掃工場から供給されるバイオガスの年間供給量は最大で150万㎥。これは、日本ガスの年間ガス販売量の1・5%程度に相当する。津曲貞利社長は、「全体から見れば1・5%に過ぎないかもしれないが、民生用販売量の6%が地産地消のエネルギーで賄われている」と自負する。その上で、「50年をターゲットに、市民生活を支える2500万㎥のエネルギーを全て、地産地消で賄えるようにしたい」と、さらなる高みへ意欲を見せる。

【特集2まとめ】都市ガス「新エネ」への挑戦 見えてきた低炭素化の現実解

低炭素化の現実的な解を手繰り寄せようとする、都市ガス各社の動きが加速している。


究極のCNエネルギーであるe-メタンをはじめ、CO2回収といった難易度の高い技術開発も進めている。


注目すべきは、大手事業者の取り組みにとどまらない点だ。清掃工場と連携したバイオメタンによるガス供給など地方ガス自らが主体的に動き出す事例が生まれつつある。


企業の存続すら左右しかねない低・脱炭素化の潮流に各社はどのように挑んでいるのか。最新の動向を追う。

【アウトライン】重要性増す天然ガス転換 地産地消型供給の動きが加速

【インタビュー】熱の有効活用で性能を向上 エネ変換効率75%以上を達成

【インタビュー】独自の「共電解反応」を採用 一気通貫でe―メタンを製造

【インタビュー】CO2分離回収技術開発に注力 LNG未利用冷熱を有効活用

【インタビュー】静脈を動脈に流すことが重要 生活密着の循環型システム構築

【レポート】巨大な発酵槽が圧巻 バイオガス製造拠点に潜入

【トピックス】分離膜方式採用のシステム開発 高濃度のメタンガス精製を実現

【レポート】小型風力発電が運転開始 再エネ開発の目標達成に注力

【レポート】水素利用のすそ野拡大へ 小規模需要の「壁」に挑む

【レポート】水素製造から炭素貯留まで 国産ガス田活用の野心的実証

【トピックス】独自技術で水素を高精度に検知 メタネーションを安全面から支援

【トピックス】特許技術の整流器により省スペース化 水素含有率をリアルタイムで計測

【特集2】重要性増す天然ガス転換 地産地消型供給の動きが加速

第7次エネ基でCN実現“後”の天然ガスの重要性が強調された。
都市ガス業界はこの方針転換をどう生かすべきか。国際大学の橘川武郎学長に聞いた。

橘川武郎(国際大学学長)
きっかわ・たけお 1975年東京大学経済学部卒、東大大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。経済学博士。東京大学・一橋大学・東京理科大学教授、国際大学教授・副学長を経て、2023年9月から現職。

今年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、「原子力の最大限活用」の文言が話題をさらった。だが、より注目すべきは、天然ガスを「カーボンニュートラル(CN)実現後も重要なエネルギー源」と位置付けた点である。これまで脱炭素化の文脈では、CN後の天然ガス利用は想定されていなかったことを考えれば、大きな方向転換と言える。ガス業界にとっては、かつてない追い風だ。


こうした流れの中で、足元で業界が取り組むべきは石炭や石油から天然ガスへの「燃料転換」だ。高い熱効率を維持したまま、転換した分だけCO2排出量を低減できる。燃転はこれまで大規模な供給エリアを中心に進められてきたが、今後は中小規模エリアや鉄鋼業などのハードトゥアベイト産業にも広げていく必要がある。e―メタンといった次世代技術の実用化に向けた取り組みも重要だが、当面は燃転を通じて着実に低炭素化を進めていくことを最優先すべきだ。


日本ガス協会は6月、新ビジョンと具体的なアクションプランを発表した。内田高史会長の下で策定された「内田ビジョン」は、第7次エネ基の方向転換を踏まえて、業界としての中長期戦略を再定義したものだ。

中長期の供給割合を再設定 大手の投資判断は不透明

旧ビジョンからの最大の変更点は、2050年時点におけるe―メタンとバイオガスの供給割合を、従来の「9割」から「5割~9割」へと幅をもたせたことにある。従来はe―メタンを主軸に、残りの1割を水素、バイオガスで補う想定だったが、内田ビジョンでは方針を転換し、天然ガスが1~5割を担う将来像を示したわけだ。


もっとも、東京、大阪、東邦の都市ガス大手3社にとっては、投資判断が難しくなるといった側面もある。e―メタン、バイオガス、カーボンニュートラルLNGといった原料構成の多様化は、複数の技術に分散投資した結果、利益を食い合う「カニバリゼーション」を起こしかねないためだ。


3社はこれまで、水素とCO2からメタンを生成する「サバティエ方式」を用いた大規模メタネーションの実証拠点として、キャメロンLNG基地を有する米ルイジアナ州や水素パイプライン網が発達するテキサス州などを候補地に検討を進めてきた。しかし、肝心の米国ではトランプ政権による方針転換で支援が縮小傾向にあり、投資環境は不透明さを増している。こうした状況下では、撤退を余儀なくされるケースも想定される。


ただ、明るい話題もある。サバティエ方式よりもエネルギー変換効率が高く、外部水素を必要としない「SOEC(固体酸化物形電解セル)」方式の実証が進みつつあるのだ。大阪ガスは大阪市内の酉島地区を拠点に、いち早くベンチスケールでの実証に着手した。SOECがオンサイト型のメタネーション技術として、サバティエ方式に先んじて普及する可能性もある。


大手にとっては懸念材料がある一方、準大手の目線では、新たなチャンスが広がったとも言える。旧ビジョンでは50年時点で「e―メタン9割」を想定していたが、これには大規模投資が必要で、参入の余地は限られていた。だが、新ビジョンでバイオガスやオフセットを活用した天然ガス利用が選択肢に加わったことで、中規模・地方事業者にも新たな事業展開の余地が生まれたわけだ。


その象徴的な取り組みを行っているのが日本ガス(鹿児島市)だ。同社は22年1月から、鹿児島市内の南部清掃工場内で生成するバイオガスを都市ガス原料として活用している。発電用途での使用が本格化するFIT(固定価格買い取り制度)の導入以前から準備を進め、今では地産地消型のエネルギー利用のモデルケースとなっている。

ごみを分解する発酵槽(日本ガス)


バイオガス以外では、西部ガスと北海道ガスが、北九州市のひびきLNG基地を拠点に、地域内の再生可能エネルギーを用いたe―メタン製造の実証を進めている。こうした準大手事業者による地産地消型のエネルギー供給に向けた動きは今後、一層加速していくと見られる。

次世代技術の活用が前提に エネ価格は高騰の見込み

第7次エネ基では天然ガスの重要性とともに、排出係数を低下させる野心的な目標を掲げている。「リスクシナリオ」では、40年時点の火力電源全体の排出係数を1kW時当たり0・31㎏とする試算を示した。火力の中で最も排出係数の低いLNGコンバインドサイクルで0・47(21年度時点)であることを考えれば、この設定水準がいかに低いかが分かる。これには相当量の水素やアンモニアの混焼が不可欠で、実際に活用する際にはCCS(CO2回収・貯留)やDAC(大気直接回収)などと組み合わせることが前提となる。これらの技術コストを加味すれば、カーボンプライシングの基準はCO21t当たり2万円程度が妥当となりそうだ。大半の国内事業者が1t当たり数千円台と想定するが、より高い水準を織り込まなければ現実的な事業モデルは描けない。


こうした背景を踏まえれば、今後エネルギー価格の上昇は避けられないことは自明だろう。従来のエネルギー価値に環境価値が付加される以上、価格への転換は必然であることを社会全体で共有する必要がある。


天然ガスの活用とCNは決して矛盾するものではない。排出量と吸収量がイコールになりさえすればいいのだ。まずは燃転を通じて低炭素化を進め、その上でe―メタンやバイオガスといった次世代技術導入への道を探っていくことが、都市ガス業界に求められる姿である。(談)

【特集2】熱の有効活用で性能を向上 エネ変換効率75%以上を達成

インタビュー/吉崎浩司・東京ガス 水素・カーボンマネジメント技術戦略部長

―新たな都市ガスとするべくe―メタン開発に注力しています。現状を教えてください。


吉崎 横浜テクノステーション(横浜市鶴見区)で、固体高分子形水電解装置によって製造した水素と、横浜市資源循環局鶴見工場の排ガスから分離・回収したCO2を原料として、e―メタンを製造する実証を行っています。水素製造には、主に敷地内に設置した太陽光発電の電気を使用しています。導入している水電解装置は2MW級あり、安定した水素供給を実現しています。
 2022年3月の開所以降、e―メタン製造設備は順調に稼働しており、24年7月には、国内初のクリーンガス証書制度における「クリーンガス製造設備」として認定を受けました。
 今後は「ハイブリッドサバティエ」や「PEM CO2還元」など、革新的メタネーション技術を含む最新技術の実証拠点として、同ステーションを活用していく予定です。

            サバティエ方式の実証設備


―次世代メタネーション技術開発の進捗はいかがですか。


吉崎 当社は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業」の助成を受け、ハイブリッドサバティエなど革新的メタネーション技術の開発に取り組んでいます。ハイブリッドサバティエは、サバティエ反応によって生じた熱を水電解に有効活用し、システム全体の効率向上を目指す技術です。触媒などの要素技術開発やデバイス構造の最適化を経て、24年度にはグリーンイノベーション基金事業のステージゲート目標であるエネルギー変換効率75%以上を達成しました。
 現在は、スケールアップや耐久性向上などを目指し、システム全体の性能改善や運転条件の最適化を進めています。PEM CO2還元は、水とCO2からメタンを1段階で直接合成し、効率の向上を目指す技術です。現在、メタン生成に必要な中間体の反応の選択性を高める触媒を開発しています。これにより、24年度にはエネルギー変換効率62%以上というステージゲート目標を達成しました。

e―メタンをオンサイトで 顧客ニーズで設備提供へ

―ハイブリッドサバティエに関しては、事業所内にプラントを稼働させるだけでなく、需要家での利用なども想定しているのでしょうか。


吉崎 グリーンイノベーション基金事業が完了する30年以降の速やかな社会実装を計画しており、お客さまの敷地内での利用も想定しています。技術開発の進捗に加え、お客さまのニーズやカーボンニュートラルに関わる社会情勢・事業環境などを総合的に考慮し、必要に応じてスケジュールの前倒しも検討していきます。今後は、メタン生成量や耐久性のさらなる向上を目指して、デバイス構造の改良などに取り組んでいきます。


―固体高分子形水電解装置の基幹部品として触媒層付き電解質膜(CCM)の量産について教えてください。


吉崎 低コスト化に向けた技術開発が順調に進んでいます。触媒に使用するレアメタルのイリジウムの使用量を従来の4分の1まで削減することに成功しました。また、海外の固体高分子形水電解装置メーカーから要望の多い、高圧条件下での水素製造への対応も進めています。量産化に向けては、事業パートナーのSCREENホールディングスが25年2月に新たな生産設備を竣工し、年産2GWの水電解CCMを生産できる体制の準備を進めています。

    ハイブリッドサバティエのリアクター


―CCU(CO2分離回収・利用)も注目が集まっています。具体的にどのような技術に取り組んでいるのでしょうか。


吉崎 横浜市からの排ガスを分離・回収したCO2を原料にe―メタンを製造しており、地域でのCCU推進を実証しています。大気中のCO2を直接回収するDACや、貯留を組み合わせたDACCS、CO2貯留効率を高めるCCS技術開発にも取り組んでいます。


―30年以降、こうした次世代エネルギー技術を組み込んでいく中で、今後の都市ガス・電力供給はゼロエミッション化していくのでしょうか。


吉崎 都市ガス分野ではe―メタンやRNG(再生可能天然ガス)、電力分野では再生可能エネルギーを主軸として、CNの実現を目指しています。ただし、これらに限定せず、S+3E(安全性・安定供給・経済効率性・環境適合)のバランスを重視し、柔軟に新たなオプションを社会実装していくことが重要です。
 DACCSやBECCSなどのネガティブエミッション技術や、CCS・水素の活用も含め、複数のオプションを並行して追求していきます。

新技術を積極的に取り込む 米ベンチャーと連携を推進

―50年に向けて、注目する次世代技術はありますか。


吉崎 米国シリコンバレーに設立したコーポレートベンチャーキャピタル「アカリオ」を起点に新技術の探索やスタートアップ連携を進め、国内でも多様なオープンイノベーションを推進することで、次世代技術の積極的な取り込みを図っていきます。

吉崎浩司(東京ガス 水素・カーボンマネジメント技術戦略部長)
よしざき・こうじ 1994年東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻修士課程修了、同年入社。工学博士。海外事業推進部長、再生可能エネルギー事業部長などを経て、2025年4月から現職。

【特集2】CО2分離回収技術開発に注力 LNG未利用冷熱を有効活用

インタビュー/肆矢直司・東邦ガス 常務執行役員「イノベーション推進本部長委嘱」

―まずはカーボンニュートラル(CN)戦略についてお聞かせください。


肆矢 当社では、2025~27年度の中期経営計画の事業戦略の一つに「CNへの使命と責任」を掲げ、e―メタンやバイオガス、水素などのサプライチェーン構築を目指すとともに、CCUS(CO2回収・貯留・利用)やカーボンクレジットなど多様な道筋の確保に取り組んでいます。特に、DACを含むCO2分離回収技術は、カーボンリサイクルのキーテクノロジーと位置付けており、20年頃から開発を進めてきました。


―具体的に、どのような技術開発でしょうか。

肆矢 LNGの未利用冷熱を使ってCO2を安価に回収する技術です。グリーンイノベーション基金事業で取り組んでいる「Cryo-Capture」(クライオキャプチャー)では、LNG冷熱を用いて火力発電所や大規模な工場から発生する燃焼排ガスからCO2を回収します。LNG冷熱がCO2をドライアイス化する際に生じる圧力の低下によって、吸収液からCO2を取り出す仕組みです。
 一方、ムーンショット型研究開発事業の一環で取り組んでいる「Cryo-DAC」(クライオダック)は、大気からのCO2回収を想定しています。大気中のCO2濃度は燃焼排ガスの100分の1程度とかなり低いため、Cryo-Captureとは異なる吸収液の開発とともに、規模の異なる回収設備の設計を進めています。

名古屋大の「Cryo-DAC」ベンチスケール機

DAC実証機の大型化 消化ガスのCO2利用

―実用化に向け、どのようなスケジュールですか。


肆矢 ムーンショット型研究開発事業が行われている29年度までに、大阪・関西万博での実証試験や現在取り組んでいる名古屋大学での実証試験などの結果を基に、さらに大型の実証機の設計を実施したいと考えています。この大型実証機による評価の結果をもとに、40年以降の社会実装を目指しています。


―メタネーション実証では下水汚泥などの再生利用に取り組んでいます。

肆矢 17年から知多市南部浄化センターで発生する消化ガスを精製してメタン純度を高めたバイオガスを受け入れ、都市ガス原料として利用してきました。メタネーション実証では、消化ガスの精製過程で排出されるオフガス(主にCO2)をパイプラインで当社LNG基地に供給し、e―メタンの原料としての有効活用を図っています。

知多LNG共同基地のメタネーション装置


―実証での成果や課題にはどのようなものが挙げられますか。

肆矢 本実証試験は、国内で初めて、製造したe―メタンを都市ガス原料として利用した取り組みです。小規模ではありますが、e―メタンの本格的な社会実装に向けて大きな一歩を踏み出したと考えています。
 また、e―メタンの普及には、低コスト化をはじめ、大規模化した際の高効率化や耐久性の向上を進めていく必要があります。本実証試験で得られる設計・建設・運用段階での経験、知見を最大限に活用して、課題の解決に挑んでいくつもりです。

―将来、実用化した際には、中部圏におけるメタネーション地域連携が期待されます。


肆矢 数年前からアイシン、デンソーと共同で地域CO2循環型e―メタン供給の検討を行っています。両社の工場で排出されるCO2を分離回収した後、当社の都市ガス工場まで運搬し、その後、原料となる水素と合わせてe―メタンを製造し、導管ネットワークを通じて両社工場にe―メタンを供給するモデルです。カーボンがリサイクルされる過程において、トレーサビリティーが明確になることが特徴です。


―24年から水素製造プラントの運用が始まりました。御社はどのような役割を担いますか。


肆矢 水素需要拡大については、豊田通商、大陽日酸と進める名古屋港のCN化に向けたNEDOの調査事業を行っています。さらに、自治体や協業先と連携し、水素の利活用に係る実証や開発などを進め、モビリティ・熱分野の需要創出を目指します。

 また、CO2分離回収技術の開発、CCU、CCSの事業性を検討するとともに、これらの技術を水素製造プラントに適用し、水素をブルー化することを検討しています。CCUの具体的技術としては、「あいちカーボンニュートラル戦略会議」の事業化支援を受け、アイシン、大成建設と共同でCO2をコンクリート原料として固定化するプロジェクトを進めています。CCSについては、社会実装に向けて、国内外のプロジェクトへの関与を深め、課題の抽出、解決策の具体化を図っています。

水素需要拡大などに貢献する水素製造プラント

商用FCVの重点地域に 水素の需要創出・獲得へ

―水素ステーションの整備状況はいかがでしょうか。


肆矢 国が燃料電池車(FCV)の商用車の導入目標を掲げ、今年5月、愛知県はその重点地域の一つに採択されました。これを受け、愛知県では独自に30年7000台の目標を掲げています。さらに、FCV商用車やFCV商用車対応の水素ステーションへの支援が拡充されるなど、水素需要拡大への環境が整ってきています。当社としても今後、愛知県などの自治体や自動車メーカーと連携し、水素需要の創出・獲得に取り組んでいきます。


―最後に技術開発における今後の展望をお聞かせください。

肆矢 日本のみならず、アジアにおけるCN実現に向けた道筋づくりに貢献するため、あらゆる技術開発の可能性を模索していきます。全てはお客さま起点で、お客さまに喜ばれることを考え抜き、持続可能な社会に貢献していきたいです。

肆矢直司(東邦ガス 常務執行役員「イノベーション推進本部長委嘱」)
よつや・ただし 1990年早大大学院理工学研究科修了、東邦ガス入社。産業エネルギー営業部長、執行役員としてCSR環境部長や東京支社長などを務め、2025年から現職。東邦ガス情報システム社長を兼任。

インフォメーション

アフリカ開発会議(TICAD)

TICADでエネルギーイベントを開催

日本政府は第9回アフリカ開発会議(TICAD 19)を8月20〜22日、横浜市で開催した。このプレイベントとして19日には、アフリカ諸国のエネルギーを主題にした「光れアフリカ」を実施した。現在、アフリカ大陸では約6億人が電気のない生活を送っている。ナイジェリア連邦のアデバヨ・アデコラ・アデラブ電力省大臣は「これを解消するには、太陽光や水力など再生可能エネルギーを中心に1000億ドル分のインフラ投資が必要となる」と説明した。また、これらの再エネをオフグリッド運用していくこと、農村地域に導入するにはより安価な設備が必要になることなどを訴えた。

UBE三菱セメント/大阪ガス/Daigasエナジー/西部ガス

セメント焼成用キルンに天然ガスを利用

UBE三菱セメント(MUCC)、大阪ガス、Daigasエナジー、西部ガスは9月3日、MUCC九州工場黒崎地区のセメント焼成用キルンの熱エネルギー源として、天然ガスを混焼する実証試験に成功したと発表した。低炭素化においては、セメント焼成用キルンで使用する石炭などから排出される CO2削減が有効な手段となる。今回、新たに開発した天然ガス混焼用バーナーを用い、石炭の40%を天然ガスで代替し、商業規模での運転を行い成功した。同技術はMUCCの微粉炭燃焼技術と大阪ガス・Daigasエナジーのガス燃焼技術、燃焼シミュレーション技術を活用して開発した。

中国電力/エア・ウォーター

バイオマス混焼から回収したCO2利活用の検討開始

中国電力とエア・ウォーターは9月、バイオマス混焼発電所から回収したCO2の利活用について共同検討を開始した。中国電力グループのエネルギア・パワー山口が運営する防府バイオマス発電所(山口県防府市:11.2万kW)に導入する予定のCCS設備で発電時に排出されるCO2を回収する。エア・ウォーターは回収したCO2を産業ガス事業で培ってきた知見を生かし、利活用することを目指す。具体的には、液化炭酸ガスやドライアイスの製造に利用することに加え、将来的には低炭素水素と合成することで、eメタン製造などに応用していきたい考えだ。

BECC JAPAN2025

行動変容から気候変動の解決を目指す

第12回気候変動・省エネルギー行動会議「BECC JAPAN2025」が8月27日、都内で開催された。京都先端科学大の西條辰義特任教授は「フューチャー・デザイン:将来世代から感謝される社会のデザイン」と題した行動変容に関する講演を行った。SNSやAIなどによる脱炭素コミュニケーションに関する発表も行われ、参加した関係者らで活発な議論がなされた。

サーラエナジー

ZEB仕様の新事務所「サーラプラザ豊橋南」

サーラエナジーは9月、豊橋市の店舗「サーラステーション豊橋南部」の移転先として建設を進めてきた「サーラプラザ豊橋南」が完成し、10月移転することを発表した。新事務所は、純木造建築で耐震性の高いSE構法を採用。持続可能な社会実現に貢献すべく、太陽光発電設備や蓄電池を取り入れたZEB仕様で、エネルギーの効率的な利用を図る。

中部電力/JFEエンジニアリングほか

田原バイオマス発電所が運開

中部電力とJFEエンジニアリング、東邦ガス、東京センチュリーの4社は9月1日、田原バイオマス発電所(愛知県)の運開を発表した。4社が共同出資する田原バイオマスパワー合同会社が発電所の運営主体となる。木質専焼のバイオマス発電所で発電出力は11万2000kW。年間の想定発電量は約7億7000kW時に上り、一般家庭の約25万世帯分に相当する。

【特集2まとめ】脚光浴びるHPの蓄熱力 再エネ支える需給調整の新運用

今年、累積出荷台数が1000万台を突破したエコキュート。
家庭用ヒートポンプとして給湯市場を席巻して四半世紀が経過した。


深夜の割安な電気を使って貯湯し翌日のお風呂需要を担っていたが、
再エネの大量普及時代を迎え、そんな単調な運用は変わりつつある。


余剰再エネの有効利用やデマンドレスポンスを見据えた運用など
その蓄熱力を柔軟に活用した新たな役割が期待されている。


ガスとヒートポンプを組み合わせたハイブリッド給湯と共に、
変わりゆく家庭用給湯の展望を探った。

【アウトライン】家庭用給湯が四半世紀で一変 低・脱炭素化担うアイテムへ

【インタビュー】潜在的な需給調整力に期待 DR価値向上の仕組みが重要

【レポート】次なる普及策へ業界の挑戦 利用者のDR参加をどう促すか

【トピックス】太陽光連動型給湯機の普及拡大へ お得な料金プランで自家消費を促進

【インタビュー】DRreadyの本格普及へ 自立型の事業モデル確立を

【レポート】欧州のヒートポンプ事情を考察 英国視察から見えた普及策

【レポート】本格普及を見据え増産対応 ハイブリッド市場を主導

【レポート】業界最小クラスのコンパクトモデル 時短施工、軽商用車に搭載可能

【トピックス】オール電化マンションを強みに攻勢 CO2フリー化とエコキュート制御など提供

【特集2】太陽光連動型給湯機の普及拡大へ お得な料金プランで自家消費を促進

【九州電力/東京電力エナジーパートナー】

太陽光発電(PV)の余剰電力を使うタイプのヒートポンプ給湯機。
大手電力数社が料金プランを整備し、本格導入を開始している。

大手電力会社では、昼間の余剰電力を使ってお湯を沸かす太陽光連動型ヒートポンプ給湯機の普及を図るため、専用料金プランを提供し、太陽光発電(PV)の自家消費を促している。

日照条件に恵まれる九州では、PVの導入量が1100万kWに達している。春・秋の昼間を中心に電力の供給量が需要を上回る状況が発生しており、電力の需給バランスを維持するため、再生可能エネルギー電源の出力要請が増加している。九州電力では2022年7月から「九電ECOアプリ」を活用したデマンドレスポンス(DR)を実施してきた。軽負荷期(春秋)には「上げDR」として電力使用を促し、重負荷期(夏冬)には「下げDR」として節電を促す仕組みだ。

24年4月に導入された料金プラン「おひさま昼トクプラン」では、基本料金は従来のオール電化向けプランと同じ料金で、昼間の電力需要を創出し、再エネの有効活用につなげている。オール電化で「おひさま昼トクプラン」を適用した場合、電気・ガス併用住宅に比べ、1カ月当たり約7492円割安となる試算だ。

家庭用高効率給湯機の普及拡大を目指す

昼間のPV余剰電力を活用 効率的な湯沸かしで料金削減

「おひさまエコキュート」は、PVのある家庭に向けた高効率給湯機だ。従来のエコキュートが主に夜間に沸き上げを行うのに対し、おひさまエコキュートは昼間の時間帯に稼働し、PVで発電した余剰電力や、昼間の安価な電気で効率的にお湯を沸かす。昼間に沸かすと夜間よりも外気や水温が高く、より少ない電力で効率的にお湯を沸かせるというメリットがある。

東京電力エナジーパートナーの料金プランでは、従来品に比べ、年間で約27%料金が抑えられる。固定価格買い取り(FIT)制度の期間を終えた卒FITで売電収入が低下した家庭にとっては節約につながることも魅力だ。

国や自治体では給湯機の導入や交換に補助金制度を用意しており、おひさまエコキュートのような太陽光連携型の高付加価値給湯機は、今後ますます普及拡大していくことが見込まれている。

【特集2】オール電化マンションを強みに攻勢 CO2フリー化とエコキュート制御など提供

【関電不動産開発】

関電不動産開発は近畿地方で分譲マンショントップシェアを獲得する。
電力会社グループの強みを生かした商品企画で攻勢を強めている。

関西電力グループの関電不動産開発は分譲マンション「シエリア」シリーズを展開している。同シリーズは、全ての物件でオール電化を採用。2023年以降に計画した新規物件はZEH対応となっている。これまでZEH対応物件は、竣工済み20物件、施工中20物件、合計約5400戸を手掛けた実績を持つ。

同社はオール電化の付加価値として、①マンション全体でのCO2排出量の実質ゼロの実現、②エコキュートのデマンド制御、③EVスタンドの整備―に注力する。①実質CO2フリー電気はエネマネシステムを組み込み、市場価格より割安なCO2フリー電気を供給する。具体的には、関電が提供する再エネ由来の非化石証書の環境価値を付与したゼロカーボン電気を関電グループのNext Powerが調達し高圧一括受電方式で供給。マンション全体をCO2排出量実質ゼロにするほか、料金を抑えカーボンニュートラル(CN)に貢献する。

最新の「シエリアタワー中之島」では再エネ電気とエコキュート制御を採用した

エコキュートのデマンド制御 夜間ピークを昼間などに分散

②エコキュートのデマンド制御は夜間に集中する沸き上がり時間を昼間などに分散し、マンション全体のピークを低減する。これにより、高圧契約の基本料金を抑制し安価な電気を供給する。特にファミリー世帯向けの大規模マンションでは効果的だ。北矢努建築部長は「将来的には街単位で制御を行い、調整力としての応用も検討したい」と展望する。

③EVスタンドでは、ピークカット機能によりマンション全体の電力需要が低い時間帯にEV充電を行う。「シエリアシティ星田駅前イーストスクエア・ウエストスクエア」では駐車場306台に対し159台分と大規模にコンセントを設置した。同時使用時の電力負荷を抑え、フル充電可能な仕組みを整備した。「条件が適合した物件にこれらのサービスを積極的に導入していく」と北矢部長は話す。

同社は21年以降、近畿地方でファミリー向け分譲マンション(投資用除く)供給戸数1位を3年連続で獲得。首都圏でテレビCMを放映するなど、全国規模で攻勢を強める。オール電化の強みを生かした戦略はCN実現で一歩先を行き、存在感はさらに高まりそうだ。

インフォメーション

COM NEXT2025

ローカル5G最先端の通信技術を多数展示

「第3回次世代通信技術&ソリューション展(COMNEXT、コムネクスト)」が7月30日〜8月1日の3日間、東京ビッグサイトで開催された。同展示会は光通信技術、高周波技術、ネットワーク設備・配線施工、ローカル5Gなどの次世代通信技術やこれを応用したソリューションの紹介に特化している。最新技術の実機デモや製品が多数展示され、3日間で1万5000人超が来場した。昨今のデータセンター(DC)需要拡大に伴い、DCの建設や運営に必要な製品や、企業や組織のDX推進の流れを受け、最新通信技術をよりカスタマイズして提供する5G・6Gシステムのソリューションなどが注目を集めていた。

経済産業省/日本ガス協会

夏休み恒例の「こどもデー」開催

経済産業省は8月6、7両日、夏休み中の子どもとその保護者を対象に「経済産業省こどもデー」を開催した。国の施策への理解を深めてもらう目的で府省庁が連携して行う「こども霞が関見学デー」に合わせた毎年恒例のイベント。さまざまな企業が出展し、未就学児から高校生まで楽しめる多様な体験型プログラムなどを提供した。日本ガス協会は、学校での環境教育授業を手掛ける大阪ガスネットワークによる小学生向けの環境学習を提供。集まった小学生約20人は、地球温暖化の仕組みや、未来の都市ガス「eーメタン」を生成するメタネーション技術について学び、地球環境について知識を深めた。

ニチガス

拡販に向け長野県に営業所を新設

LPガス販売大手のニチガスは7月、長野県松本市に営業所を新設した。すでに昨年秋から仮設の拠点を設けて営業を進めており、およそ10カ月間で、販売店のM&Aを含めて900件近くの顧客を獲得していた。松本市に加え、塩尻、安曇野、岡谷、茅野、諏訪エリアを中心に今後3年間で7200件の獲得を目指す。また、ガスと電気のセット販売率については80%を目標に掲げている。バルク供給については長野県北部を供給エリアにする北信ガスに委託する。新設した営業所は太陽光や蓄電池、ハイブリッド給湯システムを採用したZEB仕様となっている。

矢崎総業/テクノ矢崎

国内最大級3800kWソーラーカーポートを設置

矢崎総業は静岡県牧之原市に国内最大級の3800kWのソーラーカーポートを設置し、子会社のテクノ矢崎を発電事業者としてグループ内PPAを開始した。PPAは電気を使う家庭や企業、自治体に事業者が太陽光設備を無償提供し、使った電気代を事業者に払うモデル。矢崎総業はこの取り組みにより、事業所全体の使用電力量の約21%を賄う見込みだ。

川崎重工業

大型液化水素貯蔵タンクの製作開始

川崎重工業は8月7日、大型液化水素貯蔵タンクの製作を開始したと発表した。貯蔵容量5万㎥の地上式平底円筒形液化水素貯蔵タンクで、高圧ガス保安法の特定設備検査申請の設計審査に合格。同社播磨工場(兵庫県播磨町)で製作する。同タンクは、NEDOのグリーンイノベーション基金事業で建設する川崎市扇島の国内基地に設置する予定だ。

ヒートポンプ・蓄熱センター

ヒーポン蓄熱システムがCNの鍵に

ヒートポンプ・蓄熱センターは7月24日、第22回ヒートポンプ・蓄熱シンポジウムを都内で開催した。省エネや再エネの活用に関する理解促進と、関係者の連携強化を目的に実施。運転管理実例の発表やパネルディスカッションが行われた。浅井亨専務理事は「ヒートポンプ蓄熱システムがカーボンニュートラルの切り札になると確信しています」と述べた。

【特集2】災害時も空調の稼働を継続 熱中症対策と避難所機能を両立

【I・T・O】

I・T・Oが手掛ける防災減災対応システム「BOGETS(ボーゲッツ)」の導入が、小中学校をはじめとする教育機関で進んでいる。同製品は災害発生時、都市ガスの供給が途絶えた時にバックアップ燃料に切り替えることができる。具体的には、ガス変換器「New PA」でLPガスを都市ガスの代替となるプロパンエアーガスに変換して供給する。専門的な知識がない職員やスタッフでも、簡単なタッチパネルなどの操作で切り替えられるのが大きな特長だ。避難場所となる体育館に停電対応型GHPがあれば、空調を復旧し、継続して稼働できる。

直近では、名古屋市の小学校に採用された。同市では、2020年に小中学校の体育館への空調設備導入を決定し、110校ある中学校に導入した。その後、260校ある小学校への導入が順次進んでいる。市が空調設備導入を検討していた段階から、同市会議員のたなべ雄一氏はBOGETSに注目。すでに同設備を導入していた足立区の小学校を視察し、防災機能としての体育館空調維持の重要性を名古屋市議会で訴えた。これにより、全小学校に空調を設置するとともに、避難所の収容人数が過密となると予想される地域の51校の体育館にBOGETSを設置することになった。今後5年かけて設置していく計画だ。

小学校に設置された「NewPA」

体育館空調に追い風 35年度に設置率95%へ

各自治体で導入が進んでいる背景としては、文部科学省が24年度補正予算で創設した「特例交付金」の影響が大きい。同制度は体育館空調設備に特化しており、全国で総額779億円が計上された。従来は校舎改修やトイレ洋式化などと競合していた交付金が、空調整備専用枠として自治体に提供されている。さらに、石破茂首相が防災庁を創設すると宣言したことも後押しとなった。政府は学校体育館の空調設置率を同年9月の18・9%から35年度には95%まで引き上げる方針を打ち出している。

体育館への空調設置を政府も後押し

営業本部の愛田政司部長は「自治体向けに都市ガスエリアではBOGETS、導管が通らないエリアではLPガスの災害対応型バルクを提案している。今夏は北海道でも35℃を超える日が続いた。全国で熱中症対策と避難所機能の両立を図る動きが広がる見通しなので、当社としても貢献していきたい」と抱負を語った。

名古屋市の事例は、燃料多重化によるレジリエンス強化のモデルケースとなる。全国の自治体にこの動きが波及していくと見られる。