【特集2まとめ】都市ガスの脱炭素移行戦略 鍵握る地域連携とe-メタン


2050年カーボンニュートラル(CN)の実現に向け、
30年目標であるCO2排出量の13年比46%削減が必須だ。
都市ガス業界では、天然ガスへの燃料転換をはじめ、
コージェネなどガス設備の拡大、CN-LNGの導入、
再エネの導入など、さまざまな省CO2対策を推進する。
こうした取り組みは、地域の脱炭素化や活性化に貢献。
一方で、e-メタン(合成メタン)の開発も加速中だ。
「脱炭素移行期」を迎えたガス事業者の戦略に迫る。

【アウトライン】岐路に立つ都市ガス産業 CN実現への転換期に挑む

【インタビュー】地域で増す都市ガスの存在感 脱炭素化や地方創生に期待

【インタビュー】着実なトランジションでCNに貢献 地域課題解決で幅広い役割を発揮

【レポート】供給体制から手掛けた燃料転換 点在する工場の低炭素化に貢献

【インタビュー】「地域共創カンパニー」を創設 地域課題解決へより迅速に対応

【レポート】新市庁舎にCN都市ガスを供給 連携協定で脱炭素化を加速

【レポート】町営風力をFIPへ切り替え 非化石価値を地元に還元

【レポート】森林保全活動で地域活性化 CO2吸収以外の利点も

【レポート】森林由来のJ―クレジットを活用 地域内経済循環を生み出す

【レポート】秦野市と包括連携協定 CNガスの供給で環境貢献

【トピックス】南部幹線で都市ガス導管網を拡充 高速道路周辺の新規需要にも照応

【トピックス】一丁目一番地の「燃転」に注力 ガス体エネの優位性を訴求

【トピックス】輸送プラットフォームの水平展開 スマホ制御システムでCO2を大幅減

【レポート】CNの切り札として社会実装へ 進展するe-メタンプロジェクト

【レポート】強みが生きるCCS・CCUS 脱炭素の切り札に技術開発進める

【レポート】世界最大級のメタン製造 国産と人工の二大生産へ

【トピックス】CO2を有効利用するバイオ系技術 遠心分離技術活用のSAF燃料製造

【特集1まとめ】白熱のEV論争 脱エンジン社会は実現するのか


欧米や中国を中心にEVシフトが加速する中、
日本においてEVを巡る論争が白熱している。
世界に先駆けて高性能なハイブリッド車が普及し、
車種、コスト、燃費、環境性、利便性、インフラなど、
さまざまな点でEVの優位性が目立ちにくいことが主因だ。
一方、内燃機関では「合成燃料」なる脱炭素化の救世主も。
果たして、日本で脱エンジン社会は実現するのか。
エネルギー・環境・産業的側面からEVの課題や展望を探った。

【アウトライン】日本で苦戦するEVの「優勝劣敗」 モビリティー革命が普及への起爆剤か

【インタビュー】BEV市場で日本勢の勝算は? 価格+付加価値を意識した支援に

【コラム】日本の将来の姿がそこにある!? この目で見た欧州のリアル

【インタビュー】EV・合成燃料時代にどう対応? インフラ事業者の戦略に迫る

【討論対論】EVシフトの将来展望と障壁 内燃機関の逆襲はあるか

【中国電力 中川社長】信頼回復に努めるとともに市場リスクを低減・回避し経営体質の強化を図る


コンプライアンスの強化、収支・財務状況の改善など、大きな使命を背負い、6月に社長に就任した。

再エネ、原子力、火力を最適に組み合わせ、エネルギーの脱炭素化を図ると同時に、市場変動リスクに左右されにくい経営体質を目指す。

【インタビュー:中川 賢剛/中国電力社長】

なかがわ・けんごう 1985年東京大学工学部卒、中国電力入社。2017年執行役員・経営企画部門部長(設備・技術)兼原子力強化プロジェクト担当部長、21年常務執行役員・需給・トレーディング部門長などを経て23年6月から現職。

志賀 前社長の退任を受けての就任となりました。課題山積ですが、まずは経営トップとしての抱負をお聞かせください。

中川 公正取引委員会からの排除措置命令などをはじめ、一連の不適切事案の発生について、お客さまや関係者の皆さまに多大なるご心配、ご迷惑をお掛けしたことについて深くお詫び申し上げます。その原因には、競争環境下で行う業務に対する意識改革ができていないことなど、長期的に取り組むべき課題がありますので、私が先頭に立って再発防止策にしっかりと取り組み、信頼回復に全力を挙げていきます。

もう一つ、取り組まなければならない重要課題が、財務体質の改善です。過去に例を見ない火力燃料の価格高騰により多額の燃料調整の期ずれ差損が生じたことで、2022年度には過去最大の最終赤字に陥りました。今期は収支が回復したように見えますが、前期とは逆に、燃料価格が低下したことにより、多額の期ずれ差益が生じることが主な要因です。

低圧の規制料金を含めた料金見直しにより、ようやく収支・財務状況の改善に向けたスタートラインに立つことができたとはいえ、島根原子力発電所2、3号機はいまだ稼働しておらず、燃料・電力市場価格の変動による収支悪化リスクを抱えている状況に変わりはありません。電源事業本部や需給・トレーディング部門での経験を生かしながら、原子力を含む自社電源の安定運転によるバランスの取れた電源構成を構築するとともに、市場リスク管理を徹底しつつ、デリバティブなどの金融手法を活用することで、市場の変動リスクに左右されにくい経営体質の強化に努め、安定的な収支・財務基盤の構築を目指します。


内部統制強化委設置 信頼の維持を目指す

志賀 9月28日には、公取委に対し処分の取り消しを求めて東京地裁に提訴しました。

中川 事実認定と法解釈において、当社と公取委との間で一部に見解の相違があることから、公取委が独占禁止法違反であると認定した各命令の全部の取り消しを求める訴訟を提起したものです。当社としては、独禁法への抵触を疑われてもやむを得ない事案を起こしたことへの深い反省のもと、再発防止策を着実に実施しつつ、公正な判断を求めていきます。

志賀 内部統制強化委員会を立ち上げた狙いは。

中川 これまでも再発防止に取り組んでいましたが、経済産業大臣からの業務改善命令を受け、外部のアドバイスをいただきながら客観性の高い取り組みにつなげていくために設置しました。信頼回復を果たし、それを維持・継続することはもちろんのこと、電力システム改革の変遷に合わせて内部統制の在り方も変わっていきますので、その変化に合わせ改革し続けます。