【特集2まとめ】石油・LPガスの防災力分散型の強みをどう生かすか


2024年元日に北陸地方を襲った能登半島地震。
真冬の暖房需要期の真っ只中ということもあり、
エネルギー業界は安定供給確保に全力を傾けた。
とりわけ災害対応力で定評のあるLPガスや石油燃料。
今回、分散型エネルギーの強みはどう発揮されたのか。
関係各社の取り組みを紹介し、その防災力事情に迫る。

【アウトライン】被災しながらも供給継続に奔走 能登半島地震の現場模様

【レポート】マルヰガス災害救助隊を出動 基金活用した物資提供で支援

【レポート】陸・海の両面で安定供給に精励 業界内連携を生かして早期復旧

【レポート】強い責任感で生活インフラ支える 金沢ターミナルが供給面で底力

【インタビュー】業界一丸で災害に立ち向かう 連携プレーで需要期を突破

【インタビュー】地域を守る「最後のとりで」 SSが燃料供給継続で奮闘

【レポート】BCPの実効性向上のために ジクシスが取り組む平時の対策

【トピックス】災害に備えた自給自足の家 雨水を生活用水に利用

【トピックス】断水続く避難所で生活用水を供給 被災者の安心・安全に貢献

【特集1まとめ】問われる「強靭化」 能登半島地震で浮上する新たな視点


2024年の始まりに衝撃を与えた能登半島地震の発生から早くも4カ月。
それ以降も千葉県東方沖や福島県沖、台湾など各地で強い地震が頻発し、
4月17日深夜には愛媛・高知両県で震度6弱を観測する地震が発生した。
東日本大震災、阪神・淡路大震災に次ぐ規模で激甚災害に指定され、
半島を襲う複合災害という新たな側面での課題が見えた能登半島地震。
過疎化や高齢化が加速する中でインフラ強靭化にどう取り組めばいいのか。
教訓をつぶさに捉え、対策をアップデートすることが求められている。

【アウトライン】被災地のエネルギーインフラ事情をルポ 激甚複合災害に対峙した現場の奮闘記

【トピックス】疲労麻痺するほどの激務 被災支店の災害対応模様

【インタビュー】災害への強さを見せたLPガス 販売・配送の情報収集が課題に

【トピックス】避難所・仮設住宅のエネルギー環境 断水下の被災者を支えた貴重なインフラ

【座談会】「分散化」は本当に有効なのか!? 強靭化へ新たな知見と教訓

【静岡ガス 松本社長】30年ビジョン実現へ 中計で事業領域を拡大 組織開発・人材育成に力


2030年ビジョンの対応が加速する中、社長に就任。

自らが策定に携わった中期経営計画では、今後の成長に向け、事業領域の拡大を推進する。

信条でもある組織開発・人材育成に力を入れ、次の世代へのバトンリレーを着実にこなしていく。

【インタビュー:松本尚武/静岡ガス社長】

まつもと・よしたけ 1993年大阪大学理学部卒、静岡ガス入社。2020年静岡ガス&パワー社長、22年南富士パイプライン社長、23年静岡ガス常務執行役員経営戦略本部長などを経て24年1月から現職。

井関 まずは社長就任にあたっての抱負をお願いします。

松本「静岡ガスグループ2030年ビジョン」を確実に推進したいと考えています。社長職はバトンリレーのようなもので、2030年に向けた期間を担うべくビジョンを推進し、その次の成長やあり方を考えていくのが私の仕事です。それを進めるためには当然、人・組織が重要であり、そのための人材育成や組織力の強化が欠かせません。当社のビジョンは七つの事業で構成されていますが、特にこれらの推進に必須な人・組織を重点的に強化していく考えです。

井関 社長就任の打診はどなたから?

松本 岸田裕之会長(前社長)から伝えられました。本当に自分でいいのかと驚きましたが、挑戦したいという思いがあり、これまで育ててもらった先輩・後輩に恩返しするチャンスだとも考えました。また、静岡ガスの企業理念でもある「地域社会の発展」に貢献したいという気持ちが強く、引き受けることを決めました。

井関 入社後から今日まで、どのような歩みでしたか。

松本 最初の3年ほどは工場での生産やシステム関係の業務に携わった後、家庭用や産業用の営業を担当しました。1990年代半ばから2010年にかけて、産業用の需要拡大によって当社グループの販売量が増大したことに伴い、産業用の大口開拓の営業をメインに行いました。そのほか、技術系やインフラ関係、電力事業など一通りの分野を経験しました。

また、1999~2002年に日本ガス協会に出向する機会もありました。ちょうど大口の自由化が軌道に乗り始め、料金値下げ時の届け出化や選択約款の導入が始まった時期になります。自社に戻ってからは、エネルギー戦略部で主に電力事業を見ていました。当社は14年に電力の専業子会社として静岡ガス&パワーを設立しており、20年にはエネルギー戦略部長と静岡ガス&パワー社長を兼務。22年には経営戦略本部に移りました。その後、INPEXと東京ガスの合併会社・南富士パイプラインが経営戦略本部の所管だったこともあり、同社の代表取締役社長に就任しました。


三つのフェーズで対応 中計で事業領域拡大へ

井関 23年通期の業績評価と今期の業績見通しの感触はいかがですか。

松本 23年の業績については、原料費調整制度のスライドタイムラグによる一過性の増益が大きく、当期純利益は対前年比136・1%増の141億円ほどとなっています。ただ、エネルギー価格高騰などに伴い、小口のお客さまを中心にガスの使い控えなどによる減収が大きく、むしろ危機感を持っています。さらに新型コロナ感染症が第5類に引き下げられたことで巣ごもり需要がなくなったことや、特に今年1~2月は暖冬も重なり、販売量が減少しています。これは電力や石油系も同様の傾向にあるはずです。

加えて、輸出を中心とする製造業の在庫・生産調整でも使用量が減っており、この需要がすぐ増加に転じるとは考えにくく、例えば事業領域の拡大などは早急に取り組むべき課題の一つです。他方、一部の超大口のお客さまはまだ石炭や重油を使っており、都市ガスへの燃料転換推進などで引き続きガス事業の成長も図っていきます。

静岡ガスグループの2030年ビジョン

井関 24~26年の中期経営計画も発表されています。中計の狙いや実行にあたってのポイントはどうですか。

松本 グループの30年ビジョンの実現に向けて三つのフェーズで対応していきます。24年までが「信頼のブランド強化」、25年からの3年間は「事業領域の拡大」を目指す時期です。先ほど述べたように、都市ガス分野も伸ばしつつ、それ以外の事業領域の拡大をさらに進めていく方針です。

井関「信頼のブランド強化」の手応え、そして「事業領域の拡大」の柱となる事業の詳細を教えてください。

松本 前者については、コロナ禍で思うように動けない時期もありましたが、われわれが安全・安心を主張するだけでなく、お客さまから「静岡ガスは信頼できる」と捉えられ、一定のブランド力を築くことができたと思っています。後者では、一つは電力・再生可能エネルギー事業です。電力と再エネを一体で進めることで、30年ビジョンを構成する成長の柱の一つになるでしょう。もう一つは海外事業で、これまでローカルで進めていたものをグローバルに展開していきます。もちろん、ほかの事業も収縮させず、引き続き成長を目指します。

【特集2まとめ】分散型制御でVPP新時代へ 進化する東京ガスソリューション


コージェネレーション、再生可能エネルギー、GHPなど
需要家側に設置されたエネルギー関連設備―。
多様な分散型エネルギーリソースを統合制御することで、
VPP(仮想発電所)として運用する取り組みが始まっている。
東京ガス法人営業部門が新たなソリューションとして
顧客への提案活動に力を入れている。
ユーザーにはどんなメリットをもたらすのか。
進化するソリューションビジネスの最前線を追った。

【アウトライン】VPP推進で社会貢献果たす 電力供給の安定化に寄与

【インタビュー】VPP推進に高い意義 多様な設備管理で強み発揮

【レポート】丁寧な説明でリソース獲得 最適運用でメリット生み出す

【レポート】普及拡大のEVをリソースに 集合住宅に充電インフラを整備

【レポート】見える化で効率的に設備を運用 汎用性高く手頃な導入コスト

【特集1まとめ】漂浪する自由化 電力システム改革を独自検証


2015年度から3段階で進められてきた電力システム改革。
その検証作業が、資源エネルギー庁の有識者会議でスタートした。
改革の狙いは、市場化を軸に競争原理を導入することで電気事業全体の効率化を図り、
安定供給の確保、電気料金の抑制、需要家の選択肢拡大を目指すことにあった。
だが原発の稼働停止が長期化する中、再生可能エネルギーの大量導入によって、
供給網の不安定化が加速したほか、ウクライナ戦争に端を発する燃料価格の高騰が
料金の大幅上昇という形で需要家を直撃するなど、現実は理想にはほど遠い。
もはや、パッチワークの制度措置では抜本的な解決策は望めない。
「漂浪する自由化」の漂着地は一体どこにあるのか―。
有識者や業界関係者への取材を通じて、本誌が独自検証した。

【アウトライン】目的達成にほど遠い電力改革 期待と不安が交錯する検証議論

【座談会】経産省の検証作業を一刀両断 不可欠な需要家目線の議論

【インタビュー】現行制度で多様な問題点の指摘 整合的な制度設計がポイントに

【レポート】先行する欧米でいまだ続く試行錯誤 海外事例に見る日本への示唆

【北陸電力 松田社長】能登と「こころをひとつ」に 地震からの復旧・復興へ グループの総力を挙げる


2024年元旦、能登を中心とする北陸地方を最大震度7の巨大地震と津波が襲った。

損傷した電力インフラの復旧に全力を挙げつつ、財務基盤の強化、脱炭素化、新事業領域の拡大という三つの柱に注力し持続的な経営を実現する。

【インタビュー:松田光司/北陸電力社長】

まつだ・こうじ 1985年金沢大学経済学部卒、北陸電力入社。営業推進部長、エネルギー営業部長、石川支店長などを経て、2019年6月取締役常務執行役員。21年6月から現職。

志賀 元日に能登半島地震が発生し、2024年は非常に大変な幕開けとなりました。

松田 最大震度7を観測した今回の地震は、度重なる余震や降雪により能登地域を中心に家屋の倒壊や道路寸断といった深刻な被害が発生するなど、われわれがかつて経験したことのない「未曽有の災害」となりました。

当社は迅速な災害体制を敷く観点から、震度6以上で最寄りの事業所へ自動出社するルールを設けていますが、家屋の損壊など自らも被害に遭った中で、家族・親族の最低限の安否を確認した上で、多くの社員が駆け付けてくれました。幸い全ての社員にけが人はいませんでしたが、今も避難所から出社している社員もいます。

志賀 当初は被害状況の把握が難しく、対応は困難を極めたのではないでしょうか。

松田 元日の夕方に発生した地震ではありましたが、発災直後に私を総本部長とする「非常災害対策総本部」を立ち上げ、午後6時には全役員がそろって最初の対策会議を開きました。最も被害が大きかった能登エリアの事業所ともテレビ会議をつなぐことができたため、道路の損壊状況など限られた情報の中でも早い段階から現地の情報を得ることができたのは非常に良かったと思います。とはいえ、地震直後は現地に立ち入ることもままならない状況の中、陸路に加えヘリコプターや船を利用するなど、関係各所と連携しながら電力設備の巡視や点検を実施し、状況把握を行うことから始まりました。

発災直後に非常災害対策総本部を立ち上げた

設備の復旧作業に当たるのは、主に北陸電力送配電および協力会社ですが、24時間体制の燃料補給や食料・車両の手配などの後方支援を北陸電力の社員が一手に担い、自治体の復旧拠点・医療機関・福祉施設や各地域の避難所など、まずは人命に関わる場所へ優先的に高圧・低圧発電機車を配備するなど、当社グループ一体となって電気の供給再開を急ぎました。

余震や降雪などの影響で新たな停電が発生したこともあり、延べ約7万戸が停電しましたが、国や自治体、自衛隊などとも連携し道路啓開に合わせた復旧作業を昼夜問わず進め、土砂崩れや道路損壊による立ち入り困難箇所、地震・津波・火災により建物に甚大な被害を受けるなど早期の復旧が見通せない一部の地域を除き、1月中には停電は概ね解消しています。これは当社グループだけの力ではなく、協力会社の皆さんや全国の電力会社の皆さんに応援に駆けつけていただいたおかげであり、大変感謝しています。