需要家の脱炭素化ニーズの高まりや、将来の電力需要見通しが増加に転じるなど、事業を取り巻く環境は大きく変化している。
この変化をチャンスと捉え、エネルギー事業者として地域の活性化に貢献する。
【インタビュー:中川賢剛/中国電力社長】

志賀 2024年度の通期連結決算について、どう受け止めていますか。
中川 24年度決算については、売上高は総販売電力量の減少および燃料価格の低下に伴う燃料費調整額の減少などが影響し、前年度に比べ減収、経常利益も燃料費調整制度の期ずれ差益の大幅な縮小などにより減益となりました。一方で、燃料価格の低下、原子力発電所の再稼働、投資の抑制や経営全般にわたる効率化への取り組みにより、当初想定を上回る利益を計上したことで、目標としていた連結自己資本比率15%以上への回復を1年前倒しで達成することができました。しかし、有利子負債は増加しており、著しく毀損した財務基盤の立て直しにさらに一層、取り組む必要があると認識しています。
志賀 高い利益水準の要因には、昨年12月23日に島根原子力発電所2号機が再稼働した影響もありますか。
中川 24年度決算では、島根2号機の再稼働により原料費が減少した半面、減価償却費などが増加しましたが、結果的に利益は90億円増加しました。この島根2号機は、電力の安定的な供給に寄与するとともに、燃料価格変動の影響が緩和できることから業績の安定化・財務基盤の強化につながるほか、カーボンニュートラル(CN)に向けても非常に重要な電源だと認識しています。
志賀 25年度の業績見通しについては。
中川 今年度は、市場価格の低下に伴う卸・小売の競争進展や送配電事業の利益の減少によって、二期連続の減益を見込んでいますが、島根2号機の稼働増加により一定の利益水準を確保できる見通しです。とはいえ、足元の競争に加えて、物価上昇に伴う資機材の調達費用の増加や、米国の関税措置による経済活動への影響の懸念など、先行きに対する不透明感が増しています。引き続き、安定した利益の確保と財務基盤の回復を果たすべく、安全の確保を大前提とした島根2号機の安定稼働をはじめ、電力卸・小売販売事業の収益力強化と市場リスク管理の高度化、およびグループ一体となった経営全般にわたる効率化に取り組んでいきます。
3・11後初の新設基 島根3号機を早期に稼働
志賀 島根3号機の審査状況について教えてください。
中川 今年2月6日の審査会合において、今年度中に原子炉設置変更許可申請に係る一通りの説明を終える予定であること、島根3号機の審査の特徴として、島根2号機を含む先行例を踏襲しているため、現時点では大きな論点はないと考えていることを説明しました。今後、2号機の特重施設(特定重大事故等対処施設)および所内電源(3系統目)の審査に並行して、3号機の審査に対応していきたいと考えています。3号機の運転開始は、脱炭素化の観点でも非常に重要な課題ですし、3・11後、新設では初めて稼働することになりますので、大きなチャレンジだと考えています。

志賀 山口県上関町での中間貯蔵施設に係る立地可能性調査の進ちょくはいかがですか。
中川 島根原子力発電所を運転すれば、自ずと使用済燃料が発生します。同発電所の長期安定運転を維持するためには、再処理施設に搬出するまでの間、使用済燃料を安全に保管することが必要であり、中間貯蔵施設は、使用済燃料貯蔵対策に万全を期すための方策として有効であると考えています。また、中間貯蔵施設の設置検討は、「使用済燃料の貯蔵能力の拡大」というわが国のエネルギー政策にも合致しています。
山口県上関町での調査については、昨年11月に現地でのボーリング作業を終え、現在、ボーリングにより採取した試料を用いて各種分析を行っています。分析結果により調査に要する期間が変わるため、現時点で具体的な終了時期をお示しする状況にはありませんが、慎重に分析を進めていきます。