【特集2まとめ】火力「脱炭素化」の近未来 台頭する水素・アンモニア燃料


火力発電のカーボンニュートラル実現に向けて、

水素やアンモニアなど次世代燃料への転換の動きが広がっている。

さらに他業種を巻き込んだサプライチェーンづくりも本格化。

並行して、CO2を回収・貯留する「CCS」の動きも活発化し始めた。

世界同時に進むこの潮流に日本勢はどう立ち向かっていくのか。

水素・アンモニア燃料の課題と展望を探り、火力の近未来像に迫る。

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【特集1まとめ】省エネ合戦の変貌 電力vsガス競合を変えた三大要因


1980年代~2010年代前半、電力業界とガス業界は熾烈なエネルギー間競合を繰り広げた。

この競合こそがエネルギーの高効率利用を柱とする技術開発を進展させてきたのだ。

ところが2010年代後半に入ると、両業界を巡る情勢は大きく変化していく。

システム改革を通じた大手エネルギー事業者の分割や相互参入の加速。

再生可能エネルギー大量導入に伴う新たな需給システムの導入。

そうした中で押し寄せてくる世界的なDX・GXの大波。

かつての省エネ合戦は、これらの要因によってどんな変貌を遂げていくのか。

電力vsガス技術競合の変遷をたどりながら、直面する課題や今後の行方に迫った。

【アウトライン】自由化・再エネ・DXで新局面に 利用技術開発競争の往古来今

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【対談】変遷から課題までを徹底討論 国内産業の成長に資するか 目指すべき開発の方向性とは

【関西電力 森社長】最新知見を取り込み安全・信頼性を高め 原子力を活用していく


事業の不確実性が高い中で、ゼロカーボン化や新事業に挑戦し、中期経営計画の前半3カ年の財務目標を達成した。

これを受けて後半2カ年の財務目標を引き上げ、25年度までに自己資本比率28%以上を目指す。

【インタビュー:森 望/関西電力社長】

もり・のぞむ 1988年京都大学大学院工学研究科修士課程修了、関西電力入社。執行役員エネルギー需給本部副本部長、常務執行役員再生可能エネルギー事業本部長、取締役執行役副社長などを経て2022年6月から現職。

志賀 原子力発電が7基体制となり、高浜3、4号機は運転期間延長が認可されるなど、安定的な運用に着々と手を打っていますね。

 高浜発電所3、4号機は、特別点検の結果などを含めた劣化状況評価を実施した結果、60年までの運転を想定しても問題がないことを確認したため、運転期間を延長する方針を2022年11月25日に決定しました。そして今年5月29日、原子力規制委員会より運転期間延長認可をいただき、60年までの運転が可能となりました。また、6月26日には大飯発電所3、4号機が30年以降運転における長期施設管理計画の認可を受けました。

今後とも国内外の最新知見を積極的に取り込み、プラントの設計や設備保全に反映していくことで、原子力発電所の安全性・信頼性の向上に努めていきます。そして、地元をはじめとする皆さまのご理解を賜りながら、原子力発電を重要な電源として活用していきます。

志賀 美浜原子力の増設をはじめ、いよいよ新増設の検討にも着手することになりますか。

 新増設について、何か決定したことがあるわけではありません。とはいえ、2050年カーボンニュートラル(CN)の実現を描くためには、原子力を一定規模稼働させる必要があります。それには、既存のみならず新しいプラントが必要であり、リードタイムを考えるといよいよしっかりと検討するべき時期に差しかかっていると考えています。

高浜発電所3、4号機は60年までの運転が可能に


中計は着実に進捗 財務目標を見直し

志賀 グループの中期経営計画(21~25年度)が残り2年を切りました。進捗はいかがでしょうか。

 21年度以降、事業運営の大前提である真にコンプライアンスを徹底できる企業グループへの再生に向け、内部統制強化と組織風土改革を両輪で推進しつつ、「EX(エナジートランスフォーメーション)」「VX(バリュートランスフォーメーション)」「BX(ビジネストランスフォーメーション)」の3本を柱に、ゼロカーボン化や新たな価値創出に向け取り組んできました。

策定当時は、需要の低迷や再生可能エネルギーの大量導入に原油価格の下落も相まって、電力取引価格が大幅に低下し、新電力との競争激化から収支の悪化を見込んでいました。その後、ウクライナ情勢を受けた燃料市況の変動など、不確実性が高い状況の中においても、あらゆる角度から事業コストの構造改革を進めるとともに、グループを挙げてゼロカーボンに向けた取り組みや新事業にも挑戦。引き続き課題はありますが、3本柱の取り組みは概ね着実に進捗し、前半3カ年の財務目標を達成することができました。

これを受けて、今年4月には中計のアップデートを行いました。財務目標については、収支の状況を踏まえ財務目標を見直し、資本収益性を重視する経営を実践すべくROIC(投下資本利益率)の指標を追加しました。ROA(総資本利益率)は4・4%以上、ROICは資本コストを上回る4・3%以上を目指していきます。このほか、市況の影響を受けやすいエネルギー事業の収支が大きく変動する中にあっても安定的に利益を出していくべく、経常利益を2500億円から3600億円以上に見直し、当初、5カ年累計で黒字化することを目標としていたフリーキャッシュフロー(FCF)については、利益拡大の中、しっかりと将来に向けた投資を行うため5カ年累計で3000億円以上としました。財務体質の改善に向けて有利子負債の返済を進め、自己資本比率を23%から28%以上に引き上げました。

【特集1まとめ】再エネ主力化の正念場 自治体規制や開発実態を独自調査


第5次エネルギー基本計画で初めて打ち出された「再生可能エネルギー主力電源化」方針。

旗は掲げられ続け、電源構成での再エネ比率は21.7%(2022年度)まで拡大した。

しかし太陽光などにまつわるトラブルは依然多くの地域が抱える課題であり、

自治体は規制強化と、適切な再エネ拡大のバランスに悩みながら策を講じている。

一方、今後導入量積み上げの主軸を担うであろう洋上風力。地域への経済波及効果や、

産業政策の面からも期待が高まるが、開発が進む地域の実情はどうなのか――。

第7次エネ基の検討が進む今、正念場を迎えた再エネ主力化の実情を探った。

【アウトライン】特措法改正で段階的に規律強化も 再エネ規制へ自治体の温度差鮮明に

【インタビュー】一層の拡大は地域共生が大前提 需給面でFIP活用が重要に

【レポート】洋上風力は地域経済を再生できるか 秋田・能代と石狩の現場をレポート

【座談会】脱炭素の追い風も行く手には難路 持続的な成長に必要な視座

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